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第2章 最初のお供は犬耳のアイツ
2-5 桃太郎の置き土産。
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むかしむかしのある日、とある山の中でのお話です。
すでに戦場と化していたその場所では、一人の人間と恐ろしい身なりをしたバケモノがおりました。
人間は育ての親を殺した鬼への復讐に燃える、桃太郎と云う男。
もう一方は邪神によって創造され、強力な力と残虐非道な心を持った鬼人。
その両者による命を懸けた戦いが今、遂に決しようとしていました。
◇
『ギャギャギャッ!!』
「あぁお前にも――麒麟の声が聞こえたか?」
俺が放った必殺技により、鬼人の中の一体が血の炎を巻き上げながら事切れた。
異界ではただのガキだったジジイが最強の剣の使い手だったババアに鍛えられ、その果てに編み出したのが――音戯流剣術、麒麟ノ憑依。
俺にも伝授されているこの秘技は、その見た目から四つの形態に分類されている。
そして俺がさっき放った炎駒も、麒麟の形態の一つだ。
燃えるような紅い鱗を持ち、それでいてしなやかな体躯をしている。
頭部からは白煙のような鬣をたなびかせ、幻獣の名に恥じぬ神秘的な雰囲気を纏っていた。
この麒麟は本来、優しい性格だと言われている。が、俺の目の前に居る麒麟は――
『ヒギャアアァアッ!!』
――反撃をしようとしていた鬼人の胴体を容赦なく喰らい千切っていた。
「言っただろ? 麒麟は争いを好まないって。まったく……俺の言う事を大人しく聞いていれば、そうなることは無かったんだぜ?」
既に鬼人の瞳からは生命の色は消え失せ、右手に持っていた棍棒をだらりと下げて絶命している。
驚きの表情をさらに濃くする鬼人たち。
さすがにこのままでは無駄死にするということを、アイツらはようやく気付いたのだろう。
数で攻めれば勝機があると勘違いしたのか、ヤツらがまとまって炎駒を攻撃しようと突進してきた。
「あ~ぁ……だから駄目だって言っているんだがなぁ」
『グギャッ!?』
仲間だった骸を喰らっていた炎駒が、目の前から一瞬で立ち消えたのだ。
数の有利を活かそうと思っていたはずの鬼人たちは想定外の事態に驚き、辺りを必死に見回している。群れの中に居たリーダー格らしい個体が慌てる鬼人たちをまとめ、連携して探そうと指揮を出し始めた。
――だが、見つかるはずがない。
『グゲッ!?』
――何故なら炎駒は既に、その鬼人の中にいるのだから。
神出鬼没の亡霊のようにリーダー格の鬼人の中からゆらり、と現れる炎駒。
鬼人の口からはドプリと血が溢れだし、そこからも炎が燃え上がる。
これで二匹減って、残り四匹。
指揮官を失った鬼人たちはもうメチャクチャだ。
――悲鳴を上げながら蜘蛛の子を散らすように逃げだすモノ。
――発狂したように闇雲に辺りを攻撃し始めるモノ。
どちらにせよ、俺との戦意は完全に喪失したみたいだ。
ここまできたらもう、俺がやることはないだろう。
さっさとルナのところに戻るか。
「よぉ、ルナもお疲れさん。無事だったか~?」
「な、何なのよさっきの技は……!?」
「んなことより、身体は大丈夫か?」
「そんなことって! 私は大丈夫だけど……」
大樹を背に、ゼェゼェと荒い息を吐きながらそう答えるルナ。
服はボロボロで地肌が見えてしまっているが、擦り傷程度で済んでいたようだ。
「それより、逃げていった鬼人は大丈夫なの?」
「あぁ、アイツらはもう終わった。……見ろよ」
「えっ……」
文字通り四方に散っていった鬼人は、既に地面の上で上下に泣き別れていた。
炎駒は既に消え失せ、辺りはルナによる魔法による残り火がユラユラとゆっくり消えていくところだった。
「ど、どういうことなの……? テイローはあの不思議な技を放っただけよね?」
「あぁ、炎駒か? 平和の使者である炎駒は殺意を見せたやつを決して赦さない。つまり攻撃を仕掛けたやつから、炎駒にその身を喰われていく仕組みの技だったんだよ」
だからこの技は戦闘本能むき出しの鬼人共に対しては効きやすい。
もちろん欠点や制限はあるから、こればっかり多用するわけにははいかないが。
「さて、あとは……ルナが出した消えない炎の後始末をどうするかだな……」
「あうぅ……ごめんなさい」
「だから謝ることねぇっての。第一、ルナのお陰で戦いが楽だったしな」
また涙目になってしまったせいで、フサフサだった犬耳がしょんぼりしている。
そんなルナの頭をポンポンと慰めるように優しく撫でてやると、少しだけ元気を取り戻したのか気持ちよさそうな表情を浮かべた。
それに今回みたいな集団戦だとルナの魔法は本当に有り難いのは紛れもない事実だ。
今後も鬼と戦争をするのであれば、コイツの魔法は重宝するだろう。
なにより、俺はルナのあの啖呵と心意気が気に入った。
「ん……? そういえば最後の鬼人たちの骸。あれはなんでルナの火が消えているんだ?」
「え? そういえば何故かしら。鬼人の生命が尽きたから……?」
「いや、ルナの失言魔法は周りの魔力も喰って燃えるんだろ? 現に最初の魔法は消えてないじゃないか」
そう、目の前にある緑色の炎。
この元たき火は、戦闘をしている間もずっとボウボウと音を立てて燃えていた。
これと原理が一緒なら、鬼人たちを燃やしていた魔法も消えない筈なんだよな。
「……もしかすると、だが」
「なに? どういうことなの?」
「わからねぇ。だから試す。ちょっとルナは離れていろ」
ルナを一旦その場から退避させ、俺は勇者の刀を構える。
そして……真一文字に、斬る。
――ずるり。
無形のものを斬ったとは思えぬ、粘り気のある感触。
そして炎自身も、ぐずりと崩れ落ちていく。
あれだけ何をしても燃え続けていた炎が、まるで蜃気楼のようにすうっと消えてしまった。
「……斬れた、な」
「すごい……消えちゃった」
「あぁ。だが、これで予想は当たったな。良くも悪くも、だが」
「ちょっと! なんで魔法使いの私を差し置いてテイローが気付いちゃうのよ!? ちゃんと私にも分かるように説明してよ!!」
説明と言われても、俺にも詳しい原理なんて分かりゃしねぇ。
だが、このジジイが使っていた勇者の刀には隠された力があった。
それも恐らく……。
「――魔喰いの刀。恐らく、コイツは魔力を喰って奪う妖刀の類なんだろう」
「妖刀……異界の勇者が使っていた刀に、そんな凄い力が……」
ただのよく斬れる刀ってだけじゃなかったんだな。
出所はジジイが使っていたっていう話しか知らなかったし、ジジイもそんな特殊な使い方なんて見せたこと無かったから俺も知らなかった。
「ん? そういやルナの国でジジイが勇者だったって有名なら、この刀についても知ってたんじゃねェの?」
散々あれだけ勇者だ妖狐の尻尾だって持て囃されていたんだ。
ジジイの技や武器だって広まっていたっておかしくはない。
「んーん。勇者については国王様の命令で国を挙げて保護していたの。だからどんな敵を倒したかとかって戦利報告はあっても、能力や戦闘方法についてはなるべく秘匿されていたのよ」
「へぇ、その辺は王族のお偉いさん達も頭が良かったんだな」
「もう! そんな失礼なことを貴族の前で言ったら、普通は不敬罪で打ち首よ!?」
いや、こんな森の中に貴族なんていねぇし。
……って、ルナは侯爵家の娘だったか。
まぁ、いちいち気にしそうなほど気難しそうじゃねぇからいっか。
「まぁ、とにかく。この刀を使えばルナの魔法が暴走したって俺様がどうにか出来るっつーことが判明したわけだな」
「あっ……!」
「だからルナ。お前は好きなように、好きなだけ鬼どもをブチ殺せ。後始末なら俺がやってやるからよ」
「テイロー……!!」
「ありがとう……」と泣きそうな声を出しながら、俺の胸にそっと身体を預けるルナ。
いや、本当にそういうの弱いんで勘弁してください……俺の中の童貞がまた変な方向に拗らせて、いやあの当たってるんです。
俺の妖刀が覚醒してしまいそうなんでこれ以上は……!!
「ふぅ、ババアの笑顔を思い出して何とか事なきを得たぜ……」
「ご、ごめんね? ちょっと私も興奮しちゃって」
「お、おう? 気にすんな? むしろありがとう??」
お互いに顔を真っ赤にさせて俯いてしまう。
……鬼どもの骸が散乱している森の中で。
とにかく、魔喰いの刀を使うことであの炎を無事に消火することが出来た。
……あぁ、そうそう。
いちいち『魔喰いの刀』とか『勇者の刀』っていうのが面倒なので、ルナにこの刀に銘がついてないか聞いてみた。
「国の記録では『夢喰いの獏』って書かれていたわ。勇者様……貴方のお義父様はそれでも長いから『獏』って呼んでたみたいね」
確かに、刀の柄には何かのケモノが彫られていた。
恐らくコレが獏と呼ばれる所以なのだろう。
「この獏を使ったお陰で何とかなったが……この辺りがだいぶ焼けちまったなぁ。村の人間が見たら何て言うか……」
「うぅ~ん、確かにかなり派手に燃えちゃったわね。まるで『大』の字みたいに」
山の中を炎に巻かれた鬼人たちが逃げ回ったせいで、あちこちの木々がハゲたように焼け落ちてしまった。
いつもは居るはずの小鳥やリスなんかの動物たちもどこかに消えてしまっている。
「まぁ、大丈夫だろ。……誰かに見つかる前にさっさととんずらしようぜ」
「……そうね!」
◇
こうして桃太郎とルナは襲い来る鬼人を打ち倒し、仲間としての結束を高めたのでした。
ちなみに、この焼け跡の残った山ですが……。
突如文字が浮かび上がった謎の現象に、桃太郎達がいた村の住人達は案の定震えあがっておりました。
再び村を襲いに鬼人がやってきたのではないか?
あの桃太郎一家が消えたことと、なにか関係が……?
村を守ってくれていたあの家族はもう居ない。
数日の話し合いの末、勇気ある村人たち数人が謎を確かめるためにこの山へと訪れました。
そこで見たのは、散乱する鬼たちの骸と燃えた木々。
村人たちはすぐに、村の英雄たちのことを脳裏に浮かべました。
それはもちろん異国の勇者たち、そしてその息子。
あの優しい青年が村の為に戦ってくれたのだ、と。
また守ってもらっていたという事実に村人たちは泣き、新たな勇者の誕生に喜びました。
その後、村人たちは桃太郎が残した『大』の字をとても大切にしたそうな。
そして一年に一度、山にこの文字を模った篝火を上げる風習が生まれるようになったとさ。
めでたし、めでたし――??
すでに戦場と化していたその場所では、一人の人間と恐ろしい身なりをしたバケモノがおりました。
人間は育ての親を殺した鬼への復讐に燃える、桃太郎と云う男。
もう一方は邪神によって創造され、強力な力と残虐非道な心を持った鬼人。
その両者による命を懸けた戦いが今、遂に決しようとしていました。
◇
『ギャギャギャッ!!』
「あぁお前にも――麒麟の声が聞こえたか?」
俺が放った必殺技により、鬼人の中の一体が血の炎を巻き上げながら事切れた。
異界ではただのガキだったジジイが最強の剣の使い手だったババアに鍛えられ、その果てに編み出したのが――音戯流剣術、麒麟ノ憑依。
俺にも伝授されているこの秘技は、その見た目から四つの形態に分類されている。
そして俺がさっき放った炎駒も、麒麟の形態の一つだ。
燃えるような紅い鱗を持ち、それでいてしなやかな体躯をしている。
頭部からは白煙のような鬣をたなびかせ、幻獣の名に恥じぬ神秘的な雰囲気を纏っていた。
この麒麟は本来、優しい性格だと言われている。が、俺の目の前に居る麒麟は――
『ヒギャアアァアッ!!』
――反撃をしようとしていた鬼人の胴体を容赦なく喰らい千切っていた。
「言っただろ? 麒麟は争いを好まないって。まったく……俺の言う事を大人しく聞いていれば、そうなることは無かったんだぜ?」
既に鬼人の瞳からは生命の色は消え失せ、右手に持っていた棍棒をだらりと下げて絶命している。
驚きの表情をさらに濃くする鬼人たち。
さすがにこのままでは無駄死にするということを、アイツらはようやく気付いたのだろう。
数で攻めれば勝機があると勘違いしたのか、ヤツらがまとまって炎駒を攻撃しようと突進してきた。
「あ~ぁ……だから駄目だって言っているんだがなぁ」
『グギャッ!?』
仲間だった骸を喰らっていた炎駒が、目の前から一瞬で立ち消えたのだ。
数の有利を活かそうと思っていたはずの鬼人たちは想定外の事態に驚き、辺りを必死に見回している。群れの中に居たリーダー格らしい個体が慌てる鬼人たちをまとめ、連携して探そうと指揮を出し始めた。
――だが、見つかるはずがない。
『グゲッ!?』
――何故なら炎駒は既に、その鬼人の中にいるのだから。
神出鬼没の亡霊のようにリーダー格の鬼人の中からゆらり、と現れる炎駒。
鬼人の口からはドプリと血が溢れだし、そこからも炎が燃え上がる。
これで二匹減って、残り四匹。
指揮官を失った鬼人たちはもうメチャクチャだ。
――悲鳴を上げながら蜘蛛の子を散らすように逃げだすモノ。
――発狂したように闇雲に辺りを攻撃し始めるモノ。
どちらにせよ、俺との戦意は完全に喪失したみたいだ。
ここまできたらもう、俺がやることはないだろう。
さっさとルナのところに戻るか。
「よぉ、ルナもお疲れさん。無事だったか~?」
「な、何なのよさっきの技は……!?」
「んなことより、身体は大丈夫か?」
「そんなことって! 私は大丈夫だけど……」
大樹を背に、ゼェゼェと荒い息を吐きながらそう答えるルナ。
服はボロボロで地肌が見えてしまっているが、擦り傷程度で済んでいたようだ。
「それより、逃げていった鬼人は大丈夫なの?」
「あぁ、アイツらはもう終わった。……見ろよ」
「えっ……」
文字通り四方に散っていった鬼人は、既に地面の上で上下に泣き別れていた。
炎駒は既に消え失せ、辺りはルナによる魔法による残り火がユラユラとゆっくり消えていくところだった。
「ど、どういうことなの……? テイローはあの不思議な技を放っただけよね?」
「あぁ、炎駒か? 平和の使者である炎駒は殺意を見せたやつを決して赦さない。つまり攻撃を仕掛けたやつから、炎駒にその身を喰われていく仕組みの技だったんだよ」
だからこの技は戦闘本能むき出しの鬼人共に対しては効きやすい。
もちろん欠点や制限はあるから、こればっかり多用するわけにははいかないが。
「さて、あとは……ルナが出した消えない炎の後始末をどうするかだな……」
「あうぅ……ごめんなさい」
「だから謝ることねぇっての。第一、ルナのお陰で戦いが楽だったしな」
また涙目になってしまったせいで、フサフサだった犬耳がしょんぼりしている。
そんなルナの頭をポンポンと慰めるように優しく撫でてやると、少しだけ元気を取り戻したのか気持ちよさそうな表情を浮かべた。
それに今回みたいな集団戦だとルナの魔法は本当に有り難いのは紛れもない事実だ。
今後も鬼と戦争をするのであれば、コイツの魔法は重宝するだろう。
なにより、俺はルナのあの啖呵と心意気が気に入った。
「ん……? そういえば最後の鬼人たちの骸。あれはなんでルナの火が消えているんだ?」
「え? そういえば何故かしら。鬼人の生命が尽きたから……?」
「いや、ルナの失言魔法は周りの魔力も喰って燃えるんだろ? 現に最初の魔法は消えてないじゃないか」
そう、目の前にある緑色の炎。
この元たき火は、戦闘をしている間もずっとボウボウと音を立てて燃えていた。
これと原理が一緒なら、鬼人たちを燃やしていた魔法も消えない筈なんだよな。
「……もしかすると、だが」
「なに? どういうことなの?」
「わからねぇ。だから試す。ちょっとルナは離れていろ」
ルナを一旦その場から退避させ、俺は勇者の刀を構える。
そして……真一文字に、斬る。
――ずるり。
無形のものを斬ったとは思えぬ、粘り気のある感触。
そして炎自身も、ぐずりと崩れ落ちていく。
あれだけ何をしても燃え続けていた炎が、まるで蜃気楼のようにすうっと消えてしまった。
「……斬れた、な」
「すごい……消えちゃった」
「あぁ。だが、これで予想は当たったな。良くも悪くも、だが」
「ちょっと! なんで魔法使いの私を差し置いてテイローが気付いちゃうのよ!? ちゃんと私にも分かるように説明してよ!!」
説明と言われても、俺にも詳しい原理なんて分かりゃしねぇ。
だが、このジジイが使っていた勇者の刀には隠された力があった。
それも恐らく……。
「――魔喰いの刀。恐らく、コイツは魔力を喰って奪う妖刀の類なんだろう」
「妖刀……異界の勇者が使っていた刀に、そんな凄い力が……」
ただのよく斬れる刀ってだけじゃなかったんだな。
出所はジジイが使っていたっていう話しか知らなかったし、ジジイもそんな特殊な使い方なんて見せたこと無かったから俺も知らなかった。
「ん? そういやルナの国でジジイが勇者だったって有名なら、この刀についても知ってたんじゃねェの?」
散々あれだけ勇者だ妖狐の尻尾だって持て囃されていたんだ。
ジジイの技や武器だって広まっていたっておかしくはない。
「んーん。勇者については国王様の命令で国を挙げて保護していたの。だからどんな敵を倒したかとかって戦利報告はあっても、能力や戦闘方法についてはなるべく秘匿されていたのよ」
「へぇ、その辺は王族のお偉いさん達も頭が良かったんだな」
「もう! そんな失礼なことを貴族の前で言ったら、普通は不敬罪で打ち首よ!?」
いや、こんな森の中に貴族なんていねぇし。
……って、ルナは侯爵家の娘だったか。
まぁ、いちいち気にしそうなほど気難しそうじゃねぇからいっか。
「まぁ、とにかく。この刀を使えばルナの魔法が暴走したって俺様がどうにか出来るっつーことが判明したわけだな」
「あっ……!」
「だからルナ。お前は好きなように、好きなだけ鬼どもをブチ殺せ。後始末なら俺がやってやるからよ」
「テイロー……!!」
「ありがとう……」と泣きそうな声を出しながら、俺の胸にそっと身体を預けるルナ。
いや、本当にそういうの弱いんで勘弁してください……俺の中の童貞がまた変な方向に拗らせて、いやあの当たってるんです。
俺の妖刀が覚醒してしまいそうなんでこれ以上は……!!
「ふぅ、ババアの笑顔を思い出して何とか事なきを得たぜ……」
「ご、ごめんね? ちょっと私も興奮しちゃって」
「お、おう? 気にすんな? むしろありがとう??」
お互いに顔を真っ赤にさせて俯いてしまう。
……鬼どもの骸が散乱している森の中で。
とにかく、魔喰いの刀を使うことであの炎を無事に消火することが出来た。
……あぁ、そうそう。
いちいち『魔喰いの刀』とか『勇者の刀』っていうのが面倒なので、ルナにこの刀に銘がついてないか聞いてみた。
「国の記録では『夢喰いの獏』って書かれていたわ。勇者様……貴方のお義父様はそれでも長いから『獏』って呼んでたみたいね」
確かに、刀の柄には何かのケモノが彫られていた。
恐らくコレが獏と呼ばれる所以なのだろう。
「この獏を使ったお陰で何とかなったが……この辺りがだいぶ焼けちまったなぁ。村の人間が見たら何て言うか……」
「うぅ~ん、確かにかなり派手に燃えちゃったわね。まるで『大』の字みたいに」
山の中を炎に巻かれた鬼人たちが逃げ回ったせいで、あちこちの木々がハゲたように焼け落ちてしまった。
いつもは居るはずの小鳥やリスなんかの動物たちもどこかに消えてしまっている。
「まぁ、大丈夫だろ。……誰かに見つかる前にさっさととんずらしようぜ」
「……そうね!」
◇
こうして桃太郎とルナは襲い来る鬼人を打ち倒し、仲間としての結束を高めたのでした。
ちなみに、この焼け跡の残った山ですが……。
突如文字が浮かび上がった謎の現象に、桃太郎達がいた村の住人達は案の定震えあがっておりました。
再び村を襲いに鬼人がやってきたのではないか?
あの桃太郎一家が消えたことと、なにか関係が……?
村を守ってくれていたあの家族はもう居ない。
数日の話し合いの末、勇気ある村人たち数人が謎を確かめるためにこの山へと訪れました。
そこで見たのは、散乱する鬼たちの骸と燃えた木々。
村人たちはすぐに、村の英雄たちのことを脳裏に浮かべました。
それはもちろん異国の勇者たち、そしてその息子。
あの優しい青年が村の為に戦ってくれたのだ、と。
また守ってもらっていたという事実に村人たちは泣き、新たな勇者の誕生に喜びました。
その後、村人たちは桃太郎が残した『大』の字をとても大切にしたそうな。
そして一年に一度、山にこの文字を模った篝火を上げる風習が生まれるようになったとさ。
めでたし、めでたし――??
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