52 / 55
5-11 黒幕の正体
しおりを挟む「どうして来たんだ、モナ!!」
「ふふふっ、丁度良かったよ。これで役者は整ったようだ」
ウルの伝言にあった忠告には従わず、母であるレジーナを誘拐した犯人の元へとやって来た。
母はスラム街にある駐屯地に監禁されているらしいが、そちらは別の人物に任せておいた。
教会の祭壇にはウルと犯人が相対している。
幼い頃からずっと一緒に育ってきたはずのミケは、普段の人懐っこい表情から悪人の顔になってしまっている。それがなによりもショックだった。
「ミケ……どうして」
「だから言っただろう! 僕を選ばないと大事な人間を失うってな! 聖女の癖に役目を放り出して、こんな奴と添い遂げようなんてするからだ! ましてやコイツの中身は魔王だぞ。それをキミは分かってるのか!?」
どんな方法を使ったのか、ウルはロープで身体を拘束されて身動きが取れないようだ。
ひざ裏を蹴り、床に跪かせる。彼の銀髪を鷲掴み、物のように見せつけてきた。ミケにとって、彼はもう仲間でも何でもないようだ。
「そんな他人が勝手に決めたことなんて知らないわよ! それに分かってないのはミケの方でしょう!! アンタ、いったい何をしたのか分かってるの? 人のお母さんを拉致しておいて好きだなんて、その口で良く言えたわね!!」
「うるさい!! そんなのは僕の指示じゃない!」
彼の本性というべきか、昔の我が儘だった部分がまたぶり返してしまっているように見える。
自分の思い通りに行かないと拗ね、自分がやったことを棚に上げて他人のせいにする。
ともかく、彼の口からポロっと重要なセリフが出てきた。
すべてがこのウルの独断だと思っていたが、それはどうやら違ったらしい。
「……どういうこと?」
「ふはははっ。僕は偉大なる神に選ばれたんだ。この偽物勇者なんかより、僕を選んだ!! だから僕こそが勇者なんだよ!! アハハハッ!!」
「な、何を言ってるのよ? 先代聖女であるお母さんが、そこのレオが勇者だって女神様から宣託を……」
もう一緒に旅をした時の彼は居なくなってしまった。気が狂ったようにクルクルと回りながら喜びの声を上げている。
「だからそれが間違いだったんだよ。これから僕は神の加護を得て、新たに真の勇者となる。そしてモナと結ばれるのは、僕ひとりだ!!」
「ちょ、ちょっと待ってよ。アンタまさか、その神って……」
何かに気付いた様子を見て、ミケはニヤリと嗤った。
「そうさ。この世に神は他には居ない。キミの母に罰を与え、次なる勇者として僕を選んだのは――」
その時、三人しか居ないと思われた教会に四人目が現れた。
ゆっくりと女神像の後ろから出てきたのは、ローブを被った仮面の人物。
その人物を指差し、ミケは己の主人の正体を明かす。
「――他でもない、この世界の主神である女神様さ!」
0
あなたにおすすめの小説
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる