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第43話:ダーウィン様の怒りと悲しみ
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「今、なんて?」
「父は今、非常に危険な状態です。父にもしもの事があったら、公爵家を維持していく事は不可能でしょう。私自身も、父という後ろ盾を無くしてしまいます。そんな私と結婚しても、ダーウィン様が苦労するだけです。きっと他の貴族たちも黙っていないでしょう。もしかしたら、またジョーン殿下を次の国王にという話が出るかもしれません。私は、ダーウィン様には幸せになって欲しいのです」
真っすぐダーウィン様を見つめ、はっきりと告げた。私がダーウィン様の傍にいる事で、彼が苦労するのなら、私は喜んで彼の傍から離れよう。あの日決めたのだ、彼を必ず幸せにすると。
たとえダーウィン様の傍にいられなくても、彼が幸せなら私は本望だ。
「要するに、僕の為に君は自ら身を引くと言いたいのかい?」
「私はあなた様の為に身を引くとは言っておりませんわ。ただ…これ以上ダーウィン様にご迷惑をかけたくはないのです。私は公爵令嬢として、綺麗に身を引きたいのです。ただ、公爵家で働いていた使用人たちだけは、どうか面倒を見てあげてください。我が家に尽くしてくれた彼らが、路頭に迷わない様に」
せめて今まで尽くしてくれた使用人だけは、面倒を見てあげて欲しい。
「それで僕と婚約を解消したら、君はどうするつもりだい?まさかジョーンの元にでも行くのかい?」
「まさか、私は絶対にジョーン殿下の元にはいきませんわ。これでも私は公爵令嬢です。ある程度の資金はありますので、何とか暮らしていきますわ。ですから、どうか…」
「シャレル、それ以上口を開くのは止めてくれるかい?これ以上ふざけた事を言われると、さすがの僕も怒りを爆発させそうだ。こんなに怒りを覚えたのは初めてだよ。まさかここにきて、君に捨てられそうになるだなんてね…」
「私はダーウィン様を捨てようなどと…」
「僕はね、もう君無しでは生きていけない程、シャレルを愛している。シャレル、昔言ったよね。たとえ僕が平民になっても、ずっと傍にいてくれると。あの言葉は、嘘だったのかい?」
「嘘ではありませんわ。私はダーウィン様の為なら、平民にでもなる覚悟です」
「僕も同じ気持ちだよ!君の為なら、王太子の座なんていらない。シャレルさえいてくれたら、僕は…」
ポロポロと涙を流すダーウィン様。
「僕は君が傍にいてくれるだけで、それだけでいい。もし君を僕の婚約者としてふさわしくないというものが現れたら、その時は僕は王太子の座をジョーンに譲るよ。だから、どうか僕を捨てないでくれ…」
「ダーウィン様…」
「シャレルの嘘つき。僕の傍にいてくれると言ったじゃないか。結局シャレルは、僕の事を捨てるのだろう。いつもいつも、僕の傍にいる、僕を幸せにすると言っていたのに。結局シャレルは、僕の気持ちなんて考えてくれていないじゃないか!僕が本当に、そんな事を望んでいると思っていたのかい?ふざけないでくれ!」
いつも穏やかなダーウィン様が、泣きながら声を荒げたのだ。怒りからか、拳を強く握り、震えている。
こんなに怒りをあらわにしたダーウィン様は、初めて見た。
「あの…私は…」
「いいかい、シャレル。僕はシャレルの為なら、平民にだってなるよ。だからどうか、僕を捨てないでくれ!頼む」
ダーウィン様が強く私を抱きしめたのだ。
「私は、ダーウィン様に幸せになって欲しいのです。だから…」
「幸せになって欲しいのなら、二度とこんな事を口にしないでくれ。僕は君がいないと生きていけない。君が僕の傍を去るときは、僕も王宮を去るという事だ。いいかい、それだけは覚えておいてくれ。僕には君が必要なんだ。二度と婚約を解消するだなんて、言わない事。この約束だけは、絶対に守って欲しい」
「ダーウィン様、私…」
「それに今、公爵は生きるために必死に治療を受けているのだよ。娘の君が、最悪な事態を想定してどうするのだよ。本当にシャレルは」
「ごめんなさい。私、つい先走ってしまって…私はダメですね。いつもいつも、自分の事ばかりで…」
「そうだね、君はいつも、僕の事を考えて行動してくれる。でも、その行動が間違っている事もあるのだよ。君が僕の事を考えてくれるのは分かっている。でも、勝手に僕の幸せはこうだろうと決めつけるのはやめてくれ!僕が幸せかどうかは、僕が決める事だろう?
もし僕が王太子を廃嫡され、僕が君の為に姿を消したらどうする?君の為を思って、僕が君の傍からいなくなったら、君は嬉しいかい?」
「嬉しい訳がありませんわ。たとえあなた様が廃嫡されても、ずっと傍にいたいです」
「僕だって同じだよ。だから勝手に僕の為に身を引こうとした事に、僕はものすごく怒りを覚えたと同時に、とても悲しかった。こんなに悲しくて悔しくて怒りを覚えたのは、初めてだ!」
「ごめんなさい、私…本当にごめんなさい」
ダーウィン様に抱き着きながら、必死に謝った。私が間違っていた、こんなにもダーウィン様を怒らせ、悲しませてしまっただなんて。
「悪いと思っているのなら、二度とこんな事を言わないで欲しい。分かったね?」
「分かりましたわ、ごめんなさい。本当にごめんなさい」
溢れる涙を堪える事が出来ずに、人目も気にせずワーワー泣いた。そんな私を抱きしめたダーウィン様も泣いていた。私、本当にバカね。ダーウィン様の気持ちも考えずに、先走って。
もう二度と、ダーウィン様を悲しませるような事はいない。そう心に誓ったのだった。
「父は今、非常に危険な状態です。父にもしもの事があったら、公爵家を維持していく事は不可能でしょう。私自身も、父という後ろ盾を無くしてしまいます。そんな私と結婚しても、ダーウィン様が苦労するだけです。きっと他の貴族たちも黙っていないでしょう。もしかしたら、またジョーン殿下を次の国王にという話が出るかもしれません。私は、ダーウィン様には幸せになって欲しいのです」
真っすぐダーウィン様を見つめ、はっきりと告げた。私がダーウィン様の傍にいる事で、彼が苦労するのなら、私は喜んで彼の傍から離れよう。あの日決めたのだ、彼を必ず幸せにすると。
たとえダーウィン様の傍にいられなくても、彼が幸せなら私は本望だ。
「要するに、僕の為に君は自ら身を引くと言いたいのかい?」
「私はあなた様の為に身を引くとは言っておりませんわ。ただ…これ以上ダーウィン様にご迷惑をかけたくはないのです。私は公爵令嬢として、綺麗に身を引きたいのです。ただ、公爵家で働いていた使用人たちだけは、どうか面倒を見てあげてください。我が家に尽くしてくれた彼らが、路頭に迷わない様に」
せめて今まで尽くしてくれた使用人だけは、面倒を見てあげて欲しい。
「それで僕と婚約を解消したら、君はどうするつもりだい?まさかジョーンの元にでも行くのかい?」
「まさか、私は絶対にジョーン殿下の元にはいきませんわ。これでも私は公爵令嬢です。ある程度の資金はありますので、何とか暮らしていきますわ。ですから、どうか…」
「シャレル、それ以上口を開くのは止めてくれるかい?これ以上ふざけた事を言われると、さすがの僕も怒りを爆発させそうだ。こんなに怒りを覚えたのは初めてだよ。まさかここにきて、君に捨てられそうになるだなんてね…」
「私はダーウィン様を捨てようなどと…」
「僕はね、もう君無しでは生きていけない程、シャレルを愛している。シャレル、昔言ったよね。たとえ僕が平民になっても、ずっと傍にいてくれると。あの言葉は、嘘だったのかい?」
「嘘ではありませんわ。私はダーウィン様の為なら、平民にでもなる覚悟です」
「僕も同じ気持ちだよ!君の為なら、王太子の座なんていらない。シャレルさえいてくれたら、僕は…」
ポロポロと涙を流すダーウィン様。
「僕は君が傍にいてくれるだけで、それだけでいい。もし君を僕の婚約者としてふさわしくないというものが現れたら、その時は僕は王太子の座をジョーンに譲るよ。だから、どうか僕を捨てないでくれ…」
「ダーウィン様…」
「シャレルの嘘つき。僕の傍にいてくれると言ったじゃないか。結局シャレルは、僕の事を捨てるのだろう。いつもいつも、僕の傍にいる、僕を幸せにすると言っていたのに。結局シャレルは、僕の気持ちなんて考えてくれていないじゃないか!僕が本当に、そんな事を望んでいると思っていたのかい?ふざけないでくれ!」
いつも穏やかなダーウィン様が、泣きながら声を荒げたのだ。怒りからか、拳を強く握り、震えている。
こんなに怒りをあらわにしたダーウィン様は、初めて見た。
「あの…私は…」
「いいかい、シャレル。僕はシャレルの為なら、平民にだってなるよ。だからどうか、僕を捨てないでくれ!頼む」
ダーウィン様が強く私を抱きしめたのだ。
「私は、ダーウィン様に幸せになって欲しいのです。だから…」
「幸せになって欲しいのなら、二度とこんな事を口にしないでくれ。僕は君がいないと生きていけない。君が僕の傍を去るときは、僕も王宮を去るという事だ。いいかい、それだけは覚えておいてくれ。僕には君が必要なんだ。二度と婚約を解消するだなんて、言わない事。この約束だけは、絶対に守って欲しい」
「ダーウィン様、私…」
「それに今、公爵は生きるために必死に治療を受けているのだよ。娘の君が、最悪な事態を想定してどうするのだよ。本当にシャレルは」
「ごめんなさい。私、つい先走ってしまって…私はダメですね。いつもいつも、自分の事ばかりで…」
「そうだね、君はいつも、僕の事を考えて行動してくれる。でも、その行動が間違っている事もあるのだよ。君が僕の事を考えてくれるのは分かっている。でも、勝手に僕の幸せはこうだろうと決めつけるのはやめてくれ!僕が幸せかどうかは、僕が決める事だろう?
もし僕が王太子を廃嫡され、僕が君の為に姿を消したらどうする?君の為を思って、僕が君の傍からいなくなったら、君は嬉しいかい?」
「嬉しい訳がありませんわ。たとえあなた様が廃嫡されても、ずっと傍にいたいです」
「僕だって同じだよ。だから勝手に僕の為に身を引こうとした事に、僕はものすごく怒りを覚えたと同時に、とても悲しかった。こんなに悲しくて悔しくて怒りを覚えたのは、初めてだ!」
「ごめんなさい、私…本当にごめんなさい」
ダーウィン様に抱き着きながら、必死に謝った。私が間違っていた、こんなにもダーウィン様を怒らせ、悲しませてしまっただなんて。
「悪いと思っているのなら、二度とこんな事を言わないで欲しい。分かったね?」
「分かりましたわ、ごめんなさい。本当にごめんなさい」
溢れる涙を堪える事が出来ずに、人目も気にせずワーワー泣いた。そんな私を抱きしめたダーウィン様も泣いていた。私、本当にバカね。ダーウィン様の気持ちも考えずに、先走って。
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