転生者ジンの異世界冒険譚(旧作品名:七天冒険譚 異世界冒険者 ジン!)

夏夢唯

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第1章 転生

23話 冒険者ランクアップ

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 ジョッキの中に残っていたエールを飲み干したジンは冒険者ギルドへと向かう為に席を立った。

「さてと、腹も膨れたことだし冒険者ギルドに向かうか。ご馳走様、美味しかったです」

「お、そう言ってもらえると嬉しいね。また来ておくれ」

「はい、また来ます」

ここ数日通っている見慣れた道を冒険者ギルドに向けて歩き出すと道を行き交う人々も見た顔が増えたように感じた。

  (俺も少しは町に馴染んできたかな)

 冒険者ギルドに着くとウェスタンドアを押し開け、ギルドハウスの中に入るとまだ昼過ぎだというのにラウンジには多くの冒険者が集まっている。

受付で依頼完了の報告をする冒険者の後ろに並んでいると5分ほどで自分の番がきた。

「こんにちは」

「いらっしゃい、今日は早いわね。依頼の完了報告ですか?」

「はい、依頼を達成できたので帰ってきました。ずいぶん多くの冒険者がいるみたいですけど何かあるんですか?」

「最近ダンジョンの森でゴブリンがすごく増えていて、ちょっと問題になっていたのよ。
今日も30匹以上のゴブリンに襲われている冒険者を見たって報告があったのよね。
見たのはあなたと同じFランクのペアだったから、助けには行けなかったらしいんだけど。
もしかして間に合えばと思って急いでギルドに報告しに来たけど襲われた冒険者はもう厳しいと思うわ。
先週も1組襲われて3人が犠牲になったからこれ以上被害を出さないようにする為にギルドでゴブリン討伐依頼を出すことにしたのよ」

「今日襲われているのを見たっていう場所と時間を教えてもらえますか?」

「時間は朝の礼拝の鐘なったすぐ後らしいから9時位かしら、場所は北門を出てまっすぐ行くと森の入り口に着くのは知っているわよね。そこから北西に1時間くらい行った所らしいわ」

  (あー、それって完璧に俺だわ。
   一人だったのにパーティに見えたって、一体どんな目をしてるんだよ。
   まあ、あの数のゴブリンと戦っているのが1人だったなんて思わないか)

「そうなんですか、見た人は無事に戻ってこれてよかったですね」

巻き込まなくてよかったと思いながら言葉を返した。

「そうよね、そこの2人がけのテーブルに座っているあの子達よ。運が良かったのね」

ソフィーが指をさした後ろのテーブルを見ると女の子が二人座って話をしていた。

  (こっちを向いている赤毛は美人系、ということは見えない栗毛の子は
   期待させておいて振り返るとがっかりなんて落ちをつけるパターンだな)

なんて考えているとソフィーに指をさされた赤毛の子が手を振り、それに気がついた栗毛の子が振り返って会釈をした。

「エミリちゃんちょっとこっちに来て」

ソフィさんが赤毛の子を呼んだ、知り合いのようだ。
前に座っている栗毛の子も立ち上がってこっちに向かってきた。

  (!!! かわいい !!!)

栗毛の娘はがっかりどころか、俺の感に反して物凄くかわいい娘だった。
二人は立ち上がってこっちに歩いてくる。
地球で生きて来た魂の年齢は59歳、秘書や受付にも綺麗で若い孫と変わらない年齢の子が沢山いたが時めく事など皆無であったのだが、この世界の現在の体に精神が引っ張られているのか鼓動が周囲の人に聞こえてしまうので次はないかと思えるほど激しくなっていた。
そのせいか緊張しすぎて目も合わせられないし、挨拶をしようとしても言葉が見つからなくて何も言えなくなってしまい、脳は機能停止状態であった。

「ジン君・・・ジン君、おーい、ジン君!」

ソフィさんの声で再起動した俺はソフィーさんの方へ振り返った。

「ジン君どうしたの、大丈夫?」

「あ・・大丈夫です、あの…依頼完了の処理をお願いします」

そう言ってギルドタグを機会に差し込んだ。

「その前に、せっかく呼んだんだから紹介しておくわね。この子はエミリ、私の従姉妹よ。
隣にいるのはアリス、エミリの幼馴染よね。2人もつい最近冒険者になったばかりでまだFランクよ。
採取の依頼をコツコツこなしているから来週にはEランクに上がれるかな」

「エミリ、アリスちゃん、この子はジン君。今週冒険者になったばかりで、あなた達と同じFランク冒険者よ。
ソロで依頼をこなしているから見かけたら声をかけてあげてね」

「初めまして、私たち冒険者になりたてだけどよろしくね!」

エミリがこっちを向いて挨拶をし、隣のアリスもそれに合わせてお辞儀をした。

「ジンです、こちらこそよろしく」

「私たちにできることなら協力するから、その時は言ってね。
今日は北の森は危ないらしいから町の中の依頼を受けるんだけど、そろそろ依頼の時間だから行くわね。
それじゃあまたね」

「それじゃ」

挨拶をして振り返ってソフィーさんの方を向くと、タグを刺した機械の操作をしながら俺の方を見た。

「ジン君、これ一体どういう事なの説明して」

何やら納得がいかないようだ。

「どういう事?って言われても、意味がわからないんですけど」

「依頼達成はいいとしてこの数
   ゴブリン        43
   ホブゴブリン       3
   ゴブリンメイジ      1
   ゴブリンファイター    1
ゴブリンファイターなんて普通Fランクじゃ倒せないし、その上この数意味がわかんないわよ。
でも、ギルドタグは不正不可能だから本当の数字なのよね。
で、どうやって倒したの?」

「どうやってって、刀で倒したんですけど、結構時間がかかりましたよ。
それから、あの子達が見た冒険者ってたぶん俺のことだと思います。
無事に帰ってこれたのは作戦がうまくいって逃げながら戦えたのと、昨日買った刀の性能が思った以上に良かったからじゃないですか」

スキル持ちだということは話さずに作戦と武器のおかげだと話すと「お祖父さんによほど厳しく鍛えられていたのね」とソフィーさんは勝手に納得していた。

「それで、今回の依頼報酬は大金貨5枚と金貨3枚。前回までの分と累積でギルドポイントが溜まったから一気にDランクに昇格ね。昇格の手続きをするから待ってね」

そう言うと新しいギルドタグを横の差し込み口に差し込んで機械を操作し始めた。
2分ほど待つと出来上がった新しいギルドタグを手渡された。

「Dランクおめでとう、でもまだまだ冒険者としての経験が少ないから絶対に無理は禁物よ。今まで以上に気を引き締めてね」

そう言って手渡されたギルドタグには2本のシルバーラインが入っていた。

「そういえば、倒したゴブリンはどうしたの、もしかして置いて来ちゃった?」

肩から斜めがけにしているマジックバックを見ていると、素材買取カウンターにいたシズラー婆さんが手招きをしながら声をかけてきた。

「ソフィー、買取はこっちでやっておくからいいよ。
坊や、こっちにおいで」

手招きされたカウンターへ行くと、小さな声で俺に話しかけた。

「ここじゃ出しにくいだろうから横のドアを開けて入っておいで」

買取カウンターの横のドアを開けると、シズラー婆さんは奥のドアを開けて屋外に出た。

「ここなら広いから出せるだろ、遠慮せずに全部お出し」

ついていくとそこは外ではなく、広い倉庫の中だった。
端から順番にゴブリン達と一緒に拾ったアイテムを並べた。

「なんだい、装備を着たままの奴もいるじゃないか。
剥ぎ取って全部買い取ってやるから支払いは明日でいいね」

「おーい!ぼーっとしてないでこっちに来て手伝いな」

シズラーさんが大きな声で呼ぶとおくから獣人の男出て来た。

「婆様なんか仕事ですか~」

俺が初めて見た獣人は可愛い猫耳娘ではなく、ぼーっとして気が弱そうで憎めない感じのぽっちゃり狸男だった。

「トータ、装備を着けているのがいるだろう、全部脱がせてこっちに並べな」

装備を剥ぎ取りながらゴブリンを並べるトータにを見てシズラーさんが尋ねる。

「トータ、ラースはどこに行ったんだい?」

「さっき買い物に出てくるって外に行きました」

「あの唐変木め、一体どこで油を売っているんだい。役に立たないね~全く」

  (相変わらず口の悪い婆さんだな~)

シズラー婆さんの口の悪さに呆れながらもテキパキと早い仕事ぶりは頼もしいと思っていると

「なんだい、まだいたのかい。今日は何も出ないからまた明日来な!」

俺に気がついた婆さんに追い出されてしまった。
ホールに戻るとホールにいたゴブリン討伐に呼び出された冒険者達は既に出発していた。

「皆さんはもう出発したんですか?」

「みんな出発したわよ、ジン君も追いかけて行く?Dランクになったから依頼を受けられるわよ」

「今日はもう疲れたんで帰ります。明日出直して依頼を見に来るのでよろしくお願いします」と伝えて帰路についた。

いつものように広場の屋台を物色しながら帰るが今日は時間も早いので中古の服やカバン、靴、アクセサリーなども沢山出ていたのでアーロンさん一家にお土産を買って帰ることにした。
アンナちゃんにはリボン、メルさんには髪留め、アーロンさんはバンダナだ。

  (使ってくれるといいな)

なんて思いながら大銀貨3枚3000Gを払ってバッグに入れた

「ただいまー」

帰り着くとアンナちゃんの元気な声がする

「おかえりー!ご飯お準備はまだできてないよ」

  (俺ってそんなにいつも帰るとすぐご飯を食べてるイメージがあるの?)

なんて思ったが、前にも他の冒険者に言っていたので大体冒険者はそんな感じなのだろう。

「お土産だよー」

アンナちゃんが期待の眼差しで俺を見る。あげた瞬間喜ぶ顔を見るのがすごく嬉しい

「ありがとう!うわぁー可愛いリボン、お母さんに見せてくるね」

厨房の方に走っていくアンナちゃんの後ろを歩いて厨房に向かい中をのぞいて。

「ただいま、今日はちょっと早く戻って来ました。これお土産です。
こっちがアーロンさん、こっちがメルさん」

「いつも気にかけてもらってすまんな」
「大事に使わせてもらうわ」

「高いものじゃないけど、そう言ってもらえると嬉しいです。夕方になったら降りて来ます、また後で」

そう言って部屋の鍵を受け取った。
アンナちゃんはよほど嬉しいのか、リボンをいつまでも眺めていた。
午前中の死闘を忘れ、ほのぼのとした気持ちで部屋へ戻っていった。
部屋に戻り椅子に座ると何か忘れているような気がした。

  (なんだっけ・・・あ!)

ゴブリンと戦闘中に何度もレイの声がしたのだがその後確認していなかったのを思い出した。

「レイ、今日の午前中の戦闘中に何か報告しなかった?」

「レベルアップと新しいスキルを覚えたので報告しました」

そうだったんだ、よし見てみようと思いステータスを開いてみた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【名前】  ジン・オキタ
【年齢】  15
【種族】  ヒューマン(???)
【称号】  ルーキー冒険者
【レベル】             17
【HP】       2713/2713
【MP】       9724/9724
【STR(力)】         938
【AGI(敏捷性)】       769
【CON(体力)】        845
【INT(知能)】        721
【DEX(器用)】        741
【LUC(運)】          70
【状態】              正常

【スキル】
  鑑定Lv5 状態異常耐性Lv5
  心身異常耐性Lv5 身体強化Lv3
  思考加速 Lv2
  剣術(居合・二刀) 格闘術 投擲術    
  気配感知 気配遮断 身体能力加速Lv1
【ユニークスキル】
  偽装LvMAX アイテムボックス∞
  自動回復Lv6 ナビゲーターLv2
  マップLv1 
【加護】創造神の加護 エンデ主神の加護
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

思った以上にレベルが上がっていた。
このステータスもきっとおかしな物になっているに違いない。
一体普通の冒険者だったらどのレベルなんだろうと思い、確認してみた。

「レイ、このステータスって普通の冒険者だったらどのレベルの人と同じくらいなの?」

「平均的な冒険者レベルでいうと、HPはLv240とMPはLv310それ以外は150前後です」

「え、そんなにステータスが上がっているの?悪いけどまた偽装しておいて。
あ、毎回レベルアップのたびに偽装をお願いするのは面倒くさいから、レベルアップしたらその都度同じレベルの冒険者位に偽装するようにできるかな?」

「了解しました。そのように設定しておきます」

ステータスをよく見るとスキルが増えているのに気がついた。

気配遮断      相手に気配を感知されにくくするスキル。INTに応じて効果増
身体能力加速Lv1 走る速度が5割速くなる

  (やった!)

【気配遮断】は狩猟をするのに欲しかったスキルだ、気づかれずに近づく事ができるようになると狩猟成功確率が大きく上がるのだ。
それに【自動回復】も6になっている、これで集団にタコ殴りになるか、よほど大きなダメージを連続で受けない限りは死ぬことはないだろう。
回復スピードの上昇は冒険者としてとてもありがたかった。
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