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24 あたしは鳴海 ~ナタリー目線
しおりを挟む~ナタリー目線
「リリア、大丈夫だ。お前の事は俺が命に変えても守ってみせる。もう二度とそんな男にお前を殺させたりしない」
レオナルドがリリアちゃんの頭を優しく撫でながらそう言うと、どこか宙を睨んだ。
マサヤを許せない気持ちはあたしも一緒だ。
加々美リンはあたしの青春だった。
胸が痛くなるほどに憧れた。
もしも生まれ変われるなら、加々美リンになりたいとすら思ってた。
でも、そんな加々美リンの人生は壮絶で、テレビの中で歌って踊っていたあのリンたんの笑顔からは想像すら出来ない。
「まあ、あの国王くらいなら、あたしがやっつけてあげるから大丈夫よ?さすがに軍を率いて来たりはしないでしょ」
あたしはリリアちゃんを安心させたくて冗談めかして言ったが、トーマスが
「ナタリー、お前みたいなか弱い女に敵う相手じゃないよ。あいつはあれでも剣術の腕はピカイチだ。騎士団長との手合わせで勝利したこともあったはずだ」
なんていうから、あたしのファイティング魂に火が着いた。
「 "か弱い女" なんて素敵な響きだけど、あたし、これでもメチャクチャ強いわよ?」
「あー、ハイハイ、ナタリーは強い、口じゃ勝てない」
「口じゃなくて・・・・まあ、口も強いけどね。トーマス、レオナルドでもいいわ、手合わせしてみる?」
レオナルドが頭を振って
「まさか、女性に手をあげるなど出来るわけがないだろう」
と言った瞬間、隣に座っていたトーマスがあたしの腕を掴み上げた。
「ほら、こんな細い腕なんか掴まれたらそのまま折ら・・・・・・ってあたたたた!」
あたしは素早くトーマスの反対側の腕を掴んで背中方向に捻った。
中腰になって立ち上がろうとするその足を払うと、トーマスはソファーから落ちて尻餅をつく。
その一瞬で、喉元に鋭く拳を突きつけて寸止めした。
「はい、トーマス死んだ」
「お、お前、何者だ?これでも俺はリリアを守るために、小さい頃から剣術も体術も厳しい鍛練を受けてきたんだ。レオナルドとだって互角に戦う自信はある!」
「それでもあたしの方が強い。あたしの前世は鳴海。空手の世界チャンピオンよ」
リリアちゃんが勢いよくソファから立ち上がって
「え!!空手のなるみって・・・・・・もしかしてナタリーの前世はあの鳴海宗一郎?!」
と大きな声をあげた。
リリアちゃんの大きな瞳がキラキラしてキレイだわ!
吸い込まれそう。
「え、リリアちゃん、鳴海のこと知ってたの?」
「知ってるわよ!!私、鳴海宗一郎の大ファンだったのよ!試合中継も録画して何度も何度も見たんだから!」
きゃーステキ!
そう言ってリリアちゃんがあたしに抱きついてきた!
なんたる幸せ!
「でも、いくら空手のチャンピオンでも剣術なら・・・・・」
トーマスが悔しそうに拳を握る。
「無理ね。あたし、空手以外にもいろいろやってたから。剣道は範士八段、最高位よ? フェンシングもやってたし。他にも柔道に相撲、ボクシング、合気道にムエタイ。どれも負けた事は一度もないわ。戦うために生まれて来た男。それが前世のあたし、鳴海宗一郎よ」
トーマスががっくりと項垂れた。
「俺の嫁、元男‥‥‥それもあの鳴海宗一郎‥‥‥」
「あたしは確かに男だったけど、それは身体だけ。小さい頃から心はずっと乙女だったのよ?可愛らしいお姫様に憧れてたの」
「「マジで!!」」
リリアちゃんとトーマスの声がハモった。
さすが元一心同体!
「ナタリー、君が強い事はよく分かった。国王からリリアを守るために協力してくれるか?」
レオナルドの真剣な声であたしたちは現実に引き戻される。
「勿論よ、レオナルド。とにかく、あたしとトーマスはしばらくここに滞在させてもらうわ。一緒にリリアちゃんを守る方法を考えましょう」
そう言ってあたしたちは固く握手を交わした。
────────────────────
25 あたしとトーマス
~ナタリー目線 へ
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