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最良の一手
しおりを挟む「ぐふっ!!」
咄嗟に腕でガードするもその隙間を縫われ、脇腹に重い衝撃が走る。
「メージュさん!!」
「はははっ、姫を護るナイトにしては軟弱過ぎるな! シーラ! さっさとコイツにトドメを刺せ!」
ぐううっ……このまま大人しく殺されてたまるか。
身体を襲う激痛に耐えながらも、ナイフを持ったシーラの腕を必死で掴み続ける。
どう考えても女性とは思えない力強さだ……でも、死んだって離すものか。
「シーラ! 止めてっ、メージュさんは私を救ってくれた人なのよ!!」
「逃げろリアラっ! 今の彼女は……キミの知っているシーラじゃないんだっ!!」
しかしリアラは僕の制止を無視し続ける。
泣きながらシーラにしがみついて、必死に止めようとしてくれていた。
くそっ、僕が死んだらリアラが連れていかれてしまう。
暗闇の世界からやっと抜け出し、せっかく外の景色を知ることが出来たのに……ちくしょう、何か策は無いのか!?
「お願いシーラ……私、ようやく貴女の姿を見れたのに……シーラを真似た人形だって、今なら上手にできるのに……!!」
リアラは泣きじゃくりながら、手の平からシーラと同じ姿をした小さな人形を生み出した。
どうやら最初に見たあの真っ黒な土偶はモンスターではなく、シーラがモデルだったようだ。
目が見えない中でも、リアラは彼女を想って人形を何度も作り続けていたのだろう……。
敵国のスパイだったとはいえ、きっとシーラも彼女を愛していたに違いない。
その証拠に……そうだ、これならもしかすると……!!
「ごめん、リアラ。実は一つ、キミに隠していたことがある」
「え?」
「僕の祝福……『コネクト』は、自分の見たモノを相手に伝えるだけじゃない。相手の記憶や感情を、自分の中に取り込むこともできるんだ……」
これは僕の大事な秘密だ。
過去に人の記憶を覘いて自分自身が傷付き、それ以来封印していたもう一つの能力。
「もしかして」
「……あぁ。僕はコイツに触れ、記憶を覘かせてもらった。そしてシーラの本当の気持ちも。だから繋がせてもらうよ。一度は切れてしまった、二人の絆を」
リアラとシーラに触れている今なら、それができる。
二人を救えるのは――僕しかいない!
「コネクト、発動っ……!!」
空いている方の手をリアラの頭にそっと乗せる。
二人の間にいる僕を中継し、意識が両方を行き来していくのを感じる。
――成功した。これで記憶が共有され、過去の思い出が甦るはずだ。
「うぐっ……」
「……シーラ!!」
情報を一気に脳に叩き込まれた影響か、シーラが床に崩れ落ちた。
だがお陰で正気を取り戻すことができたみたいだな。
息を荒くさせながら、僕を見上げるシーラ。
その潤んだ黒い瞳には、動揺と罪悪感が混ざっていた。
「……すまない」
「良いさ……それよりも――あとは頼んだ」
僕の言葉の意図を理解し、シーラはナイフを持った手を引いた。
そしてヨロヨロと起き上がると、今度は騎士の方へと向き直る。
「ふっ、無駄な足掻きを。そんなナイフ一本で何ができる。貴様はイイ女だったが、こうなってしまっては仕方がない。俺が直々に始末してやろう。安心するがいい、貴様の大事な姫様は俺が大事に使ってぎゃあああっ!?」
シーラは騎士の台詞を最後まで聞くことなく行動に移した。
持っていたナイフを投擲し、瓶を握っていた手に見事ヒットさせたのだ。
完全な不意打ちを喰らってしまった騎士は地面にエリクサーを取り落とし、瓶はコロコロと転がっていった。
「貴方は一々、喋り過ぎなんですよ。――さぁ、リアラ様。手伝っていただけますか?」
「シーラ……えぇ。メージュさんを傷付けた報いは受けていただきましょう!!」
リアラの手から次々と現れる凶悪な武器たち。
それを手にしたシーラが騎士に向かって駆けていく。
あの様子ならもう、大丈夫だろう。
僕は薄れゆく意識の中、男の悲鳴を聞きながらゆっくりと目を閉じていった。
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