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14 受け入れてくれるか ~トーマス目線
しおりを挟む~トーマス目線
やっとのことで国王と王妃から解放され、部屋に戻ろうと回廊を歩いていた俺にナタリーが勢いよく抱きついてきた。
「トーマスさまぁ!」
ああ、面倒臭い。
「ナタリー、どうして王宮にいるのだ?」
呼んだ覚えはないが。
「トーマス様にお会いしたかったのです!門番に言ったら快く通して下さいましたわ!」
どうせ得意の色仕掛けだろう。
汚ならしい女、そこだけは父上と同感だ。
「トーマスさまぁ、私たち、いつになったら正式な婚約者になれるのですか?私、早くトーマス様のお嫁さんになりたいですぅ!」
お前がなりたいのは俺の嫁ではなく、王太子妃だろう。
ゆくゆくは王妃になって、贅沢三昧することしか考えていないのはお前を見ていればすぐに分かる。
「トーマスさまぁ、今度のお茶会で着るドレスなんですけど、私、やっぱりピンクがいいなって。でも私に似合うピンクゴールドがお店に売ってないんですぅ。」
ホラな、おねだりだ。
馬鹿が、綺麗なピンクゴールドが似合うのはお前じゃない、リリアだ。
「買ってやりたいのはやまやまだが、わたしはじきに廃嫡されることになりそうだ」
「・・・・・・は?廃嫡?」
ぷーっ!その顔!超絶不細工だな。
お前などがリリアに勝てる訳がないだろう?
鏡見て気づけよ。
「どうしても君と一緒になりたければ、君の男爵家に入れと言われた。どうだろう?君と君の実家は、全て失い平民となったわたしを受け入れてくれるだろうか?」
「あ・・・・あの・・・・・・私、家に帰ってお父様と話を・・・・・・」
「そうか、残念だよ。ナタリー、さよなら」
「・・・・・・・・・・」
よし!邪魔な国王も、邪魔な女も黙らせた。
もう少し、もう少しでリリアに会える。
なあ、リリア、眠れているか?
俺はよく眠れない。
俺とリリアは離れる事が出来ない。
レオナルドは俺を受け入れてくれるだろうか。
レオナルド・ボンディングはリリアの好みのタイプど真ん中だ。
厳つい見かけとは違い、物凄く優しい男だ。
あの顔の傷だって、西の隣国との小競り合いで乱闘になった際、その場に取り残された子供を庇って負ったものだ。
強面の優しい男、どんなものからも守ってくれる屈強な身体。
まさしくリリアのために存在していると言っても過言ではない。
俺はリリアを守るために計画を変更した。
俺の父上はマサヤだ。
七年前のあの日から、父上のリリアを見る目がおかしいことには気付いていた。
この目は・・・・・・マサヤ?
父上は、もしかしてマサヤじゃないのか?
疑いは持っていたんだ。
そしてそれを確信したのは、二ヶ月ほど前のことだった。
『トーマス、最近リリアとは仲良くやっているのか?』
『ええ。何も問題はありません』
『そうか、それは良かった。お前たちの結婚式まであと半年、リンがこの王宮で暮らす日が待ち遠しい』
『リン』と言った。
『やっと、やっとだ。長かった・・・・・・』
小さな声で呟いた父上のその目、その表情は、前世でリンを殺したマサヤそのものだった。
マサヤはバカでかい包丁でリンを刺し殺し、そのあと、その包丁で自分も首を切って死んだ。
俺は何もできずにただ見ていた。
悔しかった。
だから今度は、今度こそはリリアを守り幸せにしてやりたい。
父上からリリアを守り、レオナルドと仲良く暮らすリリアの幸せな姿を見たい。
リリアに笑っていてほしい。
リリア、俺の勝手な計画変更を怒っているか?
リリアを守るためなんだ。
わかってくれるよな。
でも、俺の選んだレオナルドはいい男だろ?
あの男ならリリアを幸せにしてくれる。
俺は、幸せなリリアと共にありたい。
幸せな世界で幸せそうに笑うリリアとずっと一緒にいたい。
俺たちはどうしたって離れる事は出来ないんだ。
寂しい、悲しい二人じゃ一緒にいたって辛いだろ?
だからさ、レオナルド、頼むから俺を受け入れてくれないか?
俺はただリリアと共に有れたらそれだけでいいんだ。
邪魔などしない。
それに、リリアだって俺がいないと生きてはいけないんだよ?
レオナルドの優しさに幸せを感じていても、それでも苦しい思いをしているはずだ。
俺と同じように。
俺とリリアは一心同体なのだから。
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15 ナタリー ~トーマス目線 へ
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