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二光聖委員会
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未花木夜夢はナノフに言われた通り、トレーニングをしていた。トレーニングルームで重力を大きくして走り込みや木刀による素振り、足捌きを繰り返す。
最初は体を動かすことさえ出来なかった。しかし、今ではスムーズに動けるようになってきた。ナノフは明日には重力レベルを上げると言っていた。
今日のトレーニングが済み、夜夢はナノフに呼ばれて研究室を訪れると私と同じくらいの歳の義肢の少女と会話をするナノフがいた。
「やあ、夜夢ちゃん。この娘は柊木霞ちゃん。君と同じ吸血鬼による被害者だ。君にはまだ僕の目的を話してなかったね」
「目的?世界征服とかですか?」
「僕がそんなこと考えるわけがないじゃないか!そうじゃなくて、僕の目的はこの世界の一部の人間のために他の人間が不幸になる不条理が許せないんだ。この不条理を生んでるのは吸血鬼と政府の人間。君達との目的と重なる。だから君達に力を貸している」
「マトモだ!」
「僕を何だと思っているんだ!まったく!義足が気になっていると思うけど、霞ちゃんは吸血鬼に散々いたぶられて左足と右手をアンデッドに食べられてしまってね」
夜夢は想像するだけでも身震いがした。
「君を呼んだのは一人では吸血鬼や政府には対抗出来ない、そんなわけでチームを組んでもらう。チームの名前や勧誘は自由にすると良い。霞ちゃんは君のチームの最初の仲間だ、仲良くしてくれよ。そして明日からは射撃訓練を追加するからね」
「もちろん、ドンとこいですよ」
「頼もしいね。夜夢ちゃんにはまだ話があるから霞ちゃんは外で待ってて」
「はい、了解です」
霞は無表情で部屋を退室した。ナノフは難しい表情で話し出した。
「君はマッ○売り少女の話を知っているかい?」
「寒い中マッチを買ってくれる人がいなくて、結局死んじゃう話だよね」
「うん、概ね正しい。しかし、ここで重要なのは過程と結末さ。悲劇のヒロインは悲劇のまま終わるのが鉄則であり、ハッピーエンドの過程に悲劇があった場合は悲劇のヒロインに足り得ないわけさ。何が言いたいかと言うと君は私が救わなければ悲劇のヒロインとなっていたってことだよ」
「私が悲劇のヒロイン…」
「君は悲劇のヒロインだと言って、助けを待つだけの漫画や小説、ドラマのヒロインになりたいかい?カッコいい主人公が無条件で助けてくれる。そんな世界を望む?」
「私は私の力で世界を変えたい」
「君ならそう言うと思ったよ。だけど、夜夢ちゃんは自傷行為をしていたね。何故、自傷行為をしてしまったかわかるかい?」
「苦しくて、苦しくて」
「苦しくて当然だよ、生きているからね。答えは、誰よりも世界に抗えない自分を憎んでいるからだよ。そして、誰よりも生きることに執着しているからさ。死にたいだけなら簡単に済む話だよね」
「私が生きたい?」
「うん、そうだよ。でもね、自傷行為の果てには死がある。何故なら、自傷行為を繰り返す人は、死にたいや自分を傷つける言葉を何度も繰り返す。言葉は繰り返す度にホントになってしまうからさ。自分の言葉には気をつけなきゃ駄目だよ、取り返しがつかなくなっちゃうからね。これからは笑顔で自分が好きだと、毎日十回言ってみよう」
「善処します」
「話はここまでさ、霞ちゃんと話しておいで」
「気遣って下さり、ありがとうございます」
夜夢は頭を下げると部屋を退室した。霞を探すためにきょろきょろしていると訓練所の入り口付近の壁に寄りかかっていた。
「ごめん、待たせちゃったね」
「良いよ、別に」
「そう言えば、チームの名前とかどうする?」
霞ちゃんは焦点の合わない目で辺りを見回すと、照明を指差した。
「光?」
「私がどれだけ暗い場所にいても、光だけは私を照らしてくれたから。だから光が良い」
「良いと思うよ」
「私は聖、清らかって意味を付け足して、学校の組織みたいに光聖委員会ってどう?」
霞は無表情で頷いた。
「じゃあ、決定だね」
私達は握手をして、夕食を一緒に食べた。その後また明日と別れて、一日が終わった。
最初は体を動かすことさえ出来なかった。しかし、今ではスムーズに動けるようになってきた。ナノフは明日には重力レベルを上げると言っていた。
今日のトレーニングが済み、夜夢はナノフに呼ばれて研究室を訪れると私と同じくらいの歳の義肢の少女と会話をするナノフがいた。
「やあ、夜夢ちゃん。この娘は柊木霞ちゃん。君と同じ吸血鬼による被害者だ。君にはまだ僕の目的を話してなかったね」
「目的?世界征服とかですか?」
「僕がそんなこと考えるわけがないじゃないか!そうじゃなくて、僕の目的はこの世界の一部の人間のために他の人間が不幸になる不条理が許せないんだ。この不条理を生んでるのは吸血鬼と政府の人間。君達との目的と重なる。だから君達に力を貸している」
「マトモだ!」
「僕を何だと思っているんだ!まったく!義足が気になっていると思うけど、霞ちゃんは吸血鬼に散々いたぶられて左足と右手をアンデッドに食べられてしまってね」
夜夢は想像するだけでも身震いがした。
「君を呼んだのは一人では吸血鬼や政府には対抗出来ない、そんなわけでチームを組んでもらう。チームの名前や勧誘は自由にすると良い。霞ちゃんは君のチームの最初の仲間だ、仲良くしてくれよ。そして明日からは射撃訓練を追加するからね」
「もちろん、ドンとこいですよ」
「頼もしいね。夜夢ちゃんにはまだ話があるから霞ちゃんは外で待ってて」
「はい、了解です」
霞は無表情で部屋を退室した。ナノフは難しい表情で話し出した。
「君はマッ○売り少女の話を知っているかい?」
「寒い中マッチを買ってくれる人がいなくて、結局死んじゃう話だよね」
「うん、概ね正しい。しかし、ここで重要なのは過程と結末さ。悲劇のヒロインは悲劇のまま終わるのが鉄則であり、ハッピーエンドの過程に悲劇があった場合は悲劇のヒロインに足り得ないわけさ。何が言いたいかと言うと君は私が救わなければ悲劇のヒロインとなっていたってことだよ」
「私が悲劇のヒロイン…」
「君は悲劇のヒロインだと言って、助けを待つだけの漫画や小説、ドラマのヒロインになりたいかい?カッコいい主人公が無条件で助けてくれる。そんな世界を望む?」
「私は私の力で世界を変えたい」
「君ならそう言うと思ったよ。だけど、夜夢ちゃんは自傷行為をしていたね。何故、自傷行為をしてしまったかわかるかい?」
「苦しくて、苦しくて」
「苦しくて当然だよ、生きているからね。答えは、誰よりも世界に抗えない自分を憎んでいるからだよ。そして、誰よりも生きることに執着しているからさ。死にたいだけなら簡単に済む話だよね」
「私が生きたい?」
「うん、そうだよ。でもね、自傷行為の果てには死がある。何故なら、自傷行為を繰り返す人は、死にたいや自分を傷つける言葉を何度も繰り返す。言葉は繰り返す度にホントになってしまうからさ。自分の言葉には気をつけなきゃ駄目だよ、取り返しがつかなくなっちゃうからね。これからは笑顔で自分が好きだと、毎日十回言ってみよう」
「善処します」
「話はここまでさ、霞ちゃんと話しておいで」
「気遣って下さり、ありがとうございます」
夜夢は頭を下げると部屋を退室した。霞を探すためにきょろきょろしていると訓練所の入り口付近の壁に寄りかかっていた。
「ごめん、待たせちゃったね」
「良いよ、別に」
「そう言えば、チームの名前とかどうする?」
霞ちゃんは焦点の合わない目で辺りを見回すと、照明を指差した。
「光?」
「私がどれだけ暗い場所にいても、光だけは私を照らしてくれたから。だから光が良い」
「良いと思うよ」
「私は聖、清らかって意味を付け足して、学校の組織みたいに光聖委員会ってどう?」
霞は無表情で頷いた。
「じゃあ、決定だね」
私達は握手をして、夕食を一緒に食べた。その後また明日と別れて、一日が終わった。
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