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2-1♡ 王子ミケラッティオの初恋
しおりを挟む古より勇者を輩出し続ける巨大国家、ルネイサス王国。
この世界で最も強い権勢を誇る国であり、非常に長い歴史を持っている。
かといって、他国を侵攻したり民から搾取したりといったことはしていない。
代々の王族は女神に祝福を受けていると同時に監視もされていて、もし悪政を敷けば直ちに天罰が下るからだ。
これは伝説でも何でもなく、過去に実際あった歴史の一ページとしてしっかり記録されている。よって、当代の国王であるフレイ王もそれに漏れず、国にのために尽くす賢王として民から慕われていた。
さらに王族にはとある役目がある。
それは、女神によって選ばれた勇者を最大限支援すること。
フレイ王の一番末の王子、ミケラッティオは剣士として勇者の魔王を討伐する旅に同行し、栄えある英雄の仲間入りを見事果たした。
彼はその旅の後、栄光を自らの出世の為に利用したりはしなかった。
将来の王や宰相となる兄達を支えるために、自ら騎士団入りを志願したのだ。
それも、魔王討伐によって不要扱いになってしまった傭兵を、自身が新しく作った第三騎士団に迎え入れるという形で。
周囲も彼の類稀なる剣の実力とその謙虚さ、そして周囲を見ることができる目を絶賛し、また兄達も彼を誇りに思った。
驕らず鍛錬を続け、王族の権力を振りかざすことも無く平民たちとも気さくに話すその姿は誰から見ても好感が持てる好青年だった。
――しかしミケ本人は自身のことを、そんな聖人のような高潔な人物だとは思っていなかった。
今の彼は美しい金髪を汗に濡らし、均整の取れた筋肉質の身体を惜しみなく晒しながら、ベッドの上で裸になっている女に腰をひたすら振っていた。
「ううっ、モナ……モナ……」
王太子では無いものの、望めばある程度のものは手に入るミケ。
しかしそんな彼にも手に入らないものがある。
初恋の相手である聖女、モナもその内のひとつだ。
愛する人を想いつつも、彼は王である父から教育の一環として宛がわれている王族専用の女に今日も精を吐き出す。
専用と言っても娼婦ではなく、キチンとそれなりの身分を持った女性だ。
貴族の妾の子だったり、豪商の娘だったりと、細くとも王族と繋がりを持ちたい父親が自身の子を差し出すことがある。
親の都合で自らの身体を差し出す羽目になる娘にとっては、全くもって不幸でしかないことではある。だが、このミケに限ってはむしろ自分から志願する女が後を絶たない。
現在彼に後背位で貫かれている女もその一人。
なにせ相手は世界を救った英雄で家柄も最高峰。さらに顔や性格も良いとあれば、王国中を探しても彼ほどのイイ男は居ないだろう。
彼に抱かれることで、むしろ自身のステータスが高まる……と思うのはそこまで不思議な話ではない。
――それがたとえ、行為の間中ずっと自分とは違う女の名を叫んでいたとしても。
「うっ……す、すまない。つい……」
「いいんですのよ、ミケラッティオ様。でも同じ女として嫉妬してしまいますわね、その聖女様に」
「……すまない。だが、このことは」
「ふふふ、分かっておりますわ。その代わり、次はちゃんと私のことを愛してくださいましね?」
「わ、分かったよ……」
普段の飄々とした態度とは打って変わって、戦闘中における剣戟の鋭さと一歩も引かぬ勇猛さから、共に戦場に出たものからは“情熱の王子”と呼ばれている。
それは性行為中も同じで、壊れるほどに激しく、相手を孕ませてやるという欲望に満ちた感情を露わにして女を抱く。
兄弟の中でも末っ子で家族からの愛に飢えていたことが原因なのか、もしくは本命との恋愛が上手くいかないことへの憂さ晴らしなのか。
女へ自分への証を刻み付けることで充足感を得ようとする、ミケの誰にも明かせない弱さが本人さえにも無自覚にそうさせているのかもしれない。
とはいえ、この女の方はそんなミケの情熱的な性行為に夢中になっていた。
そう、この愛する彼が敬想する相手に本気で嫉妬してしまうほどに。
「うっ……くそっ、僕のモノになれっ! 僕の……僕だけの……!!」
「ううぅん……ミケ様ぁっ!! もっと、もっとぉ……ああっ!」
鍛え上げた身体を最大限に使って、目の前の女を容赦なく蹂躙する。
まるでモンスターを槍で突き殺すかのように荒々しく、気遣いもないピストンが逆に女を快楽の波に溺れさせる。
傍目から見た彼らは人間同士の愛を確かめ合う行為というよりも、これではただの獣同士の交尾だ。しかし彼らはそれで良かった。それが、良かったのだ。
そしてこの後、文字通りミケの精根が尽き果てるまで、この淫欲の宴は何度も何度も繰り返された。
だいぶモナへの恋心を拗らせてしまっている彼だが、つい先日も彼女にその想いを伝えたばかりだったりもする。
それはモナと勇者レオが王都周辺のモンスター狩りから帰ってきた、翌日のことであった。
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