前世の記憶を取り戻した元クズ令嬢は毎日が楽しくてたまりません

Karamimi

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第65話:まあいいか

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「殿下、ご祝福ありがとうございます。殿下とソフィーナ様も、近々婚約を結ぶのでしょう。殿下の想いが、やっとソフィーナ様に届いてよかったですわね」

 大きな声で、ソラ様がその様な話をしたのだ。その瞬間、一気に周りがざわつく。

 “やっぱり殿下は、ソフィーナ様と婚約を結ぶのね”

 “ソフィーナ様と殿下、とてもお似合いですもの。それにまともになったソフィーナ様なら、きっと素敵な王妃殿下になられますわ”

 “これはめでたいですわね”

 そういった声が聞こえてくる。まだ内緒のはずなのに、まずいわ!そう思ったのだが、ファラオ様は満足顔だ。

「ソフィーナ、約束通り、僕とダンスを踊ってくれるかい?」

「ええ、もちろんですが…その…皆様私たちの事を噂しておりますが、よろしいのですか?」

「気にする事はない。実際に僕たちは、正式に婚約をする事が決まっているのだから。それじゃあソラ嬢、ルドルフ殿、僕たちは失礼するよ」

 大きな声でファラオ様が、ソラ様とルドルフ様に挨拶をしたのだ。これで完全に、私たちが婚約を結ぶことが、皆に知られただろう。まあ、別に私は構わないが。後でお父様たちに怒られないかしら?

 考えてもバレてしまったものは、仕方がないか。せっかくファラオ様とダンスを踊れるのだから、今は目いっぱい楽しまないと。

「ソフィーナはダンスが上手だね。それにとても楽しそうに踊るね。僕まで楽しくなってくるよ」

「私、ダンスを踊るが大好きなのです。こうやって自由に踊れることが、なんだか嬉しくて。ファラオ様、回ってもいいですか?」

「ああ、もちろんだよ。好きな様に踊るといい。僕が全て受け止めてあげるから」

 それではお言葉に甘えて。

 いつもの様に、くるくると回りながら踊る。やっぱりダンスは、楽しいわ。どうしてこんなに楽しいのかしら?

 あっと言う間に1曲目が終わってしまったのだ。

「せっかくだから、もう1曲踊ろうか?」

「ええ、もちろん…」

「ソフィーナ嬢、今度は俺と踊ろう」

「その次は俺とも踊ってね」

 この声は…

「アレック、セシル。君たちは何を言っているのだい?そうか、君たちは知らないのだね。僕とソフィーナは、正式に婚約を結ぶことになったんだ」

「その話なら知っているよ。王宮で話し合いが行われる午前中に、わざわざ俺たちの家に来てくれて、話しをしてくれたからね。本当にソフィーナ嬢は、律儀な子だよ」

「そうそう。本当にいい子だよな。ファラオには勿体ないくらいだ。だからこそ、これからも俺たちは、ソフィーナ嬢の良き相談相手として、仲良くしていきたいと思っているのだよ。ソフィーナ嬢も受け入れてくれたしね」

 そう言うと、私の手を握ったセシル様。

「ソフィーナ、どういう事だい?僕に内緒で、2人に会いに行ったのかい?」

「それはお2人にきちんと気持ちを伝えたくて、それで…」

「まあまあ、いいじゃないか。ソフィーナ嬢は、ファラオと婚約を結ぶことが決まったのだろう?これからずっと、ファラオが一人占めできるのだから、ダンス位いいよね。さあ行こう、ソフィーナ嬢」

「おい、セシル。ふざけるな。ソフィーナ、戻ってこい」

「固い事を言うなよ。さあ、ファラオはこっちで俺たちと話をしよう」

 笑顔でお兄様とアレック様が、ファラオ様を連れていってしまった。

「邪魔者もいなくなったし、ゆっくりダンスを踊ろう。ダンスは別にパートナー意外と踊っても問題ないからね」

 笑顔のセシル様。確かにセシル様の言う通り、別に他の殿方と踊っても問題ない。それに今更断れないし、まあいいか。

 せっかくなので、目いっぱいセシル様とダンスを楽しんだのだった。
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