君が死ぬのを何度も見てきた

yu~

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進むために vol.4

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今、なん、て、言った、、、?

IYA...?

イヤ...?

いや...?

嫌?

って言ったのか?





おい待て!それじゃ困るんだよ!俺だって別れたいわけじゃない。けど、もうこれしかないんだよ。分かってよ、頼むから。

「晃盛!」

強く名前を呼ばれ顔を上げると、そこには先ほどまでの悲しさを貼り付けたような顔はどこにもなくて。

「嫌!だよ!」

もう一度そう言われる。決意を固めた顔で。

「亜美、ごめん、でも俺は...」

演技を続けなきゃいけない。そんなことはわかってるんだ。でも、この後の言葉が続かない。

無理やりにでも亜美の部屋を出ればいいだろう?なぜそうしない?答えはもうはっきりしていた。

俺はほんっとに、ことごとく亜美に惚れてるんだ。後先なんて、考えられなくなるぐらいに。






...どれぐらいの時間が経ったのだろうか。お互いに喋らず、沈黙が漂っていた。いや、正確には喋らずというより、俺は喋れず、亜美は俺を待ってくれているという感じだった。

だが、痺れを切らしたのだろう、先に口を開いたのは亜美だった。

「晃盛、話して」

諭されるような、優しい声で、しかし、断ることのできない、圧のある声で。

俺は逆らえずに元いた場所に座り直す。

お茶入れてくるね、と言って、亜美はひとまず満足というようにキッチンに向かった。

一方俺はというと、一見落ち込んでいるだけのように見えるが、内心いろいろなことを浮かべては消し、浮かべては消しを繰り返していた。

どうにかして誤魔化さなければ。

もはや義務感に意地も混ざったような思いで俺は思考を巡らせる。けれど、何も思いつかない。そしてこれは俺の良心なのか、はたまたただの逃げなのか、ふとこんなことを思った。

“これ以上亜美を騙していいのか?”

もう両手では数え切れないぐらいに亜美を騙している俺がこんなこと言える身じゃないのは重々承知している。ただ、やはり一度騙すたびに俺の心に溜まっていった罪悪感や後ろめたさは、もうとうに隠し切れないほどに溢れ出していた。

「お待たせ~最近ご近所さんから美味しい紅茶もらったんだよ。飲んでみ、めっちゃ落ち着くから。」

ああ、こんな時まで俺は亜美に気を使わせている。その事実がどうしようもなく虚しくて、最近強くなったと思っていた涙腺がまた決壊しそうになる。

「...ありがと」

かすれた声でそういうのがやっとだった。

「ん、うまい、これ」

「でしょー!」

明らかなドヤ顔で亜美が誇らしげに言う。

「まあ、私が作ったんじゃないけど!」

いつもなら俺が突っ込むところだが、ほとんど何も喋らない俺の代わりにセルフで突っ込み、俺の方を見てニヒヒと笑った。














「亜美、俺がこれから話すのは、到底あり得ない話で、俺の頭がおかしくなったと思うと思う。でも全部本当だから。信じてとは言わない、だけど、聞いてほしい。」

俺はもう限界だった。亜美に隠し事をすることが。その隠し事がこれからどんどん膨らんでいくことが。亜美のことを考えればこの選択は間違っている。そんなことはわかってるけど、もう戻れない。

「うん、聞くし、信じるよ」

あみは温かい顔で深く頷いた。

俺は考える。こんな、何度も時を繰り返しているなんて突拍子もない話を亜美にわかりやすく説明するために。でも自分自身未だにわからないことが多すぎるのだ。

...もう、こうなったら。

「俺は未来の亜美を救うために何度も同じ時間軸を生きているんだよ。タイムリープ、してるんだ。」

そのまま言おう。誰もが頭がおかしくなったんだな、気の毒に、とスルーするような話なんだ。説明の仕方云々で亜美がすぐに信じてくれるとも思わない。

というより、別に鼻から信じてもらおうとは思っていない。これで亜美も俺を気の毒な目で見たら、その時は今度こそ亜美の同意を得て別れればいい。むしろそれが最善策だ。亜美は頭のおかしい元彼の一人のことなんかすぐに忘れて、新たな未来へ進んでいけるんだから。

そんなことをぐるぐると考えていた俺の耳に飛び込んだ亜美の言葉は全く俺の理解の範疇を超えていて、亜美を混乱させてしまうかもしれないなー、などと考えていた俺がフリーズするほどだった。

「あー、やっぱり?そういうことじゃないかなーとは思っとったんやけどね(笑)」

苦笑を浮かべた彼女は全てが腑に落ちたとでも言うように、そう言ったのだ。

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