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第53話:王妃様の想い
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「ハハハハハ、こんな映像まで準備して。こっちにはアルフィーノ侯爵と令息の直筆のサインがあるんだよ。そんな映像なんて…」
「映像は何よりも証拠になりますよ。ヴィノーデル公爵、これ以上は言い逃れは出来ません。今からヴィノーデル公爵家の家宅捜索を行う。父上、捜査令状を至急発行してください」
近くにいた陛下に声を掛けるハドソン殿下。陛下も急いで捜査令状の作成を行い始めた。
「ふざけないでくれ!どうして我が家が家宅捜索を受けないといけないんだ。おかしいだろう?私はただ、アルフィーノ侯爵と令息の不正を暴こうとしただけなのに」
「まだそんな事を言っているのですか?とにかくあなたがアルフィーノ侯爵と令息を陥れた証拠はそろっているのですよ!裁判長、アルフィーノ侯爵と令息の裁判のやり直しを!」
「はい…そうですね。クリスティロソン公爵令息殿とハドソン殿下の調査結果を加味した結果、アルフィーノ侯爵と令息を無罪とする!何か異論がある方はいらっしゃいますか?」
周りを見渡したが、誰も反論する者はいない。
「それでは、正式にローランド・アルフィーノ、ロイド・アルフィーノを無罪とする!」
無罪判決が出たタイミングで、お父様とお兄様の鎖が解かれた。
「「あなた!!」」
「お父様、お兄様」
私達家族は、そのままお父様とお兄様の元に駆け寄り、抱き合った。よかったわ、お父様とお兄様の無罪が確定したのね。本当によかった。それもこれも、エヴァン様のお陰だわ。
「ふざけるな!何が無罪だ!こんな裁判は無効だ」
顔を真っ赤にして怒っている公爵。
「そうよ、どうしてルーナの家族が無罪なのよ!あんたは目の前で父親と兄を殺され、無一文で国外追放にされる予定だったのに。そして国境を越えたタイミングで、私に首をかき切られて死ぬ予定だったのよ。そう、あの人形のようにね」
そう言ってニヤリと笑ったナタリー様。この人は何を言っているの?恐怖で体が震えた。そんな私を抱きしめてくれたのは、エヴァン様だ。
「エヴァン様!!」
もう触れる事もないと思っていたエヴァン様の温もり。私もギュッとエヴァン様に抱き着いた。
「エヴァン様、私…」
「エヴァン殿、やはりルーナ嬢を助けるために、この様な工作をしたのだな。私を陥れたつもりだろうが、こんな裁判は認めない!ルーナ嬢と共に、地獄に叩き落としてやる!」
今までに見た事がないほど興奮しているヴィノーデル公爵を睨みつけるエヴァン様。私は恐怖でエヴァン様にさらに抱き着いた。
その時だった。
「もうやめて!お願い、こんな姿を見たら、天国のリリアーネも泣いているわ。リリアーネ、ごめんなさい。私、あなたとの最後の約束を、守る事が出来なったわ…本当にごめんなさい」
王妃様が涙を流しながら、天井を見上げて謝っている。リリアーネ?一体誰かしら?
「リリアーネ…私が心から愛した妻…王妃様の言う通り、私はリリアーネの最後の言葉を叶えるため、今まで必死に頑張って来たのだ。“どうかナタリーを立派な王妃様にしてあげて”と言う言葉を胸に…だから私は、王妃の座を狙うルーナ嬢を消し去る為に…」
「あなたは何を言っているの?リリアーネの最後の言葉“ナタリーを立派な王妃様にしてあげて”の意味をはき違えるなんて。あの子はナタリーちゃんを公爵令嬢としておごることなく、誰にでも優しく思いやりがある、誰からも愛される王妃様にして欲しいと言う意味で言ったのよ。それなのにあなたは…ヴィノーデル公爵、あなたは誰よりもリリアーネを傍で見ていた人でしょう?あの子がどんな子か、誰よりも知っているはずよ」
ヴィノーデル公爵に必死に訴える王妃様。
「リリアーネはね、命を落とす前に私にこう言ったのよ“あの人はナタリーを甘やかせてしまう節があるの。だからね、少し我が儘に育っちゃってて…ねえ、お願い、もしあの人がこれ以上ナタリーを甘やかす様なら…私の代わりにあなたがあの人とナタリーを叱って欲しいの…ごめんね、こんな事を頼めるのは、あなたしかいなくて”そう言って涙を流しながら何度も訴えてきたの。それなのに私は、公爵の暴走も、ナタリーちゃんの我が儘も止める事が出来なかった。きっと今頃リリアーネは泣いているわ。私、どんな顔をしてリリアーネに会えばいいのか…」
そう言って泣き崩れてしまった王妃様。
「公爵、リリアーネ夫人は本当に慈悲深く優しい女性だった。君にとって彼女が全てだったことも私は知っている。忘れ形見でもあるナタリー嬢を寵愛するのも。でも、君の行いを天国のリリアーネ夫人は、どう思っているのだろうね…」
陛下がヴィノーデル公爵の肩を叩いた。
その瞬間、大粒の涙を流すヴィノーデル公爵。
「私はただ…ナタリーの幸せだけを願って来た…リリアーネの意志を受け継ぎ、ナタリーを幸せにしないと…そう考えていたのに。私はいつから間違った道に進んでしまったのだろう…王妃殿下にも何度も“このままではナタリーちゃんの為にならないわ。お願い、私にナタリーちゃんを預けて!”と、訴えられていたのに…ナタリーが我が儘に育っていたことも知っていた。でも…いつの間にか彼女の願いを叶えてやることが、愛情だと勘違いしていた…リリアーネ、許してくれ…私は…」
その場で膝を付き、泣き崩れるヴィノーデル公爵。そんな公爵にそっと寄り添う王妃様。
「先ほどエヴァン殿が言った通り、アルフィーノ侯爵家に全ての罪を擦り付けました。アルフィーノ侯爵、ロイド殿、ご家族の皆様、本当に申し訳ございませんでした。そしてルーナ嬢、ナタリーが本当にすまなかった。全て私の責任だ…あの子を母親の様に育てる事が出来なかった私の…」
そう言ってヴィノーデル公爵は泣きながら何度も頭を下げた。その横で、嗚咽を漏らしながら泣き続ける王妃様の姿も。2人の姿は、胸に突き刺さるものがある。
もっと早く、公爵様が王妃様の想いに…亡き夫人の意志に気が付いていたら。こんな悲しい結果にはならなかったのかもしれない。そう思わずにはいられなかった。
「映像は何よりも証拠になりますよ。ヴィノーデル公爵、これ以上は言い逃れは出来ません。今からヴィノーデル公爵家の家宅捜索を行う。父上、捜査令状を至急発行してください」
近くにいた陛下に声を掛けるハドソン殿下。陛下も急いで捜査令状の作成を行い始めた。
「ふざけないでくれ!どうして我が家が家宅捜索を受けないといけないんだ。おかしいだろう?私はただ、アルフィーノ侯爵と令息の不正を暴こうとしただけなのに」
「まだそんな事を言っているのですか?とにかくあなたがアルフィーノ侯爵と令息を陥れた証拠はそろっているのですよ!裁判長、アルフィーノ侯爵と令息の裁判のやり直しを!」
「はい…そうですね。クリスティロソン公爵令息殿とハドソン殿下の調査結果を加味した結果、アルフィーノ侯爵と令息を無罪とする!何か異論がある方はいらっしゃいますか?」
周りを見渡したが、誰も反論する者はいない。
「それでは、正式にローランド・アルフィーノ、ロイド・アルフィーノを無罪とする!」
無罪判決が出たタイミングで、お父様とお兄様の鎖が解かれた。
「「あなた!!」」
「お父様、お兄様」
私達家族は、そのままお父様とお兄様の元に駆け寄り、抱き合った。よかったわ、お父様とお兄様の無罪が確定したのね。本当によかった。それもこれも、エヴァン様のお陰だわ。
「ふざけるな!何が無罪だ!こんな裁判は無効だ」
顔を真っ赤にして怒っている公爵。
「そうよ、どうしてルーナの家族が無罪なのよ!あんたは目の前で父親と兄を殺され、無一文で国外追放にされる予定だったのに。そして国境を越えたタイミングで、私に首をかき切られて死ぬ予定だったのよ。そう、あの人形のようにね」
そう言ってニヤリと笑ったナタリー様。この人は何を言っているの?恐怖で体が震えた。そんな私を抱きしめてくれたのは、エヴァン様だ。
「エヴァン様!!」
もう触れる事もないと思っていたエヴァン様の温もり。私もギュッとエヴァン様に抱き着いた。
「エヴァン様、私…」
「エヴァン殿、やはりルーナ嬢を助けるために、この様な工作をしたのだな。私を陥れたつもりだろうが、こんな裁判は認めない!ルーナ嬢と共に、地獄に叩き落としてやる!」
今までに見た事がないほど興奮しているヴィノーデル公爵を睨みつけるエヴァン様。私は恐怖でエヴァン様にさらに抱き着いた。
その時だった。
「もうやめて!お願い、こんな姿を見たら、天国のリリアーネも泣いているわ。リリアーネ、ごめんなさい。私、あなたとの最後の約束を、守る事が出来なったわ…本当にごめんなさい」
王妃様が涙を流しながら、天井を見上げて謝っている。リリアーネ?一体誰かしら?
「リリアーネ…私が心から愛した妻…王妃様の言う通り、私はリリアーネの最後の言葉を叶えるため、今まで必死に頑張って来たのだ。“どうかナタリーを立派な王妃様にしてあげて”と言う言葉を胸に…だから私は、王妃の座を狙うルーナ嬢を消し去る為に…」
「あなたは何を言っているの?リリアーネの最後の言葉“ナタリーを立派な王妃様にしてあげて”の意味をはき違えるなんて。あの子はナタリーちゃんを公爵令嬢としておごることなく、誰にでも優しく思いやりがある、誰からも愛される王妃様にして欲しいと言う意味で言ったのよ。それなのにあなたは…ヴィノーデル公爵、あなたは誰よりもリリアーネを傍で見ていた人でしょう?あの子がどんな子か、誰よりも知っているはずよ」
ヴィノーデル公爵に必死に訴える王妃様。
「リリアーネはね、命を落とす前に私にこう言ったのよ“あの人はナタリーを甘やかせてしまう節があるの。だからね、少し我が儘に育っちゃってて…ねえ、お願い、もしあの人がこれ以上ナタリーを甘やかす様なら…私の代わりにあなたがあの人とナタリーを叱って欲しいの…ごめんね、こんな事を頼めるのは、あなたしかいなくて”そう言って涙を流しながら何度も訴えてきたの。それなのに私は、公爵の暴走も、ナタリーちゃんの我が儘も止める事が出来なかった。きっと今頃リリアーネは泣いているわ。私、どんな顔をしてリリアーネに会えばいいのか…」
そう言って泣き崩れてしまった王妃様。
「公爵、リリアーネ夫人は本当に慈悲深く優しい女性だった。君にとって彼女が全てだったことも私は知っている。忘れ形見でもあるナタリー嬢を寵愛するのも。でも、君の行いを天国のリリアーネ夫人は、どう思っているのだろうね…」
陛下がヴィノーデル公爵の肩を叩いた。
その瞬間、大粒の涙を流すヴィノーデル公爵。
「私はただ…ナタリーの幸せだけを願って来た…リリアーネの意志を受け継ぎ、ナタリーを幸せにしないと…そう考えていたのに。私はいつから間違った道に進んでしまったのだろう…王妃殿下にも何度も“このままではナタリーちゃんの為にならないわ。お願い、私にナタリーちゃんを預けて!”と、訴えられていたのに…ナタリーが我が儘に育っていたことも知っていた。でも…いつの間にか彼女の願いを叶えてやることが、愛情だと勘違いしていた…リリアーネ、許してくれ…私は…」
その場で膝を付き、泣き崩れるヴィノーデル公爵。そんな公爵にそっと寄り添う王妃様。
「先ほどエヴァン殿が言った通り、アルフィーノ侯爵家に全ての罪を擦り付けました。アルフィーノ侯爵、ロイド殿、ご家族の皆様、本当に申し訳ございませんでした。そしてルーナ嬢、ナタリーが本当にすまなかった。全て私の責任だ…あの子を母親の様に育てる事が出来なかった私の…」
そう言ってヴィノーデル公爵は泣きながら何度も頭を下げた。その横で、嗚咽を漏らしながら泣き続ける王妃様の姿も。2人の姿は、胸に突き刺さるものがある。
もっと早く、公爵様が王妃様の想いに…亡き夫人の意志に気が付いていたら。こんな悲しい結果にはならなかったのかもしれない。そう思わずにはいられなかった。
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