前世の記憶を取り戻した元クズ令嬢は毎日が楽しくてたまりません

Karamimi

文字の大きさ
2 / 100

第2話:どうしようもないクズでごめんなさい

「旦那様、準備が整いました。お嬢様、脳の検査を…」

 恐縮しながら私に話しかけてきたお医者様。周りには見た事のない立派な器具たちが並び、不安そうな医者や看護師さんたちがこちらを見つめていた。

 すっかり忘れていたが、今まであまりにもクズ過ぎて、正気に戻った事が異常と判断されていたのだった。非常に失礼な事だが、今までのクズっぷりを考えれば当然の事。

 こんな検査なんか受けなくても、私の脳は正常だ。むしろ改善されたと言いたいところだが、せっかく準備してくれたのだ。ここは素直に治療を受けよう。

「ありがとう。異常は見つからないとは思いますが、お願いします」

「お嬢様が“ありがとう”“お願いします”と言ったぞ。これは一大事だ。すぐに検査をしないと。では早速、この機械を付けさせていただきます」

 当たり前の事を言っただけなのに、腰を抜かしそうになるほどびっくりしている周りの人たち。ええ、分かっておりますよ。それほどまでに、前までの私がクズだったって事ですよね。分かっているけれど、何だろう、この何とも言えない気持ちは…

 その後恐縮しながらも検査を行う医師たち。

「旦那様、全ての検査を終えましたが、特に異常は見当たりませんでした…もしかしたら、事故の影響で一時的に脳が混乱しているだけかもしれません」

「そうか、わかった。異常が見当たらないなら、仕方がない。様子を見よう」

「承知いたしました、また何かありましたら、すぐに駆け付けますので。それでは私共はこれで失礼いたします」

 どうやら私の脳に、異常は見つからなかった様だ。そりゃそうだろう、いくらこの国の最新の機器を使っても、私が前世の記憶を取り戻し、人としてまともになった事なんて、分かるはずがない。

「ソフィーナ、特に異常はない様で、よかったよ。それじゃあ私たちは部屋から出ていくけれど、何かあったらすぐに教えてくれ。君たち、ソフィーナの世話を頼んだよ」


「「「はい、かしこまりました」」」

 両親が部屋から出ていくのを見送った。ふと使用人たちに目をやると、小さく震えていた。彼女たちには、今まで散々な扱いをして来たのだ。本当に申し訳ない事をした。こんな我が儘でどうしようもないクズな私を見捨てず、世話をしてくれていただなんて、本当に頭が下がる。

「お嬢様、痛みはありませんか?もし痛みが強いようでしたら、痛み止めを準備させていただきます」

「お嬢様のお好きなお茶を準備しました。どうぞお飲みください」

「体を拭かせていただきたいのですが、よろしいでしょうか?もしお嬢様がお嫌でしたら、もちろんそのままでも結構ですので」

 怯えながらも必死に私の世話をしてくれようとする使用人たち。こんなにも優しい彼女たちに、私は酷い事をしていたのだ。なんと詫びたらいいのやら…

「皆、ありがとう。今は痛みも落ち着いているから大丈夫よ。体を拭いてもらえるかしら?汗をかいたせいか、ベタベタしていて気持ちが悪いの。もし手伝ってもらえるのなら、湯あみをしたいのだけれど…お茶はさっぱりした後で頂くわ。それから…」

 彼女たちの方を真っすぐ見つめた。彼女たちの顔が引きつるのが分かる。きっと怖いのだろう…

「今まで、酷い事をして本当にごめんなさい。私は傲慢で我が儘でどうしようもないクズだったわ。あなた達には、謝っても謝り切れない程酷い事を今までして来たわね。それなのに、私の傍にいてくれてありがとう。

 これからはもっとまともになるから、どうか私を今後も支えてくれるかしら?」

 今までのクズっぷりを謝罪し、彼女たちに頭を下げたのだ。こんな事で許してもらえるだなんて思っていないが、今の私に出来る事と言えば、これくらいしかない。

「お嬢様、頭をお上げください。もちろん、これからも私共は、しっかりとお嬢様のお世話をさせていただきますわ」

「そうですわ、お嬢様が謝罪なさることはございません。こちらこそ、これからもお願いいたします」

「あなた達、優しいのね。ありがとう。こんな私だけれど、よろしくね」

 彼女たちに向かって、にっこりとほほ笑んだ。すると、なぜか頬を赤らめた彼女たちだったが、すぐに笑顔に戻った。

 その後も、いつもの様に甲斐甲斐しく世話をしてくれる彼女たち。こんなにいい子たちに、私は今まで暴言や暴力をふるっていただなんて、恥ずかしくて顔から火が出そうだ。

 これからは絶対にそんな酷い事はしない。そう心に誓ったのだった。

あなたにおすすめの小説

【本編完結】初恋のその先で、私は母になる

妄夢【ピッコマノベルズ連載中】
恋愛
第19回恋愛小説大賞にて、奨励賞を受賞いたしました。読者の皆様のおかげです!本当ありがとうございます。 王宮で12年働き、気づけば28歳。 恋も結婚も遠いものだと思っていたオリビアの人生は、憧れの年下公爵と一夜を共にしたことで大きく動き出す。 優しく守ろうとする彼。 けれどオリビアは、誰かに選ばれるだけの人生を終わらせたいと思っていた。 揺れる想いの中で、彼女が選んだのは―― 自分の足で立ち、自分の未来を選ぶこと。 これは、一人の女性が恋を通して自分を取り戻し、母として、そして一人の人間として強くなっていく物語。 ※表紙画像はAI生成イラストをつかっています。

【完結】記憶喪失の令嬢は無自覚のうちに周囲をタラシ込む。

ゆらゆらぎ
恋愛
王国の筆頭公爵家であるヴェルガム家の長女であるティアルーナは食事に混ぜられていた遅延性の毒に苦しめられ、生死を彷徨い…そして目覚めた時には何もかもをキレイさっぱり忘れていた。 毒によって記憶を失った令嬢が使用人や両親、婚約者や兄を無自覚のうちにタラシ込むお話です。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

悪役令嬢は調理場に左遷されましたが、激ウマご飯で氷の魔公爵様を餌付けしてしまったようです~「もう離さない」って、胃袋の話ですか?~

咲月ねむと
恋愛
「君のような地味な女は、王太子妃にふさわしくない。辺境の『魔公爵』のもとへ嫁げ!」 卒業パーティーで婚約破棄を突きつけられた悪役令嬢レティシア。 しかし、前世で日本人調理師だった彼女にとって、堅苦しい王妃教育から解放されることはご褒美でしかなかった。 ​「これで好きな料理が作れる!」 ウキウキで辺境へ向かった彼女を待っていたのは、荒れ果てた別邸と「氷の魔公爵」と恐れられるジルベール公爵。 冷酷無慈悲と噂される彼だったが――その正体は、ただの「極度の偏食家で、常に空腹で不機嫌なだけ」だった!? ​レティシアが作る『肉汁溢れるハンバーグ』『とろとろオムライス』『伝説のプリン』に公爵の胃袋は即陥落。 「君の料理なしでは生きられない」 「一生そばにいてくれ」 と求愛されるが、色気より食い気のレティシアは「最高の就職先ゲット!」と勘違いして……? ​一方、レティシアを追放した王太子たちは、王宮の食事が不味くなりすぎて絶望の淵に。今さら「戻ってきてくれ」と言われても、もう遅いです! ​美味しいご飯で幸せを掴む、空腹厳禁の異世界クッキング・ファンタジー!

「私に愛まで望むとは、強欲な女め」と罵られたレオノール妃の白い結婚

きぬがやあきら
恋愛
「私に愛まで望むな。褒賞に王子を求めておいて、強欲が過ぎると言っている」 新婚初夜に訪れた寝室で、レオノールはクラウディオ王子に白い結婚を宣言される。 それもそのはず。 2人の間に愛はないーーどころか、この結婚はレオノールが魔王討伐の褒美にと国王に要求したものだった。 でも、王子を望んだレオノールにもそれなりの理由がある。 美しく気高いクラウディオ王子を欲しいと願った気持ちは本物だ。 だからいくら冷遇されようが、嫌がらせを受けようが心は揺るがない。 どこまでも逞しく、軽薄そうでいて賢い。どこか憎めない魅力を持ったレオノールに、やがてクラウディオの心は……。 すれ違い、拗れる2人に愛は生まれるのか?  焦ったい恋と陰謀+バトルのラブファンタジー。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

愛のない結婚をした継母に転生したようなので、天使のような息子を溺愛します

美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
目が覚めると私は昔読んでいた本の中の登場人物、公爵家の後妻となった元王女ビオラに転生していた。 人嫌いの公爵は、王家によって組まれた前妻もビオラのことも毛嫌いしており、何をするのも全て別。二人の結婚には愛情の欠片もなく、ビオラは使用人たちにすら相手にされぬ生活を送っていた。 それでもめげずにこの家にしがみついていたのは、ビオラが公爵のことが本当に好きだったから。しかしその想いは報われることなどなく彼女は消え、私がこの体に入ってしまったらしい。 嫌われ者のビオラに転生し、この先どうしようかと考えあぐねていると、この物語の主人公であるルカが声をかけてきた。物語の中で悲惨な幼少期を過ごし、闇落ち予定のルカは純粋なまなざしで自分を見ている。天使のような可愛らしさと優しさに、気づけば彼を救って本物の家族になりたいと考える様に。 二人一緒ならばもう孤独ではないと、私はルカとの絆を深めていく。 するといつしか私を取り巻く周りの人々の目も、変わり始めるのだったーー

【完結】白い結婚を終えて自由に生きてまいります

なか
恋愛
––アロルド、私は貴方が結婚初日に告げた言葉を今でも覚えている。  忘れもしない、あの時貴方は確かにこう言った。  「初めに言っておく、俺達の婚姻関係は白い結婚として……この関係は三年間のみとする」 「白い結婚ですか?」 「実は俺には……他に愛する女性がいる」   それは「公爵家の令嬢との問題」を理由に、三年間だけの白い結婚を強いるもの。 私の意思を無視して三家が取り決めたものであったが、私は冷静に合意を決めた ――それは自由を得るため、そして『私自身の秘密を隠すため』の計算でもあった。 ところが、三年の終わりが近づいたとき、アロルドは突然告白する。「この三年間で君しか見えなくなった。白い結婚の約束をなかったことにしてくれ」と。 「セシーリア、頼む……どうか、どうか白い結婚の合意を無かった事にしてくれ」 アロルド、貴方は何を言い出すの? なにを言っているか、分かっているの? 「俺には君しかいないと、この三年間で分かったんだ」 私の答えは決まっていた。 受け入れられるはずがない。  自由のため、私の秘密を守るため、貴方の戯言に付き合う気はなかった。    ◇◇◇ 設定はゆるめです。 とても強い主人公が自由に暮らすお話となります。 もしよろしければ、読んでくださると嬉しいです!