告白

ナカムラ

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一年生

彼女との出会い

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 今は、平成2年。
私の名前は、佐々木華恋(ささきかれん)。
高校一年生だ。

 県では、一応、有数の女子の中高一貫校に通ってる。
校則は、めっちゃ厳しいの。
髪の毛を染めるのなんて、絶対ダメ。
もちろん、紺の赤いリボンの付いたブレザーの制服もスカートを短くしちゃいけなくて、白い靴下の色もカバンも靴も学校指定のものでなくちゃダメ。
でも、皆、折り曲げたり、カットしちゃって校則破りまくり。
私は、根っからの真面目人間というか、先生に怒られたくなくて、校則をきっちり守ってた。
だから、逆に私は、浮きまくり。

 でも、友達はいた。
2人だけだけど、それぞれの家で漫画を読んだり、おしゃべりしたり、それなりに楽しかった。

 勉強も普通ぐらいには、出来たし運動神経も普通ぐらいだと思ってた。
彼女に出会うまでは……。

 今日は、高校一年になって初めての授業だ。
友達だった2人とは、クラスが違っちゃって、離ればなれ。
真面目な私は、浮いちゃって、自分から声をかけるタイプでもない。
座って体を硬くして、顔もこわばっちゃってた。
緊張で手のひらには、じわりと汗が……。
他の子達は、もうグループが出来てて、楽しく周りでおしゃべりしてる。
そりゃそうだ。
ほとんど、中学からきた子達ばかりだから。
なのに、私ときたら情けない……。

 そんな時、声をかけてくれた子がいた。
「ショートボブかわいいね」
私は、少し面食らいながら、応えた。
「うん。ありがとう。でも、あなたのボブもサラサラでかわいいよ」
彼女は、笑顔で話し続けてくれた。
「私さー。高校からだから、まだ友達できなくて。ハハッ……」
「私なんて、中学からなのにまだ友達できてないよ」
「そうなの? じゃあ、今日から仲良くしてね」
「うん。こちらこそだよ」
そう言って私は、彼女に笑いかけた。

 彼女は、席に着くと、いきなり参考書みたいなのをカバンの中から取り出して、勉強し始めた。
私は、内心、もう少し話したかったなぁ、と思いながら、邪魔しないようにそっとしておいた。

 お昼休みになって、私とその子は、机を対面にくっ付けて、お弁当を広げた。
やっと、私は、彼女とたくさん話ができた。

 最初に話し始めたのは、やはり、彼女からだった。
「そうだ。名前言ってなかったね。私は、高里弓子(たかさとゆみこ)」
「私は、佐々木華恋。」
「えー! かわい過ぎる名前! 芸能人の名前みたい。私なんて、ダサくて、自分の名前嫌いなんだよな」
彼女は、朝一で先生が名簿で私の名前呼んでたの、すっかり、忘れてたみたい。

 私は、会話の糸口になればと彼女に言った。
「私は、芸能人で好きなのは……」
彼女は、申し訳なさそうな表情になった。
「ごめん! テレビ観るの親が厳しくて、観てないから、芸能人のこと詳しくないの」
「ううん。全然、大丈夫だよ」

 私は、そう言いながら、小学生の頃の友達を思い出していた。
彼女も言ってたんだ。
父親が厳しくてテレビ観させてくれないって。
彼女は、頭が凄く良かったっけ。
もしかして、高里さんも頭いいのかな。
確かに、うちの学校は、高校から入る方が難関だし、さっきも難しそうな分厚い参考書勉強してたしな。
「じゃあ、漫画とか読む?」
私は、思い切って訊いてみた。
「うん。本当は、いけないんだけどこっそりちょっとだけね」
そう言うと、彼女は、唇に人差し指をくっ付けた。
私は、彼女との話題が見つかって嬉しかった。
「そうなんだ。私、あのスナイパーが主人公の漫画好きなんだ。普段は、ひょうきんで、いざとなったら、凄いアクションで女の人を守るところがギャップがあって好きー」
「わかるー。私もあの漫画好き! 女子ってギャップに弱いよねー」
「うん! そうそう!」
彼女は、不意に私のお弁当を見ながら言った。
「その混ぜご飯みたいなの美味しそう!」
私は、笑いながら、お弁当を差し出した。
「いいよ。食べて、食べて。その代わり、サヤエンドウ炒めたみたいなの食べていい?」
「うん。交換こしよう。これは、醤油で炒めただけみたいだけどね。お母さんがよく作ってくれるの」
「私の混ぜご飯もお母さんがいつも作ってくれる。ていうか、こればっかりだけど。ハハッ!」

 食事が終わると、また彼女は、黒板の方に机を戻して、あの分厚い参考書で勉強し始めた。

 うちの学校は、掃除の時間があって、せっせと床を掃いた。
私だけが真面目に掃除した。
他の女の子達は、あちこちでおしゃべりしてて、高里さんはというと、立ったまま、あの参考書を読んでいた。
私は、ちょっと納得いかなかったけど、仕方ない。
これも、先生に怒られないためだ。
そう、私は、本当は、真面目じゃない。
ただ、怒られたくなかっただけ。

 帰る時間になって、彼女と私は、駅まで一緒に帰ることにした。
彼女から私に話してきた。
「そういえば、なんて呼べばいい? さっちゃんでいい?」
「うん。確かに華恋ちゃんよりいいかも。私は、弓(ゆみ)ちゃんて呼んでいい?」
「もちろん!!」
「帰りの電車同じ方向かな? 私は、○○行きだけど」
弓ちゃんは、また申し訳なさそうに言った。
「反対側だな。今日は、塾行かないと……」
「えっ? この前受験終わったばかりでしょ!?」
「うん。そうなんだけど、大学受験のためにね」
「え、偉いね。凄い!」
「いやいや、受験オタクっていうかガリ勉なんだよね……」
「ううん。本当に凄いよ」
私は、そう言いながら、好きなドラマ観たり、ベッドで好きな漫画見たりして、ゴロゴロしている家での自分を思い浮かべてなんだか恥ずかしくなった。

 私達は、駅に着くとお互いに手を振って別れた。
私は、新しく友達ができたことが嬉しかった。

 その時は、思わなかったんだ……
彼女の恋愛を見守っていくことになるなんて。
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