君が死ぬのを何度も見てきた

yu~

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踏み出した先の未来 vol.3

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亜美視点です。ご注意を!
___________________________________________


「亜美は就職?大学院?」

「私は就職かな~」

「私も~。大学院行くほど熱心に研究してるものもないしね(笑)」

「それよ(笑)」

「何系就きたいの?」

「今んとこN社が第一希望って感じかな~」

「N社!?あの広告代理店の最大手?」

「そーそー」

「うっわー、あそこ倍率エグない?」

「それな!余裕で100倍超えてる(笑)詰んだわ(笑)」

「まあ亜美なら行けそーだなー。能力高い上に社交性あるし。」

「そーだといいんだけどねー(笑)」


大学三年の冬ともなると、進路の話題は避けられないものになっていた。あと一年あるとはいえ、それがもうすぐであることに変わりはないのだ。

N社は広告代理店の最大手で、N社が広告を担当した会社は必ず売り上げが上がると言われている。

ゆえに超がつく人気就職先で、就職倍率は去年150倍を超えたとかなんとか...

まあダメ元ではあるがやる前から諦めるような性格ではない。神経の図太さには多少の自信がある。



まあこんなもっともらしいことを言い始めたのも最近で、一年半ほど前ならば将来の夢を聞かれると決まって公務員と答えていた。別に公務員になりたかったわけではないが、これといってやりたいこともなかった。それに親に公務員を勧められていたし、安定した給料と休みを確保できるのだから特に異論はなかった。

でもたった一人の存在がその考えを変えた。その人はいつも真っ直ぐで、自分のやりたいことがはっきりと決まっていた。そしてそれを実現させるための努力は惜しまなかった。

でも、そんな彼も悩んだ時期があるようで。自分の夢を取るか、家族の思いを取るか。彼の家族は旅館をやっていて、彼が継がなくては旅館は潰れてしまう状況にあった。そして彼は夢を諦めて後を継ぐことを決めた。

最初は不信感しか湧かなかった。あんなに一生懸命だったものをそんなに一瞬で諦められるものなのか?なんで私に相談してくれなかったのか?

でも、一緒に過ごすうちにわかったのだ。簡単に諦めたわけではなく、苦渋の決断だったことが。相談しなかったのは彼なりの思いやりだったということが。


...まあ、要するに、何を言いたいかっていうと、私が変われたのは彼の、晃盛のおかげなわけで、感謝してるし尊敬もしてる。まあ結局のろけなんだけどね(笑)





「ねぇねぇ、亜美」

「ん?何?」

「今週の土曜日暇?レポートも一段落したし、たまには遊びに行かない?」

「あー、ごめん、今週は予定あって」

「えー、まじかー、じゃあ今度絶対遊ぼうね?」

「うん、それは約束する!」

「で、どこ行くの?まさか新しい彼氏でもできた!?」

「いや、ないない(笑)なんていうか、一人旅?的な」

彼女は私が晃盛と別れたことを知っている。まあ全ての事情を話したわけではないがなんとなく複雑な事情があることは察してくれたようで、あまり深入りはせずにいてくれている。

「一人旅?どこまで?」

「隣町の山の上の方に旅館あるやん?そこまで」

「あー、なんかそこ最近評判いいよね。...は?てか、近くね?それ旅っていうの?」

「んー、言わないかも(笑)」

「なんなん、それ?(笑)てかなんでわざわざそんな近いとこにしたん?せっかくならもっと熱海とか行けばいいのに」

「一人で熱海は切なすぎる(笑)」

「まあ、そうね(笑)」


別に旅がメインなわけじゃない。どうせ晃盛は自分がしっかりするまで私には会わないとか考えてるんだろうけど、

...待てるかボケ!!もう一年だよ!?さすがにもうじっとしてらんないし。待つだけなのは性に合わんからね。

「まあなんかよくわからんけど、たまにはそーゆーのもいいんかもね。いってら~」

「うん、行ってくる」





なんやかんやで土曜日になり、私は電車で隣町を目指す。晃盛、どんな顔するかな?びっくりするかな?絶対するな(笑)だって電話すらしてないのにいきなり行くんだもん。てか、旅館って予約しないで行けるもんなんだっけ?

...まあ、無理だったらそんとき考えよう。


電車からタクシーに乗り換えて目的地を目指す。高台に行くにつれて景色も良くなり、旅館側が景色と温泉と美味しいご飯を売りにしているのが嘘ではないとわかる。そして、必然的に温泉とご飯への期待も高まってくる。


「お客さん、着きましたよ」

「はーい、ありがとうございます」

お金を払ってタクシーを降りると、目の前には立派な建物。

「うわ、すご...」

晃盛から実家が旅館だとは聞いていたが、話の雰囲気的にもっとこじんまりしたものだと思っていた。予想以上の規模に思わず声が漏れる。


でもすぐに少しの緊張はとけた。晃盛の背中が目に入る。おばあさんとなにか話しているようだ。大方なにかの説明でもしているのだろう。相変わらず優しいんだな。

受付の呼び出しベルを鳴らす。大きく息を吸い込んで、

「すいませーん」

「あ、はーい、ただいま伺います」

声に気づいた晃盛が慌てて受付に戻ってくる。まだ私には気づいていないようだ。どんどん近づいて来て、





晃盛が私に気づくまで、

3、2、1...


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