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2-2 魔王様の嫉妬
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勇者レオと聖女モナが王都周辺のモンスター狩りから帰ってきた晩。
二人を迎えたミケとリザは、常連となっている酒場でいつものように飲み明かした。
だが、レオとモナの様子がどうにもおかしい。
どこか余所余所しいのである。
そんな彼らを見て、ミケは訝しんでいた。
魔王討伐の旅では常に四人で寝食を共にしていた為にまだ安心していたが、今回は違う。
なにしろ、想い合っているだろう男女二人が一週間近くも一緒に居たのだ。
これで何もなかったという方がおかしい。
実際にはあったにはあったのだが……。
この僅か一週間のうちに、二人の気持ちに少しずつ変化が訪れていた。
それをミケは宴会の席のやり取りで感じ取ってしまった。
未だにモナに懸想していた彼は、非常に焦った。
もしかしたら完全にレオに奪われてしまったかもしれない、と。
表面上ではレオとの恋愛を応援しているテイを取っているが、実際には嫉妬の嵐が吹き荒れていた。
そうして自分を抑えきれなくなったミケは次の日、彼女を呼び出すことにした。
◇
「どうしたの、ミケ。貴方がこうやって街のカフェに誘うなんて珍しいわね」
「いや、その……うん。ちょっとね……」
ここは王都でも一番人気の喫茶店。
この世界で採れるフルーツをふんだんに使ったスイーツは平民のみならず、貴族の息女たちがお忍びでやってくるほどだ。
外にあるテーブルも満席だが、ミケは王子である特権を利用して事前に予約したようだ。
完璧なテーブルマナーでナイフとフォークを扱いながら美しく一口ずつ食べる様子はモナをもってしても見惚れるほど。普段は甘っちょろい男でも、こうしたさり気ない所作で彼が王子なのだと再確認させられる。
周囲に居る女性たちも、彼のにじみ出る王族のオーラと甘いフェイスにため息を吐いている。
だが当の本人であるミケはそんな周りを見る余裕も無かった。
こうして呼び出したのは良いものの、どう切り出したらいいのか全くわからない。
旅の間に何があったの、もしかしてもう結ばれてしまったの……なんて、言えるわけがない。
取り敢えず、日常会話や業務連絡に近いことから口火を切ることにした。
「そうだ、父上が戦勝パレードを三日後の“女神祭”に合わせて執り行うってさ。王都を上げた盛大なお祭りをやるんだって珍しく張り切っていたよ」
「そう、なんだか恥ずかしいわね……」
「でも主役が出席しない訳にはいかないだろう?」
「ふふ、そうね。きっとレオなら大喜びで目立とうとするでしょうけど」
テーブルの上に置かれた紅茶をひと口飲んで微笑む。
この喫茶店オリジナルのブレンドティーも美味しいが、彼女が嬉しそうな顔をしているのはそれのお陰ではない。
想像している男が自分では無いことに、ミケは苛立ちが更に募る。
「レオといえば、二人旅はどうだったんだ?」
「えっ、それはその……ふつうよ?」
……そんなわけがないだろう。
モナは昔から感情を隠すのが下手過ぎる。
「やっぱり、なにかあったんだね」
「えっ、そんなこと……」
「へぇ。僕には言えないことでもしていた?」
その行為を想像してしまったミケは剣呑な目をする。
彼らしくない、やや強めの口調で詳細を尋ねる。
ミケの父である国王陛下に似た威圧に少しだけ口を開きかけてしまった。
しかし、モナも契約がある。
赤の他人には言ってはいけないのだ。
ミケもそれ以上追及することが出来ず、お互いに黙ってしまう。
「……ごめん。ちょっと意地が悪かったよ」
「ううん……ごめんね、ミケ」
謝るものの、気まずくなってしまった二人。
これ以上この話題に触れないようにして、日常会話を楽しむことにした。
旅の話から、お互いの家族の話。
そのうち、モナとミケが出会った頃の思い出を語り合っていた。
◇
いつも通り王族の為の勉強をサボって、王城の庭園を歩いていたミケ。
だが周りの衛兵も同情しているのか、それとも諦めてしまったのか彼を咎める者は居ない。
兄と比較ばかりされる癖に、どれだけ頑張っても評価もされず、王にもなれない。
しかも兄より優秀な剣の腕前でさえ、兄弟同士の試合では勝つなと師に言われる始末。
当然、彼はグレにグレていた。
そんなやさぐれていた彼と、たまたま先代聖女の母と一緒に城へ訪れていたモナは出逢った。
当時ミケは十歳になったばかり。モナはその一つ年上だった。
母レジーナはこの機会に、娘と同年代のミケを友人にさせようと画策したのだろう。
一緒に遊んでおいで、とモナは棒切れを振り回して遊んでいるミケのもとへ送り出される。
「こんにちは! ねぇ、何をしているの!?」
「……チッ」
「きゃあっ!?」
なんと、ミケは持っていた棒でモナのスカートをめくったのだ。
もちろん、周囲には彼を警護する兵隊たちや世話係の侍女たちもいる。
そんな衆目環視のもとで年頃の少女の下着を公開したのだ。
普通の貴族令嬢だったらその場で泣くか、逃げ出すほどの恥だ。
しかし、モナは普通では無かった。
――バシン!!
「……え?」
「サイテーよ、アナタ。王子だか何だか知らないけど、そんなんじゃイイ男になんか慣れなわいわよ!!」
左頬に真っ赤なモミジをしたアホ面を晒しながら、ミケはポカーンとしていた。
そして真っ直ぐに自分の瞳を見つめるモナを見て――すぐにもう片方の頬も朱に染めた。
◇
「アレは本当に痛かったよ。まさか王子である僕に手を上げる女性が居るなんてね」
「もうあの時のことは忘れてよ!! 本当に恥ずかしかったんだからね!?」
(忘れられないさ。あの時、キミは僕のことを王族ではなく、ただの人間として見てくれた。その陰でまっとうに生きようって目覚めさせてくれたんだから)
あのまま腐っていたら魔王討伐にも参加せず、剣も捨てて放蕩生活をしていただろう。
挙句の果てに王族からも廃嫡されて、どこかでのたれ死んでいたかもしれない。
(こうして誰からも認められるようになったのは……モナのお陰だよ。だから僕は……)
ミケは立ち上がり、モナが座っている椅子の隣りに歩いてくる。
そして片膝をついて跪くと、モナを真っ直ぐに見た。
かつてモナが彼を見つめた時のように、ミケもモナの瞳を射抜くような表情で。
「モナ、僕はキミのことが好きだ。愛している」
「え?」
「もちろん、キミがレオのことを好きなのは知っている。もしかしたらもう恋人なのかもしれない」
「そ、そんなことっ……ま、まだ……」
サラサラとしたミケの金色の細い髪が太陽に反射して光る。
いつものふざけた様子は一切なく、王子らしい振舞いで――実際に王子なのだが――求愛をする姿に、二人の空間だけが切り取られたようになった。
周囲の乙女たちも大口を開いて固まり、他の男子たちは王子の様子を固唾を飲んで見守っていた。
一方のモナはといえば、突然の告白にしどろもどろになってしまっていた。
ミケからの好意は以前からなんとなく以前から気付いていたものの、ここまでストレートに告白なんてされたこともない。
「ふっ、なら僕にもチャンスがあるということかい?」
「でも私は彼が……」
「それでも僕はキミを落とすために全力を尽くす。レオには悪いけれどね」
「ミケ……」
モナの気持ちはレオから動くつもりは微塵もない。
だけど弟に近い存在に、こんなにも押されるとは思っていなかった。
あわあわしている彼女の様子を見て、ミケはクスリと笑った。
「取り敢えず今日は宣戦布告だけさ。なぁ、そこで聴いているんだろ……レオ?」
「えっ!?」
チラ、と店の物陰の方を見ると、そこからモナも良く知っている声が返ってきた。
「……良く気付いたなミケ」
「ふん、僕だって魔王討伐のメンバーなんだ。侮って貰っては困る。……それに剣の腕はともかく、恋愛に関してはボクの方が一歩リードしているかもよ?」
ミケはそういうと、固まっているモナの顔に近付いていく。
――チュッ
「えっ、ええっ……!?」
「おいっ、ミケお前ッ!?」
目の前で、頭と頭が重なる。
それを見たウルでさえも、思わず驚きの声を上げた。
「安心しなよ。ただ頬にキスしただけだ。貴族の御令嬢にするように……ね」
あくまでも社交辞令かのように言うが、精々手の甲にキスを落とす程度だ。
だが平民であるモナや、元々人間ではなかったウルはそんなこと知らない。
驚く二人を見て王子らしい爽やかな笑みを浮かべると、席から立ち上がった。
「ここの会計はボクが持っておくよ。レオもモナとゆっくりしておくといい。……じゃあ、またねモナ」
それだけ言うと、ミケは颯爽と街の雑踏の中へと消えていった。
(な、なんだったの……? ――ッ!?)
あまりの急展開にポカンとしていたら、自分の隣りで魔力の膨れ上がるのを感じて飛び上がってしまった。
そちらを見ると、その原因となった人物は不敵な笑みをしながら拳を震わせていた。
「くくく、魔王を挑発するとはやるじゃないか」
「ちょっと、こんなところで魔力を暴走させないでよ! ……ってなんでそんな怒っているの!? 今の貴方、目がすっごく怖いわよ」
何故か不機嫌モードのウル。そしてその彼にビビるモナ。
口では笑っているのに、目が完全に座っている。
魔王として対峙した時とはまた別の怖さだ。
このまま放っておけば、いったい何をしだすか分からない怖さがある。
「……別に。それより、もう帰るよ」
「ちょっと、待ってよ。あっ、分かったってば。行くから腕を引っ張らないでってば!!」
結局レオたちは何も注文することも無く、カフェから出てしまう。
ウルはそれでもモナを解放することなく、一緒に彼の自宅へと向かうのであった。
二人を迎えたミケとリザは、常連となっている酒場でいつものように飲み明かした。
だが、レオとモナの様子がどうにもおかしい。
どこか余所余所しいのである。
そんな彼らを見て、ミケは訝しんでいた。
魔王討伐の旅では常に四人で寝食を共にしていた為にまだ安心していたが、今回は違う。
なにしろ、想い合っているだろう男女二人が一週間近くも一緒に居たのだ。
これで何もなかったという方がおかしい。
実際にはあったにはあったのだが……。
この僅か一週間のうちに、二人の気持ちに少しずつ変化が訪れていた。
それをミケは宴会の席のやり取りで感じ取ってしまった。
未だにモナに懸想していた彼は、非常に焦った。
もしかしたら完全にレオに奪われてしまったかもしれない、と。
表面上ではレオとの恋愛を応援しているテイを取っているが、実際には嫉妬の嵐が吹き荒れていた。
そうして自分を抑えきれなくなったミケは次の日、彼女を呼び出すことにした。
◇
「どうしたの、ミケ。貴方がこうやって街のカフェに誘うなんて珍しいわね」
「いや、その……うん。ちょっとね……」
ここは王都でも一番人気の喫茶店。
この世界で採れるフルーツをふんだんに使ったスイーツは平民のみならず、貴族の息女たちがお忍びでやってくるほどだ。
外にあるテーブルも満席だが、ミケは王子である特権を利用して事前に予約したようだ。
完璧なテーブルマナーでナイフとフォークを扱いながら美しく一口ずつ食べる様子はモナをもってしても見惚れるほど。普段は甘っちょろい男でも、こうしたさり気ない所作で彼が王子なのだと再確認させられる。
周囲に居る女性たちも、彼のにじみ出る王族のオーラと甘いフェイスにため息を吐いている。
だが当の本人であるミケはそんな周りを見る余裕も無かった。
こうして呼び出したのは良いものの、どう切り出したらいいのか全くわからない。
旅の間に何があったの、もしかしてもう結ばれてしまったの……なんて、言えるわけがない。
取り敢えず、日常会話や業務連絡に近いことから口火を切ることにした。
「そうだ、父上が戦勝パレードを三日後の“女神祭”に合わせて執り行うってさ。王都を上げた盛大なお祭りをやるんだって珍しく張り切っていたよ」
「そう、なんだか恥ずかしいわね……」
「でも主役が出席しない訳にはいかないだろう?」
「ふふ、そうね。きっとレオなら大喜びで目立とうとするでしょうけど」
テーブルの上に置かれた紅茶をひと口飲んで微笑む。
この喫茶店オリジナルのブレンドティーも美味しいが、彼女が嬉しそうな顔をしているのはそれのお陰ではない。
想像している男が自分では無いことに、ミケは苛立ちが更に募る。
「レオといえば、二人旅はどうだったんだ?」
「えっ、それはその……ふつうよ?」
……そんなわけがないだろう。
モナは昔から感情を隠すのが下手過ぎる。
「やっぱり、なにかあったんだね」
「えっ、そんなこと……」
「へぇ。僕には言えないことでもしていた?」
その行為を想像してしまったミケは剣呑な目をする。
彼らしくない、やや強めの口調で詳細を尋ねる。
ミケの父である国王陛下に似た威圧に少しだけ口を開きかけてしまった。
しかし、モナも契約がある。
赤の他人には言ってはいけないのだ。
ミケもそれ以上追及することが出来ず、お互いに黙ってしまう。
「……ごめん。ちょっと意地が悪かったよ」
「ううん……ごめんね、ミケ」
謝るものの、気まずくなってしまった二人。
これ以上この話題に触れないようにして、日常会話を楽しむことにした。
旅の話から、お互いの家族の話。
そのうち、モナとミケが出会った頃の思い出を語り合っていた。
◇
いつも通り王族の為の勉強をサボって、王城の庭園を歩いていたミケ。
だが周りの衛兵も同情しているのか、それとも諦めてしまったのか彼を咎める者は居ない。
兄と比較ばかりされる癖に、どれだけ頑張っても評価もされず、王にもなれない。
しかも兄より優秀な剣の腕前でさえ、兄弟同士の試合では勝つなと師に言われる始末。
当然、彼はグレにグレていた。
そんなやさぐれていた彼と、たまたま先代聖女の母と一緒に城へ訪れていたモナは出逢った。
当時ミケは十歳になったばかり。モナはその一つ年上だった。
母レジーナはこの機会に、娘と同年代のミケを友人にさせようと画策したのだろう。
一緒に遊んでおいで、とモナは棒切れを振り回して遊んでいるミケのもとへ送り出される。
「こんにちは! ねぇ、何をしているの!?」
「……チッ」
「きゃあっ!?」
なんと、ミケは持っていた棒でモナのスカートをめくったのだ。
もちろん、周囲には彼を警護する兵隊たちや世話係の侍女たちもいる。
そんな衆目環視のもとで年頃の少女の下着を公開したのだ。
普通の貴族令嬢だったらその場で泣くか、逃げ出すほどの恥だ。
しかし、モナは普通では無かった。
――バシン!!
「……え?」
「サイテーよ、アナタ。王子だか何だか知らないけど、そんなんじゃイイ男になんか慣れなわいわよ!!」
左頬に真っ赤なモミジをしたアホ面を晒しながら、ミケはポカーンとしていた。
そして真っ直ぐに自分の瞳を見つめるモナを見て――すぐにもう片方の頬も朱に染めた。
◇
「アレは本当に痛かったよ。まさか王子である僕に手を上げる女性が居るなんてね」
「もうあの時のことは忘れてよ!! 本当に恥ずかしかったんだからね!?」
(忘れられないさ。あの時、キミは僕のことを王族ではなく、ただの人間として見てくれた。その陰でまっとうに生きようって目覚めさせてくれたんだから)
あのまま腐っていたら魔王討伐にも参加せず、剣も捨てて放蕩生活をしていただろう。
挙句の果てに王族からも廃嫡されて、どこかでのたれ死んでいたかもしれない。
(こうして誰からも認められるようになったのは……モナのお陰だよ。だから僕は……)
ミケは立ち上がり、モナが座っている椅子の隣りに歩いてくる。
そして片膝をついて跪くと、モナを真っ直ぐに見た。
かつてモナが彼を見つめた時のように、ミケもモナの瞳を射抜くような表情で。
「モナ、僕はキミのことが好きだ。愛している」
「え?」
「もちろん、キミがレオのことを好きなのは知っている。もしかしたらもう恋人なのかもしれない」
「そ、そんなことっ……ま、まだ……」
サラサラとしたミケの金色の細い髪が太陽に反射して光る。
いつものふざけた様子は一切なく、王子らしい振舞いで――実際に王子なのだが――求愛をする姿に、二人の空間だけが切り取られたようになった。
周囲の乙女たちも大口を開いて固まり、他の男子たちは王子の様子を固唾を飲んで見守っていた。
一方のモナはといえば、突然の告白にしどろもどろになってしまっていた。
ミケからの好意は以前からなんとなく以前から気付いていたものの、ここまでストレートに告白なんてされたこともない。
「ふっ、なら僕にもチャンスがあるということかい?」
「でも私は彼が……」
「それでも僕はキミを落とすために全力を尽くす。レオには悪いけれどね」
「ミケ……」
モナの気持ちはレオから動くつもりは微塵もない。
だけど弟に近い存在に、こんなにも押されるとは思っていなかった。
あわあわしている彼女の様子を見て、ミケはクスリと笑った。
「取り敢えず今日は宣戦布告だけさ。なぁ、そこで聴いているんだろ……レオ?」
「えっ!?」
チラ、と店の物陰の方を見ると、そこからモナも良く知っている声が返ってきた。
「……良く気付いたなミケ」
「ふん、僕だって魔王討伐のメンバーなんだ。侮って貰っては困る。……それに剣の腕はともかく、恋愛に関してはボクの方が一歩リードしているかもよ?」
ミケはそういうと、固まっているモナの顔に近付いていく。
――チュッ
「えっ、ええっ……!?」
「おいっ、ミケお前ッ!?」
目の前で、頭と頭が重なる。
それを見たウルでさえも、思わず驚きの声を上げた。
「安心しなよ。ただ頬にキスしただけだ。貴族の御令嬢にするように……ね」
あくまでも社交辞令かのように言うが、精々手の甲にキスを落とす程度だ。
だが平民であるモナや、元々人間ではなかったウルはそんなこと知らない。
驚く二人を見て王子らしい爽やかな笑みを浮かべると、席から立ち上がった。
「ここの会計はボクが持っておくよ。レオもモナとゆっくりしておくといい。……じゃあ、またねモナ」
それだけ言うと、ミケは颯爽と街の雑踏の中へと消えていった。
(な、なんだったの……? ――ッ!?)
あまりの急展開にポカンとしていたら、自分の隣りで魔力の膨れ上がるのを感じて飛び上がってしまった。
そちらを見ると、その原因となった人物は不敵な笑みをしながら拳を震わせていた。
「くくく、魔王を挑発するとはやるじゃないか」
「ちょっと、こんなところで魔力を暴走させないでよ! ……ってなんでそんな怒っているの!? 今の貴方、目がすっごく怖いわよ」
何故か不機嫌モードのウル。そしてその彼にビビるモナ。
口では笑っているのに、目が完全に座っている。
魔王として対峙した時とはまた別の怖さだ。
このまま放っておけば、いったい何をしだすか分からない怖さがある。
「……別に。それより、もう帰るよ」
「ちょっと、待ってよ。あっ、分かったってば。行くから腕を引っ張らないでってば!!」
結局レオたちは何も注文することも無く、カフェから出てしまう。
ウルはそれでもモナを解放することなく、一緒に彼の自宅へと向かうのであった。
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