3 / 8
第3話 舞い込んだお見合い
しおりを挟む「ど、どうも……お久しぶりですね。今日はよろしくお願いいたします」
「こちらこそ、よろしくお願いいたしますわ。ローガン様」
王都にある、クリッド侯爵家の庭園にて。
私はひとりの殿方と一緒に、お茶会という名目のお見合いをしていた。
春の暖かな日差しの下。少し癖のある茶髪をしたローガン様は、少し緊張している様子だった。
ローガン様は今年で16歳になる。王家の血を引く侯爵家の嫡男だけど、それを笠に着て偉ぶる様子は一切ない。
彼とは以前にもお会いしたことがあったけれど、相変わらず純朴で優しそうな紳士だ。
「そ、それで。今日はその……」
「本日はクリッド家自慢の素敵な庭園を拝見できると聞いて、とても楽しみにしておりましたの。ローガン様、のちほど案内していただけますか?」
「あ、はい! 是非とも案内させてください!」
会話もエスコートの動きもぎこちないローガン様に対し、私はあらかじめ用意しておいた話題を提供する。
私もそこまで男性との会話は慣れてはいないけれど。一番身近にいる人のおかげで、緊張することはあまり無いのよね。
「(お兄様に比べたら可哀想になるぐらい、気の優しい人だわ。つい気遣いをしたくなっちゃう)」
さっきまで何を話せば良いのか戸惑っていたはずなのに、今では自慢の庭がいかに素晴らしいかを饒舌に語り始めた。
そんなお可愛らしいローガン様を眺めながら、私はこの庭のハーブで淹れたらしいお茶を口にする。
「(……どうしてこうなったのかしら)」
おかしいわね……私、お兄様の婚約者探しをしていたはずなんだけど……。
それがどういうわけか、お兄様よりも先に私に縁談が舞い込んできてしまった。
これはきっと、こちらの動きを察知した誰かがこのお見合いを仕組んだのね。
「ここだけの話なのですが。近ごろのクリッド領では、他国から取り寄せた医療用のハーブを栽培しているんですよ! とても珍しい、真っ白な雪の結晶に似た花を咲かせるんです」
「もしかして『朱雪草』ですか!? 素晴らしいですわ……さぞかし綺麗な花なのでしょうね」
「ご存知でしたか! いやぁ、是非ともお見せしたいです!……今度、こっそりお持ちしますね」
「ふふ。楽しみにしておきますわね」
ウインクをしながら茶目っ気たっぷりに言う彼に、私は笑顔を返す。
すっかり調子が出てきたのか、ローガン様はちゃっかり“今度”の予定をこぎ着けてきた。
さすがは次期侯爵家当主、あなどれないわ。貴族としての話術は、それなりに身に付けていたみたい。
「私、城の外に出ること自体が久しぶりですの。今日はたくさんお話させてくださいね?」
私の好意的なその言葉に、ローガン様は目じりを下げて、優しく微笑んだ。
ふふふ、今日は良い気分転換ができそうだわ……。
0
あなたにおすすめの小説
5年経っても軽率に故郷に戻っては駄目!
158
恋愛
伯爵令嬢であるオリビアは、この世界が前世でやった乙女ゲームの世界であることに気づく。このまま学園に入学してしまうと、死亡エンドの可能性があるため学園に入学する前に家出することにした。婚約者もさらっとスルーして、早や5年。結局誰ルートを主人公は選んだのかしらと軽率にも故郷に舞い戻ってしまい・・・
2話完結を目指してます!
天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、
自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。
……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!?
「転ばないで」
「可愛いって言うのは僕の役目」
「固定回復役だから。僕の」
優しいのに過保護。
仲間のはずなのに距離が近い。
しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。
鈍感で頑張り屋なリィナと、
策を捨てるほど恋に負けていくカイの、
コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕!
「遅いままでいい――置いていかないから。」
【完結】傷物令嬢は近衛騎士団長に同情されて……溺愛されすぎです。
朝日みらい
恋愛
王太子殿下との婚約から洩れてしまった伯爵令嬢のセーリーヌ。
宮廷の大広間で突然現れた賊に襲われた彼女は、殿下をかばって大けがを負ってしまう。
彼女に同情した近衛騎士団長のアドニス侯爵は熱心にお見舞いをしてくれるのだが、その熱意がセーリーヌの折れそうな心まで癒していく。
加えて、セーリーヌを振ったはずの王太子殿下が、親密な二人に絡んできて、ややこしい展開になり……。
果たして、セーリーヌとアドニス侯爵の関係はどうなるのでしょう?
P.S. 推し活に夢中ですので、返信は不要ですわ
汐瀬うに
恋愛
アルカナ学院に通う伯爵令嬢クラリスは、幼い頃から婚約者である第一王子アルベルトと共に過ごしてきた。しかし彼は言葉を尽くさず、想いはすれ違っていく。噂、距離、役割に心を閉ざしながらも、クラリスは自分の居場所を見つけて前へ進む。迎えたプロムの夜、ようやく言葉を選び、追いかけてきたアルベルトが告げたのは――遅すぎる本心だった。
※こちらの作品はカクヨム・アルファポリス・小説家になろうに並行掲載しています。
じゃない方の私が何故かヤンデレ騎士団長に囚われたのですが
カレイ
恋愛
天使な妹。それに纏わりつく金魚のフンがこの私。
両親も妹にしか関心がなく兄からも無視される毎日だけれど、私は別に自分を慕ってくれる妹がいればそれで良かった。
でもある時、私に嫉妬する兄や婚約者に嵌められて、婚約破棄された上、実家を追い出されてしまう。しかしそのことを聞きつけた騎士団長が何故か私の前に現れた。
「ずっと好きでした、もう我慢しません!あぁ、貴方の匂いだけで私は……」
そうして、何故か最強騎士団長に囚われました。
私を簡単に捨てられるとでも?―君が望んでも、離さない―
喜雨と悲雨
恋愛
私の名前はミラン。街でしがない薬師をしている。
そして恋人は、王宮騎士団長のルイスだった。
二年前、彼は魔物討伐に向けて遠征に出発。
最初は手紙も返ってきていたのに、
いつからか音信不通に。
あんなにうっとうしいほど構ってきた男が――
なぜ突然、私を無視するの?
不安を抱えながらも待ち続けた私の前に、
突然ルイスが帰還した。
ボロボロの身体。
そして隣には――見知らぬ女。
勝ち誇ったように彼の隣に立つその女を見て、
私の中で何かが壊れた。
混乱、絶望、そして……再起。
すがりつく女は、みっともないだけ。
私は、潔く身を引くと決めた――つもりだったのに。
「私を簡単に捨てられるとでも?
――君が望んでも、離さない」
呪いを自ら解き放ち、
彼は再び、執着の目で私を見つめてきた。
すれ違い、誤解、呪い、執着、
そして狂おしいほどの愛――
二人の恋のゆくえは、誰にもわからない。
過去に書いた作品を修正しました。再投稿です。
嫌われたと思って離れたのに
ラム猫
恋愛
私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。
距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。
魔力ゼロと捨てられた私を、王子がなぜか離してくれません ――無自覚聖女の王宮生活――
ムラサメ
恋愛
伯爵家で使用人同然に扱われてきた少女、エリナ。
魔力も才能もないとされ、義妹アリシアの影で静かに生きていた。
ある日、王国第一王子カイルの視察で運命が動き出す。
誰も気づかなかった“違和感”に、彼だけが目を留めて――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる