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2 川上ゆかりという人間①
ここで目覚める前の私は42歳、独身。
夜の弁当工場で働いている中年のおばさんだ。
高校を卒業してすぐにできちゃった結婚したものの、そのあとすぐに流産して離婚。
バイトを始めるもどれも長続きせず、嫌な事があるとすぐ辞める。
『こーゆーのは切り替えが大事っしょ!』『やっぱ自分に合った仕事じゃないとね』
なんて自分を正当化して言い訳しつつ、まぁ何とかなるさと人生を甘く見てた。
そのうちに遊び仲間のギャルもチャラ男も一人、また一人と真面目になっていく。
結婚しました! 赤ちゃん生まれました!
そんな写真つきの年賀状が届くようになった。
引っ越しました! と新築の家の前で家族と写った暑中見舞が来たときに初めて
『あれ? さすがにこれ、私ヤバくね?』って。
焦ったときには、すでにアラサーになってたよ。
・・・・・・バカだ。
慌てて職安に通ってみるも、自分に出来そうな仕事がない。
事務とか普通に無理だし、ショップの店員なんかも年齢で落とされる。
学もない、手に職もない、まともな職歴もないアラサーの独身女性に、初めての就職活動はそれはもう辛い日々だった。
「ちょうどさっき決まっちゃったんですよ~」
「今回の募集は25歳までなんですよ~」
「未経験者はちょっと~」等々。
「選り好みですかぁ?30ですよね~」って言われたときはさすがにすごく落ち込んだ。
結局、弁当工場に就職が決まり働きだしたのだが、これがまたキッツイ仕事だった。
夜の12時から朝の8時まで。
深夜の方が給料がよかったからね。
誰にでも出来る単純で簡単な作業だが、それを眠気と戦いながら立ちっぱなしで延々と続ける。
トイレにも行けない。どこか痒くても掻けない。
揚げ油の臭いが染み付いた工場内は、冷蔵庫の中のように寒い。
青白い蛍光灯の下、心を無にして目の前のベルトの上を流れて来る弁当にひたすらご飯をよそう。
唐揚げを乗せる。
ウインナーを乗せる。
コロッケを乗せる。
腕が痛い足も痛い腰も痛い。
辞めたい・・・・・・
でも、もう職安に通うのも面接を受けるのも嫌だった。
そうして、いつの間にか私は42歳になっていた。
その日は、私の退勤時間である朝8時から出勤するはずだったパートさんが休んだ。
おかげで二時間の残業だが、子供さんが風邪をひいたというのなら仕方がない。
疲れた・・・・・・
ふらふらの体を引きずるようにコンビニに寄って、パンとお茶を買いアパートに帰る。
不健康なのは分かっているが料理は苦手だ。だけど弁当なんて見たくもない。
パンとお茶で朝食兼昼食を済まし、洗濯機を回し部屋を片付ける。
ベランダの窓の前には取り込んだままの洗濯物が積んである。
・・・・・・畳まなきゃなぁ。
テレビでも見ながら畳むか。
テレビの向こうの楽しそうな笑い声が、静かだった一人の部屋に響いた。
『可愛いって、若いって正義だよね』
お笑い芸人が可愛らしいアイドルを誉めそやす。
うん、ほんとそうだよね。
私にもそんなキラキラした頃があったなぁ。
こんなに美人じゃなかったけどね。
流行りのガングロメイクに露出の多い派手な服を着て、厚底ブーツ履いてね、センター街を闊歩してた。
完全な黒歴史。
でも楽しかったな、あの頃。
ずっとそんな楽しい毎日が続いて行くと思ってた。
人生なんてチョロいって、舐めてたね。
40過ぎた自分の姿なんて想像したこともなかったよ。ははは・・・・・・
洗濯物を畳み終えたタイミングで、洗濯終了のブザーが鳴った。
時計を見ると正午前 。 天気もいいし 夕方までには余裕で乾くだろう。
洗濯かごを持ち、狭いベランダに出た。
独り暮らしの洗濯物は少ないから狭くても問題ない。
ベランダの手すりからボーっと世間をながめた後、 ちゃちゃっと干し終え部屋に戻る。
一瞬、ぐらりと目眩がした。
直射日光の当たるベランダから急に薄暗い部屋に戻ったからね。
うん、あるある。
クッションを抱いて小さなソファーに横になった。
疲れたなぁ。
今夜も仕事だ。ベッドに移ろう、寝なきゃ。うん、睡眠は大事。
───────────
3~川上ゆかりという人間②へ
夜の弁当工場で働いている中年のおばさんだ。
高校を卒業してすぐにできちゃった結婚したものの、そのあとすぐに流産して離婚。
バイトを始めるもどれも長続きせず、嫌な事があるとすぐ辞める。
『こーゆーのは切り替えが大事っしょ!』『やっぱ自分に合った仕事じゃないとね』
なんて自分を正当化して言い訳しつつ、まぁ何とかなるさと人生を甘く見てた。
そのうちに遊び仲間のギャルもチャラ男も一人、また一人と真面目になっていく。
結婚しました! 赤ちゃん生まれました!
そんな写真つきの年賀状が届くようになった。
引っ越しました! と新築の家の前で家族と写った暑中見舞が来たときに初めて
『あれ? さすがにこれ、私ヤバくね?』って。
焦ったときには、すでにアラサーになってたよ。
・・・・・・バカだ。
慌てて職安に通ってみるも、自分に出来そうな仕事がない。
事務とか普通に無理だし、ショップの店員なんかも年齢で落とされる。
学もない、手に職もない、まともな職歴もないアラサーの独身女性に、初めての就職活動はそれはもう辛い日々だった。
「ちょうどさっき決まっちゃったんですよ~」
「今回の募集は25歳までなんですよ~」
「未経験者はちょっと~」等々。
「選り好みですかぁ?30ですよね~」って言われたときはさすがにすごく落ち込んだ。
結局、弁当工場に就職が決まり働きだしたのだが、これがまたキッツイ仕事だった。
夜の12時から朝の8時まで。
深夜の方が給料がよかったからね。
誰にでも出来る単純で簡単な作業だが、それを眠気と戦いながら立ちっぱなしで延々と続ける。
トイレにも行けない。どこか痒くても掻けない。
揚げ油の臭いが染み付いた工場内は、冷蔵庫の中のように寒い。
青白い蛍光灯の下、心を無にして目の前のベルトの上を流れて来る弁当にひたすらご飯をよそう。
唐揚げを乗せる。
ウインナーを乗せる。
コロッケを乗せる。
腕が痛い足も痛い腰も痛い。
辞めたい・・・・・・
でも、もう職安に通うのも面接を受けるのも嫌だった。
そうして、いつの間にか私は42歳になっていた。
その日は、私の退勤時間である朝8時から出勤するはずだったパートさんが休んだ。
おかげで二時間の残業だが、子供さんが風邪をひいたというのなら仕方がない。
疲れた・・・・・・
ふらふらの体を引きずるようにコンビニに寄って、パンとお茶を買いアパートに帰る。
不健康なのは分かっているが料理は苦手だ。だけど弁当なんて見たくもない。
パンとお茶で朝食兼昼食を済まし、洗濯機を回し部屋を片付ける。
ベランダの窓の前には取り込んだままの洗濯物が積んである。
・・・・・・畳まなきゃなぁ。
テレビでも見ながら畳むか。
テレビの向こうの楽しそうな笑い声が、静かだった一人の部屋に響いた。
『可愛いって、若いって正義だよね』
お笑い芸人が可愛らしいアイドルを誉めそやす。
うん、ほんとそうだよね。
私にもそんなキラキラした頃があったなぁ。
こんなに美人じゃなかったけどね。
流行りのガングロメイクに露出の多い派手な服を着て、厚底ブーツ履いてね、センター街を闊歩してた。
完全な黒歴史。
でも楽しかったな、あの頃。
ずっとそんな楽しい毎日が続いて行くと思ってた。
人生なんてチョロいって、舐めてたね。
40過ぎた自分の姿なんて想像したこともなかったよ。ははは・・・・・・
洗濯物を畳み終えたタイミングで、洗濯終了のブザーが鳴った。
時計を見ると正午前 。 天気もいいし 夕方までには余裕で乾くだろう。
洗濯かごを持ち、狭いベランダに出た。
独り暮らしの洗濯物は少ないから狭くても問題ない。
ベランダの手すりからボーっと世間をながめた後、 ちゃちゃっと干し終え部屋に戻る。
一瞬、ぐらりと目眩がした。
直射日光の当たるベランダから急に薄暗い部屋に戻ったからね。
うん、あるある。
クッションを抱いて小さなソファーに横になった。
疲れたなぁ。
今夜も仕事だ。ベッドに移ろう、寝なきゃ。うん、睡眠は大事。
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