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3章 第1部 姫のもとへ
124話 お別れの言葉
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「で、オレになんのようなんだ?」
「くす、好きな人にただ会いたいからじゃ、ダメなのかな?」
森羅はレイジの顔をのぞき込み、ほおに指を当てながら小首をかしげてくる。
「――うっ、また反応に困ることを……」
「あはは、ごめんね! 困らせちゃって! レイジくんに会う時って、テンションがいつも最高頂になっちゃうから、なかなか自重できないんだ! このあふれんばかりの好きな想いに、蓋をできない的な!」
胸を両手でぎゅっと押さえながら、ぱぁぁっと顔をほころばせる森羅。
那由他もそうだが森羅みたいな美少女にせまられると、さすがにどぎまぎしてしまうのだ。
「頼むから自重してくれ。その手の話題はこっちの精神的にキツイ」
「うん、善処するよ! って、言いたいけど、こうやって押していくのはレイジくんを攻略するにあたり効果的みたいだからなー。ただでさえアピールする機会が少ないあたしからすれば、無理な相談かも!」
レイジの主張に、森羅はにっこりと満面の笑顔で返してくる。
もはや那由他のようにまったく聞く耳を持ってくれない彼女に、ツッコミをいれざるを得ない。
「おい」
「まあまあ、そう言わず! ここは恋する乙女心を汲んで我慢してね! ということで森羅ちゃんのターンはまだまだおわらない! ここからレイジくんを連れまわしてデートとしゃれこもう!」
レイジの腕にぎゅーっと抱き着き、さっそくデートに行こうと引っ張ってきた。
このことでたちが悪いのは、森羅が楽しくてしかたがないといったとびっきりの笑顔なのだ。どうやらレイジと一緒にいられることが、よほどうれしいみたいである。あと抱き着かれてる関係上、腕にむにっと柔らかいものが押し付けられる形に。これにより余計に判断が甘くなってしまっていた。
「――あー、わるいが、却下だ。こっちはいろいろ立て込んでやることがあるから、森羅に付き合ってる暇はない」
さすがにここまで期待に目を輝かされると、断るのが非常に心苦しい。だがさすがに森羅と付き合っている余裕がないため、ここは心を鬼にして断りを入れた。
「ぶー、ぶー、つれないなー。――わかったよ、レイジくんとのデートはまたの機会ということにしておいて、本題だけ伝えることにするね!」
すると森羅はむくれながらも、素直に聞き分けてくれた。
どうやらレイジの滅入っている心境を、感じ取ってくれたみたいだ。
「ああ、そうしてくれると助かるよ。それで用件は?」
「今日はね、しばしのお別れを言いにきたの。ここから先、革新派と保守派の戦いがさらに激化していくにあたって、あたしもいろいろ動かないといけなくなる。そうなればこれまでのように、レイジくんの味方になるのが難しくなってくるんだ。本当はもっと陰ながら力になるヒロインポジに、ついていたいんだけどね」
森羅はレイジからそっと離れ、申しわけなさそうに目をふせる。
「あと、その関係上どうしても敵対関係になっちゃうの。今度は陰ながらの味方じゃなく、完全な敵として……。レイジくんの力になりたいのは山々なんだけど、あたしの悲願を達成するために革新派側の計画を押し進めないといけないから」
そして森羅は信念のこもったまなざしを向け、宣言してきた。譲れない想いを胸に。
革新派のこれまでの動きからみて、これからさらにアポルオン内部をかき乱し、レジスタンスや狩猟兵団を使い今の世界に争いを招くことになるだろう。そうなればエデン協会アイギスは、この先彼らの計画を阻止するために動くはず。よってアビスエリアの解放やアポルオンの巫女の件みたくぶつかることに。つまりは革新派側にいる森羅と、おのずと敵同士になってしまうのだ。
「でもこれだけは覚えておいて。確かにあたしは革新派側についてるけど、それは最後の舞台でレイジくんに勝利を届けたいからなの。すべては愛するあなたのために……。あたしの心は常にレイジくんのことを想っている……。だからいくら敵対関係でぶつかることになっても、できればきらわないでほしいなぁ」
森羅はレイジの胸板に手を当て、万感の思いをこめて告げる。これこそが柊森羅という少女のすべてだと。そして最後どこか悲しげにほほえんできた。
「安心しろ。森羅にはいろいろ世話になってるし、そうそう嫌いになんてなれないさ。第一、狩猟兵団で戦いが当たり前だったオレなんだ。やり合うなんてあいさつと変わらないぐらいだよ。だからいくら敵対してても、そっちが友好的なら邪険に扱ったりなんてするはずないさ」
「ありがとう! レイジくん! それだけがすごく気がかりだったの! つまりこれからはバンバンアピールしまくって、デートとかも誘い放題ってことだよね! やった! 敵対する以上、レイジくんと仲良くするのはしばらくお預けだと思ってたからすごくうれしい!」
レイジのフォローの言葉に、森羅はその場でぴょんぴょん飛び跳ねてよろこびをあらわに。もはや今にも抱き着いてきそうなはしゃぎっぷりであった。
「――いや、オレとしては少し自重してくれたほうが……」
「くす、恋する乙女、森羅ちゃんはだれにも止められないのだよ! ――さてと、いい返事を得られたことだし、レイジくんの邪魔にならないうちに今日は帰るとしよっか!」
森羅はかわいらしくウィンクしてから、くるりと踵を返す。
それから 軽い足取りで去ろうとする彼女であったが、ふとレイジの方に振り返った。
「あ、そうだ! あたしがそばにいないからといって、那由他やアポルオンの巫女にあまりうつつを抜かさないでね! レイジくんの嫁は、この森羅ちゃんなんだから! じゃあね! ばいばい!」
にっこり人差し指を立てながら、釘を刺してくる森羅。そして今度こそ彼女はこの場を去っていくのであった。
「くす、好きな人にただ会いたいからじゃ、ダメなのかな?」
森羅はレイジの顔をのぞき込み、ほおに指を当てながら小首をかしげてくる。
「――うっ、また反応に困ることを……」
「あはは、ごめんね! 困らせちゃって! レイジくんに会う時って、テンションがいつも最高頂になっちゃうから、なかなか自重できないんだ! このあふれんばかりの好きな想いに、蓋をできない的な!」
胸を両手でぎゅっと押さえながら、ぱぁぁっと顔をほころばせる森羅。
那由他もそうだが森羅みたいな美少女にせまられると、さすがにどぎまぎしてしまうのだ。
「頼むから自重してくれ。その手の話題はこっちの精神的にキツイ」
「うん、善処するよ! って、言いたいけど、こうやって押していくのはレイジくんを攻略するにあたり効果的みたいだからなー。ただでさえアピールする機会が少ないあたしからすれば、無理な相談かも!」
レイジの主張に、森羅はにっこりと満面の笑顔で返してくる。
もはや那由他のようにまったく聞く耳を持ってくれない彼女に、ツッコミをいれざるを得ない。
「おい」
「まあまあ、そう言わず! ここは恋する乙女心を汲んで我慢してね! ということで森羅ちゃんのターンはまだまだおわらない! ここからレイジくんを連れまわしてデートとしゃれこもう!」
レイジの腕にぎゅーっと抱き着き、さっそくデートに行こうと引っ張ってきた。
このことでたちが悪いのは、森羅が楽しくてしかたがないといったとびっきりの笑顔なのだ。どうやらレイジと一緒にいられることが、よほどうれしいみたいである。あと抱き着かれてる関係上、腕にむにっと柔らかいものが押し付けられる形に。これにより余計に判断が甘くなってしまっていた。
「――あー、わるいが、却下だ。こっちはいろいろ立て込んでやることがあるから、森羅に付き合ってる暇はない」
さすがにここまで期待に目を輝かされると、断るのが非常に心苦しい。だがさすがに森羅と付き合っている余裕がないため、ここは心を鬼にして断りを入れた。
「ぶー、ぶー、つれないなー。――わかったよ、レイジくんとのデートはまたの機会ということにしておいて、本題だけ伝えることにするね!」
すると森羅はむくれながらも、素直に聞き分けてくれた。
どうやらレイジの滅入っている心境を、感じ取ってくれたみたいだ。
「ああ、そうしてくれると助かるよ。それで用件は?」
「今日はね、しばしのお別れを言いにきたの。ここから先、革新派と保守派の戦いがさらに激化していくにあたって、あたしもいろいろ動かないといけなくなる。そうなればこれまでのように、レイジくんの味方になるのが難しくなってくるんだ。本当はもっと陰ながら力になるヒロインポジに、ついていたいんだけどね」
森羅はレイジからそっと離れ、申しわけなさそうに目をふせる。
「あと、その関係上どうしても敵対関係になっちゃうの。今度は陰ながらの味方じゃなく、完全な敵として……。レイジくんの力になりたいのは山々なんだけど、あたしの悲願を達成するために革新派側の計画を押し進めないといけないから」
そして森羅は信念のこもったまなざしを向け、宣言してきた。譲れない想いを胸に。
革新派のこれまでの動きからみて、これからさらにアポルオン内部をかき乱し、レジスタンスや狩猟兵団を使い今の世界に争いを招くことになるだろう。そうなればエデン協会アイギスは、この先彼らの計画を阻止するために動くはず。よってアビスエリアの解放やアポルオンの巫女の件みたくぶつかることに。つまりは革新派側にいる森羅と、おのずと敵同士になってしまうのだ。
「でもこれだけは覚えておいて。確かにあたしは革新派側についてるけど、それは最後の舞台でレイジくんに勝利を届けたいからなの。すべては愛するあなたのために……。あたしの心は常にレイジくんのことを想っている……。だからいくら敵対関係でぶつかることになっても、できればきらわないでほしいなぁ」
森羅はレイジの胸板に手を当て、万感の思いをこめて告げる。これこそが柊森羅という少女のすべてだと。そして最後どこか悲しげにほほえんできた。
「安心しろ。森羅にはいろいろ世話になってるし、そうそう嫌いになんてなれないさ。第一、狩猟兵団で戦いが当たり前だったオレなんだ。やり合うなんてあいさつと変わらないぐらいだよ。だからいくら敵対してても、そっちが友好的なら邪険に扱ったりなんてするはずないさ」
「ありがとう! レイジくん! それだけがすごく気がかりだったの! つまりこれからはバンバンアピールしまくって、デートとかも誘い放題ってことだよね! やった! 敵対する以上、レイジくんと仲良くするのはしばらくお預けだと思ってたからすごくうれしい!」
レイジのフォローの言葉に、森羅はその場でぴょんぴょん飛び跳ねてよろこびをあらわに。もはや今にも抱き着いてきそうなはしゃぎっぷりであった。
「――いや、オレとしては少し自重してくれたほうが……」
「くす、恋する乙女、森羅ちゃんはだれにも止められないのだよ! ――さてと、いい返事を得られたことだし、レイジくんの邪魔にならないうちに今日は帰るとしよっか!」
森羅はかわいらしくウィンクしてから、くるりと踵を返す。
それから 軽い足取りで去ろうとする彼女であったが、ふとレイジの方に振り返った。
「あ、そうだ! あたしがそばにいないからといって、那由他やアポルオンの巫女にあまりうつつを抜かさないでね! レイジくんの嫁は、この森羅ちゃんなんだから! じゃあね! ばいばい!」
にっこり人差し指を立てながら、釘を刺してくる森羅。そして今度こそ彼女はこの場を去っていくのであった。
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