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ざまぁなんて現実にはないから
しおりを挟む(スーパー爆発事件から10年ほど前)
私の今の名前は伊森茉莉奈。
20歳で2児の母だ。
……シングルマザーのね。
最初の結婚は高校2年生の時だったかな。
たまたまバイトしていた先の社員と結婚をして、長男のハヤトを産んだ。
まぁ数年もしないうちにその人はそのバイト先で浮気して、アッサリ別れたんだけどね。
今考えてみると、彼は女子高校生と付き合っているってブランドが欲しかっただけなのかなーって思う。
――カチッ。カチッ。
なぜかタバコを吸う男が好きで、よく隣で元旦那のライターをこうやって触ってたっけ。
未だに私は、彼が置いていったライターをイジる癖だけは止められない。
タバコの代わりに、透明な色の息をふぅ、と一つ吐いた。
再び独り身となった私は、生活のために仕事を始めた。
……ははは。結局私は、なーんにも懲りてなかったんだろうね。
そこで仲良くなった男と交際、また結婚。
そして今度は長女のミクを出産。
うーん、次の彼は優しい人だったよ?
でも、優しいだけ。
口では甘ったるい言葉を吐くけれど、お金を稼いでくるのは私だけなんだよ。
……もう、笑っちゃうよね~。
職場の女に手を出して居づらくなったのかなぁ?
黙って仕事を辞めちゃってさ、家で子どもとゴロゴロするだけになったのよ。
最初はそれでも良かった。
だって私がお金を稼ぎさえすれば、家には家族が居るんだもん。
私って元々の家庭が母子家庭だったしさぁ。
とは言ってもパパとは偶に会ってはいたし、ママが居たからそれほど寂しくはなかったけど。
……でも普通の家族っていうのに凄く憧れたんだ。
だから、私が頑張れば家族が手に入る。
――そう、思ってたんだけどなぁ。
結局、彼は暇を持て余していたんだろうね。
あの人、私が仕事で不在の間に家のお金を持ち出してギャンブルにハマっちゃった。
ケンカばっかりになって、優しかった彼は変わった。
いっつも不機嫌だし、家事もしなくなった。
で、私。気付いちゃったんだよね。
『この人、本当に私の家族なの?』って。
ただの居候にしか見えなくなっちゃった私は、この人を追い出した。
……でも、それじゃ甘かったんだろうなぁ。
あの人はいつの間にか作っていたスペアキーで家に侵入して、ウチのお金を盗んでいった。
もちろん、その後は警察を呼んで処理してもらったけど。
私に残ったのはボロボロになった家具とココロ、それと泣き喚く子ども達。
早々に捕まったアイツとはさっさと離婚したよ。
もう居候どころかただの犯罪者。
そんな奴、私の大事な家族の敵だもん。
――カチッ。カチッ。
私がここ数年に起こった出来事を要約して話し終えると、無言になったリビングにライターの音がよく響く。
久々に会った目の前の幼馴染の男は、無駄に難しい顔をして俯いている。
コイツもコイツで大概だよなぁ……
こんな面倒臭い女と、未だにこうして友人関係を続けているのだから。
まぁ、コイツが今考えていることも分かっちゃう私も私か。
どうせこの男は「自分がこの人にできることはないか!?」なんて甘っちょろいことを考えているのだ。
その証拠に、考えたり悩んだりする時に指をトントンする癖が出ている。
そして「でも成人になったばかりの大学生だし、子ども2人を養う甲斐性も無いから、2人目の旦那と同じになってしまう」とでも思っているのだろう。
「伊……ま、マリナは今、不自由とかしてるのか?」
「ふふふっ」
マズい。思わず場違いな笑いが出てしまった。
だって「コロコロ苗字が変わるから名前で呼んで」って言ったら、もの凄く恥ずかしがるんだもん。
笑われたことに気付いたカナデが、真っ赤な顔をしながら私の方を向いた。
「どうしたんだよ。人が真剣に考えてるっていうのに」
まったく、いつまでたっても相変わらずヘタレなんだからこの幼馴染は。
ちょっとぐらい男らしく……なくてもいっか、カナデは。
中学時代に告白してきた時に比べたら、とってもカッコ良くなったよ。
……それこそ、私なんかにはもったいないくらいにね。
まだ素直に美味しいとも思えない缶ビールを2人のコップに継ぎ足すと、私は乾いた喉をチビりと潤した。
「ううっ、やっぱり苦いなぁ……」
「……たしかに。大人の味なんて、俺らにゃまだ分かんねーな」
少ししんみりとなってしまった場の空気を変えようと、ビールの話題にすり替える私達。
あはは。なんだか無駄にこういう思考は昔からずっと似ているんだよね。
子ども達に買っておいたはずのポテトチップスをパリポリとツマミにしながら、大人になりきれない二人の夜はこんな感じに静かに更けていった。
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