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貴方こそ光
しおりを挟む「あれ? ここは……?」
重たい目蓋を開いたものの、薄暗くて状況が良く分からない。
と、誰かが自分の傍にいることに気が付いた。
「天国ですよ、メージュさん」
「そうか、僕は死んだのか……って、リアラ?」
天使にでも声を掛けられたのかと思ったけれど、それは何度も聞き慣れたリアラの声だった。
ここで漸く、ついさっきまで戦闘中だったことを思い出す。
「アイツは……エリクサーはどうなった!?」
ガバっと起き上がると、そこはまだミードのダンジョンだった。
部屋もあの最奥の間のままだ。
シーラに刺されたお腹をさすってみるも、痛みがない。
というより、傷は完全に治っている。なぜ……?
「ふっ、ふふふ……あははは!!」
何がどうなったのか分からず慌てている僕の様子を見て、リアラは大口を開けて笑っている。
「リアラ、まさか君は……」
「ふふっ。感謝してくださいよ? とっても貴重なお薬だったんですからね」
そういって悪戯が成功したかのように微笑むリアラだが、彼女の目は開いていない。
それはつまり……
「リアラ様は、自身の視力よりメージュ殿の治療を優先しました……全ては私の所為です」
「そう、か……」
リアラの隣りに立っていたメイド服姿の少女が悔しそうに呟いた。しかしこればっかりはシーラの所為ではないし、責めるつもりもない。
むしろ僕がもっとしっかりしてさえいれば……!!
だけど当の本人であるリアラは何故か嬉しそうにニコニコとしている。
「いいんです、気にしないでください。こうして無事にシーラも帰ってきたことですし。……それとも、メージュさんはもう私なんて用済み、なんですか?」
コテン、と首を傾けて僕に尋ねるリアラ。
どうやらコレは本心で言っているようだ。
「いやまさか……キミのことは……その……」
「ねぇ、メージュさん。私が見た、初めての景色って何だったか……覚えていますか?」
「初めて見た……景色?」
それって僕が住んでいた、オンボロ宿屋のこと?
「私が見た最初の光は、メージュさん……貴方でした。あの時、メージュさんはこの手で私に触れながら、優しく微笑んでくれていました。あの光景は一生忘れることができません」
「そう、か……で、でもっ……」
「ふふっ。今度は臆病を治すエリクサーでも探しますか?」
「うぐっ、違う!! ただ僕はキミの幸せを願っ……むぐっ!?」
ちゃんと説明しようとして慌てて開いた口を、強引に塞がれてしまった。
「ふふっ、メージュさん、顔が真っ赤ですよ?」
「か、顔色なんて見えないだろ!? 今は『コネクト』してないぞ!」
「いーえ、分かります。……私には、分かっちゃうんですから」
そ、そんな馬鹿な……僕の能力が無くても!?
「あのお淑やかだったリアラ様が……こんな男を手玉に取るような真似を……」
僕とメイドの二人はあまりのショックに、ガックリと頭を垂れた。
その様子を見ていたリアラはケタケタと明るく笑う。そんな彼女の楽しそうな声は、いつまでもダンジョンの中を木霊し続けていた。
こうして僕達はミードのダンジョンから無事に生還することができた。
エリクサーでリアラの目は治せなかったけれど、お互いに一番欲しかったものは手に入った。
僕は名声よりも大事な人と、それを守る勇気を。
リアラは愛する家族を。
クリスティアの街に帰還したのち、僕たちは新しく旅に出ることにした。
僕とリアラにメイドのシーラを入れ、改めて三人の冒険者パーティになったのだ。
生まれ変わった今の僕には、新しい夢がある。
それは広い世界をもっともっと冒険すること。
彼女の知らない光を沢山見せてあげたいんだ。
「さぁ、次はどんな景色を探しに行こうか!!」
~完~
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