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第14話:お茶会に参加します

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「グレイソン、ルージュ、明日はお茶会ね。グレイソンには青いスーツを、ルージュにはオレンジのドレスを新調したわ。グレイソンは我が家に来て初めてのお茶会ね。きっと彼の従兄弟も来るだろうから、ルージュ、頼んだわよ」

「ええ、任せて」

グレイソン様に酷い事をした従兄弟か。本来なら私がボコボコにしてやりたいところだが、生憎私は公爵令嬢だ。そんな野蛮な事はしない。でももしグレイソン様に手を出したら、その時は容赦するつもりはない。

「あの…僕、お茶会には出ないとダメでしょうか?その…」

不安げな顔のグレイソン様。我が家に来て3ヶ月が過ぎ、屋敷内では比較的普通に振舞える様になった。でもさすがに不特定多数の人と会うお茶会はまだ怖い様だ。それにグレイソン様を虐めていた、意地悪な従兄弟も来るらしいし。

「グレイソン様、私がずっと傍におりますので、大丈夫ですわ。意地悪な従兄弟が来たら、追い払って差し上げます。ですので、どうか一緒に行きましょう」

彼はこれから、次期公爵として生きていかないといけない。今のうちに沢山の友人たちを作っておいた方がいいだろう。それに将来の花嫁候補も、ある程度探しておいた方がいいし。私も今回の生では、もちろん貴族令息と結婚して、平和に暮らすつもりだ。

「分かったよ。ルージュが一緒なら、行くよ」

まだ不安げだが、どうやら行く決心がついた様だ。ただお母様とお父様は、不安そうな顔をしている。

「それじゃあ明日に備えてそろそろ休みましょう。お父様、お母様、おやすみなさい。グレイソン様、行きましょう」

グレイソン様と一緒に部屋へと向かう。ちなみに私の部屋とグレイソン様のお部屋は隣同士なのだ。

部屋の前まで来ると、それぞれ自室へと入っていく。さて、私もゆっくり休もう、そう思ってベッドに入ろうとした時だった。

「ルージュ、ちょっといいかい?」

「お父様とお母様、一体どうされました?」

不安そうな両親が部屋にやって来たのだ。

「グレイソンの件なのだが、やっぱりまだお茶会は止めた方がいいと思ってね。あの子は3年もの間、酷い虐待を受けて来たのだよ。体の傷は綺麗に治ったが、きっと心の傷はまだ癒えていないだろう。だから明日のお茶会は…」

「何をおっしゃっているのですか?グレイソン様は、今は公爵令息なのです。それに次期当主になるのであれば、人脈は大切ですわ。今のうちに顔を売っておかないと。私もおりますので、ご安心ください」

「しかし…」

「私はもう休みますので。部屋から出て行ってください」

まだ不安そうな顔をしているお父様とお母様を追い出し、ベッドに横になった。グレイソン様、不安そうな顔をしていたな。やっぱりお父様たちの言う通り、まだお茶会は早いかしら。

でも…

よく考えてみると1度目の生の時、グレイソン様はお茶会など社交の場にほとんど参加していなかった。そのせいで、学院内でも1人でいる事が多かったのだ。

きっとグレイソン様の事を考慮して、お父様とお母様が社交の場に出さないようにしていたのだろう。でもその結果、グレイソン様は貴族社会で孤立してしまい、あの女にまんまと心を奪われてしまったのだ。

やはり今辛くても、ある程度社交の場に顔を出しておくべきだわ。そうよ、もう1度目の過ちは繰り返さないためにも。

よし!明日はグレイソン様の傍にずっと居よう。そして彼が少しでも社交の場に馴染めるようにしないと。

翌日

「グレイソン様のスーツ姿、よく似合っておりますわ」

「そうかい?ルージュもそのドレス、よく似合っているよ。まるで太陽の女神みたいだ」

太陽の女神だなんて、大げさね。でも、褒められると嬉しいわ。

「それでは参りましょう」

2人で馬車に乗り込もうとした時だった。

「グレイソン、やっぱり嫌ならお茶会には参加しなくてもいいのよ。あの意地悪な従兄弟も来るのですもの。心配だわ」

「そうだぞ、グレイソン。まだ君にはお茶会は早い。今日は行かなくてもいいぞ」

ここにきて、お父様とお母様がふざけたことを言い出したのだ。この人たちは本当に!

「お父様、お母様、いい加減にしてください!お茶会は貴族の子供と交流できる大切な場所なのです。子供だからと言って、交流の場を蔑ろにしていては、いざ大人になった時苦労するのです。さあ、グレイソン様、参りましょう」

グレイソン様の手を握り、馬車へと乗り込んだ。私の勢いに押されたのか、お父様とお母様が固まっている。よし、今のうちだわ。

すぐに御者に馬車を出すように指示を出したおかげで、そのまま走り始めた。2人が我に返った時には、時すでに遅しね。

「グレイソン様、両親がごめんなさい。あの人たちは、今しか見ていないのです。本当にどうしようもない人たちですわ」

「ルージュ、義父上と義母上を悪く言わないでくれ。2人は僕の事を心配してくれているのだよ。僕が臆病なばかりに…本当に申し訳ない」

「謝る必要はございませんわ。大丈夫です、私があなたの傍にずっとおりますから」

「そうだね、ルージュがいてくれると思うと、なんだか大丈夫な気がするよ」

そう言って力なく笑ったグレイソン様。きっとものすごく不安なのだろう。

しばらくすると、今日の会場でもある侯爵家に到着した。

「さあ、参りましょう」

グレイソン様の手をしっかり握って馬車から降りようとしたのだが…
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