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◆アクテリア王国編

第2話 そこまで言われたらやるっきゃない。

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 身体を包み込む光から解放されると、そこには――

 映画で観たような石造りの部屋。
 足が埋まるほどのふっかふかな絨毯。
 目の前にはゴツい鎧の男たちと、玉座に座る豪奢な服を着たオッサン。
 
「え? なにこれ? 最新のVR世界??」

 目の前の状況が理解できず、早くも俺は現実逃避を始めていた。


「おぉっ! ついに! ついに成功したか!!」

「やりましたな王よ! これで我らの世界は救われます!」


 ワイワイ、ガヤガヤと俺を無視して騒ぎ始める見知らぬ男たち。
 いいやもう、今のうちに自分の状況を整理してみよう。 

 ……あれ? 何故か仕事着である白衣を着ている。
 他の持ち物は赤縁メガネと腕時計、それとポケットに入っていたスマホ。
 スマホは……そりゃあ圏外だよなぁ、と確かめていると、部屋の中で一番偉そうな男が話しかけてきた。


「ようこそおいでくださった! 勇者殿!」

「はい? ゆ、勇者ぁ!?」

「まぁまぁ、事情はこれから話す。落ち着いて聞いてほしい」

「はぁ……」
 
 そこからは様々な話を王様らしき人から聞かされた。話の時間こそそれなりに長かったが、内容は至ってシンプルだった。

『魔王倒して世界を平和にして欲しい』

 ……うん、要約するとそれだけだ。
 え、なにこれ。ここってゲームの世界なんじゃ?というくらい鉄板な話だった。
 
 
 話を少しだけ詳しく言えば――この世界には魔王が居て、更にはド定番のモンスター達もいるらしい。
 もちろん獣人もいるし、エルフもドワーフもいる。いわゆる、亜人と言われている人達だ。

 更にいえば、魔法もスキルも存在するんだと。
 ……なんだか、ラノベのあるあるネタを詰め込みすぎてないか?

 ただ聞いた中で特徴的だったのが、どうやらここは三つの世界でできているらしい。

 第一世界。一般的な人類が住んでいる世界、オルト
 第二世界。多種多様な亜人種が居るメタ
 第三世界。魔族が住み、魔王が君臨すると言われるパラ

 それぞれの種族が別の世界で暮らしているが、たまに大陸の各地で次元の歪みによるゲートができ、そこから人や動物などが移動してくるという。
 
 そして、どの世界でも国や王などが存在しているが、中でもパラ世界の魔王が好戦的で、オルト第一世界メタ第二世界にたびたび侵略してきているんだとか。

「だが魔王の狙いは分かっておる。あやつは我らの世界の資源を狙っておる」

 どうもその理由というのが、エネルギー資源の不足が問題らしい。
 地球でもどこかの国でそんなことがあったな、と頭をよぎったが、この世界も似たような状況だったようだ。

「私は王だ。玉座に座るものとして、我がアクテリア王国の民達をなんとしてでも護らねばならん。するとある日、信仰する女神から神託が降りてな。魔王を討伐する勇者を我らに与えてくれるとおっしゃった」

 女神? いや、俺が会ったのはジジイだったけど……。あぁ、もしかしたら、隣にいた寡黙な美少女の方か? ってことは、あの寡黙美少女はこの世界で崇拝されている女神ってことになるのか……。

 宰相だろうか、知的そうな男性が王の言葉を引き継ぐ。

「もちろん、突然召喚された勇者殿の負担ははかり知れぬだろう。それを和らげる為、我らも最大限の努力をしよう! まず、普段の生活から心のケアまで我々に任せて欲しい。当然、そなたの希望があれば何でも言ってくれたまえ。もちろん……物でも女性でも、な?」

 男の同性にしか共感できないであろう、宰相はニヤァとしたイヤらしい笑みを浮かべながら俺を説得にかかってくる。
 おいおい、最初に見た知的な宰相キャラはどこいったんだよ。さっそくイメージ崩れちゃったよ!!


 しかし召喚までの話はどうであれ、俺は現代日本に住む、平和ボケした一般人だ。そんな自分が恐ろしいモンスター達相手に命懸けで戦うなんて絶対に無理だ。

 普段は日本人の典型的な社畜のイエスマンだが、今は自分の命が掛かっている。
 よし、ここはちゃんと抗議しなくては。

「ちょっ……ちょっと待ってください! 問答無用でこの世界に連れてこられた挙句、モンスター達と戦争だなんて……無力で虫も殺せない心優しい俺には……」

「あぁ、言い忘れていた。召喚する際に、女神がお主に特別な能力を与えてくれたらしい。えぇーっと? 魔法全属性適性、魔力ブースト、スキル習得率UP、筋力UP、異世界語翻訳などの基本セットか。おぉ! 魅力増大なんかもあるな! きっと私の娘達も勇者殿を気に入るだろう。自慢になるが、中々の美人だぞ? で、なんか言いかけたようだが……?」

「はい、よろこんで! 勇者をやらせていただきます!! 末長くお願いしますお義父様!!」


 そこまで良い条件を出されて断れる男がいるか!? いねぇよなぁあ!!

 ――あぁ女神様、俺をこの世界に連れてきてくれてありがとう!!
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