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第38話 魔王様、加護がほしいです
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「え、聖獣様から加護を貰った?」
ナバーナ村のゲンさんから動物の糞を貰ってから数日後。
堆肥作りの続きでもしようかと畑に向かった先で、キラキラと瞳を輝かせた犬獣人のクーが俺を出迎えた。いつもは垂れ気味な茶色耳もピンと立っちゃって、なんだかすごく嬉しそうだ。
「はいなのです!」
「よかったですね、クーちゃん。これで村での生活がもっと楽しくなりますね」
リディカ姫が笑顔でそう言うと、彼女はコクリと頷いた。
どうやら聖獣様の加護とやらのおかげで、クーは特定の動物と会話ができるようになったらしい。“特定の”というのは、範囲が村に関係のある動物に限定されているらしい。ということはつまり――。
「村のケルベロウシとも、仲良くなったのです!」
「何とビックリ、ミルクを分けてもらえるようになったんですって」
おぉ、マジか。これまでは畑のお手伝いしかできなかったのに、すごい進歩だな。
あれ? もしかしてクーがいれば、ナバーナ村のコッケも飼えるようになるんじゃないか?
「でもどうして急に加護を?」
「加護を与えるほどの力が溜まったンゴ! って言っていたであります!」
いったいいつの間に……あの白玉兎、温泉でずっとグータラしていたくせに。しかも真っ先にクーへ与えるなんて。そこは領主である俺を優先してくれても良くないか?
「クー、聖獣様にお願いしたのです! いっぱい働いて、もっと皆の役に立ちたいって!」
前言撤回。ウチの聖獣様はちゃんと分かってるわ。そんな健気な姿を見せられたら、誰だって何でもしてやりたくなるじゃないか!
俺は思わずニヤけてしまった口元を右手で隠すと、誤魔化すように咳払いをした。
「じゃあリディカ姫も?」
「はい。私は浄化の強化と、癒しの力を与えていただきました。これも村人限定ですが」
リディカ姫が右手を掲げると、彼女の体から淡く優しい光が放たれた。その光は、まるで蛍のようにゆっくりと点滅しながら空中を漂っている。
俺が人差し指を伸ばすと、そのうちの一匹が止まり、ゆっくりと俺の体内に吸収されていく。同時に体がふわっと軽くなった。
「おぉ、すごいな」
回復もできて、浄化も出来るのか。最強じゃん。
「浄化は、村の中限定ですし……私の力ではまだ、術師10人分ぐらいしか使えません。この村に来てからも練習を重ねていたのですが、やはりストラゼス様と比べるとまだまだですね」
そう言ってリディカ姫が眉尻を下げる。
彼女が日中の仕事が終わった後も、ずっと一人で頑張っていたのは俺も知っている。
でも魔王の魔力や勇者の体が異常なだけであって、リディカ姫も十分バケモノだと思うんだけどな……。
「リディカ姫の浄化は魔法の効果以外にも、心が温かくなれる気がするよ。できるなら毎晩寝る前に浴びたいぐらいだ」
「ストラゼス様ったら……」
俺が笑ってリディカ姫を励ますと、彼女は頬を赤らめながら微笑んだ。
「それじゃあ、俺も加護を貰いに行こうかな」
二人を見ていたら、自分も加護が欲しくなってきた。いったい俺はどんな新しい力を貰えるんだろうか。
元々の力を強化するような能力みたいだし、魔王と勇者のポテンシャルがある俺なら凄いことになるんじゃないのか?
そんな期待に胸を膨らませ、いざ聖獣ミラ様のいる温泉旅館(建設中)へ。
『すごい力をくれ? ぎゅもももっ! そんなことできるわけないンゴよ~、ぎゅもももっ!』
――はい?
ナバーナ村のゲンさんから動物の糞を貰ってから数日後。
堆肥作りの続きでもしようかと畑に向かった先で、キラキラと瞳を輝かせた犬獣人のクーが俺を出迎えた。いつもは垂れ気味な茶色耳もピンと立っちゃって、なんだかすごく嬉しそうだ。
「はいなのです!」
「よかったですね、クーちゃん。これで村での生活がもっと楽しくなりますね」
リディカ姫が笑顔でそう言うと、彼女はコクリと頷いた。
どうやら聖獣様の加護とやらのおかげで、クーは特定の動物と会話ができるようになったらしい。“特定の”というのは、範囲が村に関係のある動物に限定されているらしい。ということはつまり――。
「村のケルベロウシとも、仲良くなったのです!」
「何とビックリ、ミルクを分けてもらえるようになったんですって」
おぉ、マジか。これまでは畑のお手伝いしかできなかったのに、すごい進歩だな。
あれ? もしかしてクーがいれば、ナバーナ村のコッケも飼えるようになるんじゃないか?
「でもどうして急に加護を?」
「加護を与えるほどの力が溜まったンゴ! って言っていたであります!」
いったいいつの間に……あの白玉兎、温泉でずっとグータラしていたくせに。しかも真っ先にクーへ与えるなんて。そこは領主である俺を優先してくれても良くないか?
「クー、聖獣様にお願いしたのです! いっぱい働いて、もっと皆の役に立ちたいって!」
前言撤回。ウチの聖獣様はちゃんと分かってるわ。そんな健気な姿を見せられたら、誰だって何でもしてやりたくなるじゃないか!
俺は思わずニヤけてしまった口元を右手で隠すと、誤魔化すように咳払いをした。
「じゃあリディカ姫も?」
「はい。私は浄化の強化と、癒しの力を与えていただきました。これも村人限定ですが」
リディカ姫が右手を掲げると、彼女の体から淡く優しい光が放たれた。その光は、まるで蛍のようにゆっくりと点滅しながら空中を漂っている。
俺が人差し指を伸ばすと、そのうちの一匹が止まり、ゆっくりと俺の体内に吸収されていく。同時に体がふわっと軽くなった。
「おぉ、すごいな」
回復もできて、浄化も出来るのか。最強じゃん。
「浄化は、村の中限定ですし……私の力ではまだ、術師10人分ぐらいしか使えません。この村に来てからも練習を重ねていたのですが、やはりストラゼス様と比べるとまだまだですね」
そう言ってリディカ姫が眉尻を下げる。
彼女が日中の仕事が終わった後も、ずっと一人で頑張っていたのは俺も知っている。
でも魔王の魔力や勇者の体が異常なだけであって、リディカ姫も十分バケモノだと思うんだけどな……。
「リディカ姫の浄化は魔法の効果以外にも、心が温かくなれる気がするよ。できるなら毎晩寝る前に浴びたいぐらいだ」
「ストラゼス様ったら……」
俺が笑ってリディカ姫を励ますと、彼女は頬を赤らめながら微笑んだ。
「それじゃあ、俺も加護を貰いに行こうかな」
二人を見ていたら、自分も加護が欲しくなってきた。いったい俺はどんな新しい力を貰えるんだろうか。
元々の力を強化するような能力みたいだし、魔王と勇者のポテンシャルがある俺なら凄いことになるんじゃないのか?
そんな期待に胸を膨らませ、いざ聖獣ミラ様のいる温泉旅館(建設中)へ。
『すごい力をくれ? ぎゅもももっ! そんなことできるわけないンゴよ~、ぎゅもももっ!』
――はい?
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