4 / 98
4~早苗とありさという親友
保健室に私を迎えに来てくれたのは早苗ともう一人の友人、ありさだった。
「あたしが トイレに行ってる間に階段から落ちるとかマジありえないしー!」
ガングロのありさが私の顔の前で人差し指を立てる。
「あたしがその場にいたら、ゆかりの腕を掴んで止めてあげられたのにー」
「 無理無理。一緒に落ちるのが オチだよ?」
「ちょっとー、ひどくない?」
ありさは真っ白の唇を突きだして見せたあと、私に向かってほっとしたような顔で笑った。
二人が来るまでの間、私は一人の保健室で考えに考えた。
今の自分の状況と、これからどうすればいいのかを。
考えて、考えて‥‥決めた。
私は高校生の『自分』を頑張って生きる。
本当の私は死にかけで昏睡状態なのかも知れない。
楽しかった頃の走馬灯を見ているだけかも知れない。
でも、今、私の意識はここにある。
私はここにいる。
だから、そう、頑張るんだ。
他人の目なんて気にしない。
逃げない。
未来を変えたい。
あんな未来は駄目だ。
三宅冬馬が奥さんを殺して自殺するなんて、絶対駄目。
高校生の今ならきっとまだ間に合う。
自分の心に正直になって三宅冬馬にぶつかってみよう。
私の未来も、三宅冬馬の未来も、変えてしまえるほどに強くなってみせる。
バス停への道のりを、早苗とありさと三人で並んで歩く。
季節は、春? 街路樹の桜吹雪が綺麗すぎて目が痛い。
我慢できずに、そっと足下のアスファルトに目を落とす。
踏まれて汚れた花びらに、何故かホッとした。
「 送ってくれなくてもいいよ ?もう大丈夫だし 。二人とも遠回りでしょ?」
「いいよ別にぃ、気にすんなしー」
「 そうだよー。 どうせウチら暇なんだからさー」
交代で私のカバンを持ってくれる。
「マジでどこも痛くない?」
そう言って気遣ってくれる。
三宅冬馬の未来を変えるには、彼と仲良くなることが一番の近道だ。
だけど、私と彼は高校3年間、一度も会話すらしたことがなかった。
取り敢えず、この二人に三宅冬馬の事が好きだと打ち明けてみようか?
この二人は笑うだろうか?
趣味が悪いと馬鹿にするだろうか。
いや‥‥もし仮に馬鹿にされて笑われたとしてもかまわないのでは?
私は、今にもあの未来で目が覚めるかも知れないし、死んでしまうかも知れない。
いつまでここにいられるか分からないのだ。
だったら二人に打ち明けてみよう。
まずはそこから始めなきゃいけない。
そして三宅冬馬と仲良くなるんだ。
強くなるって決めた。
「‥‥‥あのさ、私、二人に大事な話があるんだよね」
急に真剣な顔で切り出した私に、二人が一瞬驚く。
「え、えー?何さー」
「もしかして恋バナとかー?」
二人が戸惑いを隠すようにキャラキャラと笑う。
「えっと、うん、まぁ、そんな感じ」
「まじか!!」
「誰?誰?」
や、やっぱり怖いな。
ちょっと時間の猶予が必要だ。
「な、なんかやっぱり心の準備が必要っていうか?げ、月曜日 に話すよ」
私はしどろもどろに答えた。
「んー、じゃあ 月曜日まで待つかぁ」
「この土日でしっかり 心の準備してねー?」
優しい二人はそれ以上は聞き出そうとはしなかった。
42歳、もう連絡を取り合うこともなくなっていたこの二人の、高校生の頃を思い出す。
いい子たちだった。
楽しい子たちだった。
私たちはいつも笑っていた。
二人は私の親友だった。
卒業してからもずっと親友でいられると思ってた。
18歳、私が妊娠したときはすごく喜んでくれたっけ。
ありさが『ちょっと気が早いけど』なんて言ってベビー服をプレゼントしてくれた。
流産したときは二人とも一緒に泣いて悲しんでくれたね。
19歳、離婚するときは、ものすごく怒ってくれたな。
早苗は『あんたの旦那、一発殴ってやんないと気がすまない!』って本気で殴り込みに来た。
時が経つにつれ、そんな二人から私は離れた。
二人や、他の友達が幸せになっていくのを横目で見ながら『幸せでない自分の姿』を晒すことが耐えられなかった。
だから逃げたんだ。
でもここからだ。今ここから始める。
頑張るんだ。今度は逃げない。絶対に。
強くなる。
───────────
5~脱・ガングロギャル 目指すは清楚系 へ
あなたにおすすめの小説
次期騎士団長の秘密を知ってしまったら、迫られ捕まってしまいました
Karamimi
恋愛
侯爵令嬢で貴族学院2年のルミナスは、元騎士団長だった父親を8歳の時に魔物討伐で亡くした。一家の大黒柱だった父を亡くしたことで、次期騎士団長と期待されていた兄は騎士団を辞め、12歳という若さで侯爵を継いだ。
そんな兄を支えていたルミナスは、ある日貴族学院3年、公爵令息カルロスの意外な姿を見てしまった。学院卒院後は騎士団長になる事も決まっているうえ、容姿端麗で勉学、武術も優れているまさに完璧公爵令息の彼とはあまりにも違う姿に、笑いが止まらない。
お兄様の夢だった騎士団長の座を奪ったと、一方的にカルロスを嫌っていたルミナスだが、さすがにこの秘密は墓場まで持って行こう。そう決めていたのだが、翌日カルロスに捕まり、鼻息荒く迫って来る姿にドン引きのルミナス。
挙句の果てに“ルミタン”だなんて呼ぶ始末。もうあの男に関わるのはやめよう、そう思っていたのに…
意地っ張りで素直になれない令嬢、ルミナスと、ちょっと気持ち悪いがルミナスを誰よりも愛している次期騎士団長、カルロスが幸せになるまでのお話しです。
よろしくお願いしますm(__)m
【完結】地味な私と公爵様
ベル
恋愛
ラエル公爵。この学園でこの名を知らない人はいないでしょう。
端正な顔立ちに甘く低い声、時折見せる少年のような笑顔。誰もがその美しさに魅了され、女性なら誰もがラエル様との結婚を夢見てしまう。
そんな方が、平凡...いや、かなり地味で目立たない伯爵令嬢である私の婚約者だなんて一体誰が信じるでしょうか。
...正直私も信じていません。
ラエル様が、私を溺愛しているなんて。
きっと、きっと、夢に違いありません。
お読みいただきありがとうございます。短編のつもりで書き始めましたが、意外と話が増えて長編に変更し、無事完結しました(*´-`)
【完結】モブ令嬢としてひっそり生きたいのに、腹黒公爵に気に入られました
22時完結
恋愛
貴族の家に生まれたものの、特別な才能もなく、家の中でも空気のような存在だったセシリア。
華やかな社交界には興味もないし、政略結婚の道具にされるのも嫌。だからこそ、目立たず、慎ましく生きるのが一番——。
そう思っていたのに、なぜか冷酷無比と名高いディートハルト公爵に目をつけられてしまった!?
「……なぜ私なんですか?」
「君は実に興味深い。そんなふうにおとなしくしていると、余計に手を伸ばしたくなる」
ーーそんなこと言われても困ります!
目立たずモブとして生きたいのに、公爵様はなぜか私を執拗に追いかけてくる。
しかも、いつの間にか甘やかされ、独占欲丸出しで迫られる日々……!?
「君は俺のものだ。他の誰にも渡すつもりはない」
逃げても逃げても追いかけてくる腹黒公爵様から、私は無事にモブ人生を送れるのでしょうか……!?
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
王宮に薬を届けに行ったなら
佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。
カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。
この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。
慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。
弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。
「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」
驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。
「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」
※ベリーズカフェにも掲載中です。そちらではラナの設定が変わっています。(貴族→庶民)それにより、内容も少し変更しておりますのであわせてお楽しみください。
【完結】教会で暮らす事になった伯爵令嬢は思いのほか長く滞在するが、幸せを掴みました。
まりぃべる
恋愛
ルクレツィア=コラユータは、伯爵家の一人娘。七歳の時に母にお使いを頼まれて王都の町はずれの教会を訪れ、そのままそこで育った。
理由は、お家騒動のための避難措置である。
八年が経ち、まもなく成人するルクレツィアは運命の岐路に立たされる。
★違う作品「手の届かない桃色の果実と言われた少女は、廃れた場所を住処とさせられました」での登場人物が出てきます。が、それを読んでいなくても分かる話となっています。
☆まりぃべるの世界観です。現実世界とは似ていても、違うところが多々あります。
☆現実世界にも似たような名前や地域名がありますが、全く関係ありません。
☆植物の効能など、現実世界とは近いけれども異なる場合がありますがまりぃべるの世界観ですので、そこのところご理解いただいた上で読んでいただけると幸いです。
【完結】役立たずになったので身を引こうとしましたが、溺愛王子様から逃げられません
Rohdea
恋愛
───あなたのお役に立てない私は身を引こうとした……のに、あれ? 逃げられない!?
伯爵令嬢のルキアは、幼い頃からこの国の王太子であるシグルドの婚約者。
家柄も容姿も自分よりも優れている数多の令嬢を跳ね除けてルキアが婚約者に選ばれた理由はたった一つ。
多大な魔力量と貴重な属性を持っていたから。
(私がこの力でシグルド様をお支えするの!)
そう思ってずっと生きて来たルキア。
しかしある日、原因不明の高熱を発症した後、目覚めるとルキアの魔力はすっからかんになっていた。
突然、役立たずとなってしまったルキアは、身を引く事を決めてシグルドに婚約解消を申し出る事にした。
けれど、シグルドは──……
そして、何故か力を失ったルキアと入れ替わるかのように、
同じ属性の力を持っている事が最近判明したという令嬢が王宮にやって来る。
彼女は自分の事を「ヒロイン」と呼び、まるで自分が次期王太子妃になるかのように振る舞い始めるが……
ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく
犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。
「絶対駄目ーー」
と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。
何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。
募集 婿入り希望者
対象外は、嫡男、後継者、王族
目指せハッピーエンド(?)!!
全23話で完結です。
この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。