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第116話:グレイソン様も喜んでくださいました
楽しい時間はあっという間。私達の婚約披露パーティも無事終わり、今日の為に来てくださった方々の見送りもすんだ。
「今日は素敵な婚約披露パーティになったわね。次はあなた達の結婚式ね。今から準備を進めないと」
上機嫌のお母様が、気の早い事を言っている。私達の結婚までは、まだ2年近くもある。私達は貴族学院を卒院して落ち着いたら、結婚する事になっている。
貴族学院卒院…
1度目の生の時は、貴族学院2年の時に、命を落としてしまった。そう、今ちょうど貴族学院2年なのだ。私のお誕生日のすぐ後だったわね…15歳で私は殺された。
でも今回は、もちろん死ぬつもりはない。友人たちも早くから協力してくれているし、グレイソン様がヴァイオレットにうつつを抜かすことも考えられない。
そして何よりも、殿下が今回はヴァイオレットに全く興味を示していない。それどころか、嫌悪感すら抱いているし、きっと大丈夫だ。
それよりも今日は…
「グレイソン様、少し宜しいでしょうか?」
「ああ、大丈夫だよ」
着替えを済ませた私は、グレイソン様の部屋を訪ねた。
「グレイソン様、15歳のお誕生日、おめでとうございます。これ、私からのお誕生日プレゼントですわ」
「これを僕にかい?開けてもいいかい?」
「ええ、もちろんですわ」
包み紙を開けるグレイソン様。気に入ってくださるかしら?
「これは立派な万年筆だね。よく見るととても細かい彫刻がされている。あれ?この紋章は…」
「はい、元ラスティーヌ侯爵家の家紋と、我がヴァレスティナ公爵家の家紋を織り交ぜ、私がデザインしましたの。グレイソン様のご両親と私達新しい家族は、ずっとグレイソン様を見守っているという意味を込めて」
グレイソン様を生み育てて下さった、大切な元ラスティーヌ侯爵と夫人。どうしてもお2人に繋がる何かを入れたかったのだ。その結果、家紋を入れる事を思いついた。
「ルージュ、ありがとう。こんな素敵なプレゼントは初めてだ。この万年筆、大切に飾っておくよ」
「飾るのではなくて、ぜひ使ってください。その方が、私は嬉しいですわ」
「いいや、さすがに使えない。ルージュは僕の亡くなった両親の事も考えてくれているのだよね。ありがとう、ルージュ。僕の両親は、義父上や義母上に負けないくらい、非常に夫婦仲がよくてね。僕たちも2組の夫婦に負けないくらい、幸せな家庭を築こうね」
「ええ、もちろんですわ。必ず幸せになって見せましょう。グレイソン様、私は1度目の生の時、あなたが亡くなる寸前に、あなたの瞳を見て胸が張り裂けそうになりました。あの時のあなたは、ここに来たばかりの時と同じ、絶望に満ちた目をしていたのです」
あの瞳を見た時、グレイソン様を放っておけないと強く思ったのだ。
「もう二度と、あんな目はして欲しくない。あんな悲しい目は見たくない、そう思いました。それからです、私があなたと深く関わる様になったのは。あなたと深く関わっていくうちに、グレイソン様はとても明るく、魅力的な令息だという事に気が付きました。グレイソン様は1度目の生の時の事を悔やんでいた様ですが、私も1度目の生の時、グレイソン様と深く関わってこなかった事を後悔しましたわ。もし今の様に深く関わっていれば、あなたを死なせることもなかったのではないかと…」
1度目の生のグレイソン様は、本当に寂しそうだった。私がもっと気にかけていれば、未来も違っていたのかもしれない。とはいえ、今まさにやり直しているところではあるが。
「ルージュは悪くないよ。そんな事を言わないでくれ。そもそも僕が悪いんだ。あんな女にうつつを抜かしてしまったのだから…」
「1度目の生のグレイソン様は、今のグレイソン様とは考えられない程、毎日寂しそうにしていらっしゃいました。きっとずっと孤独だったのでしょう。だからヴァイオレット様に優しくされて、きっと嬉しかったはずです。もし1度目の生の時、私がもっとグレイソン様と向き合っていたら。そう思うと、申し訳ない気持ちになるのです。でも、もう過ぎてしまった事。だからこそ私は、今の生を精一杯生きて行こうと思っております。私は今、とても幸せですわ」
いくら悔やんでも、もう仕方がないのだ。だからこそ、今の生では後悔しない様に、生きていきたい。
「僕も今、とても幸せだよ。正直まだ、僕のせいでルージュと義両親が命を落とした事を、気にしてしまう事もある。でも、もう過ぎてしまった事は変えられない。1度目の生で失敗した分は、今の生でやり直すしかないのだよね。これからは僕が、ルージュと義両親を目いっぱい幸せにするからね。ずっと一緒だ」
「ありがとうございます、グレイソン様。2度目の生で、あなたに向き合って本当によかったですわ。私にもう一度チャンスをくれた神様に感謝です」
グレイソン様にギュッと抱き着いた。大きくてしっかりした体から伝わる温もりが、なんだか落ち着く。
「僕も2度目の生を与えてくれた神様に、感謝しないと。ルージュ、大好きだよ」
「私もですわ」
この幸せがずっと続くように。
その為にも、まだ私にはやらなければいけないことがある。
近々あの女との決戦があるだろう。1度目の生の恨み、必ず晴らしてやるわ。
でも、今日だけはあの女の事を忘れて、幸せを噛みしめたい。
グレイソン様の温もりを感じなら、今日という日を迎えられた事を幸せに思うのだった。
※次回、ヴァイオレット視点です。
よろしくお願いします。
「今日は素敵な婚約披露パーティになったわね。次はあなた達の結婚式ね。今から準備を進めないと」
上機嫌のお母様が、気の早い事を言っている。私達の結婚までは、まだ2年近くもある。私達は貴族学院を卒院して落ち着いたら、結婚する事になっている。
貴族学院卒院…
1度目の生の時は、貴族学院2年の時に、命を落としてしまった。そう、今ちょうど貴族学院2年なのだ。私のお誕生日のすぐ後だったわね…15歳で私は殺された。
でも今回は、もちろん死ぬつもりはない。友人たちも早くから協力してくれているし、グレイソン様がヴァイオレットにうつつを抜かすことも考えられない。
そして何よりも、殿下が今回はヴァイオレットに全く興味を示していない。それどころか、嫌悪感すら抱いているし、きっと大丈夫だ。
それよりも今日は…
「グレイソン様、少し宜しいでしょうか?」
「ああ、大丈夫だよ」
着替えを済ませた私は、グレイソン様の部屋を訪ねた。
「グレイソン様、15歳のお誕生日、おめでとうございます。これ、私からのお誕生日プレゼントですわ」
「これを僕にかい?開けてもいいかい?」
「ええ、もちろんですわ」
包み紙を開けるグレイソン様。気に入ってくださるかしら?
「これは立派な万年筆だね。よく見るととても細かい彫刻がされている。あれ?この紋章は…」
「はい、元ラスティーヌ侯爵家の家紋と、我がヴァレスティナ公爵家の家紋を織り交ぜ、私がデザインしましたの。グレイソン様のご両親と私達新しい家族は、ずっとグレイソン様を見守っているという意味を込めて」
グレイソン様を生み育てて下さった、大切な元ラスティーヌ侯爵と夫人。どうしてもお2人に繋がる何かを入れたかったのだ。その結果、家紋を入れる事を思いついた。
「ルージュ、ありがとう。こんな素敵なプレゼントは初めてだ。この万年筆、大切に飾っておくよ」
「飾るのではなくて、ぜひ使ってください。その方が、私は嬉しいですわ」
「いいや、さすがに使えない。ルージュは僕の亡くなった両親の事も考えてくれているのだよね。ありがとう、ルージュ。僕の両親は、義父上や義母上に負けないくらい、非常に夫婦仲がよくてね。僕たちも2組の夫婦に負けないくらい、幸せな家庭を築こうね」
「ええ、もちろんですわ。必ず幸せになって見せましょう。グレイソン様、私は1度目の生の時、あなたが亡くなる寸前に、あなたの瞳を見て胸が張り裂けそうになりました。あの時のあなたは、ここに来たばかりの時と同じ、絶望に満ちた目をしていたのです」
あの瞳を見た時、グレイソン様を放っておけないと強く思ったのだ。
「もう二度と、あんな目はして欲しくない。あんな悲しい目は見たくない、そう思いました。それからです、私があなたと深く関わる様になったのは。あなたと深く関わっていくうちに、グレイソン様はとても明るく、魅力的な令息だという事に気が付きました。グレイソン様は1度目の生の時の事を悔やんでいた様ですが、私も1度目の生の時、グレイソン様と深く関わってこなかった事を後悔しましたわ。もし今の様に深く関わっていれば、あなたを死なせることもなかったのではないかと…」
1度目の生のグレイソン様は、本当に寂しそうだった。私がもっと気にかけていれば、未来も違っていたのかもしれない。とはいえ、今まさにやり直しているところではあるが。
「ルージュは悪くないよ。そんな事を言わないでくれ。そもそも僕が悪いんだ。あんな女にうつつを抜かしてしまったのだから…」
「1度目の生のグレイソン様は、今のグレイソン様とは考えられない程、毎日寂しそうにしていらっしゃいました。きっとずっと孤独だったのでしょう。だからヴァイオレット様に優しくされて、きっと嬉しかったはずです。もし1度目の生の時、私がもっとグレイソン様と向き合っていたら。そう思うと、申し訳ない気持ちになるのです。でも、もう過ぎてしまった事。だからこそ私は、今の生を精一杯生きて行こうと思っております。私は今、とても幸せですわ」
いくら悔やんでも、もう仕方がないのだ。だからこそ、今の生では後悔しない様に、生きていきたい。
「僕も今、とても幸せだよ。正直まだ、僕のせいでルージュと義両親が命を落とした事を、気にしてしまう事もある。でも、もう過ぎてしまった事は変えられない。1度目の生で失敗した分は、今の生でやり直すしかないのだよね。これからは僕が、ルージュと義両親を目いっぱい幸せにするからね。ずっと一緒だ」
「ありがとうございます、グレイソン様。2度目の生で、あなたに向き合って本当によかったですわ。私にもう一度チャンスをくれた神様に感謝です」
グレイソン様にギュッと抱き着いた。大きくてしっかりした体から伝わる温もりが、なんだか落ち着く。
「僕も2度目の生を与えてくれた神様に、感謝しないと。ルージュ、大好きだよ」
「私もですわ」
この幸せがずっと続くように。
その為にも、まだ私にはやらなければいけないことがある。
近々あの女との決戦があるだろう。1度目の生の恨み、必ず晴らしてやるわ。
でも、今日だけはあの女の事を忘れて、幸せを噛みしめたい。
グレイソン様の温もりを感じなら、今日という日を迎えられた事を幸せに思うのだった。
※次回、ヴァイオレット視点です。
よろしくお願いします。
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