創星のレクイエム

有永 ナギサ

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3章 第2部 学園生活の始まり

98話 従者争奪戦?

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「それはそうとルシアさん、転入初日からサボるのはいかがなものかと」
「そうだよぉ! るしあともっと話したかったのにー!」
「あー、すみません。ちょっと抜け出す理由ができてしまいまして」

 いろはとセナの主張に対し、罰の悪そうに視線をそらすルシア。
 どこか親し気に話しかけている二人を見るに、面識があるみたいだ。

「いろはもルシアのこと知ってるのか?」
「ルシアさんとは同じクラスで、友達になったんですよ」
「はい、光栄なことにお友達になってもらえました。お二人には大変よくしてもらってます」

 ルシアがやわらかくほほえむ。内心すごく喜んでそうであった。

「ねぇ、ねぇ、るしあ、なにしてたのぉ? なにかおもしろいことでもあったぁ? せなにも教えてよぉ」

 セナがルシアの腕をくいくいしながら、興味津々にたずねる。

「ヒマそうにしてるリルさんを見かけたので、お相手させてもらってたんですよ」
「実はそうなんだよ。ルシアちゃんはわたしのためにサボってくれたみたいで」
「なるほど。リルさんということは兄さんの……。それなら注意する必要はないですね」
「いいのか中等部生徒会長。生徒がサボってるのを容認して」

 理由が陣のためだからと、さらっと不問にするいろはにツッコミを。

「兄さんがらみなら話は別です。感謝しても止まないほどですよ」
 
 するといろはは不敵にほほえみながら断言して、ルシアのおこないを賞賛した。
 もはや公私混同しまくりである。

「いえいえ、陣さんの未来の従者として、当然のことなので」
「わぁ、従者もかっこいいいかもぉ!」

 今度は従者という言葉に目を輝かすセナ。
 取り巻きの件といい、あまり影響されたくないのだが。
 
「ちなみに陣兄さん的にはルシアさんの従者の件、どう思ってるんですか?」
「いろはもわかっているとは思うが、正直ありがた迷惑だ。一人のほうが自由きままでいい」
「ルシアさんみたいなきれいな女の子が従者になってくれるとなったら、あるいはなびくかもと思いましたが、そこはやっぱり陣兄さんですね」
「陣さんが女の子にもっと弱かったら、色仕掛けとかそっち方面で押せそうだったのですが……」

 ルシアがほおに手を当て、肩を落とす。
 
「あれですかね。陣兄さんは奈月さんみたいなすごい美人といつも一緒にいるから、いろいろと耐性がついているのかも」
「確かに。ワタシも自分の容姿にはそれなりに自信がありますが、奈月さん相手だとさすがに分が悪いですね」
「はい、しかも外見だけでなく、中身まで凛としてかっこいいですからね。同じ女性としてあこがれずにはいられません」
「奈月ちゃんは反則レべルだよね。うらやましい限りなんだよ」

 うんうんと深くうなずき、奈月にあこがれるいろはとルシアとリル。
 いろはやルシアも容姿に関しては誰しも認めるトップクラスの美少女だと思うが、そんな彼女たちでも奈月にはいろいろ思うところがあるらしい。

「いろはさん、なにか陣さん攻略のお力添えをしてもらえないでしょうか」
「ふむ、ルシアさんは優秀そうですし、エージェントとしての経験も積んでると聞きました。だから今後陣兄さんの力になってくれるはず。なので秘策をお教えしてもいいかもしれません」
「おぉ、さすがはいろはさん! ぜひお願いします!」

 いろはの頼もしすぎる発言に、彼女の手を取り教えをこおうとするルシア。

「ですが陣兄さんのもとに、ルシアさんみたいな女の子がそばにいることになるのは、妹として少し嫉妬してしまいますね。奈月さんのときみたいに大好きな兄が取られたみたいで……。ですので友達として、応援だけにとどめておきますね」

 だがいろはは表情を曇らせ、なにやら考えを改めだす。そしてにっこりほほえみ、エールだけを送った。

「あれ? いろはさん?」
「ちなみに私が従者になるというのはどうでしょう? 陣兄さんのことを深く理解していますから、気を負わさずに万全のサポートができると思うのですが」

 それからいろははさっと陣の前に来て、むねに手を当て進言してきた。

「確かにそうかもしれないが、いろははダメだろ。四条家次期当主だぞ、おまえ」
「わたしは陣兄さんのためなら、全然かまわないのですが」
「はーい! はーい! じゃあ、せながじんおにいちゃんの従者やるー!」

 悔しそうに引き下がるいろはの横から、セナが手を上げ元気よく立候補を。

「セナはさっさと蓮杖家に戻れ! これ以上おまえをこっち側に巻き込んだら、大和やまとさんにどんなケジメをつけらされるかわかったもんじゃないんだからな!」

 陣はセナの頭に両こぶしを押し付け、ぐりぐりと攻撃を。
 これには涙目になってギブをしてくるセナ。

「イタイよー!? じんおにいちゃん!?」
「まさか身近にこんなライバルたちがいるとは……」

 そんないろはやセナを見て、なにやら危機感を覚えるルシアなのであった。
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