国民的アイドルは乙女ゲームのヒロインに転生したようです~婚約破棄の後は魔物公爵に嫁げ?えー、何でよ?!

むぎてん

文字の大きさ
15 / 38

15 ナタリー ~トーマス目線

しおりを挟む

  ~トーマス目線

あれから二十日後、やっと俺は自由になった。

思ったより時間がかかった。
父上がゴネにゴネたからな。
リリアを諦め切れないのが丸わかりだ。

しかし、あのマサヤも今はアレクサンドラ王国を治める国王の身。
さすがに国を潰す訳にはいかない。
悩んだ末、俺の事は腹いせとばかりに廃嫡し、王弟、つまり父上の弟を王太子に据えることに決めたらしい。
予想通りだ。
これでリリアの元へ行ける!!


リリア、遅くなってゴメン。
体調はどうだ?眠れないよな、苦しいよな。
俺も苦しいよ。
ほら、俺の背中は脂汗でびっしょりだ。
今にも体が痙攣をおこして呼吸が止まってしまいそうだ。


「トーマス様」

あー、まためんどくせぇのが来た。
うざいんだよ、ナタリー。
ほら、得意の色仕掛けで次の男を探せよ。
俺はリリアの元に行く。
さっさと消えろ。

「王家を出てどこに行くの?リリアのところ?」

「は?お前には関係な・・・・・・」

「やっぱり『ヒロイン』には叶わないわね。まんまとやられちゃったわよ」

こ、この女、まさか・・・・・・

「・・・・・・お前も、転生者か」

「やっぱりあなたも転生者だったのね!そうよ、あたしは『アレクサンドラ王国の恋する乙女』の悪役令嬢、ナタリー・コービー。知ってたんでしょ?だからこんな事をしたんでしょ?」

悪役令嬢?それはフローレンス侯爵家の年増女だろう?
年甲斐もなく俺に色目を使ってはリリアに嫌みを言っていた。
あのゲームにナタリーなんて女、出てこなかったぞ?

「いや、知らない。あのゲームにナタリーなんてキャラが出てきた記憶はない」

「はぁっ? あんた、あたしのこと知らないでこんな仕打ちをしたっていうの?! ひどいわ!人間のやることじゃないわよ!」

「なんとでも言え。俺はリリアと共に有れたらそれでいい、消えろ」

「嫌よ。でも変わりにいいこと教えてあげるわ? リリアにも関係あることよ?」

リリアに関係? リリアを脅かす存在なら排除しなければ。

「さっさと言え」

「あたしも連れてってくれるなら教えてあげるわよ」

はぁ? マジでめんどくせーな。
俺は体調が悪いんだよ!

「めんどくせぇな、わかった、連れて行く。だからほら、早よ言え」

「キィーっ、あんた本性は俺様な男だったのね!・・・・・・まぁいいわ、教えてあげる。ナタリーはね、攻略対象の四人を全員攻略して初めて登場するキャラなのよ。ヒロインのリリアからトーマス殿下を奪おうとして、断罪される悪役令嬢ナタリー。その断罪の場で、ナタリーはトーマスから罰を与えられる。『魔物のようなお前には、あの男がお似合いだ。レオナルド・ボンディングの元へ嫁げ!』ってね」

「は?」

「で、ナタリーが泣く泣くレオナルドの元に嫁いだところから『アレクサンドラ王国の恋する乙女』の第2部が始まるの。ヒロインは勿論ナタリー、筆頭攻略対象はレオナルド・ボンディング。あのゲームはね、第1部はただのプロローグに過ぎないの。第2部がメインなのよ」

頭を強く打たれたような衝撃が走った。

「なんだと?! お前、何でそんな大事なこと黙ってたんだよ!!」

「人のせいにしないで頂戴! あんたが勝手にリリアを断罪したからじゃないの! あたしの代わりにリリアをレオナルドの所にやっちゃったでしょ、だったらあたしはトーマスと結ばれるしかないじゃない! だいたいあんた、そんなにリリアのこと好きなのに、どうして婚約破棄なんかすんのよ?! あんたがゲーム通りに動いてればあたしはこんな目にはあってないのよ!」

「こんな目?」

「そうよ! こんな目よ! うちの男爵家は潰されそうよ!王様マジで怒り心頭だわよ! そんであたしはみんなから疫病神扱いされて、家からも追い出されそうなのよ! どうしてくれるのよ? 責任取りなさいよ!!」

マジか、こいつ、ゲーム通りに動いてただけか、悪りぃことしたな。

「あー、わかった。責任をとろう」

「あんた、廃嫡されて一文無しでしょ!えらそーに言わないで頂戴!」

「大丈夫だ。10歳の頃から金は貯めてきた。お前くらいなら養える。お前を嫁に貰ってやる。だがドレスと宝石は我慢しろよ。」

「ほ、ホントに? キャー! 素敵! あたしはね、レオナルドはタイプじゃないの。トーマスが最推しだったのよ!ホントはリリアになりたかったの! ドレスも宝石もいらないわ!」

おい、変わり身早えーな。
ピンクゴールドのドレスはもういいのかよ?

「俺はリリアと長く離れ過ぎて体調が悪いんだよ、早く帰って荷造りしろ。期限は三日だ」

「了解!一応お父様とお継母様にもお別れしてくる!待っててね!絶対よ?置いていかないでよ?」

「分かったから。三日後、迎えに行く。準備して待ってろ」


はぁ、めんどくせーの拾っちまった。
まぁ、いいか。
このままこいつを見捨てても目覚め悪りーしな。


────────────────────
 16 虫
  ~レオナルド・ボンディング目線 へ
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

【完結】地下牢同棲は、溺愛のはじまりでした〜ざまぁ後の優雅な幽閉ライフのつもりが、裏切り者が押しかけてきた〜

うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
悪役令嬢の役割を終えて、優雅な幽閉ライフの始まりだ!! と思ったら、なぜか隣の牢との間の壁が崩壊した。 その先にいたのは、悪役令嬢時代に私を裏切った男──ナザトだった。 一緒に脱獄しようと誘われるけど、やっと手に入れた投獄スローライフを手放す気はない。 断れば、ナザトは「一緒に逃げようかと思ったけど、それが嫌なら同棲だな」と言い、問答無用で幽閉先の地下牢で同棲が開始されたのだった。 全4話です。

逃げたい悪役令嬢と、逃がさない王子

ねむたん
恋愛
セレスティーナ・エヴァンジェリンは今日も王宮の廊下を静かに歩きながら、ちらりと視線を横に流した。白いドレスを揺らし、愛らしく微笑むアリシア・ローゼンベルクの姿を目にするたび、彼女の胸はわずかに弾む。 (その調子よ、アリシア。もっと頑張って! あなたがしっかり王子を誘惑してくれれば、私は自由になれるのだから!) 期待に満ちた瞳で、影からこっそり彼女の奮闘を見守る。今日こそレオナルトがアリシアの魅力に落ちるかもしれない——いや、落ちてほしい。

【完結】前提が間違っています

蛇姫
恋愛
【転生悪役令嬢】は乙女ゲームをしたことがなかった 【転生ヒロイン】は乙女ゲームと同じ世界だと思っていた 【転生辺境伯爵令嬢】は乙女ゲームを熟知していた 彼女たちそれぞれの視点で紡ぐ物語 ※不定期更新です。長編になりそうな予感しかしないので念の為に変更いたしました。【完結】と明記されない限り気が付けば増えています。尚、話の内容が気に入らないと何度でも書き直す悪癖がございます。 ご注意ください 読んでくださって誠に有難うございます。

【完結】モブの王太子殿下に愛されてる転生悪役令嬢は、国外追放される運命のはずでした

Rohdea
恋愛
公爵令嬢であるスフィアは、8歳の時に王子兄弟と会った事で前世を思い出した。 同時に、今、生きているこの世界は前世で読んだ小説の世界なのだと気付く。 さらに自分はヒーロー(第二王子)とヒロインが結ばれる為に、 婚約破棄されて国外追放となる運命の悪役令嬢だった…… とりあえず、王家と距離を置きヒーロー(第二王子)との婚約から逃げる事にしたスフィア。 それから数年後、そろそろ逃げるのに限界を迎えつつあったスフィアの前に現れたのは、 婚約者となるはずのヒーロー(第二王子)ではなく…… ※ 『記憶喪失になってから、あなたの本当の気持ちを知りました』 に出てくる主人公の友人の話です。 そちらを読んでいなくても問題ありません。

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

逆行した悪女は婚約破棄を待ち望む~他の令嬢に夢中だったはずの婚約者の距離感がおかしいのですか!?

魚谷
恋愛
目が覚めると公爵令嬢オリヴィエは学生時代に逆行していた。 彼女は婚約者である王太子カリストに近づく伯爵令嬢ミリエルを妬み、毒殺を図るも失敗。 国外追放の系に処された。 そこで老商人に拾われ、世界中を見て回り、いかにそれまで自分の世界が狭かったのかを痛感する。 新しい人生がこのまま謳歌しようと思いきや、偶然滞在していた某国の動乱に巻き込まれて命を落としてしまう。 しかし次の瞬間、まるで夢から目覚めるように、オリヴィエは5年前──ミリエルの毒殺を図った学生時代まで時を遡っていた。 夢ではないことを確信したオリヴィエはやり直しを決意する。 ミリエルはもちろん、王太子カリストとも距離を取り、静かに生きる。 そして学校を卒業したら大陸中を巡る! そう胸に誓ったのも束の間、次々と押し寄せる問題に回帰前に習得した知識で対応していたら、 鬼のように恐ろしかったはずの王妃に気に入られ、回帰前はオリヴィエを疎ましく思っていたはずのカリストが少しずつ距離をつめてきて……? 「君を愛している」 一体なにがどうなってるの!?

モブ令嬢、当て馬の恋を応援する

みるくコーヒー
恋愛
侯爵令嬢であるレアルチアは、7歳のある日母に連れられたお茶会で前世の記憶を取り戻し、この世界が概要だけ見た少女マンガの世界であることに気づく。元々、当て馬キャラが大好きな彼女の野望はその瞬間から始まった。必ずや私が当て馬な彼の恋を応援し成就させてみせます!!!と、彼女が暴走する裏側で当て馬キャラのジゼルはレアルチアを囲っていく。ただしアプローチには微塵も気づかれない。噛み合わない2人のすれ違いな恋物語。

処理中です...