5 / 53
第5話:なぜごねるのですか?
お父様もお母様も、ホッと胸をなでおろしている。出来ればディノス侯爵家と、あまり揉めたくないのだろう。穏便に済ませるのが、一番だものね。
「それでは早速、婚約破棄届の紙にサインを…」
「待って下さい!どうして勝手に話しを進めるのですか?どうして僕とジャンヌが、婚約破棄をしないといけないのですか?僕は絶対に嫌です。婚約破棄なんてしません!」
ん?今なんて言った?
ビックリしてシャーロン様の方を皆が向いた。いつも穏やかなシャーロン様が、こんな風に大声を出すなんて。
「シャーロン殿、あなたは娘を嫌っているのですよね。妻から聞きましたが、夜会などに参加しても、娘の事は知らん顔で、いつも令嬢たちと仲良く過ごしているそうではありませんか。申し訳ございませんが、娘を大切にしない男に、私の可愛いジャンヌを差し上げる事は出来ません!」
鬼の騎士団長と言われているお父様の気迫に押されたディノス侯爵と夫人が、固まっている。シャーロン様も顔を引きつらせていた。ただ、次の瞬間、シャーロン様と目があったのだ。すると
「ジャンヌ、君は僕を捨てたりしないよね。僕と婚約した時、言ってくれたじゃないか。“シャーロン様にふさわしい令嬢になれる様に頑張ります”って。そうだ、いくら騎士団長が僕たちの仲を引き裂こうとしても無駄だよ。そもそもちょっとジャンヌに冷たくしたくらいで、婚約破棄なんて出来る訳がない。そうだろう?ジャンヌ。君は今でも僕を愛してくれて…」
「…いません…」
「え?」
「だから私は、あなた様の事を愛してなどいません!確かについ最近まで、あなた様をお慕いしておりましたわ。でも、この写真を見た瞬間、百年の恋も一気に冷めたのです。私は不貞を働く男は大嫌いです!そもそもあなた様は、私の事をずっと避けていましたよね。もしかして、私を苦しませて喜ぶタイプの人間なのですか?それなら尚更願い下げですわ!」
あまりにも頭に来たので、あの写真を机の上に置いた。あれだけ私を避けていたのに、どうして婚約破棄するのを嫌がるのよ!本当に理解できないわ!
「この写真は…シャーロン、お前はなんて事を…」
「どうしてこんな写真が…違う…何かの間違いだ。だってあの場所には、当事者しかいなかったはずだ。誰が一体こんな写真を…ジャンヌ、この写真は一体どこで手に入れたのだい?」
「この写真は、匿名の方から届いたお手紙の中に入っておりましたの。当事者しかいらっしゃらなかったのでしたら、ここに写っていらっしゃる誰かが、私に手紙を送って来たのでしょうね。まあ、誰が送っていらしたものでも、私には関係ありませんが」
にっこり微笑んで、そう答えてやった。
「シャーロン殿、この写真を見てもまだ、ジャンヌとの婚約破棄を認めないつもりですか?不貞行為は立派な婚約破棄理由になります。どうしても嫌だとおっしゃるのなら、こちらはこの写真を証拠に、裁判をしてもよろしいのですよ」
「マリアーズ伯爵、お待ちください。裁判だなんて。婚約破棄します、それに慰謝料も支払います。ですので、どうか穏便に」
ディノス侯爵が必死に訴えている。
「父上、僕はジャンヌと婚約破棄はしません。こんな写真で脅してくるだなんて。それに僕は、彼女たちとは単なる遊びだったんだ。決して本気ではない。僕が愛しているのは、ジャンヌだけだ。ジャンヌ、僕が悪かったよ。ちょっとした軽い気持ちだったんだ。これからはジャンヌの事を大切に…」
「いい加減にしてくださいませ!どこまで私をバカにすれば、気が済むのですか?単なる遊び?あなた様は、好きでもない人と、口づけをしたり抱き合ったりできるのですね。でも私は、そんな人は無理です!はっきり言って、気持ち悪いですわ。シャーロン様、このまま婚約破棄を受け入れていただければ、あなた様の不貞は黙っています。慰謝料もいりません。お互い話し合って穏便に婚約破棄したという事で構いません。でも、これ以上抵抗するのであれば、その時はこの写真を証拠に、裁判を起こしますわ!」
「ジャンヌ、何を言っているのだい?それじゃあ、ジャンヌが報われないじゃないか?きちんと不貞行為を行った事を、皆に公表すべきだ」
「お言葉ですがお父様、その様な事をして、シャーロン様の評価を下げても、私は何も嬉しくはありません。それに私は、婚約破棄出来ればこれ以上何も望みません!」
正直貴族社会で何を言われようと、もうどうでもいい。それにわざわざシャーロン様の評価を下げる必要もないと思っている。とにかく私は、一刻も早く婚約破棄して、自由になりたいのだ。
「ジャンヌの気持ちは分かった。シャーロン殿、あなたの名誉のためにも、この場で婚約破棄をなさってください。どのみちこちらには証拠があるのです。全てを公にして、裁判をしたとしても、あなたが裁判で勝てる見込みはありませんよ」
「シャーロン、もう婚約破棄するしか道は残されていない。いい加減腹をくくりなさい」
「そうよ、あなたの為にも今、婚約破棄をするべきだわ」
ディノス侯爵夫妻も、必死にシャーロン様に訴えている。ただ、シャーロン様は俯き、拳を強く握って動かない。往生際の悪い男ね。
「それでは早速、婚約破棄届の紙にサインを…」
「待って下さい!どうして勝手に話しを進めるのですか?どうして僕とジャンヌが、婚約破棄をしないといけないのですか?僕は絶対に嫌です。婚約破棄なんてしません!」
ん?今なんて言った?
ビックリしてシャーロン様の方を皆が向いた。いつも穏やかなシャーロン様が、こんな風に大声を出すなんて。
「シャーロン殿、あなたは娘を嫌っているのですよね。妻から聞きましたが、夜会などに参加しても、娘の事は知らん顔で、いつも令嬢たちと仲良く過ごしているそうではありませんか。申し訳ございませんが、娘を大切にしない男に、私の可愛いジャンヌを差し上げる事は出来ません!」
鬼の騎士団長と言われているお父様の気迫に押されたディノス侯爵と夫人が、固まっている。シャーロン様も顔を引きつらせていた。ただ、次の瞬間、シャーロン様と目があったのだ。すると
「ジャンヌ、君は僕を捨てたりしないよね。僕と婚約した時、言ってくれたじゃないか。“シャーロン様にふさわしい令嬢になれる様に頑張ります”って。そうだ、いくら騎士団長が僕たちの仲を引き裂こうとしても無駄だよ。そもそもちょっとジャンヌに冷たくしたくらいで、婚約破棄なんて出来る訳がない。そうだろう?ジャンヌ。君は今でも僕を愛してくれて…」
「…いません…」
「え?」
「だから私は、あなた様の事を愛してなどいません!確かについ最近まで、あなた様をお慕いしておりましたわ。でも、この写真を見た瞬間、百年の恋も一気に冷めたのです。私は不貞を働く男は大嫌いです!そもそもあなた様は、私の事をずっと避けていましたよね。もしかして、私を苦しませて喜ぶタイプの人間なのですか?それなら尚更願い下げですわ!」
あまりにも頭に来たので、あの写真を机の上に置いた。あれだけ私を避けていたのに、どうして婚約破棄するのを嫌がるのよ!本当に理解できないわ!
「この写真は…シャーロン、お前はなんて事を…」
「どうしてこんな写真が…違う…何かの間違いだ。だってあの場所には、当事者しかいなかったはずだ。誰が一体こんな写真を…ジャンヌ、この写真は一体どこで手に入れたのだい?」
「この写真は、匿名の方から届いたお手紙の中に入っておりましたの。当事者しかいらっしゃらなかったのでしたら、ここに写っていらっしゃる誰かが、私に手紙を送って来たのでしょうね。まあ、誰が送っていらしたものでも、私には関係ありませんが」
にっこり微笑んで、そう答えてやった。
「シャーロン殿、この写真を見てもまだ、ジャンヌとの婚約破棄を認めないつもりですか?不貞行為は立派な婚約破棄理由になります。どうしても嫌だとおっしゃるのなら、こちらはこの写真を証拠に、裁判をしてもよろしいのですよ」
「マリアーズ伯爵、お待ちください。裁判だなんて。婚約破棄します、それに慰謝料も支払います。ですので、どうか穏便に」
ディノス侯爵が必死に訴えている。
「父上、僕はジャンヌと婚約破棄はしません。こんな写真で脅してくるだなんて。それに僕は、彼女たちとは単なる遊びだったんだ。決して本気ではない。僕が愛しているのは、ジャンヌだけだ。ジャンヌ、僕が悪かったよ。ちょっとした軽い気持ちだったんだ。これからはジャンヌの事を大切に…」
「いい加減にしてくださいませ!どこまで私をバカにすれば、気が済むのですか?単なる遊び?あなた様は、好きでもない人と、口づけをしたり抱き合ったりできるのですね。でも私は、そんな人は無理です!はっきり言って、気持ち悪いですわ。シャーロン様、このまま婚約破棄を受け入れていただければ、あなた様の不貞は黙っています。慰謝料もいりません。お互い話し合って穏便に婚約破棄したという事で構いません。でも、これ以上抵抗するのであれば、その時はこの写真を証拠に、裁判を起こしますわ!」
「ジャンヌ、何を言っているのだい?それじゃあ、ジャンヌが報われないじゃないか?きちんと不貞行為を行った事を、皆に公表すべきだ」
「お言葉ですがお父様、その様な事をして、シャーロン様の評価を下げても、私は何も嬉しくはありません。それに私は、婚約破棄出来ればこれ以上何も望みません!」
正直貴族社会で何を言われようと、もうどうでもいい。それにわざわざシャーロン様の評価を下げる必要もないと思っている。とにかく私は、一刻も早く婚約破棄して、自由になりたいのだ。
「ジャンヌの気持ちは分かった。シャーロン殿、あなたの名誉のためにも、この場で婚約破棄をなさってください。どのみちこちらには証拠があるのです。全てを公にして、裁判をしたとしても、あなたが裁判で勝てる見込みはありませんよ」
「シャーロン、もう婚約破棄するしか道は残されていない。いい加減腹をくくりなさい」
「そうよ、あなたの為にも今、婚約破棄をするべきだわ」
ディノス侯爵夫妻も、必死にシャーロン様に訴えている。ただ、シャーロン様は俯き、拳を強く握って動かない。往生際の悪い男ね。
あなたにおすすめの小説
奪われる人生とはお別れします 婚約破棄の後は幸せな日々が待っていました
水空 葵
恋愛
婚約者だった王太子殿下は、最近聖女様にかかりっきりで私には見向きもしない。
それなのに妃教育と称して仕事を押し付けてくる。
しまいには建国パーティーの時に婚約解消を突き付けられてしまった。
王太子殿下、それから私の両親。今まで尽くしてきたのに、裏切るなんて許せません。
でも、これ以上奪われるのは嫌なので、さっさとお別れしましょう。
◇2024/2/5 HOTランキング1位に掲載されました。
◇第17回 恋愛小説大賞で6位&奨励賞を頂きました。
◇レジーナブックスより書籍発売中です!
本当にありがとうございます!
【完結】愛され令嬢は、死に戻りに気付かない
かまり
恋愛
公爵令嬢エレナは、婚約者の王子と聖女に嵌められて処刑され、死に戻るが、
それを夢だと思い込んだエレナは考えなしに2度目を始めてしまう。
しかし、なぜかループ前とは違うことが起きるため、エレナはやはり夢だったと確信していたが、
結局2度目も王子と聖女に嵌められる最後を迎えてしまった。
3度目の死に戻りでエレナは聖女に勝てるのか?
聖女と婚約しようとした王子の目に、涙が見えた気がしたのはなぜなのか?
そもそも、なぜ死に戻ることになったのか?
そして、エレナを助けたいと思っているのは誰なのか…
色んな謎に包まれながらも、王子と幸せになるために諦めない、
そんなエレナの逆転勝利物語。
【完結】時戻り令嬢は復讐する
やまぐちこはる
恋愛
ソイスト侯爵令嬢ユートリーと想いあう婚約者ナイジェルス王子との結婚を楽しみにしていた。
しかしナイジェルスが長期の視察に出た数日後、ナイジェルス一行が襲撃された事を知って倒れたユートリーにも魔の手が。
自分の身に何が起きたかユートリーが理解した直後、ユートリーの命もその灯火を消した・・・と思ったが、まるで悪夢を見ていたように目が覚める。
夢だったのか、それともまさか時を遡ったのか?
迷いながらもユートリーは動き出す。
サスペンス要素ありの作品です。
設定は緩いです。
6時と18時の一日2回更新予定で、全80話です、よろしくお願い致します。
【完結】私を忘れた貴方と、貴方を忘れた私の顛末
コツメカワウソ
恋愛
ローウェン王国西方騎士団で治癒師として働くソフィアには、魔導騎士の恋人アルフォンスがいる。
平民のソフィアと子爵家三男のアルフォンスは身分差があり、周囲には交際を気に入らない人間もいるが、それでも二人は幸せな生活をしていた。
そんな中、先見の家門魔法により今年が23年ぶりの厄災の年であると告げられる。
厄災に備えて準備を進めるが、そんな中アルフォンスは魔獣の呪いを受けてソフィアの事を忘れ、魔力を奪われてしまう。
アルフォンスの魔力を取り戻すために禁術である魔力回路の治癒を行うが、その代償としてソフィア自身も恋人であるアルフォンスの記憶を奪われてしまった。
お互いを忘れながらも対外的には恋人同士として過ごす事になるが…。
番外編始めました。
世界観は緩めです。
ご都合主義な所があります。
誤字脱字は随時修正していきます。
愛しているなら何でもできる? どの口が言うのですか
風見ゆうみ
恋愛
「君のことは大好きだけど、そういうことをしたいとは思えないんだ」
初夜の晩、爵位を継いで伯爵になったばかりの夫、ロン様は私を寝室に置いて自分の部屋に戻っていった。
肉体的に結ばれることがないまま、3ヶ月が過ぎた頃、彼は私の妹を連れてきて言った。
「シェリル、落ち着いて聞いてほしい。ミシェルたちも僕たちと同じ状況らしいんだ。だから、夜だけパートナーを交換しないか?」
「お姉様が生んだ子供をわたしが育てて、わたしが生んだ子供をお姉様が育てれば血筋は途切れないわ」
そんな提案をされた私は、その場で離婚を申し出た。
でも、夫は絶対に別れたくないと離婚を拒み、両親や義両親も夫の味方だった。
※独特の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。
いくら政略結婚だからって、そこまで嫌わなくてもいいんじゃないですか?いい加減、腹が立ってきたんですけど!
夢呼
恋愛
伯爵令嬢のローゼは大好きな婚約者アーサー・レイモンド侯爵令息との結婚式を今か今かと待ち望んでいた。
しかし、結婚式の僅か10日前、その大好きなアーサーから「私から愛されたいという思いがあったら捨ててくれ。それに応えることは出来ない」と告げられる。
ローゼはその言葉にショックを受け、熱を出し寝込んでしまう。数日間うなされ続け、やっと目を覚ました。前世の記憶と共に・・・。
愛されることは無いと分かっていても、覆すことが出来ないのが貴族間の政略結婚。日本で生きたアラサー女子の「私」が八割心を占めているローゼが、この政略結婚に臨むことになる。
いくら政略結婚といえども、親に孫を見せてあげて親孝行をしたいという願いを持つローゼは、何とかアーサーに振り向いてもらおうと頑張るが、鉄壁のアーサーには敵わず。それどころか益々嫌われる始末。
一体私の何が気に入らないんだか。そこまで嫌わなくてもいいんじゃないんですかね!いい加減腹立つわっ!
世界観はゆるいです!
カクヨム様にも投稿しております。
※10万文字を超えたので長編に変更しました。
元カレの今カノは聖女様
abang
恋愛
「イブリア……私と別れて欲しい」
公爵令嬢 イブリア・バロウズは聖女と王太子の愛を妨げる悪女で社交界の嫌われ者。
婚約者である王太子 ルシアン・ランベールの関心は、品行方正、心優しく美人で慈悲深い聖女、セリエ・ジェスランに奪われ王太子ルシアンはついにイブリアに別れを切り出す。
極め付けには、王妃から嫉妬に狂うただの公爵令嬢よりも、聖女が婚約者に適任だと「ルシアンと別れて頂戴」と多額の手切れ金。
社交会では嫉妬に狂った憐れな令嬢に"仕立てあげられ"周りの人間はどんどんと距離を取っていくばかり。
けれども当の本人は…
「悲しいけれど、過ぎればもう過去のことよ」
と、噂とは違いあっさりとした様子のイブリア。
それどころか自由を謳歌する彼女はとても楽しげな様子。
そんなイブリアの態度がルシアンは何故か気に入らない様子で…
更には婚約破棄されたイブリアの婚約者の座を狙う王太子の側近達。
「私をあんなにも嫌っていた、聖女様の取り巻き達が一体私に何の用事があって絡むの!?嫌がらせかしら……!」
【完結】私を裏切った最愛の婚約者の幸せを願って身を引く事にしました。
Rohdea
恋愛
和平の為に、長年争いを繰り返していた国の王子と愛のない政略結婚する事になった王女シャロン。
休戦中とはいえ、かつて敵国同士だった王子と王女。
てっきり酷い扱いを受けるとばかり思っていたのに婚約者となった王子、エミリオは予想とは違いシャロンを温かく迎えてくれた。
互いを大切に想いどんどん仲を深めていく二人。
仲睦まじい二人の様子に誰もがこのまま、平和が訪れると信じていた。
しかし、そんなシャロンに待っていたのは祖国の裏切りと、愛する婚約者、エミリオの裏切りだった───
※初投稿作『私を裏切った前世の婚約者と再会しました。』
の、主人公達の前世の物語となります。
こちらの話の中で語られていた二人の前世を掘り下げた話となります。
❋注意❋ 二人の迎える結末に変更はありません。ご了承ください。