188 / 253
4章 第4部 それぞれの想い
183話 上層部の思惑
しおりを挟む
咲を追ってばかでかい木々が立ち並ぶ、森林地帯を進んで行く。空がどんより曇っているのもあるが、木々によって光がさえぎら周囲はかなり薄暗い。そのためなにかが潜んでいそうな不気味さがあり、結月がいたらきっと怖がっていたに違いなかった。
そんな森林地帯を歩いていると、徐々に建物の姿が。そして。
「森林に浸食された街並み……。聞いてはいたけど、クリフォトエリアの地形ってすごいんだね。こんなの現実のどこを探してもなさそうだよ?」
カノンは現実離れした周りの景色に、思わず息を飲む。
森林地帯を進みたどり着いたのは、廃墟と化した市街地。ここですごいのは街中のいたるところに樹木が生い茂り、蔓が建物を浸食していること。まるで森の中にぽつりとある、朽ち果てた遺跡状態。もはや人類が滅び、それから何百年たったあとといってもいい光景であった。
「ははは、ほかにも砂漠や湖、さらには地盤沈下した所にある都市だってあるぞ。地形がランダム配置の分、変わったところなんて探せばいくらでもだ」
このような場所はクリフォトエリアではめずらしくなく、バリエーションは様々。森林、砂漠、湖、地中、氷雪といった様々な地形はもちろん、そこに街や別の地形が重複していることもあるのだ。なので本来ではありえない光景が多々あるといっていい。
「クス、ここでは非現実的風景を観光するといった、楽しみ方もあるそうですよ」
「わぁー、冒険心がくすぐられるってやつだね!」
カノンはまるで子供のように目を輝かせながら、物珍しげに周囲を見渡す。
「クリフォトエリアの地形はかなりいい加減。きちんと区切らず重複するようにしてるから、こんなまざった場所が出来上がる。しかもゲームを参考にしたのか、たまにダンジョンみたいなのが設置されてることもあるし」
複雑な構造をした遺跡や神殿みたいな、明らかにダンジョンといっていい代物もあるのだ。しかも中には巨大な工場施設や科学プラント、軍事基地といったものまでダンジョンふうにし、配置しているのであった。
「わぁー、それゲーム好きの結月が喜びそうなんだよ。レージくん、今度みんなで行ってみようよ!」
カノンはレイジの手をとって、にっこり笑いかけてくる。
結月はゲーム好きなそうなので、確かに喜びそうだ。情報屋のファントムあたりに聞けば、いい場所を教えてくれるだろう。
「ははは、そうだな。ところでリネット。ゆきのように割り込んで、向こうがなにをやってるか調べられないのか?」
「やってもいいけどばれる可能性大。逃げられてもいいならやるけど?」
リネットはオオカミ型のガーディアンごしに、忠告してくる。
「――う……、それは困るな……」
「向こうが格下ならバレずに探れるけど、同レベル。しかもただでさえ警戒してるとなれば、いくらあたしでもね。だからここはステルス状態で近づくのが得策。勘付かれないように、ほかの改ざんのサポートは止めて」
今ここら一帯は、敵の改ざんのサポートで支配されている。なので下手に手を出せば、すぐに察知されてしまうのだ。もちろんウデ次第では、相手に気づかれないまま干渉することができるだろう。しかし今回ばかりは相手が悪い。リネットいわくSSランクの電子の導き手ゆえ、付け入る隙がないというわけだ。
「難しそうですが、調べるに関しては相手を強制ログアウト。または調査データを書き込んでいるメモリースフィアを奪うのが、よさそうですね」
美月はアゴに手をやりながら、思考をめぐらせる。
改ざんで裏から調べられないなら、正面から行くしかない。強制ログアウトもそうだが、今回向こうは改ざんでなにかを調べているらしいのだ。となればもう一つ手段が。というのもクリフォトエリア内では、アーカイブスフィアにつながれない。よって新しくデータを追加するには、メモリースフィアに入れて自分たちのアーカイブスフィアに持っていく必要があるのであった。なのでそのメモリースフィアを奪えれば、相手がなにを調べていたのか一目両全という。
「クス、リネットはゆきさんほど、相手を出し抜くのが得意じゃないですから」
「はぁ? その言い方すごくむかつく。あいつは手グセがわるいだけ。真っ向からの改ざんのサポートなら、あたしに少し分がある」
美月のいじわるそうな主張に、リネットは不服そうに抗議を。
「おや、そうでしたっけ。これはすみません」
「なにそのふくみのある言い方。そこは素直に認めるところ。ほんと美月は相変わらず性格がわるい」
「クス、これも性分なので」
美月は優雅にほほえみ、リネットの文句を軽く流した。
「それよりリネット。この場所になにか思うところがあるんじゃないですか?」
「そうなのか?」
「まあね。ここら一帯はクリフォトエリアで稀に見られる希薄な地帯。ようはアビスエリアみたいなあいまいな場所」
アビスエリアは空間やオブジェクトなどが不安定らしく、改ざんの干渉などしやすいとのこと。そのためアーカイブポイントなども、かなり無茶ができるとか。
「いったいやつらはなにをしてるんだ?」
「はっ、そんなの知るわけない。上層部しか知りえない、なにかがあるんじゃない。こういった場所はよく普通のエデン財団当たりも調べてるはずだし」
そういえばゆきにもこういった場所への調査に、何度かつき合わされたのを思い出す。その調査結果は、結局なにもわからずじまい。ゆき自身今だ興味が尽きないため、ひまなときにでも調べているらしい。
「いづれにせよ、上層部側のデータを奪えればわかるでしょう。さあ、向こうの用件がおわる前に、先へ進みましょう」
美月の言う通り、敵のデータを奪えばなにを調べていたかわかるはず。なのでレイジたちはどんどん森林地帯の奥へと、足を進めるのであった。
そんな森林地帯を歩いていると、徐々に建物の姿が。そして。
「森林に浸食された街並み……。聞いてはいたけど、クリフォトエリアの地形ってすごいんだね。こんなの現実のどこを探してもなさそうだよ?」
カノンは現実離れした周りの景色に、思わず息を飲む。
森林地帯を進みたどり着いたのは、廃墟と化した市街地。ここですごいのは街中のいたるところに樹木が生い茂り、蔓が建物を浸食していること。まるで森の中にぽつりとある、朽ち果てた遺跡状態。もはや人類が滅び、それから何百年たったあとといってもいい光景であった。
「ははは、ほかにも砂漠や湖、さらには地盤沈下した所にある都市だってあるぞ。地形がランダム配置の分、変わったところなんて探せばいくらでもだ」
このような場所はクリフォトエリアではめずらしくなく、バリエーションは様々。森林、砂漠、湖、地中、氷雪といった様々な地形はもちろん、そこに街や別の地形が重複していることもあるのだ。なので本来ではありえない光景が多々あるといっていい。
「クス、ここでは非現実的風景を観光するといった、楽しみ方もあるそうですよ」
「わぁー、冒険心がくすぐられるってやつだね!」
カノンはまるで子供のように目を輝かせながら、物珍しげに周囲を見渡す。
「クリフォトエリアの地形はかなりいい加減。きちんと区切らず重複するようにしてるから、こんなまざった場所が出来上がる。しかもゲームを参考にしたのか、たまにダンジョンみたいなのが設置されてることもあるし」
複雑な構造をした遺跡や神殿みたいな、明らかにダンジョンといっていい代物もあるのだ。しかも中には巨大な工場施設や科学プラント、軍事基地といったものまでダンジョンふうにし、配置しているのであった。
「わぁー、それゲーム好きの結月が喜びそうなんだよ。レージくん、今度みんなで行ってみようよ!」
カノンはレイジの手をとって、にっこり笑いかけてくる。
結月はゲーム好きなそうなので、確かに喜びそうだ。情報屋のファントムあたりに聞けば、いい場所を教えてくれるだろう。
「ははは、そうだな。ところでリネット。ゆきのように割り込んで、向こうがなにをやってるか調べられないのか?」
「やってもいいけどばれる可能性大。逃げられてもいいならやるけど?」
リネットはオオカミ型のガーディアンごしに、忠告してくる。
「――う……、それは困るな……」
「向こうが格下ならバレずに探れるけど、同レベル。しかもただでさえ警戒してるとなれば、いくらあたしでもね。だからここはステルス状態で近づくのが得策。勘付かれないように、ほかの改ざんのサポートは止めて」
今ここら一帯は、敵の改ざんのサポートで支配されている。なので下手に手を出せば、すぐに察知されてしまうのだ。もちろんウデ次第では、相手に気づかれないまま干渉することができるだろう。しかし今回ばかりは相手が悪い。リネットいわくSSランクの電子の導き手ゆえ、付け入る隙がないというわけだ。
「難しそうですが、調べるに関しては相手を強制ログアウト。または調査データを書き込んでいるメモリースフィアを奪うのが、よさそうですね」
美月はアゴに手をやりながら、思考をめぐらせる。
改ざんで裏から調べられないなら、正面から行くしかない。強制ログアウトもそうだが、今回向こうは改ざんでなにかを調べているらしいのだ。となればもう一つ手段が。というのもクリフォトエリア内では、アーカイブスフィアにつながれない。よって新しくデータを追加するには、メモリースフィアに入れて自分たちのアーカイブスフィアに持っていく必要があるのであった。なのでそのメモリースフィアを奪えれば、相手がなにを調べていたのか一目両全という。
「クス、リネットはゆきさんほど、相手を出し抜くのが得意じゃないですから」
「はぁ? その言い方すごくむかつく。あいつは手グセがわるいだけ。真っ向からの改ざんのサポートなら、あたしに少し分がある」
美月のいじわるそうな主張に、リネットは不服そうに抗議を。
「おや、そうでしたっけ。これはすみません」
「なにそのふくみのある言い方。そこは素直に認めるところ。ほんと美月は相変わらず性格がわるい」
「クス、これも性分なので」
美月は優雅にほほえみ、リネットの文句を軽く流した。
「それよりリネット。この場所になにか思うところがあるんじゃないですか?」
「そうなのか?」
「まあね。ここら一帯はクリフォトエリアで稀に見られる希薄な地帯。ようはアビスエリアみたいなあいまいな場所」
アビスエリアは空間やオブジェクトなどが不安定らしく、改ざんの干渉などしやすいとのこと。そのためアーカイブポイントなども、かなり無茶ができるとか。
「いったいやつらはなにをしてるんだ?」
「はっ、そんなの知るわけない。上層部しか知りえない、なにかがあるんじゃない。こういった場所はよく普通のエデン財団当たりも調べてるはずだし」
そういえばゆきにもこういった場所への調査に、何度かつき合わされたのを思い出す。その調査結果は、結局なにもわからずじまい。ゆき自身今だ興味が尽きないため、ひまなときにでも調べているらしい。
「いづれにせよ、上層部側のデータを奪えればわかるでしょう。さあ、向こうの用件がおわる前に、先へ進みましょう」
美月の言う通り、敵のデータを奪えばなにを調べていたかわかるはず。なのでレイジたちはどんどん森林地帯の奥へと、足を進めるのであった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語
ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。
だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。
それで終わるはずだった――なのに。
ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。
さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。
そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。
由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。
一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。
そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。
罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。
ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。
そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。
これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる