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第1章 転生
25話 Cランクの依頼 2
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(やばい、右腕をやられた!)
周囲に視線を飛ばして探すと10メートルほど向こうにジンのものだった右腕が刀を掴んだ状態で木に刺さっていた。
先ほどの攻撃で肩口から先を吹き飛ばされていたのだが、苦痛耐性のおかげで痛みをそこまで感じなかったので大きなダメージを受けているとは思っていなかったのだ。
しかも、心身異常耐性が効いているのか腕がなくなっている状況でもパニックにはならない。
肩口を見ると出血はすでに止まり回復し始めていた。
片腕と肩で体の12%だから完全に回復するには2分は必要な計算になるが、それを熊が待ってくれるはずも無く攻撃は続く。
メインの武器がなくなったので攻撃もままならなくなってしまい、魔獣の攻撃を必死に避けているのだが、スキル【身体能力向上】を使っていても今のレベルではまだ俺の方が足が遅く逃走も不可能だ。
(やばい、なんとかしなくちゃ!
このままだとジリ貧だぞ)
ジンのアイテムボックスの中には多くの武器が入っているのだが、この時は次々と繰り出される攻撃を避けるのが精一杯でそれを思い出すことはできなかった。
かろうじて攻撃を避け続けているが刀からはどんどん遠ざかり、今は随分離れた場所にいる。
腕を見るがなかなか再生しない、自分で思っているよりも時間が経っていないのだ。
右腕が肘先まで再生した時、ついに押し倒されて捕まった。
前足で俺を押さえつけて噛み付こうとする口を左手と再生途中の右腕で殴りつけて辛うじて避けているがそれほど長くは続かないだろう。
ガリ!ベキボキゴリ!
ついに左腕に噛み付かれ骨の砕ける音が聞こえた。
ジンが動けなくなったと認識したのか噛み付いたまま熊の動きも止まっている。
「フーッ フーッ」っと熊の鼻息がジンの顔にかかる。
(やっと右手が回復してきて指を残すだけなのに!
ちくしょう! 何か手はないか)
今までなんとか依頼をこなせていたし、上のランクの依頼も偶然であるがこなせていたので、自分なら大丈夫だという驕りがあった。
そんな自分に腹が立ち、心の底からの怒りがふつふつと湧いてきた。
飛ばされた腕が掴んでいる刀が目に入る。
この状況でもまだ諦めてはいない、目の前の魔獣を倒したいという欲求は消えていない。
(あの場所に行って刀を手に入れたい、刀さえ手にはいれば!)
横を見ると20メートル先の木には俺の右手が掴んだままの刀が突き刺さっていた。
再生した右手に力を込めるが、まだ指先に力が入らない。
(あそこに行きたい!)
そう思いながら熊の魔獣に渾身の攻撃をしようとジンは雄叫びをあげた。
「ウオォォォォーーーーー!」
魔獣の動きが止まったように見えた次の瞬間、目の前の景色が飛んだ。
(やられた・・・)
そう思ったが、目の前には刀が突き刺さった幹が見え、そして声が聞こえた。
『スキル【短距離転移】を取得しました』
「え、なに?・・・・・どうした?」
レベルアップのタイミングでしかスキルが増えないと思っていたがそうではないようだ。
周りを見ると離れた場所で巨大な熊がなにが起きたのかわからず首を振って周囲を探している。
ジンの必死の攻撃で左目にダメージを受け、視野が狭くなっているのでまだ見つかってはいないのだ。
(まだやばい、完全に回復できていない)
アイテムボックスから急いで結界石を出して起動する。
結界を張る魔力を感じたのか巨大熊がこちらに気がつき、ジンの姿を確認すると突進してきた。
結界の壁にぶつかり多少のダメージを受けたようだが、その場所からは動こうとはせずに吠えながら結界を殴っている。
左腕、腹、そして頭にダメージを受けていたジンはその場に座り込んで回復するのを待った。
2分後、ジンは立ち上がると幹に突き刺さっている刀を抜き、柄を握っていた自分の右腕だった物をアイテムボックスにしまった。
(刀は全く問題ないようだな)
確認してみると刀は刃こぼれ一つ無かった。
自分の服を確認すると結構ボロボロになっている、右腕の部分は肩口から無くなってノースリーブ、左腕の部分は噛み付かれたので穴だらけ、そして正面は爪で斜めに切り裂かれ全体的に血みどろになっている。
今時のホームレスでもこんな服装していないぞ、という格好になっていた。
(これでも生きている…信じられないな。
逃げていった冒険者は無事だったかな?)
結界を張ったことによって逃げた冒険者達を心配できるほど心に余裕ができ、失った血の補充と体力回復の為に屋台で買った串焼きとジュースを腹に入れる。
周囲を見渡すと慌てて張った結界だが思った以上に広いのでスキル【短距離転移】を結界の中で試してみる。
2メートル先に転移先を思い浮かべてその場所に転移しようと頭の中で考えるとフッと姿が消えて転移先に現れる。
何度か転移して確認していると現れる時の向きも考えながら転移することで向きも自由に変えられることもわかった。
転移後にステータスを見ると転移するとMPが5ずつ減ることもわかったが自動回復があるので気にする程の消費量ではない。
「よし、行くか」
そう言って巨大熊の方を向くと、もう少しで仕留められると確信しているのか結界の外から虎視眈々とジンを狙っている。
結界を消すと障壁が消えたことに気がついた魔獣がジンを中心にして右回りでゆっくり近づいてくる。
その時に最初に切り落とした後ろ足の傷口がふさがり、傷口が少し盛り上がってるのが見えた。
ジンほどの再生スピードではないが、この魔獣も再生能力があるようなので再生してしまう前に攻撃を開始する。
即座に相手の死角に転移すると、ジンが目の前からいなくなったたので動作が止まってしまった魔獣のその左足を付け根から切断した。
後ろから見た熊の背中には頭の後ろから尻尾の付け根まで白銀のたてがみが生えていた。
(見ようによっては背中の立髪が白く見えるな。
もしかして、こいつがホワイトバックベアか!?
同じCランク依頼のゴブリンファイターとは格が違う気がするぞ)
一瞬そう思ったが、直ぐに次の攻撃のために転移をすると、後ろ足が両方なくなった怒りの咆哮が聞こえた。
それを気にせず逆サイドに転移して右前足を切り落としたが、前足1本になった状態でも油断できないので念のために少し離れた場所に転移した。
一本足で体を起こそうとしているその目はまだ諦めていない、ここで時間を与えるとやばい気がしたジンは真横へ転移すると一気に首を切り落とす。
ドサッ!
地面に大きな頭部が落ちた音とともに周囲に静寂が戻り、戦闘が終了した事を確信した。
『レベルアップしました』と、レイの報告が聞こえたが戻ってから確認することにして、周囲に散らばるホワイトバックベアの手足や体を全部アイテムボックスに入れていく。
一時は死を覚悟するほどの厳しい戦いであったが、なんとか倒すことができてほっと胸をなでおろし、血で汚れた手を水筒の水で洗っていると左手の中指に光るマジックアイテムの指輪に気がついた。
(あ、こいつを使っていればもう少し楽な戦いができたんじゃないか)
その場で座り込んでしばらく休憩したい気持ちを抑えると急いでその場を後にした。
なぜなら周囲に広がった血の臭いは新たな魔獣を呼び寄せてしまい非常に危険だからである。
転移や結界を駆使すれば楽に倒せるのではないかと思うかもしれないが、死闘での疲れが抜けていないので新たな戦闘は避けたかったのだ。
帰り道は森の出口まで短距離転移の練習をしながら移動した。
途中で見つけたゴブリンやワイルドホッグ、そして小ぶりなのホワイトバックベアなどは帰りの駄賃とばかりに倒してアイテムボックスに入れておく。
小ぶりといっても3メートル以上もあるのでヒグマより大きいのだが6メートル超えの魔獣と戦った後では怖い相手ではなかった。
森の入り口に近づくと光点が森の中に5つと道に1つマップに現れた。
そっと近づくとそこに見えたのは前にマルコの馬車を襲ってきた盗賊達であった。
【気配遮断】を使って移動していた俺には全く気がついていないので、近づいて一人の後頭部をダガーのグリップで殴りつけた。
ガツン
「グェッ!」
「おい!どうした、大丈夫か」
4人が倒れた最後尾の男の下に近寄って覗き込む。
それを見て近くへ転移してもう1人の後頭部をぶっ叩くと即座にその場から転移。
ゴン
「ムグ!」
倒れて白目を剥くている二人目の男を見て他の1人が叫ぶ。
「うわっ、どうしたんだ何かいるのか?」
残りの盗賊が騒ぎ出した。
一人が外に向かって走り出し残りの二人で倒れた二人を担いで外に運び出そうとしてる。
「おかしらー、たいへ ウゲ」
ドサリ!
外に向かって走り出した男のすぐ後ろに転移して3人目を倒した。
それに気がつかずに仲間を運んでいる後ろから歩いているの男を倒して、前を歩いていた男も倒して5人を身動きできないようにアイテムボックスの中から出したスパイダーロープで縛って木にくくりつけた。
外にいる「お頭」と呼ばれていた男の様子を見に行くと中の騒ぎには気がついておらず、ちょうどこちらに向かってきた荷馬車を剣を抜いて止めたところだった。
「悪いがここは通行止めだ、通りたかったら荷物と金を出しな」
馬車の御者をしている老人と横で怯えている子供以外に人がいないのを確認すると。
「おい、おめーら出てこい」
森の中に向かって声をかけるが当然子分達からの返事はない。
「ん?
おい!てめーら、どうした。早く出てこい」
返事はないが塞いだ道を開けると逃げられてしまうのでその場を動けない盗賊の姿を確認すると、その後ろに転移して思いっきり後頭部をぶっ叩いた。
ゴン!
一発で昏倒させた盗賊を縛り上げながら御者のお爺さんに声をかける。
「大丈夫ですか、僕は冒険者のジンと言います。森から出てくるときに盗賊を見かけたのでちょうど良かった」
「どうも助かりました、私はマール市で薬屋をやっていますエチューと申します。薬を隣町に納めに行った帰りで、町に戻っている最中に襲われて困っていたところでした」
「こいつら最近この辺で追い剥ぎをしていたみたいなんで、ちょうど良かったです。すみませんがこいつらを町まで運びたいのですが金貨3枚でお願いできませんか?」
「助けていただいたので、お金は結構です。タダで運びますよ」
お爺さんはそう言ってくれたが、盗賊を連れて帰ってもらった上に盗賊だという証言もしてもらわないといけないので、説明してお金を受け取ってもらった。
「助かりました。俺も依頼を済ませて帰るところだったので歩いて帰らずにすみます」
そう言いながらぐるぐる巻きにして身動きが取れない盗賊を空っぽの馬車の荷台に積み込んだ。
1時間ほどで南門に着くまでに何人か気がついて暴れ始めたので刀を抜いて脅す。
「持って帰るのは死体でもいいんだぞ」
本当は死なせると犯罪奴隷として売れなくなり報奨金が減ってしまうためそんな事はしないのだが、五月蝿かったので脅したのだ。
そのときに首に当てた刀が馬車の揺れで動いて首に少し切り傷をつけてしまったが殺されるよりはましであろう。
周囲に視線を飛ばして探すと10メートルほど向こうにジンのものだった右腕が刀を掴んだ状態で木に刺さっていた。
先ほどの攻撃で肩口から先を吹き飛ばされていたのだが、苦痛耐性のおかげで痛みをそこまで感じなかったので大きなダメージを受けているとは思っていなかったのだ。
しかも、心身異常耐性が効いているのか腕がなくなっている状況でもパニックにはならない。
肩口を見ると出血はすでに止まり回復し始めていた。
片腕と肩で体の12%だから完全に回復するには2分は必要な計算になるが、それを熊が待ってくれるはずも無く攻撃は続く。
メインの武器がなくなったので攻撃もままならなくなってしまい、魔獣の攻撃を必死に避けているのだが、スキル【身体能力向上】を使っていても今のレベルではまだ俺の方が足が遅く逃走も不可能だ。
(やばい、なんとかしなくちゃ!
このままだとジリ貧だぞ)
ジンのアイテムボックスの中には多くの武器が入っているのだが、この時は次々と繰り出される攻撃を避けるのが精一杯でそれを思い出すことはできなかった。
かろうじて攻撃を避け続けているが刀からはどんどん遠ざかり、今は随分離れた場所にいる。
腕を見るがなかなか再生しない、自分で思っているよりも時間が経っていないのだ。
右腕が肘先まで再生した時、ついに押し倒されて捕まった。
前足で俺を押さえつけて噛み付こうとする口を左手と再生途中の右腕で殴りつけて辛うじて避けているがそれほど長くは続かないだろう。
ガリ!ベキボキゴリ!
ついに左腕に噛み付かれ骨の砕ける音が聞こえた。
ジンが動けなくなったと認識したのか噛み付いたまま熊の動きも止まっている。
「フーッ フーッ」っと熊の鼻息がジンの顔にかかる。
(やっと右手が回復してきて指を残すだけなのに!
ちくしょう! 何か手はないか)
今までなんとか依頼をこなせていたし、上のランクの依頼も偶然であるがこなせていたので、自分なら大丈夫だという驕りがあった。
そんな自分に腹が立ち、心の底からの怒りがふつふつと湧いてきた。
飛ばされた腕が掴んでいる刀が目に入る。
この状況でもまだ諦めてはいない、目の前の魔獣を倒したいという欲求は消えていない。
(あの場所に行って刀を手に入れたい、刀さえ手にはいれば!)
横を見ると20メートル先の木には俺の右手が掴んだままの刀が突き刺さっていた。
再生した右手に力を込めるが、まだ指先に力が入らない。
(あそこに行きたい!)
そう思いながら熊の魔獣に渾身の攻撃をしようとジンは雄叫びをあげた。
「ウオォォォォーーーーー!」
魔獣の動きが止まったように見えた次の瞬間、目の前の景色が飛んだ。
(やられた・・・)
そう思ったが、目の前には刀が突き刺さった幹が見え、そして声が聞こえた。
『スキル【短距離転移】を取得しました』
「え、なに?・・・・・どうした?」
レベルアップのタイミングでしかスキルが増えないと思っていたがそうではないようだ。
周りを見ると離れた場所で巨大な熊がなにが起きたのかわからず首を振って周囲を探している。
ジンの必死の攻撃で左目にダメージを受け、視野が狭くなっているのでまだ見つかってはいないのだ。
(まだやばい、完全に回復できていない)
アイテムボックスから急いで結界石を出して起動する。
結界を張る魔力を感じたのか巨大熊がこちらに気がつき、ジンの姿を確認すると突進してきた。
結界の壁にぶつかり多少のダメージを受けたようだが、その場所からは動こうとはせずに吠えながら結界を殴っている。
左腕、腹、そして頭にダメージを受けていたジンはその場に座り込んで回復するのを待った。
2分後、ジンは立ち上がると幹に突き刺さっている刀を抜き、柄を握っていた自分の右腕だった物をアイテムボックスにしまった。
(刀は全く問題ないようだな)
確認してみると刀は刃こぼれ一つ無かった。
自分の服を確認すると結構ボロボロになっている、右腕の部分は肩口から無くなってノースリーブ、左腕の部分は噛み付かれたので穴だらけ、そして正面は爪で斜めに切り裂かれ全体的に血みどろになっている。
今時のホームレスでもこんな服装していないぞ、という格好になっていた。
(これでも生きている…信じられないな。
逃げていった冒険者は無事だったかな?)
結界を張ったことによって逃げた冒険者達を心配できるほど心に余裕ができ、失った血の補充と体力回復の為に屋台で買った串焼きとジュースを腹に入れる。
周囲を見渡すと慌てて張った結界だが思った以上に広いのでスキル【短距離転移】を結界の中で試してみる。
2メートル先に転移先を思い浮かべてその場所に転移しようと頭の中で考えるとフッと姿が消えて転移先に現れる。
何度か転移して確認していると現れる時の向きも考えながら転移することで向きも自由に変えられることもわかった。
転移後にステータスを見ると転移するとMPが5ずつ減ることもわかったが自動回復があるので気にする程の消費量ではない。
「よし、行くか」
そう言って巨大熊の方を向くと、もう少しで仕留められると確信しているのか結界の外から虎視眈々とジンを狙っている。
結界を消すと障壁が消えたことに気がついた魔獣がジンを中心にして右回りでゆっくり近づいてくる。
その時に最初に切り落とした後ろ足の傷口がふさがり、傷口が少し盛り上がってるのが見えた。
ジンほどの再生スピードではないが、この魔獣も再生能力があるようなので再生してしまう前に攻撃を開始する。
即座に相手の死角に転移すると、ジンが目の前からいなくなったたので動作が止まってしまった魔獣のその左足を付け根から切断した。
後ろから見た熊の背中には頭の後ろから尻尾の付け根まで白銀のたてがみが生えていた。
(見ようによっては背中の立髪が白く見えるな。
もしかして、こいつがホワイトバックベアか!?
同じCランク依頼のゴブリンファイターとは格が違う気がするぞ)
一瞬そう思ったが、直ぐに次の攻撃のために転移をすると、後ろ足が両方なくなった怒りの咆哮が聞こえた。
それを気にせず逆サイドに転移して右前足を切り落としたが、前足1本になった状態でも油断できないので念のために少し離れた場所に転移した。
一本足で体を起こそうとしているその目はまだ諦めていない、ここで時間を与えるとやばい気がしたジンは真横へ転移すると一気に首を切り落とす。
ドサッ!
地面に大きな頭部が落ちた音とともに周囲に静寂が戻り、戦闘が終了した事を確信した。
『レベルアップしました』と、レイの報告が聞こえたが戻ってから確認することにして、周囲に散らばるホワイトバックベアの手足や体を全部アイテムボックスに入れていく。
一時は死を覚悟するほどの厳しい戦いであったが、なんとか倒すことができてほっと胸をなでおろし、血で汚れた手を水筒の水で洗っていると左手の中指に光るマジックアイテムの指輪に気がついた。
(あ、こいつを使っていればもう少し楽な戦いができたんじゃないか)
その場で座り込んでしばらく休憩したい気持ちを抑えると急いでその場を後にした。
なぜなら周囲に広がった血の臭いは新たな魔獣を呼び寄せてしまい非常に危険だからである。
転移や結界を駆使すれば楽に倒せるのではないかと思うかもしれないが、死闘での疲れが抜けていないので新たな戦闘は避けたかったのだ。
帰り道は森の出口まで短距離転移の練習をしながら移動した。
途中で見つけたゴブリンやワイルドホッグ、そして小ぶりなのホワイトバックベアなどは帰りの駄賃とばかりに倒してアイテムボックスに入れておく。
小ぶりといっても3メートル以上もあるのでヒグマより大きいのだが6メートル超えの魔獣と戦った後では怖い相手ではなかった。
森の入り口に近づくと光点が森の中に5つと道に1つマップに現れた。
そっと近づくとそこに見えたのは前にマルコの馬車を襲ってきた盗賊達であった。
【気配遮断】を使って移動していた俺には全く気がついていないので、近づいて一人の後頭部をダガーのグリップで殴りつけた。
ガツン
「グェッ!」
「おい!どうした、大丈夫か」
4人が倒れた最後尾の男の下に近寄って覗き込む。
それを見て近くへ転移してもう1人の後頭部をぶっ叩くと即座にその場から転移。
ゴン
「ムグ!」
倒れて白目を剥くている二人目の男を見て他の1人が叫ぶ。
「うわっ、どうしたんだ何かいるのか?」
残りの盗賊が騒ぎ出した。
一人が外に向かって走り出し残りの二人で倒れた二人を担いで外に運び出そうとしてる。
「おかしらー、たいへ ウゲ」
ドサリ!
外に向かって走り出した男のすぐ後ろに転移して3人目を倒した。
それに気がつかずに仲間を運んでいる後ろから歩いているの男を倒して、前を歩いていた男も倒して5人を身動きできないようにアイテムボックスの中から出したスパイダーロープで縛って木にくくりつけた。
外にいる「お頭」と呼ばれていた男の様子を見に行くと中の騒ぎには気がついておらず、ちょうどこちらに向かってきた荷馬車を剣を抜いて止めたところだった。
「悪いがここは通行止めだ、通りたかったら荷物と金を出しな」
馬車の御者をしている老人と横で怯えている子供以外に人がいないのを確認すると。
「おい、おめーら出てこい」
森の中に向かって声をかけるが当然子分達からの返事はない。
「ん?
おい!てめーら、どうした。早く出てこい」
返事はないが塞いだ道を開けると逃げられてしまうのでその場を動けない盗賊の姿を確認すると、その後ろに転移して思いっきり後頭部をぶっ叩いた。
ゴン!
一発で昏倒させた盗賊を縛り上げながら御者のお爺さんに声をかける。
「大丈夫ですか、僕は冒険者のジンと言います。森から出てくるときに盗賊を見かけたのでちょうど良かった」
「どうも助かりました、私はマール市で薬屋をやっていますエチューと申します。薬を隣町に納めに行った帰りで、町に戻っている最中に襲われて困っていたところでした」
「こいつら最近この辺で追い剥ぎをしていたみたいなんで、ちょうど良かったです。すみませんがこいつらを町まで運びたいのですが金貨3枚でお願いできませんか?」
「助けていただいたので、お金は結構です。タダで運びますよ」
お爺さんはそう言ってくれたが、盗賊を連れて帰ってもらった上に盗賊だという証言もしてもらわないといけないので、説明してお金を受け取ってもらった。
「助かりました。俺も依頼を済ませて帰るところだったので歩いて帰らずにすみます」
そう言いながらぐるぐる巻きにして身動きが取れない盗賊を空っぽの馬車の荷台に積み込んだ。
1時間ほどで南門に着くまでに何人か気がついて暴れ始めたので刀を抜いて脅す。
「持って帰るのは死体でもいいんだぞ」
本当は死なせると犯罪奴隷として売れなくなり報奨金が減ってしまうためそんな事はしないのだが、五月蝿かったので脅したのだ。
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