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反撃の狼煙
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「くっ、手ごわいな……」
この日のために相当訓練されていたのだろう。人形のように一言も発さず、仲間が倒れようとお構いなしに次々と襲ってくる。
それまで善戦していたシルヴィニアスも遂に力尽き、床に膝を突いてしまった。
「足が動かない……ここまでか……」
目を開けているのも辛くなってきた。
――もう、無駄に抵抗するのもやめよう……。
頭を項垂れさせ、最期の瞬間が訪れるのをじっと待つ。
……が、その時が何故か一向にやって来ない。
いったいどうしたのかと、おそるおそる顔を上げてみる。
毒草の効果が切れたのか、立ち込めていた煙が晴れてきた。そしてそこには――
「どうして……どうしてターニャが!!」
「シルヴィ……ニアスさ、ま……」
彼の視界に入ったのは、腹部を短剣で貫かれているターニャの姿だった。それもシルヴィニアスを庇うようにして。
「わた、し……貴族じゃ、ないから……動け……」
「そうだがっ、そんな事を言っているんじゃない! どうして逃げなかったんだ!! どうして僕なんかを庇った!!」
床に崩れ落ちるターニャ。痺れる身体をどうにか引き摺りながら、彼女の元へ這っていく。そして純白のドレスを自分の血で赤く染めていく彼女を抱き寄せた。
「だって、しるヴぃ、さまは……私の、家ぞくになる人だ、から……」
「おいっ、ターニャ……しっかりしろっ!!」
「わた、しは、貴方を……」
ターニャは愛するシルヴィニアスの頬に、震える両手を添えた。
彼は涙を流しながらその手を必死に掴み、彼女の名を叫ぶ。
「ターニャ……死んじゃ駄目だ、ターニャ!!」
彼の願いもむなしく、彼女の瞳は次第に光を失っていく。
それでも神に縋る様に、シルヴィニアスは願い続けた。
「たのむ神獣様……僕のターニャを……家族を助けて……」
彼のその悲痛な願いが通じたのだろうか。シルヴィニアスの身体がぼんやりと光り始めた。
異変に気付いた襲撃者たちも、慌てて彼を止めようとするが……それはもう手遅れだった。
眩いほどの銀光がシルヴィニアスを包み込む。
まるでサナギから蝶へとなるように。彼の身体が変わっていく。
頭部から狼のようなフサフサの耳が生え、口には鋭い犬歯が揃い。そして背中には、もふもふの尻尾。
――そう、これが本来の彼の姿だった。
シルヴィニアスは己を解放し、真の神獣人となったのだ。
「……ありがとう、ターニャ。そして神獣様。これで僕は――愛する家族を失わずに済む」
心からの感謝と愛を込めて、ターニャの唇にキスを落とす。その瞬間、出血が続いていたターニャの傷がシュワシュワと音を立てて塞がっていった。
「さぁ、起きてターニャ。目覚めの時間だよ」
「う、ん……?」
先程まで死に掛けていたターニャも、深い眠りから目覚めるかのように、ゆっくりと目蓋を開く。
「シルヴィ……? なんだかキレ、い……」
「ターニャはそのまま待ってて。すぐに終わらせてくるから」
ぼうっと自分を見つめてくるターニャを優しく床に降ろす。そして顔を恐ろしい獰猛な笑みへと変え、襲撃者に向き直った。
「さぁ、僕の大事な家族を傷付けた罪を、君たちの命で償ってもらおうか」
この日のために相当訓練されていたのだろう。人形のように一言も発さず、仲間が倒れようとお構いなしに次々と襲ってくる。
それまで善戦していたシルヴィニアスも遂に力尽き、床に膝を突いてしまった。
「足が動かない……ここまでか……」
目を開けているのも辛くなってきた。
――もう、無駄に抵抗するのもやめよう……。
頭を項垂れさせ、最期の瞬間が訪れるのをじっと待つ。
……が、その時が何故か一向にやって来ない。
いったいどうしたのかと、おそるおそる顔を上げてみる。
毒草の効果が切れたのか、立ち込めていた煙が晴れてきた。そしてそこには――
「どうして……どうしてターニャが!!」
「シルヴィ……ニアスさ、ま……」
彼の視界に入ったのは、腹部を短剣で貫かれているターニャの姿だった。それもシルヴィニアスを庇うようにして。
「わた、し……貴族じゃ、ないから……動け……」
「そうだがっ、そんな事を言っているんじゃない! どうして逃げなかったんだ!! どうして僕なんかを庇った!!」
床に崩れ落ちるターニャ。痺れる身体をどうにか引き摺りながら、彼女の元へ這っていく。そして純白のドレスを自分の血で赤く染めていく彼女を抱き寄せた。
「だって、しるヴぃ、さまは……私の、家ぞくになる人だ、から……」
「おいっ、ターニャ……しっかりしろっ!!」
「わた、しは、貴方を……」
ターニャは愛するシルヴィニアスの頬に、震える両手を添えた。
彼は涙を流しながらその手を必死に掴み、彼女の名を叫ぶ。
「ターニャ……死んじゃ駄目だ、ターニャ!!」
彼の願いもむなしく、彼女の瞳は次第に光を失っていく。
それでも神に縋る様に、シルヴィニアスは願い続けた。
「たのむ神獣様……僕のターニャを……家族を助けて……」
彼のその悲痛な願いが通じたのだろうか。シルヴィニアスの身体がぼんやりと光り始めた。
異変に気付いた襲撃者たちも、慌てて彼を止めようとするが……それはもう手遅れだった。
眩いほどの銀光がシルヴィニアスを包み込む。
まるでサナギから蝶へとなるように。彼の身体が変わっていく。
頭部から狼のようなフサフサの耳が生え、口には鋭い犬歯が揃い。そして背中には、もふもふの尻尾。
――そう、これが本来の彼の姿だった。
シルヴィニアスは己を解放し、真の神獣人となったのだ。
「……ありがとう、ターニャ。そして神獣様。これで僕は――愛する家族を失わずに済む」
心からの感謝と愛を込めて、ターニャの唇にキスを落とす。その瞬間、出血が続いていたターニャの傷がシュワシュワと音を立てて塞がっていった。
「さぁ、起きてターニャ。目覚めの時間だよ」
「う、ん……?」
先程まで死に掛けていたターニャも、深い眠りから目覚めるかのように、ゆっくりと目蓋を開く。
「シルヴィ……? なんだかキレ、い……」
「ターニャはそのまま待ってて。すぐに終わらせてくるから」
ぼうっと自分を見つめてくるターニャを優しく床に降ろす。そして顔を恐ろしい獰猛な笑みへと変え、襲撃者に向き直った。
「さぁ、僕の大事な家族を傷付けた罪を、君たちの命で償ってもらおうか」
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