全てを失ったと思ったのですが…騎士団の隊長に拾われ溺愛されました

Karamimi

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番外編:クレシレス王国に来ました【9】

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「リリアお嬢様、本当にお美しいですわ。若い頃のお母様に、瓜二つです。それにこちらのドレスも、ぴったりですし」

 私のドレス姿を見て、涙を流すお母さんのかつての専属メイドたち。いつも甲斐甲斐しく私のお世話をしてくれる、優しい人たち。

 今日はクレッセル侯爵家で夜会が行われる日。皆私に会いに来てくださる日なのだ。まさか小さな村で虐げられていた私に会いに、沢山の貴族の方が来てくださるだなんて。

 今から心臓がバクバクだ。せめて見た目だけでもと、今綺麗に磨き上げてもらった所。ちなみに今日私が着るドレスは、お母さんが昔着ていたドレスを今流にリメイクしたものらしい。

 改めて鏡に映る姿を見つめるが、まるで別人のようだ。こうやって着飾ると、私の様な平民でも、それなりの人間に見える事がすごい。さすが侯爵家の元使用人たちだ。

「リリア、準備は出来たかい?…なんて美しいんだ。まるで女神の様だ。こんなに美しくて汚れを知らないリリアを、貴族どもがひしめく夜会に出さないといけないだなんて。リリア、貴族とは君が思っている以上に、欲にまみれた奴らがうようよいる世界なんだよ。


 もしリリアが奴らに汚されてしまったら…やはり断った方が…」

「落ち着いて下さい、ゼルス様。私は貴族の夜会がどのような物かは存じ上げませんが、今日は母の古くからの友人が集まってくれている会と聞いております。そんなに心配しなくても、大丈夫ですわ

 それに伯父さん家族やウレィシア伯爵夫妻もいらっしゃいますし。そもそも他国の平民に何かしようだなんて考える人は、さすがにいないでしょう」

 私に取り入ったり嫌味を言ったからといって、何のメリットもないのだから。

「そうですよ、ゼルス様。皆様リリアお嬢様に会う事が目的なのですから。悪意を持った人間は、いらっしゃいませんわ」

「リリアに会うのが目的というのが、問題なんだ。とはいえ…さすがにもう後には引けないな…リリア、俺が傍にずっといるから、安心してくれ。さあ、行こうか」

「はい、参りましょう」

 いよいよね。なんだか緊張してきたわ。ホールの前まで来ると、伯父さんたちが待っていてくれていた。

「リリア、ゼルス殿、よく来てくれたね。今日はリリアとゼルス殿に会う為に、沢山の貴族が集まってきている。とはいえ、皆気心知れたレアの友人達だ。あまり気を張る必要はないよ。それじゃあ、行こうか」

 気を張る必要はないと伯父さんは言っているが、正直平民でもある私が、沢山の貴族の方たちと会うのだ。気を張らない訳がない。

「リリア、俺もいるから大丈夫だよ。それとも、行くのをやめて部屋に戻るかい?」

 ゼルス様が優しく声をかけてきてくれている。

「お気遣いありがとうございます。ですが皆様、私の為に集まってくれているのでしょう。それなのに、私が行かないだなんてそんな失礼な事は出来ませんわ。もう腹はくくっていますので。行きましょう、ゼルス様」

 ゼルス様の腕をしっかり握り、伯父さんたちに続いてホールの中に入っていく。予想以上に沢山の貴族たちがいる。こんなにたくさんの貴族たちと、お母さんはお友達だったの?

 お母さんって、一体何者だったのかしら?

 そんな事を考えてしまうほど、沢山の貴族たちが集まっていたのだ。

「皆様、今日は姪のリリアの為に集まって頂き、ありがとうございます。レアが行方不明になってから、20年という月日が流れました。その間レアは、異国の地でリリアと生み、家族3人で幸せに暮らしていた様です。

 レアは残念ながら事故により、命を落としてしまいましたが、娘のリリアが我が国に来てくれました。リリアは平民として生きていた為、貴族社会のルールを知りません。それでも、我が国に来てくれたのです。どうかリリアを、温かい目で見守って下さりますよう、よろしくお願いいたします」

 伯父さんの挨拶と同時に、一斉に拍手が沸き上がったのだ。さらにあちらこちらで、夫人たちがハンカチを握りしめて涙をぬぐっていた。

 そして

「あなたがリリアちゃんね。本当にレアにそっくりだわ」

「リリアちゃん、この国に来てくれてありがとう。お母さんは、優しかった?」

 一斉に夫人たちが、話しかけてきたのだ。
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