Another story ~幼馴染からいきなりプロポーズ!?既に子持ちの私に今さら「君とは結婚できない」とか言ってきてももう遅い~

ぽんぽこ@3/28新作発売!!

文字の大きさ
3 / 5

ざまぁなんて現実にはないから

しおりを挟む

(スーパー爆発事件から10年ほど前)

 私の名前は伊森いもり茉莉奈まりな
 20歳で2児の母だ。
 ……シングルマザーのね。

 最初の結婚は高校2年生の時だったかな。
 たまたまバイトしていた先の社員と結婚をして、長男のハヤトを産んだ。
 まぁ数年もしないうちにその人はそのバイト先で浮気して、アッサリ別れたんだけどね。
 今考えてみると、彼は女子高校生と付き合っているってブランドが欲しかっただけなのかなーって思う。

 ――カチッ。カチッ。

 なぜかタバコを吸う男が好きで、よく隣で元旦那のライターをこうやって触ってたっけ。
 未だに私は、彼が置いていったライターをイジる癖だけはめられない。
 タバコの代わりに、透明な色の息をふぅ、と一つ吐いた。

 再び独り身となった私は、生活のために仕事を始めた。
 ……ははは。結局私は、なーんにもりてなかったんだろうね。
 そこで仲良くなった男と交際、また結婚。
 そして今度は長女のミクを出産。

 うーん、次の彼は優しい人だったよ?
 でも、優しいだけ。
 口では甘ったるい言葉を吐くけれど、お金を稼いでくるのは私だけなんだよ。
 
 ……もう、笑っちゃうよね~。
 職場の女に手を出して居づらくなったのかなぁ?
 黙って仕事を辞めちゃってさ、家で子どもとゴロゴロするだけになったのよ。

 最初はそれでも良かった。
 だって私がお金を稼ぎさえすれば、家には家族が居るんだもん。

 私って元々の家庭が母子家庭だったしさぁ。
 とは言ってもパパとはたまに会ってはいたし、ママが居たからそれほど寂しくはなかったけど。
 ……でもっていうのに凄く憧れたんだ。
 だから、私が頑張れば家族が手に入る。
 ――そう、思ってたんだけどなぁ。

 結局、彼は暇を持て余していたんだろうね。
 あの人、私が仕事で不在の間に家のお金を持ち出してギャンブルにハマっちゃった。

 ケンカばっかりになって、優しかった彼は変わった。
 いっつも不機嫌だし、家事もしなくなった。
 で、私。気付いちゃったんだよね。
 『この人、本当に私の家族なの?』って。

 ただの居候いそうろうにしか見えなくなっちゃった私は、この人を追い出した。
 ……でも、それじゃ甘かったんだろうなぁ。
 あの人はいつの間にか作っていたスペアキーで家に侵入して、ウチのお金を盗んでいった。
 もちろん、その後は警察を呼んで処理してもらったけど。
 私に残ったのはボロボロになった家具とココロ、それと泣きわめく子ども達。

 早々に捕まったアイツとはさっさと離婚したよ。
 もう居候どころかただの犯罪者。
 そんな奴、私の大事な家族の敵だもん。

 ――カチッ。カチッ。

 私がここ数年に起こった出来事を要約して話し終えると、無言になったリビングにライターの音がよく響く。
 久々に会った目の前の幼馴染の男カナデは、無駄に難しい顔をしてうつむいている。

 コイツもコイツで大概たいがいだよなぁ……
 こんな面倒臭いわたしと、いまだにこうして友人関係を続けているのだから。

 まぁ、コイツが今考えていることも分かっちゃう私も私か。
 どうせこの男は「自分カナデこの人わたしにできることはないか!?」なんて甘っちょろいことを考えているのだ。

 その証拠に、考えたり悩んだりする時に指をトントンする癖が出ている。

 そして「でも成人になったばかりの大学生だし、子ども2人を養う甲斐性かいしょうも無いから、2人目の旦那と同じになってしまう」とでも思っているのだろう。

「伊……ま、マリナは今、不自由とかしてるのか?」
「ふふふっ」

 マズい。思わず場違いな笑いが出てしまった。
 だって「コロコロ苗字が変わるから名前で呼んで」って言ったら、もの凄く恥ずかしがるんだもん。

 笑われたことに気付いたカナデが、真っ赤な顔をしながら私の方を向いた。

「どうしたんだよ。人が真剣に考えてるっていうのに」

 まったく、いつまでたっても相変わらずヘタレなんだからこの幼馴染は。
 ちょっとぐらい男らしく……なくてもいっか、カナデは。
 中学時代に告白してきた時に比べたら、とってもカッコ良くなったよ。
 ……それこそ、私なんかにはもったいないくらいにね。

 まだ素直に美味しいとも思えない缶ビールを2人のコップに継ぎ足すと、私は乾いた喉をチビりとうるおした。

「ううっ、やっぱり苦いなぁ……」
「……たしかに。大人の味なんて、俺らにゃまだ分かんねーな」

 少ししんみりとなってしまった場の空気を変えようと、ビールの話題にすり替える私達。
 あはは。なんだか無駄にこういう思考は昔からずっと似ているんだよね。

 子ども達に買っておいたはずのポテトチップスをパリポリとツマミにしながら、大人になりきれない二人の夜はこんな感じに静かに更けていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どう見ても貴方はもう一人の幼馴染が好きなので別れてください

ルイス
恋愛
レレイとアルカは伯爵令嬢であり幼馴染だった。同じく伯爵令息のクローヴィスも幼馴染だ。 やがてレレイとクローヴィスが婚約し幸せを手に入れるはずだったが…… クローヴィスは理想の婚約者に憧れを抱いており、何かともう一人の幼馴染のアルカと、婚約者になったはずのレレイを比べるのだった。 さらにはアルカの方を優先していくなど、明らかにおかしな事態になっていく。 どう見てもクローヴィスはアルカの方が好きになっている……そう感じたレレイは、彼との婚約解消を申し出た。 婚約解消は無事に果たされ悲しみを持ちながらもレレイは前へ進んでいくことを決心した。 その後、国一番の美男子で性格、剣術も最高とされる公爵令息に求婚されることになり……彼女は別の幸せの一歩を刻んでいく。 しかし、クローヴィスが急にレレイを溺愛してくるのだった。アルカとの仲も上手く行かなかったようで、真実の愛とか言っているけれど……怪しさ満点だ。ひたすらに女々しいクローヴィス……レレイは冷たい視線を送るのだった。 「あなたとはもう終わったんですよ? いつまでも、キスが出来ると思っていませんか?」

【完結】少年の懺悔、少女の願い

干野ワニ
恋愛
伯爵家の嫡男に生まれたフェルナンには、ロズリーヌという幼い頃からの『親友』がいた。「気取ったご令嬢なんかと結婚するくらいならロズがいい」というフェルナンの希望で、二人は一年後に婚約することになったのだが……伯爵夫人となるべく王都での行儀見習いを終えた『親友』は、すっかり別人の『ご令嬢』となっていた。 そんな彼女に置いて行かれたと感じたフェルナンは、思わず「奔放な義妹の方が良い」などと言ってしまい―― なぜあの時、本当の気持ちを伝えておかなかったのか。 後悔しても、もう遅いのだ。 ※本編が全7話で悲恋、後日談が全2話でハッピーエンド予定です。 ※長編のスピンオフですが、単体で読めます。

【完結】大好きなあなたのために…?

月樹《つき》
恋愛
私には子供の頃から仲の良い大好きな幼馴染がいた。 2人でよく読んだ冒険のお話の中では、最後に魔物を倒し立派な騎士となった男の子と、それを支えてきた聖女の女の子が結ばれる。 『俺もこの物語の主人公みたいに立派な騎士になるから』と言って、真っ赤な顔で花畑で摘んだ花束をくれた彼。あの時から彼を信じて支えてきたのに… いつの間にか彼の隣には、お姫様のように可憐な女の子がいた…。

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

俺の可愛い幼馴染

SHIN
恋愛
俺に微笑みかける少女の後ろで、泣きそうな顔でこちらを見ているのは、可愛い可愛い幼馴染。 ある日二人だけの秘密の場所で彼女に告げられたのは……。 連載の気分転換に執筆しているので鈍いです。おおらかな気分で読んでくれると嬉しいです。 感想もご自由にどうぞ。 ただし、作者は木綿豆腐メンタルです。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

私のブルースター

くびのほきょう
恋愛
家で冷遇されてるかわいそうな侯爵令嬢。そんな侯爵令嬢を放って置けない優しい幼馴染のことが好きな伯爵令嬢のお話。

隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり

鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。 でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。

処理中です...