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第100話 魔王様、仲間外れです
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~前回のあらすじ~
シャルンの息がメッチャ魚臭い。(マグマフィッシュジュースをお代わりした)
「でもマグマの中はワームの独壇場なんだろ? どうやって倒すんだよ?」
「もちろん泳ぐわ! こう見えても泳ぐのは得意なのよ!」
「アホか! 熱湯どころじゃない、高温の海なんだぞ!?」
「そんなの関係無いわ! さっきも平気だったもの!」
そう言ってシャルンは自慢げに両手をパタパタとさせた。その様子を見たバギンスが手を叩きながら大笑いした。
「ガハハッ! なるほど、嬢ちゃんは竜族の末裔なのか。ならマグマや極寒の雪国もヘッチャラだろうな!」
「雪は苦手だわ! だって泳げないもの!」」
「そうかそうか! そりゃ仕方ねぇな! ガハハハッ!!」
何が気に入ったのか、バギンスはでっぷりと膨らんだ腹を抱えて終始笑いっぱなしだ。
「ん~! 美味しいわね、このクッキー」
「おう、そうかそうか! どんどん食え!」
遂には自分の膝の上に座らせ、オヤツを与えて始めた。
背丈は二人とも同じくらいなのでだいぶ滑稽な光景だが、端から見ればまるで孫を可愛がる祖父と孫娘のようにも見える。バギンスもすっかり相好を崩し、国王らしい威厳はどっかに飛んで行ってしまっていた。
たしかにシャルンが何かを食べている姿は見ていて癒される……が、今はそうじゃない。
「バギンズさんやい。さすがにシャルン一人で行かせるってのは……」
不安しかないぞ? そんな俺の心配など微塵も気づいていないのか、シャルンは呑気にお茶をすすっている。すると彼女はチラリと横目でこちらを見た後、ピョンと膝の上から飛び降りた。
「もうっ、兄さまは心配のし過ぎ! アタシに任せておけば万事問題ないわ!」
そう言ってシャルンは、今まで見たこと無いようなドヤ顔で胸を張った。……張るような胸のふくらみは無いけれど。
そんな彼女にバギンズも楽しそうに「ガッハハ! 嬢ちゃんは頼もしいな!」と同意している。もうすっかり意気投合してしまったようだ。
そんな二人に呆れてため息を零していると、シャルンはプクーっとふくれっ面で俺を睨み付けてくる。
「そんなに心配なら分かったわよ! ねぇ、お爺ちゃん。こういう道具って作れるかしら?」
「うむ? ふむふむ? おぉ、できなくはないが……いや、こうすればもっと良い物ができる。どれ、ちょいと工場へ行って試作品を作ってみよう」
「さっすがドワーフの王! 話が分かるわね!」
「お、おい! 二人とも!?」
なにやらシャルンがコソコソと相談を始めたかと思えば、いきなり立ち上がったバギンスが彼女を連れて部屋を出て行ってしまった。しかも国王をお爺ちゃん呼びって、本当に孫と爺さんみたいになってんじゃねーか。
「シャルンのやつ、また勝手に……」
部屋に一人取り残されてしまった俺は、テーブルの上に広げられたままのティーセットを見て溜め息をひとつ。
シャルンが戻ってくる気配も無いので、俺は仕方なくソファーから立ち上がった。
「ぐあぁ……」
「……ゴメン、サラちゃんのことすっかり忘れてた」
「ぐぁ~」
部屋の端っこで置物のように立ったまま寝ていたサラちゃんが、眠そうなアクビをしていた。
◇
シャルンがマグマワームを討伐する方法を思い付き、ドワーフの王であるバギンスと何やら工作を始めてから約2時間。
開発と試作が終わったというので、俺たちは船の外にある再び陸地へと戻ってきていた。
「それで? 二人はいったい何を作っていたんだ?」
ドロドロと真っ赤な海が広がる風景を背に、自慢顔で仁王立ちをするシャルンに訊ねた。
出来上がってからのお楽しみだと言って応接室で待たされていた俺は結局、彼女たちが何を作っていたのか知らされていなかったのだ。
「へへへ……マグマ遊泳が危ないって兄様が言うから、じゃあワームをマグマから出せばいいって思い付いたの!」
「いや、だからそれができたらドワーフたちも苦労はしなかっただろ」
「もぉ~! 兄様も頭がカチカチなんだから! そんなんじゃお姉様に嫌われるよ!?」
「えぇー……」
俺が間違っているのだろうか? いや、常識的に考えてそんな単純な方法で問題が解決するとは思えない。
ていうかリディカは、それぐらいじゃ俺のことを嫌わないって。それに男は固すぎるぐらいが丁度いい……ってそれは下ネタか。
俺の微妙な表情を感じ取ったのか、シャルンはフンス!と鼻息を吐いた。
「いいから早くアタシの最高傑作を見てみてよ!」
そう言って彼女はピョンピョンと飛び跳ねて催促してきた。どうやらもう待ちきれないようだ。
「いや、そもそも作ったアイテムはどこに――」
「待たせたな!」
渋くて低い声が背後から掛けられる。
振り返ってみると、バギンスが数人のドワーフと共に大きな台車を引きながらやってくるところだった。
「なんじゃそりゃ……大砲?」
シャルンの息がメッチャ魚臭い。(マグマフィッシュジュースをお代わりした)
「でもマグマの中はワームの独壇場なんだろ? どうやって倒すんだよ?」
「もちろん泳ぐわ! こう見えても泳ぐのは得意なのよ!」
「アホか! 熱湯どころじゃない、高温の海なんだぞ!?」
「そんなの関係無いわ! さっきも平気だったもの!」
そう言ってシャルンは自慢げに両手をパタパタとさせた。その様子を見たバギンスが手を叩きながら大笑いした。
「ガハハッ! なるほど、嬢ちゃんは竜族の末裔なのか。ならマグマや極寒の雪国もヘッチャラだろうな!」
「雪は苦手だわ! だって泳げないもの!」」
「そうかそうか! そりゃ仕方ねぇな! ガハハハッ!!」
何が気に入ったのか、バギンスはでっぷりと膨らんだ腹を抱えて終始笑いっぱなしだ。
「ん~! 美味しいわね、このクッキー」
「おう、そうかそうか! どんどん食え!」
遂には自分の膝の上に座らせ、オヤツを与えて始めた。
背丈は二人とも同じくらいなのでだいぶ滑稽な光景だが、端から見ればまるで孫を可愛がる祖父と孫娘のようにも見える。バギンスもすっかり相好を崩し、国王らしい威厳はどっかに飛んで行ってしまっていた。
たしかにシャルンが何かを食べている姿は見ていて癒される……が、今はそうじゃない。
「バギンズさんやい。さすがにシャルン一人で行かせるってのは……」
不安しかないぞ? そんな俺の心配など微塵も気づいていないのか、シャルンは呑気にお茶をすすっている。すると彼女はチラリと横目でこちらを見た後、ピョンと膝の上から飛び降りた。
「もうっ、兄さまは心配のし過ぎ! アタシに任せておけば万事問題ないわ!」
そう言ってシャルンは、今まで見たこと無いようなドヤ顔で胸を張った。……張るような胸のふくらみは無いけれど。
そんな彼女にバギンズも楽しそうに「ガッハハ! 嬢ちゃんは頼もしいな!」と同意している。もうすっかり意気投合してしまったようだ。
そんな二人に呆れてため息を零していると、シャルンはプクーっとふくれっ面で俺を睨み付けてくる。
「そんなに心配なら分かったわよ! ねぇ、お爺ちゃん。こういう道具って作れるかしら?」
「うむ? ふむふむ? おぉ、できなくはないが……いや、こうすればもっと良い物ができる。どれ、ちょいと工場へ行って試作品を作ってみよう」
「さっすがドワーフの王! 話が分かるわね!」
「お、おい! 二人とも!?」
なにやらシャルンがコソコソと相談を始めたかと思えば、いきなり立ち上がったバギンスが彼女を連れて部屋を出て行ってしまった。しかも国王をお爺ちゃん呼びって、本当に孫と爺さんみたいになってんじゃねーか。
「シャルンのやつ、また勝手に……」
部屋に一人取り残されてしまった俺は、テーブルの上に広げられたままのティーセットを見て溜め息をひとつ。
シャルンが戻ってくる気配も無いので、俺は仕方なくソファーから立ち上がった。
「ぐあぁ……」
「……ゴメン、サラちゃんのことすっかり忘れてた」
「ぐぁ~」
部屋の端っこで置物のように立ったまま寝ていたサラちゃんが、眠そうなアクビをしていた。
◇
シャルンがマグマワームを討伐する方法を思い付き、ドワーフの王であるバギンスと何やら工作を始めてから約2時間。
開発と試作が終わったというので、俺たちは船の外にある再び陸地へと戻ってきていた。
「それで? 二人はいったい何を作っていたんだ?」
ドロドロと真っ赤な海が広がる風景を背に、自慢顔で仁王立ちをするシャルンに訊ねた。
出来上がってからのお楽しみだと言って応接室で待たされていた俺は結局、彼女たちが何を作っていたのか知らされていなかったのだ。
「へへへ……マグマ遊泳が危ないって兄様が言うから、じゃあワームをマグマから出せばいいって思い付いたの!」
「いや、だからそれができたらドワーフたちも苦労はしなかっただろ」
「もぉ~! 兄様も頭がカチカチなんだから! そんなんじゃお姉様に嫌われるよ!?」
「えぇー……」
俺が間違っているのだろうか? いや、常識的に考えてそんな単純な方法で問題が解決するとは思えない。
ていうかリディカは、それぐらいじゃ俺のことを嫌わないって。それに男は固すぎるぐらいが丁度いい……ってそれは下ネタか。
俺の微妙な表情を感じ取ったのか、シャルンはフンス!と鼻息を吐いた。
「いいから早くアタシの最高傑作を見てみてよ!」
そう言って彼女はピョンピョンと飛び跳ねて催促してきた。どうやらもう待ちきれないようだ。
「いや、そもそも作ったアイテムはどこに――」
「待たせたな!」
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振り返ってみると、バギンスが数人のドワーフと共に大きな台車を引きながらやってくるところだった。
「なんじゃそりゃ……大砲?」
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