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第1章 転生

27話 装備服屋

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 冒険者ギルドを出たジンは先で待つベルンハルトに追いつくとその横に並び歩き始めた。

「じゃあ行くか。ジン、ところでどんな防具が欲しいんだ?」

と言われて頭の中で防具を装備した姿を想像する。

「うーん、どんなのって言われても…」

「まさかと思うがフルプレートアーマーなんてのはねえよな」

「ええ、あんな動きにくそうなのは御免です。
動きやすくてそこそこ防御できるような物がいいですね」

「そうか。だとすると服に合わせてアーマーを選ぶのか、アーマーに合わせて服を選ぶかで先に行く店が変わるぞ。どっちにする?」

「それなら動きやすい服に合わせてアーマーを考えます」

「そうか、なら先に服を見に行こう」

「はい、そうしましょう」

ベルンハルトに案内されて広場から西に200メートルほど行った先の交差点を右に曲がる。
するとベルンハルトがある店を指刺した。

「あの店だ」 

ベルンハルトの指先の店は小洒落た感じで入り口の横には小さな花壇があり可愛らしい花が咲いている。

「おーっす!ニーナ、久しぶりだな。邪魔するぞ」

「いらっしゃい。珍しいわね。今日は何用かしら?」

出てきたのはエルフだった。白い肌に銀色の髪で中性的で非常に整った彫像のような顔をしている、いわゆる美人というやつだ。
見た目は20歳前後だが実際の年齢はもっと上なのでは?とジンは思った。

「客を連れてきた。こいつだ」

「初めまして、ジンです。こう見えてもBランクの冒険者です」

「ニーナです、どのようなご要望ですか?」

「お気づきとおもいますが」

ジンは手を広げてぼろぼろになった自分の着ている服を見せる。

「狩に行って熊を相手に戦ったらこんな風になってしまったんですよ。
ですから服を新調しようと思ってベルンハルトさんにお願いしてここに連れて来てもらいました」

「ベルンハルトが連れてきたってことは冒険者用の防御力のある服が欲しいのかしら」

「そうだ。こいつが無鉄砲だから、できるだけ丈夫な服を作ってもらえないかと思ってな。素材の在庫はあるか?」

「新しく仕立ててあげたいんだけど、生地の在庫が無いのよね」

「生地の在庫がないのか?それじゃ商売にならないんじゃないか?」

「無いと言っても高ランクの冒険者が必要とする服の素材がないだけで普通の冒険者程度の服なら今持っている材料でなんとかなるわ。あなたが連れてくる程の冒険者用ということは普通の高ランク冒険者より条件が厳しいんでしょ。今ある在庫の生地だとあまり付与できないからそこそこの物しか作れないのよね」

「それなら素材はこっちでなんとかしよう、それなら大丈夫だろ?」

「それなら問題ないわね。手に入るならダンジョンスパイダーの糸が欲しいわね、準備できるかしら?そうすれば直ぐにでも生地を織って仕立てることができるわ。あ、そうだ!もし冒険者ギルドで依頼をだすなら鉱山にいるメタルワームのまゆもどうにかならない?ダンジョンスパイダーの糸だけで作る物よりもっと良い物ができるわよ」

「メタルワームの繭?」

「そう、メタルワームの繭よ。ちょっと前に在庫が切れたの。在庫が無くなる前に仕入れようと思ってエルフの商人に声をかけてるんだけどここ暫く音沙汰無しね」

「ちょっと前って言うがそれって何年前の話なんだ?お前の時間感覚ずれてるって自覚してるか?」

「まあ失礼ね、在庫が切れてからまだ三十年しかたってないわよ」

「やっぱりな、俺たちからしてみればかなり前だぞ、もう絶滅してるんじゃないのか?」

「兵士の装備を作るのに乱獲したからその辺で取れなくなったんだと思うわ。でも、エール山とかソード山みたいな高い山に行けばまだ取れると思うのよね」

「取れるとしても僻地や普通じゃ行けないような場所だろうな。
ニーナ、メタルワームの繭はギルドに依頼を出してみないか?
冒険者の中には見た事がある奴もいるかもしれないし、依頼を見てたら拾って帰る奴もいるかもしれない」

「そうね。じゃあお願いしようかしら。
ジン君もBランクの冒険者だったら素材を採りに行ってみない?
危険な魔物じゃないし採ってきてくれたらサービス価格で安く作ってあげるけど、どう?」

そう言ってニーナさんはベルンハルトとジンの顔を見た。

「ジン、ギルドで依頼を出してもいいがどうせなら自分で取りに行ってみないか」

「それはいいですね。次は何をしようかと考えていたから丁度よかったかな」

ジンは取り敢えずCランクの冒険者になることが今までの目標であった。
しかしいざ目標を達成してしまうと次の目標が見つからず何をしようか迷っていたのだ。

「良いですよ、いきます。どれくらい捕まえれば良いですか?」

「そうね、ダンジョンスパイダーなら2匹丸ごと、メタルワームの繭なら3個もあれば上下の服が作れるかな。
もし見つけたら住んでいる場所で作れる糸の強度が違うから色々採ってくると面白い物が作れるわ」

「良いものを作ってほしいので上等な素材を採ってきたいのですが、どこに行くのが良いと思いますか?」

ジンの質問にベルンハルトが答える。

「一番近いダンジョンは北の森にあるデルタダンジョンだ。
リョーガの近くからダンジョンに向かう道があるからそこを通れば簡単に行けるが、何が起きるかわからないから1人で行くのはお勧めしないぞ」

「じゃあダンジョン以外でお勧めの場所ってどこです?」

「そうだな…もし1人で行くなら鉱山だが、ここから一番近い鉱山はエール山だな。高さ6000メートル以上ある
山だが上の方にいい鉱脈があるみたいだ。最近見つかった鉱脈も多いが新しい鉱脈はあまり深い場所まで坑道が掘られていない。
上の方に行けば表面に鉱石が転がっている場所もあるって噂だが息が苦しくて長い時間作業ができないらしい」

息が苦しいのは酸素が少なくなるからであろう、俺は状態異常耐性があるから他の人より苦しくないはずだ。それに短距離転移を繰り返して上に行けば体力も奪われないから探すのも楽にできるだろう。

「次に近い鉱山はどこですか?」

「二番目に近いのはその隣のソード山だな。ここは昔からある鉱山だ。沢山の坑道があって設備もしっかりしているし村も近いから食事に困ることはないだろう。俺としてはアルム村をベースにしてソード山の坑道を探すのが良いと思うけどな」

「最近はエール山にも小さい村ができて金属の精錬もしているみたいよ。オンジ村っていって宿もあるから食事は困らないと思うけど、山が厳しいから薦めない方がいいかしら」

ベルンハルトもニーナも遠い方の鉱山を勧めていたが、ジンは人が少ない山の方がメタルワームが見つかりそうだと思った。

「ありがとうございます、ダンジョンスパイダーはダンジョンの中なんですよね。
魔物に囲まれてしまうと逃げ道がなさそうなんで、絶滅してもう居ないかもしれませんが、見つけにくくても逃げやすくて安全そうな鉱山に行こうと思います。
どちらの鉱山に行くかは自分でよく考えてみます」

「そうだな、情報を集めて準備をしてから採りに行くほうがいい。
ニーナありがとう、製作依頼は材料をとってきてからになりそうだから、その時は頼む」

「いいですよ、余分に取れたらその分は支払いします。これってギルドを通した個人依頼にした方が良いのでしょうか?」

「いや、そんなことをしたら製作費が高くなってしまうからギルドは通さなくていいぞ」

「わかりました、それでは個人的に材料を買い取って製作するということにします」

何事も臨機応変にという事なのだろう。

  (しかし、ニーナさんってなかなかとっつきにくそうだし、礼儀正しくしておかないと嫌われそうだ)

そう思うとジンはニーナの前で礼儀正しくすることにした。

「持ってきた時はよろしくお願いします、どれくらい時間がかかるか分かりませんが、頑張ってみます」

「それじゃあ行くか。また来るから頼むぞ」

そう言ってドアを開けて店を開けるベルンハルトについて店を出るのだが、ジンは店を出る際にニーナに会釈をすることは忘れなかった。
店を出た二人は話をしながら防具屋に向かって歩きはじめた。

「よかったな、ニーナが作ってくれそうで。久しぶりに上機嫌のニーナを見たぞ」

  (え? あれで上機嫌だったの?エルフの表情ってわからねー)
 
ジンには全く分からなかったが、あれが上機嫌なのだそうだ。

「僕には分かりませんでした、エルフの方って分かりにくいんですね」

「いや、ニーナほど感情が分かりにくいのは他に見たことがないぞ。
俺も25年近く付き合っていて最近やっと分かるようになったばかりだ。嫁の親友で俺たちのパーティーメンバーだ。お前がポーションを提供してくれて復帰できたことも知っているからな、力になってくれるはずだ」

「そうなんですか、礼儀作法に厳しそうなので気をつけます」

「ガハハハ。元は冒険者だ、そんなに気にしなくても大丈夫だ」

  (気にするなって、そんな事を言われても俺の第六感が気をつけろと囁いているんだな~)
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