国民的アイドルは乙女ゲームのヒロインに転生したようです~婚約破棄の後は魔物公爵に嫁げ?えー、何でよ?!

むぎてん

文字の大きさ
12 / 38

12 寝言 ~レオナルド・ボンディング視点

しおりを挟む
        
~レオナルド目線


「レオナルド様の手は安心します。もっと触ってください」


足先まで電気が流れる。

甘い痺れが俺を溶かす。

手のひらにキスをした。

君はそれを嫌がることなく受け入れて、その手を頬に当てた。

ほら、またそうやって君は俺を勘違いさせる。


君の唇は柔らかく、暖かかった。

愛してる。
リリア、愛しているんだ。

俺はもう、君を解放してやれない。
たとえ俺の勘違いだとしても、一年後、君が俺との婚姻を嫌がっても。

この屋敷に、この部屋に君を閉じ込めて逃がさない。

こうやって、手を繋いだまま静かな寝息をたてる君を見ている。

誰にも渡さない。
俺だけのリリア。


「・・・・・ま・・・しゅう」

眠っているリリアが可愛い寝言を呟いた。
本当に、あのぬいぐるみがお気に入りなんだな。

「摩周・・・・どこにいるの?摩周、私のそばにいて。私から離ないで」


俺はクスリと笑ってマシューをリリアに差し出した。

リリアは虚ろな瞳をうっすらと開けて、しかしマシューには見向きもせずに俺に問う。

「ねえ、あなた、摩周を知らない?私は摩周がいないと生きて行けないの」


マシューがいなければ生きて行けない


「摩周、どこ?私から離れないで、私のそばにいて。どうして?どこにも行かないって約束した。ずっと手を離さないって、抱き締めてるって約束した!どうして、どうして、どうして!!」


マシューは・・・・・・ぬいぐるみじゃない?
ぬいぐるみに『マシュー』を重ねている?

「トーマス、早く迎えに来て・・・・・・」

そう呟いたリリアは、しばらくぼんやりと宙を見つめたあと、また静かに眠った。


・・・・・・トーマス

俺は何故気づかなかった?
マシューはトーマスの愛称だ。
トーマスがマシューなのか!!

駄目だ!!リリアは俺のものだ。
渡さない。
リリアを裏切るようなあんな男には渡さない!
誰であろうと、リリアは渡さない!!!



「‥‥‥ドさま、レオナルド様?」

「リ・・・・リア」

「私、すっかり眠っていたみたいで・・・・・・ずっと手を繋いでいてくださったのですか?」

「あ、ああ」

「あわわ!は、恥ずかしいです!私、涎とか垂らしたりしていませんよね?!」

慌てて真っ赤になるリリア。

「でも、久しぶりにぐっすり眠ったような気がします。レオナルド様、ありがとうございます」


久しぶりに?
ずっと眠れていないのか?
マシューが・・・・・・トーマスがそばにいないから?



俺では駄目なのか!!!!!



「レオナルド様?ごめんなさい、疲れましたか?そんなに長く眠ったつもりはなかったのですけど・・・・・・」

リリアの声に、弾かれるように正気に戻った。

「い、いや、大丈夫だ。君がよく眠れたならそばにいた甲斐があった。俺は疲れたりしない」

リリアが嬉しそうに微笑んだ。

これでいい。
リリアはここにいる。
離さない。
君が俺ではない誰かを、マシューを、トーマスを求めているのだとしても。

ずっとここで、俺の隣に。

離さない、永遠に・・・・・・


────────────────────
 13 国王 ~トーマス目線 へ

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

【完結】地下牢同棲は、溺愛のはじまりでした〜ざまぁ後の優雅な幽閉ライフのつもりが、裏切り者が押しかけてきた〜

うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
悪役令嬢の役割を終えて、優雅な幽閉ライフの始まりだ!! と思ったら、なぜか隣の牢との間の壁が崩壊した。 その先にいたのは、悪役令嬢時代に私を裏切った男──ナザトだった。 一緒に脱獄しようと誘われるけど、やっと手に入れた投獄スローライフを手放す気はない。 断れば、ナザトは「一緒に逃げようかと思ったけど、それが嫌なら同棲だな」と言い、問答無用で幽閉先の地下牢で同棲が開始されたのだった。 全4話です。

逃げたい悪役令嬢と、逃がさない王子

ねむたん
恋愛
セレスティーナ・エヴァンジェリンは今日も王宮の廊下を静かに歩きながら、ちらりと視線を横に流した。白いドレスを揺らし、愛らしく微笑むアリシア・ローゼンベルクの姿を目にするたび、彼女の胸はわずかに弾む。 (その調子よ、アリシア。もっと頑張って! あなたがしっかり王子を誘惑してくれれば、私は自由になれるのだから!) 期待に満ちた瞳で、影からこっそり彼女の奮闘を見守る。今日こそレオナルトがアリシアの魅力に落ちるかもしれない——いや、落ちてほしい。

【完結】前提が間違っています

蛇姫
恋愛
【転生悪役令嬢】は乙女ゲームをしたことがなかった 【転生ヒロイン】は乙女ゲームと同じ世界だと思っていた 【転生辺境伯爵令嬢】は乙女ゲームを熟知していた 彼女たちそれぞれの視点で紡ぐ物語 ※不定期更新です。長編になりそうな予感しかしないので念の為に変更いたしました。【完結】と明記されない限り気が付けば増えています。尚、話の内容が気に入らないと何度でも書き直す悪癖がございます。 ご注意ください 読んでくださって誠に有難うございます。

【完結】モブの王太子殿下に愛されてる転生悪役令嬢は、国外追放される運命のはずでした

Rohdea
恋愛
公爵令嬢であるスフィアは、8歳の時に王子兄弟と会った事で前世を思い出した。 同時に、今、生きているこの世界は前世で読んだ小説の世界なのだと気付く。 さらに自分はヒーロー(第二王子)とヒロインが結ばれる為に、 婚約破棄されて国外追放となる運命の悪役令嬢だった…… とりあえず、王家と距離を置きヒーロー(第二王子)との婚約から逃げる事にしたスフィア。 それから数年後、そろそろ逃げるのに限界を迎えつつあったスフィアの前に現れたのは、 婚約者となるはずのヒーロー(第二王子)ではなく…… ※ 『記憶喪失になってから、あなたの本当の気持ちを知りました』 に出てくる主人公の友人の話です。 そちらを読んでいなくても問題ありません。

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

逆行した悪女は婚約破棄を待ち望む~他の令嬢に夢中だったはずの婚約者の距離感がおかしいのですか!?

魚谷
恋愛
目が覚めると公爵令嬢オリヴィエは学生時代に逆行していた。 彼女は婚約者である王太子カリストに近づく伯爵令嬢ミリエルを妬み、毒殺を図るも失敗。 国外追放の系に処された。 そこで老商人に拾われ、世界中を見て回り、いかにそれまで自分の世界が狭かったのかを痛感する。 新しい人生がこのまま謳歌しようと思いきや、偶然滞在していた某国の動乱に巻き込まれて命を落としてしまう。 しかし次の瞬間、まるで夢から目覚めるように、オリヴィエは5年前──ミリエルの毒殺を図った学生時代まで時を遡っていた。 夢ではないことを確信したオリヴィエはやり直しを決意する。 ミリエルはもちろん、王太子カリストとも距離を取り、静かに生きる。 そして学校を卒業したら大陸中を巡る! そう胸に誓ったのも束の間、次々と押し寄せる問題に回帰前に習得した知識で対応していたら、 鬼のように恐ろしかったはずの王妃に気に入られ、回帰前はオリヴィエを疎ましく思っていたはずのカリストが少しずつ距離をつめてきて……? 「君を愛している」 一体なにがどうなってるの!?

モブ令嬢、当て馬の恋を応援する

みるくコーヒー
恋愛
侯爵令嬢であるレアルチアは、7歳のある日母に連れられたお茶会で前世の記憶を取り戻し、この世界が概要だけ見た少女マンガの世界であることに気づく。元々、当て馬キャラが大好きな彼女の野望はその瞬間から始まった。必ずや私が当て馬な彼の恋を応援し成就させてみせます!!!と、彼女が暴走する裏側で当て馬キャラのジゼルはレアルチアを囲っていく。ただしアプローチには微塵も気づかれない。噛み合わない2人のすれ違いな恋物語。

処理中です...