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6章 第2部 レーシスの秘密
243話 アランとレーシス
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イベントも中盤に差し掛かり、現在狩猟兵団連盟代表者のアランによる新規者への演説が行われていた。
そのため今やイベントに参加した新規者が一同に集まり、特設ステージでかたるアランの演説に聞き入っている状況。そんな中レイジたちは彼らから少し離れたところで、軽く演説に耳を傾けていた。
(――はぁ……、あれからレーシスは見つからずじまいか……)
あのあと謎のデュエルアバター使いたちと一戦交じえ、終わったころにはレーシスの姿を完全に見失っていた。それから少し探したのだが見つからず、あきらめてアランの演説を聞いているというわけだ。
ちなみに謎のデュエルアバター使いとの戦闘。彼らのウデはかなりのもので、そう簡単にやらせてはくれなかった。だがアリスとのコンビで無力化することに成功。すると彼らはいい経験になったと満足げに、去っていったという。どうやら本当に稽古感覚で挑んできていたらしい。
落ち込んでいると、アランの演説は締めの方へと。
「これからエデンでの戦いの日々は、まずます激しさを増していくだろう。人々はデータを奪えば、上にいける味を知ってしまった。もはやその欲望は止まることなどない。これまでの不変の世界で押さえつけられていた反動により、もう歯止めが利かなくなっているのだから。そして彼らは欲望のままに狩猟兵団を求め、戦場を用意してくれるだろう。そう、人間の欲望がある限り、我らの戦いに終わりなどない! 逆にどんどん膨れ上がり、火種がいづれ燃え盛る炎となって世界中を呑み込んでいく!」
声高らかに、熱くかたっていくアラン。
「そしてそのターニングポイントとなる世界の命運を懸けた戦いが、今始まろうとしているのだ! 我々はこの聖戦に勝利し、真の狩猟兵団の時代の幕を開けるつもりだ! そのためにもどうかキミたちの力を貸してほしい! 我々と共に歴史に残るであろう最上級の戦場を駆け抜けようではないか!」
そしてアランは手を差し出し、イベント参加者へと告げた。
それと同時に大きな歓声が上がる。
「すごい盛り上がりようだ。さすがはアランさん。あんなこと言われたら、一緒に戦いたくなるってもんだ」
「ええ、アタシもなんだかわくわくしてきたわ」
二人で関心しながら、アランの演説を聞き入る。
この盛り上がりを見るに、イベントは大成功なのだろう。今の演説を聞いて、新規者たちの大勢がこの狩猟兵団の道に足を踏み入れようと決めたに違いなかった。
それからアランの演説タイムが終わり、これからどうするか決めていると彼の部下から連絡が。どうやら時間ができたらしく、会いに来てくれとのこと。なのでイベント運営本部のビルに再び向かっていた。
「やあ、レイジ、アリス、待たせて悪かったね」
そして案内されたビルの一室に入ると、そこにはアランの姿が。
あいさつしようとしたところ、この部屋にいたもう一人に気づく。
「なっ!? レーシス!?」
「げっ!? レイジ」
レーシスがあせった表情を浮かべる。
その様子から見るに、レイジが来たのは完全に予想外だったみたいだ。
「おまえ、こんなところでなにしてるんだ? もしかしてオレたちを裏切って」
刀に手をかけ、問いただそうとする。
この状況から、アランと密談していたのは明白。しかもレイジを見てあせっていることから、後ろめたいことがあるのは間違いない。やはりレーシスとアランは裏でつながっていたのだろうか。
「アランさん、なんで俺がいるのにこいつらを呼んだんすか? 俺の立場、アンタもわかってるはずでしょ」
「ククッ、彼らにも大事な用事があったんだよ。それにレーシスへの頼み関係で、レイジたちとどうせ顔を合わせることになるからね。ちょうどいい機会だと思ったのさ」
レーシスの抗議に、アランは悪びれた様子もなく笑う。
「答えろ、レーシス。返答次第じゃ、おまえを斬ることになるぞ?」
「じゃあ、責任をもってこの場を丸く収めてくださいよ」
「そうだね。まだキミをここで失うわけにはいかないからね。そういうわけだからレイジ、ワタシから説明しよう」
レーシスのうったえに、アランが説明を買って出た。
「アランさんが?」
「キミが気になっているのは、ワタシとレーシスの関係だろ? 実はレーシスがまだ小さいころ、孤児だった彼を引き取ったんだ」
「じゃあ、アランさんは」
「一応、レーシスの育ての親ということになるね」
しみじみとした顔でうなずくアラン。
「まさか二人にそんな関係が……。でもどうしてアランさんは、レーシスを?」
「のちの来るべき狩猟兵団の時代のためさ。ワタシは見込みのある子供を集め、彼らに闘争の思想、戦闘技術、エデンで役立つ様々なスキルを与えていった。いづれ彼らがワタシの意思を継ぎ、世界を引っ張っていってくれることを願ってね」
アランは手を掲げ、熱くかたっていく。
「ははは、なんでアランさんがって思ってたら、納得の理由ですね」
ようは自分の後継者のために、子供たちを引き取っていたということ。彼の狩猟兵団の世界実現への熱意は、よほどのものらしい。
「ちなみにレイジたちがさっき戦った、デュエルアバター使いたち。彼らもワタシが育てた子供たちなんだよ。もっと経験を積ませるため、キミたちに相手になってもらったのさ」
「どおりで手強かったわけですね」
先ほどやりあった彼らの動き。アランが指導し、技術を叩き込んだとなれば納得がいくというものである。
「でも今の話からするに、二人はつながってることになりませんか?」
レーシスとアランの関係はわかった。しかしそれはレーシスの立場をさらに悪くするものにほかならない。育ての親という、そこまで根が深い関係だったとは。もはや上司と部下よりも、タチが悪いといっていいだろう。
「そのことについてなんだが、残念なことにレーシスはワタシの意思に賛同してくれず、出て行ってしまったんだよ。執行機関に入り、最後にはアポルオンの巫女側についてしまった。だからもう命令もなにもできない。立場的には敵同士になってしまってるわけだ」
アランは肩をすくめ答える。
「じゃあ、なんで今レーシスは?」
「ハハハ、彼にもいろいろあるということさ。ただ安心するといい。レーシスがここにいるのはワタシのためじゃなく、あの子のためだからね」
ほほえましげに笑いながら、レーシスへと意味ありげな視線を送るアラン。
「あの子?」
「そういうわけだぜ、レイジ。俺はカノンを裏切っていない。これはそのなんだ……、とある馴染みへのおせっかいみたいなやつさ」
レーシスはどこかテレくさそうに主張する。
その様子からどうやら嘘はついていないみたいだ。
「ほら、いつまでも俺の話なんてしてないで、本題にどうぞ」
「そうだね。では改めて依頼内容について。ワタシは近々レジスタンス側のトップと、クリフォトエリアで会う予定があるんだ」
レーシスにうながされ、アランが本題へと入った。
「――ははは……、レジスタンス側のトップって……、また大物と……」
ここ最近暴れまくっているレジスタンス。そんな彼らのボスと会うなんて、アランは一体なにをたくらんでいるのだろうか。もはやきな臭いどころの話ではなかった。
「アランさんはそこで何をするつもりなのかしら? アタシたちに声をかけたということは、その人たちを倒す気?」
「いや、彼らと普通に会談して、あるブツを渡すだけだ。キミたち黒い双翼の刃にはその間、周辺の警備をしてもらいたい」
「警備ですか」
普段こういった内容の依頼はエデン協会に頼むもの。しかし依頼者が表ざたにしたくないやましい背景がある場合、彼らではなく狩猟兵団側に依頼するのはめずらしくないことなのだ。
「ああ、軍が会談を嗅ぎつけて来る可能性もあるし、レジスタンス側へ渡すときいざこざが起こるかもしれないからね」
「依頼内容はわかりました。でもアリスはともかく、なんで敵であるオレまで?」
本来敵側のレイジを、そんな大事な取り引き現場に呼ぶのはアラン側にとっていろいろリスクが高すぎる。最悪取り引きそのものが、破綻する恐れがあるのだから。
「それに関してはウォードの頼みだったからさ。ワタシ自身、久しぶりにキミたち黒い双翼の刃の力を見てみたかったし、快く受け入れさせてもらったというわけだ」
「ボスが……」
アリスの精神面の不調を見かねたウォードが、なんとかレイジと一緒にいられる機会を作ろうとした結果だったみたいだ。
「ふん」
そんなウォードの親心に、少しご立腹な表情を浮かべるアリス。
「そういえば巫女派に関係があるという話は?」
始め断ろうとしていたレイジであったが、巫女派に関係があるということに見事つられてしまったのだ。こちらとしてはむしろ、ここからが本題であった。
「ああ、それなんだがレジスタンス側のトップが、キミたち巫女派に興味を示していてね。一度話してみたいと。だからレイジと一緒にアポルオンの巫女本人か、または巫女派に精通している執行機関に関与していないメンバーに同行して来てほしいとのことだ」
「そういうことですか」
まさかのレジスタンスのトップが、アポルオンの巫女であるカノンにアプローチしてくるとは。相手が相手だけに一大事といってよかった。
「ちなみに同行の件はなしでも、全然かまわないらしい。ただ来てくれるなら、レジスタンス側の考えなどいろいろ話してくれるそうだ。とまあ、依頼についてはこんなものかな。どうするかね?」
「警備の依頼については、引き受けようと思います」
(アリスと一緒にいられるいい機会だしな)
アリスがいろいろ心配なので、ここは彼女と一緒にいられるこの機会をありがたく使わせてもらうことにする。実際依頼内容もそこまで厳しいものではなく、事と次第によってはなにか巫女派にとって収穫がありそうでもあるのだから。
「ただ同行者の件は、一度巫女派で話しあって決めさせてもらいます」
さすがにレイジの独断で決めれる内容ではないため、こっちはとりあえず返事を保留にしておくことに。
「わかった。レジスタン側のトップと会うのは二日後。くわしいことはあとで連絡させてもらう。あとわかってるとは思うが、変なマネは止めてくれよ。キミは今回狩猟兵団レイヴン側から派遣された人間として扱うからね。もしなにかあったらレイヴンの評判に泥がつくと思ってくれ」
「そこらへんはわきまえてますよ。プロとして依頼主を裏切ることはしません」
プロ意識もそうだが、ただでさえウォードや狩猟兵団レイヴンには恩があるのだ。それなのに出て行っていろいろ迷惑をかけたのだから、これ以上恩を仇で返すことはできなかった。
「それを聞いて安心したよ。ではワタシはまだイベントの件で忙しいから、失礼させてもらうよ。エキビションマッチとかもあるから、ぜひ楽しんでいってくれ」
そしてアランは部屋を出ていき、この場にレイジたちとレーシスが取り残されるのであった。
そのため今やイベントに参加した新規者が一同に集まり、特設ステージでかたるアランの演説に聞き入っている状況。そんな中レイジたちは彼らから少し離れたところで、軽く演説に耳を傾けていた。
(――はぁ……、あれからレーシスは見つからずじまいか……)
あのあと謎のデュエルアバター使いたちと一戦交じえ、終わったころにはレーシスの姿を完全に見失っていた。それから少し探したのだが見つからず、あきらめてアランの演説を聞いているというわけだ。
ちなみに謎のデュエルアバター使いとの戦闘。彼らのウデはかなりのもので、そう簡単にやらせてはくれなかった。だがアリスとのコンビで無力化することに成功。すると彼らはいい経験になったと満足げに、去っていったという。どうやら本当に稽古感覚で挑んできていたらしい。
落ち込んでいると、アランの演説は締めの方へと。
「これからエデンでの戦いの日々は、まずます激しさを増していくだろう。人々はデータを奪えば、上にいける味を知ってしまった。もはやその欲望は止まることなどない。これまでの不変の世界で押さえつけられていた反動により、もう歯止めが利かなくなっているのだから。そして彼らは欲望のままに狩猟兵団を求め、戦場を用意してくれるだろう。そう、人間の欲望がある限り、我らの戦いに終わりなどない! 逆にどんどん膨れ上がり、火種がいづれ燃え盛る炎となって世界中を呑み込んでいく!」
声高らかに、熱くかたっていくアラン。
「そしてそのターニングポイントとなる世界の命運を懸けた戦いが、今始まろうとしているのだ! 我々はこの聖戦に勝利し、真の狩猟兵団の時代の幕を開けるつもりだ! そのためにもどうかキミたちの力を貸してほしい! 我々と共に歴史に残るであろう最上級の戦場を駆け抜けようではないか!」
そしてアランは手を差し出し、イベント参加者へと告げた。
それと同時に大きな歓声が上がる。
「すごい盛り上がりようだ。さすがはアランさん。あんなこと言われたら、一緒に戦いたくなるってもんだ」
「ええ、アタシもなんだかわくわくしてきたわ」
二人で関心しながら、アランの演説を聞き入る。
この盛り上がりを見るに、イベントは大成功なのだろう。今の演説を聞いて、新規者たちの大勢がこの狩猟兵団の道に足を踏み入れようと決めたに違いなかった。
それからアランの演説タイムが終わり、これからどうするか決めていると彼の部下から連絡が。どうやら時間ができたらしく、会いに来てくれとのこと。なのでイベント運営本部のビルに再び向かっていた。
「やあ、レイジ、アリス、待たせて悪かったね」
そして案内されたビルの一室に入ると、そこにはアランの姿が。
あいさつしようとしたところ、この部屋にいたもう一人に気づく。
「なっ!? レーシス!?」
「げっ!? レイジ」
レーシスがあせった表情を浮かべる。
その様子から見るに、レイジが来たのは完全に予想外だったみたいだ。
「おまえ、こんなところでなにしてるんだ? もしかしてオレたちを裏切って」
刀に手をかけ、問いただそうとする。
この状況から、アランと密談していたのは明白。しかもレイジを見てあせっていることから、後ろめたいことがあるのは間違いない。やはりレーシスとアランは裏でつながっていたのだろうか。
「アランさん、なんで俺がいるのにこいつらを呼んだんすか? 俺の立場、アンタもわかってるはずでしょ」
「ククッ、彼らにも大事な用事があったんだよ。それにレーシスへの頼み関係で、レイジたちとどうせ顔を合わせることになるからね。ちょうどいい機会だと思ったのさ」
レーシスの抗議に、アランは悪びれた様子もなく笑う。
「答えろ、レーシス。返答次第じゃ、おまえを斬ることになるぞ?」
「じゃあ、責任をもってこの場を丸く収めてくださいよ」
「そうだね。まだキミをここで失うわけにはいかないからね。そういうわけだからレイジ、ワタシから説明しよう」
レーシスのうったえに、アランが説明を買って出た。
「アランさんが?」
「キミが気になっているのは、ワタシとレーシスの関係だろ? 実はレーシスがまだ小さいころ、孤児だった彼を引き取ったんだ」
「じゃあ、アランさんは」
「一応、レーシスの育ての親ということになるね」
しみじみとした顔でうなずくアラン。
「まさか二人にそんな関係が……。でもどうしてアランさんは、レーシスを?」
「のちの来るべき狩猟兵団の時代のためさ。ワタシは見込みのある子供を集め、彼らに闘争の思想、戦闘技術、エデンで役立つ様々なスキルを与えていった。いづれ彼らがワタシの意思を継ぎ、世界を引っ張っていってくれることを願ってね」
アランは手を掲げ、熱くかたっていく。
「ははは、なんでアランさんがって思ってたら、納得の理由ですね」
ようは自分の後継者のために、子供たちを引き取っていたということ。彼の狩猟兵団の世界実現への熱意は、よほどのものらしい。
「ちなみにレイジたちがさっき戦った、デュエルアバター使いたち。彼らもワタシが育てた子供たちなんだよ。もっと経験を積ませるため、キミたちに相手になってもらったのさ」
「どおりで手強かったわけですね」
先ほどやりあった彼らの動き。アランが指導し、技術を叩き込んだとなれば納得がいくというものである。
「でも今の話からするに、二人はつながってることになりませんか?」
レーシスとアランの関係はわかった。しかしそれはレーシスの立場をさらに悪くするものにほかならない。育ての親という、そこまで根が深い関係だったとは。もはや上司と部下よりも、タチが悪いといっていいだろう。
「そのことについてなんだが、残念なことにレーシスはワタシの意思に賛同してくれず、出て行ってしまったんだよ。執行機関に入り、最後にはアポルオンの巫女側についてしまった。だからもう命令もなにもできない。立場的には敵同士になってしまってるわけだ」
アランは肩をすくめ答える。
「じゃあ、なんで今レーシスは?」
「ハハハ、彼にもいろいろあるということさ。ただ安心するといい。レーシスがここにいるのはワタシのためじゃなく、あの子のためだからね」
ほほえましげに笑いながら、レーシスへと意味ありげな視線を送るアラン。
「あの子?」
「そういうわけだぜ、レイジ。俺はカノンを裏切っていない。これはそのなんだ……、とある馴染みへのおせっかいみたいなやつさ」
レーシスはどこかテレくさそうに主張する。
その様子からどうやら嘘はついていないみたいだ。
「ほら、いつまでも俺の話なんてしてないで、本題にどうぞ」
「そうだね。では改めて依頼内容について。ワタシは近々レジスタンス側のトップと、クリフォトエリアで会う予定があるんだ」
レーシスにうながされ、アランが本題へと入った。
「――ははは……、レジスタンス側のトップって……、また大物と……」
ここ最近暴れまくっているレジスタンス。そんな彼らのボスと会うなんて、アランは一体なにをたくらんでいるのだろうか。もはやきな臭いどころの話ではなかった。
「アランさんはそこで何をするつもりなのかしら? アタシたちに声をかけたということは、その人たちを倒す気?」
「いや、彼らと普通に会談して、あるブツを渡すだけだ。キミたち黒い双翼の刃にはその間、周辺の警備をしてもらいたい」
「警備ですか」
普段こういった内容の依頼はエデン協会に頼むもの。しかし依頼者が表ざたにしたくないやましい背景がある場合、彼らではなく狩猟兵団側に依頼するのはめずらしくないことなのだ。
「ああ、軍が会談を嗅ぎつけて来る可能性もあるし、レジスタンス側へ渡すときいざこざが起こるかもしれないからね」
「依頼内容はわかりました。でもアリスはともかく、なんで敵であるオレまで?」
本来敵側のレイジを、そんな大事な取り引き現場に呼ぶのはアラン側にとっていろいろリスクが高すぎる。最悪取り引きそのものが、破綻する恐れがあるのだから。
「それに関してはウォードの頼みだったからさ。ワタシ自身、久しぶりにキミたち黒い双翼の刃の力を見てみたかったし、快く受け入れさせてもらったというわけだ」
「ボスが……」
アリスの精神面の不調を見かねたウォードが、なんとかレイジと一緒にいられる機会を作ろうとした結果だったみたいだ。
「ふん」
そんなウォードの親心に、少しご立腹な表情を浮かべるアリス。
「そういえば巫女派に関係があるという話は?」
始め断ろうとしていたレイジであったが、巫女派に関係があるということに見事つられてしまったのだ。こちらとしてはむしろ、ここからが本題であった。
「ああ、それなんだがレジスタンス側のトップが、キミたち巫女派に興味を示していてね。一度話してみたいと。だからレイジと一緒にアポルオンの巫女本人か、または巫女派に精通している執行機関に関与していないメンバーに同行して来てほしいとのことだ」
「そういうことですか」
まさかのレジスタンスのトップが、アポルオンの巫女であるカノンにアプローチしてくるとは。相手が相手だけに一大事といってよかった。
「ちなみに同行の件はなしでも、全然かまわないらしい。ただ来てくれるなら、レジスタンス側の考えなどいろいろ話してくれるそうだ。とまあ、依頼についてはこんなものかな。どうするかね?」
「警備の依頼については、引き受けようと思います」
(アリスと一緒にいられるいい機会だしな)
アリスがいろいろ心配なので、ここは彼女と一緒にいられるこの機会をありがたく使わせてもらうことにする。実際依頼内容もそこまで厳しいものではなく、事と次第によってはなにか巫女派にとって収穫がありそうでもあるのだから。
「ただ同行者の件は、一度巫女派で話しあって決めさせてもらいます」
さすがにレイジの独断で決めれる内容ではないため、こっちはとりあえず返事を保留にしておくことに。
「わかった。レジスタン側のトップと会うのは二日後。くわしいことはあとで連絡させてもらう。あとわかってるとは思うが、変なマネは止めてくれよ。キミは今回狩猟兵団レイヴン側から派遣された人間として扱うからね。もしなにかあったらレイヴンの評判に泥がつくと思ってくれ」
「そこらへんはわきまえてますよ。プロとして依頼主を裏切ることはしません」
プロ意識もそうだが、ただでさえウォードや狩猟兵団レイヴンには恩があるのだ。それなのに出て行っていろいろ迷惑をかけたのだから、これ以上恩を仇で返すことはできなかった。
「それを聞いて安心したよ。ではワタシはまだイベントの件で忙しいから、失礼させてもらうよ。エキビションマッチとかもあるから、ぜひ楽しんでいってくれ」
そしてアランは部屋を出ていき、この場にレイジたちとレーシスが取り残されるのであった。
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