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第60話:エマにも幸せになって欲しいです
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「エマ、僕たちが初めて会ったのは、孤児院だったね。あの日から僕は、君が大好きだ。子供たちに向ける優しい微笑も、頬を膨らませて怒る姿も、感動してポロポロと涙を流す姿も、全部大好きだ。でも、僕にはずっと婚約者がいた。だから、ずっと君への気持ちに蓋をしていたんだ。それでもやっぱり僕は、今でも君が大好きだ。エマ、僕と共に国を支えて行ってはくれないだろうか?」
まさかこのタイミングでプロポーズするなんて!なんて素敵なのかしら!私はもちろん、皆がエマに注目する。
「ハドソン殿下、私には王妃様は務まりませんわ。申し訳ございませんが、他を当ってください」
ペコリと頭を下げ、その場を去ろうとするエマ。
どうしてエマはそんな事を言うの?周りも騒めいている。
「あ…エマ…」
ハドソン殿下の悲しそうな呟きを無視し、エマがその場を去ろうとする。
「待って!エマ。どうして?どうしてハドソン殿下のプロポーズを断るの?」
エマの元に駆け寄り、彼女に問いかける。
「ルーナ…私の事は放っておいてちょうだい」
そう言い、ホールの出口へと歩こうとする。でもその瞳はとても悲しそうだ。
「放っておけないわ!ねえ、エマ。あなただってずっと、ハドソン殿下を愛していたのでしょう。以前話してくれた孤児院で出会った少年って、ハドソン殿下なのでしょう?またいつかハドソン殿下が孤児院に来てくれるかもしれないと、今でも孤児院に通い続けているじゃない」
「ちょっと、ルーナ。どうして今その話をするのよ。第一私は、王妃に何てなれないわ。私なんかが王妃に何てなれる訳ないでしょう?」
「どうしてなれないの?あなたは誰よりも優しくて、それに芯が通った強い女性よ。弱い人の立場に立ち、相手の気持ちが分かる人間のあなたが王妃になれないなら、一体どんな人間ならなれるのよ?私はずっとあなたの傍であなたを見てきたから知っているわ。あなたほど王妃様にふさわしい人間なんていない。それに何より、あなただってハドソン殿下を愛しているのでしょう?それとも、もうハドソン殿下の事は何とも思っていないの?嫌いになっちゃったの?」
「嫌いに何てなる訳ないでしょう。今でもハドソン殿下の事は、大切に思っているわ。でもね、私はナタリー様がこの世を去った時、内心ほっとしたの。人の死を聞いてホッとする様な心の汚い私が、王妃様に何てなれないわ」
涙を浮かべ、必死に訴えかけるエマ。
「私も実は、ナタリー嬢がこの世から去った時、ホッとしたわ。これでもう、恐怖に怯える必要は無いと思ったの。こんな感情を抱くなんて…て、私自身もショックだった。でも、私たちは人間なのですもの。時には醜い感情を持つのも仕方がないわ。それに私、エマには誰よりも幸せになって欲しい。私も次期公爵夫人として、エマの支えになる様に頑張るわ。今まではエマに助けられてきたけれど、今度は私がエマの支えになる。だからどうか、自分の気持ちに素直になって。私はエマこそ、次期王妃様にふさわしいと思うわ。皆もそう思わない?」
近くにいたクラスメートたちに、声を掛ける。
「私もエマ様なら素敵な王妃様になれると思いますわ」
「私も」
「私もですわ。エマ様、私たちがエマ様を支えます。ですから、どうかご自分のお幸せをお考えになってください」
クラスの令嬢たちも、エマに訴えかけてくれている。さらに
「エマ嬢、君はいつもルーナの幸せばかり考えていたよね。でも、ルーナにはもう僕がいるし、ルーナの為にも自分の幸せを考えてはくれないかい?それに諦めの悪いハドソン殿下の事だ。君がいくら断っても、しつこく言い寄ってくると思うよ。僕たちは従兄弟だからね」
いつの間にか私の傍に来ていたエヴァン様が、そう言って笑った。
「エマ、これだけ皆が君が次期王妃にふさわしいと言ってくれているのだよ。それに、エヴァンが言った通り、僕は諦めが悪い男だ。君が首を縦に振ってくれない限り、僕はきっと君に付きまとうよ。エマ、僕は君意外と結婚するつもりはない。どうか、僕と共に人生を歩んで行って欲しい」
改めてハドソン殿下が、エマに気持ちを伝えた。エマ、お願い、素直になって!
祈る様な気持ちで、エマを見つめる。
すると、瞳からポロポロと大粒の涙を流すエマ。そして
「はい、不束者ですが、どうかよろしくお願いいたします」
そう言ってエマが頭を下げたのだ。
「エマ、ありがとう。これからはずっと一緒だ。大好きだよ」
そう言ってエマを抱きしめるハドソン殿下。瞳には涙がにじんでいた。さらに周りから、大きな拍手が巻き上がる。
よかったわ、本当によかった。2人の姿を見たら、私まで涙が込みあげてきた。
「ルーナ、良かったね。まさかエマ嬢がハドソン殿下のプロポーズを断るとは思わなかったよ。あの2人、どう見てもお互い好き合っていたからね」
「本当ですわ。エマったら、変なところで頭が固いのだから」
それでもエマがハドソン殿下を受け入れてくれて、ホッとした。でもこれから、エマは次期王妃様になる為の王妃教育が始まるのね。王妃教育はかなり厳しいと聞くけれど…
まあ、頑張り屋のエマなら大丈夫だろう。それにきっと、ハドソン殿下も寄り添ってくれるだろう。
まさかこのタイミングでプロポーズするなんて!なんて素敵なのかしら!私はもちろん、皆がエマに注目する。
「ハドソン殿下、私には王妃様は務まりませんわ。申し訳ございませんが、他を当ってください」
ペコリと頭を下げ、その場を去ろうとするエマ。
どうしてエマはそんな事を言うの?周りも騒めいている。
「あ…エマ…」
ハドソン殿下の悲しそうな呟きを無視し、エマがその場を去ろうとする。
「待って!エマ。どうして?どうしてハドソン殿下のプロポーズを断るの?」
エマの元に駆け寄り、彼女に問いかける。
「ルーナ…私の事は放っておいてちょうだい」
そう言い、ホールの出口へと歩こうとする。でもその瞳はとても悲しそうだ。
「放っておけないわ!ねえ、エマ。あなただってずっと、ハドソン殿下を愛していたのでしょう。以前話してくれた孤児院で出会った少年って、ハドソン殿下なのでしょう?またいつかハドソン殿下が孤児院に来てくれるかもしれないと、今でも孤児院に通い続けているじゃない」
「ちょっと、ルーナ。どうして今その話をするのよ。第一私は、王妃に何てなれないわ。私なんかが王妃に何てなれる訳ないでしょう?」
「どうしてなれないの?あなたは誰よりも優しくて、それに芯が通った強い女性よ。弱い人の立場に立ち、相手の気持ちが分かる人間のあなたが王妃になれないなら、一体どんな人間ならなれるのよ?私はずっとあなたの傍であなたを見てきたから知っているわ。あなたほど王妃様にふさわしい人間なんていない。それに何より、あなただってハドソン殿下を愛しているのでしょう?それとも、もうハドソン殿下の事は何とも思っていないの?嫌いになっちゃったの?」
「嫌いに何てなる訳ないでしょう。今でもハドソン殿下の事は、大切に思っているわ。でもね、私はナタリー様がこの世を去った時、内心ほっとしたの。人の死を聞いてホッとする様な心の汚い私が、王妃様に何てなれないわ」
涙を浮かべ、必死に訴えかけるエマ。
「私も実は、ナタリー嬢がこの世から去った時、ホッとしたわ。これでもう、恐怖に怯える必要は無いと思ったの。こんな感情を抱くなんて…て、私自身もショックだった。でも、私たちは人間なのですもの。時には醜い感情を持つのも仕方がないわ。それに私、エマには誰よりも幸せになって欲しい。私も次期公爵夫人として、エマの支えになる様に頑張るわ。今まではエマに助けられてきたけれど、今度は私がエマの支えになる。だからどうか、自分の気持ちに素直になって。私はエマこそ、次期王妃様にふさわしいと思うわ。皆もそう思わない?」
近くにいたクラスメートたちに、声を掛ける。
「私もエマ様なら素敵な王妃様になれると思いますわ」
「私も」
「私もですわ。エマ様、私たちがエマ様を支えます。ですから、どうかご自分のお幸せをお考えになってください」
クラスの令嬢たちも、エマに訴えかけてくれている。さらに
「エマ嬢、君はいつもルーナの幸せばかり考えていたよね。でも、ルーナにはもう僕がいるし、ルーナの為にも自分の幸せを考えてはくれないかい?それに諦めの悪いハドソン殿下の事だ。君がいくら断っても、しつこく言い寄ってくると思うよ。僕たちは従兄弟だからね」
いつの間にか私の傍に来ていたエヴァン様が、そう言って笑った。
「エマ、これだけ皆が君が次期王妃にふさわしいと言ってくれているのだよ。それに、エヴァンが言った通り、僕は諦めが悪い男だ。君が首を縦に振ってくれない限り、僕はきっと君に付きまとうよ。エマ、僕は君意外と結婚するつもりはない。どうか、僕と共に人生を歩んで行って欲しい」
改めてハドソン殿下が、エマに気持ちを伝えた。エマ、お願い、素直になって!
祈る様な気持ちで、エマを見つめる。
すると、瞳からポロポロと大粒の涙を流すエマ。そして
「はい、不束者ですが、どうかよろしくお願いいたします」
そう言ってエマが頭を下げたのだ。
「エマ、ありがとう。これからはずっと一緒だ。大好きだよ」
そう言ってエマを抱きしめるハドソン殿下。瞳には涙がにじんでいた。さらに周りから、大きな拍手が巻き上がる。
よかったわ、本当によかった。2人の姿を見たら、私まで涙が込みあげてきた。
「ルーナ、良かったね。まさかエマ嬢がハドソン殿下のプロポーズを断るとは思わなかったよ。あの2人、どう見てもお互い好き合っていたからね」
「本当ですわ。エマったら、変なところで頭が固いのだから」
それでもエマがハドソン殿下を受け入れてくれて、ホッとした。でもこれから、エマは次期王妃様になる為の王妃教育が始まるのね。王妃教育はかなり厳しいと聞くけれど…
まあ、頑張り屋のエマなら大丈夫だろう。それにきっと、ハドソン殿下も寄り添ってくれるだろう。
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