前世の記憶を取り戻した元クズ令嬢は毎日が楽しくてたまりません

Karamimi

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第27話:空気が美味しいです

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「着いたよ、足元に気を付けて」

 先に降りたセシル様が、すっと手を伸ばしてくれた。相変わらずお優しい方だ。

「ありがとうございます。とっても空気が美味しいですね。私、こんなにきれいな空気、初めて吸いましたわ」

 これが俗にいう、マイナスイオンなのだろう。なんて清々しい空気なのかしら?何度も何度も深呼吸をする。

「ソフィーナ嬢、見てごらん。あそこに鳥の親子がいるよ。あそこにはキツネもいる」

「まあ、本当ですわ。なんて可愛らしいのかしら。ここには動物が沢山いるのですね。私、あまり動物を近くで見た事が無くて」

 王都に住んでいたら、あまり動物を見かける事もない。そういえば昔、一度王宮のお茶会に参加した時に、弱っていた子猫を見つけたのよね。

 あの時の私はクズだったけれど、それでもその子猫を放っておけなくて、こっそり餌をあげたのだったわ。その後タイミングよく母猫が来て、一緒に帰って行ったのよね。なんだか懐かしいわ…あの子、今も元気にしているかしら?

「ソフィーナ嬢、奥に大きな湖があるんだ。少し歩くけど、大丈夫かい?」

「ええ、もちろんですわ。私、湖を見るのを楽しみにしておりましたの。早く行きましょう」

「待って、走ると危ないよ」

 早く行きたくて、つい小走りになってしまう。教育係が見たら“お嬢様、はしたないです”そう言って怒られるだろう。でも、つい走ってしまうのだ。こうやって思う存分走れることが、やはり嬉しい。

 それに空気が美味しすぎて、どこまでも走れそうな気がする。

 林を抜け、風をきり進んでいくと、目の前には大きな湖が。その周りには、綺麗なお花が咲いている。

「セシル様、あれが湖ですか?なんて大きくてきれいなのかしら。太陽の光を浴びて、キラキラと光っておりますわ。それにお花も、とっても綺麗」

 そのまま湖に近づこうとしたところで、セシル様に手を掴まれた。

「ソフィーナ嬢、やっと捕まえたよ。君って子は、本当に子供の様にはしゃいで行ってしまうのだから。ここは意外と複雑な造りになっているんだ。あまり好き勝手行くと、迷子になってしまうよ」

 少し困った顔のセシル様に、注意を受けた。

「ごめんなさい。ついはしゃいでしまって。令嬢として失格でしたね。以後気を付けますわ」

 やってしまったわ。ついはしゃぎすぎてしまった。セシル様もきっと、呆れているだろう。

「そんなにシュンとしないでくれ。俺も少し言い過ぎたよ。君が1人で行ってしまったのが面白くなくて…ちょっと大人げなかったね。ごめんね」

 優しく私の頭を撫でてくれるセシル様。その眼差しが、なんだかお兄様みたいだ。

「それじゃあ、行こうか。ボートも準備してあるから、早速乗ってみよう」

「ボートですか?嬉しいですわ、私、ボートに乗った事が無くて。色々と手配してくださって、ありがとうございます。それでは参りましょう」

 また暴走してセシル様にご迷惑をかけないように、今度はセシル様の手をしっかり握る。そして2人でボートに乗り込んだ。ボートといっても、とても広くて快適だ。男性がゆっくりと漕いでくれる。

「とても綺麗な湖ですね。底が透き通って見えますわ。セシル様、見て下さい。お魚が泳いでいます。私、生きたお魚を見たのは初めてですわ。可愛いですね。こんな可愛らしい姿を見たら、もう食べられなくなってしまいますわ」

「そうだね、とても可愛い魚たちだね」

「そうでしょうって、あら?」

 なぜか全く湖を見ずに、私の方を見ていたセシル様。どうしたのかしら?

「私の顔に何か付いていますか?」

 意味が分からず、コテンと首を傾げた。

「いや、俺は湖よりも、君を見ている方が楽しいから。ソフィーナ嬢は、表情がコロコロ変わるから、見ていて全く飽きないよ」

 そう言って笑ったセシル様。

「もう、私をからかわないで下さい」

「ごめんね、でも、そういうところが可愛くてね」

 すぐにそう言ってからかうのだから!
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