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36 最終話 おやすみ ~レオナルド目線
しおりを挟む~レオナルド目線
「レオナルド様、今日から私、リリア・ボンディングになったんですね、嬉しいです。これから毎晩こうやってレオナルド様の腕の中で眠る事ができるなんて、夢みたい・・・・・・」
夢を見ているようなのは俺の方だ。
ああ、リリア、やっとお前を抱く日が来た。
優しく、優しく抱いてやる。
この世界では全くモテなかった、というか怖がられ忌避された俺だが、前世ではそれはもう、沢山の女とヤった。
女のカラダは知り尽くしている。
大丈夫だ、俺に任せろ。
細い首筋を指先でなぞりながら、優しくキスをした。
甘い甘い、蕩けるようなキスを。
リリアは気持ち良さそうに目を細め、言った。
「レオナルド様・・・・・・お休みのキス、憧れてたの。お休みなさい、レオナルド様が良い夢を見られますように」
そして、俺の腕に抱きつくと静かな寝息を立てて夢の中に旅立った。
・・・・・・は? う、嘘だろ? 初夜だぞ?
いくら何でもそれはない!!
幸せそうに微笑みを浮かべたまま眠るリリアは、やっぱり俺のミューズだ。
彼女のおでこに軽くキスをして、
俺は、はあ、とため息をついた。
このままでは眠れない。
俺は健全な20代の男子だ。
落ち着け、落ち着け。
そうだ、溜まっている仕事を少し片付けてから寝ることにしよう。
俺は隣の執務室に行こうと、そっと寝室を抜け出した。
「レオナルド、何してる?」
「トトトーマス!お前こそ何をしてるんだ!」
「いや、別に何も・・・・・・それよりリリアは?」
「・・・・・・リリアは・・・・寝た」
「はぁ? ね、寝た?! 嘘だろ! いくらリリアでもまさか、初夜だぞ?」
「ああ、初夜だ。初夜なのだが‥‥‥しかしリリアは寝ちまった!俺は泣きてぇよ!!
ああ、俺のエンジェル、俺のミューズ!まさか、俺の渾身のキスをお休みのキスと受けとるなんて信じられねぇ!オーマイガ!!」
「・・・・・・ま、まあ、仕方ないね。ゆっくり、時間をかけて頑張りな!俺もう寝るわ、お休み!」
「ああ・・・・お休み」
「ナタリー、予想どおりアイツ、転生者で間違いないぞ。心の中が声に出てて、まじウケる!あの口調からしてアメリカ人とかだろうな」
「レオナルドはレイモンド・ボーイングよ?」
「レイモンド・ボーイングってあのボクサーの?マジで?ナタリー、何で分かんの?」
「レオナルドと手合わせしたらすぐわかったわよ、あたし、鳴海の時に一度試合してるの。それにリリアちゃんが前世でボクシングファンだったって話をすると、ニヤニヤして聞き耳を立ててるし!」
「そういえばあいつら前世で一回共演してたな。リンが初めてうっすらだけど意識した男だったんだ。レイモンドは‥‥‥あれは完全にリンに一目惚れしてた」
「リリアちゃん、レオナルドがレイモンドだって知ったら驚くかな?」
「レオナルドはリリアには絶対に秘密にするだろ、10人以上の女性たちとめくるめく愛欲に溺れてるとか、そりゃもう生々しく報道されてたしな。隠し子までいたとかいないとか」
「あはは!前世の行いが悪いと痛い目見るよねー!」
「でもあいつ、俺たちにバレてないと思ってるぞ。ホント馬鹿だよな。転生者でもなきゃ理解出来ないことだらけなのに普通に納得してるし」
「マリッジリングはどうする~?とかさぁ、ホントバカを通り越してかわいいわよ」
雑念を追い払うようにバリバリと仕事を終えた俺は、寝室に戻り眠るリリアの隣に横になった。
リリアは時々、前世でボクシングのスーパーヘビー級の男のファンだったという話をナタリーにしている。
俺の事か?!
やっぱりリンも、俺の事が好きだったのか?!
だが、俺がレイモンド・ボーイングだったということは口が裂けても言えない。
リンは、レイモンドの淫らな女遍歴の報道を見ていたはず、絶対に俺の前世は内緒だ!
そう決意して、リリアの寝顔を眺める。
可愛い寝息をたてるリリアの髪をそっと撫でると、俺の腕にぎゅうっと抱き付いてきた。
「うふふ、レオナルド様、大好き・・・・・・」
リリアが寝言で俺の名を呼んだ。
マシューでもなく、トーマスでもなく、俺の名を。
不意に涙がこぼれた。
嬉しくて、嬉しくて、次から次に溢れ出る涙は止まらない。
ああ、リリア。
俺のリリア。
そうだよ、セバスの言う通りだ。
俺はお前に狂ってる。
前世から、レイモンドの頃から狂ってるんだ。
絶対に離さない。
ずっと一生お前に愛される努力をし続けよう。
お前を小さな檻に閉じ込めてしまわずに済むように。
鍵も鎖も使わずに済むように・・・・・・
俺は絶対にマサヤの様にはならない。
だから、安心して俺の腕の中でおやすみ。
俺の可愛いリリア。
────────────────────
完
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