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第1章 転生
29話 入山
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空がうっすらと白み始めた頃、目を覚ましたジンはアイテムボックスから取り出したスープとパンを朝食にした。
食事を済ますと刀とダガーを装備し、結界を消して鉱山へと移動を開始する。
夜明け前の道は人が歩いていないので目視範囲を短距離転移でどんどん進んで行く。
王都の外壁の際を抜けて川を越え、移動し始めて1時間を過ぎる頃には大きな山の麓に到着していた。
エール山は6000メートルを超える高い峰が4000メートル付近で連なる巨大な双耳峰で東側がエール岳、西側がエッジ岳という。
険しい山で3000メートルを超えると斜度がきつくなり道も無くなるので、普通の人は登っていかない。
エール岳の麓にはオージという名の村があり、入山手続きはその村の鉱山ギルドでしなければいけない。
村の入り口に着く頃には陽も登っていて、門も開いていたので冒険者タグを見せて村に入った。
「すみません、エール山の鉱山に行きたいのですが」
「あそこで入山料を払えば誰でも鉱山に入れるよ、爺さんが居眠りしてるから起こして話すといい」
門番に指を刺された方向に鉱山ギルドの看板が見えたので、その小屋に入るとドワーフのお爺さんが椅子に座ったまま船を漕いでいた。
「こんにちわ、ここで入山料を払えば鉱山に行けると聞いてきたんですが」
居眠りをしていたお爺さんはジンの声で目を覚ました。
「おやおや、こんなに早い時間に人が来るのは珍しい。鉱山に行きたいのかい、入山料は採掘をしないのなら大銀貨1枚、採掘をするなら大銀貨5枚じゃよ。
しかし、手ぶらで何をしに行くのかな?道具が必要なら隣で売ってるからそこで買うと良い」
「採掘しますので大銀貨5枚ですね」
そう言ってマジックバッグから大銀貨を5枚出すと机の上に並べた。
入山料を払うと引き換えに入山採掘証を受け取った。
「それで1週間採掘が可能じゃ、期限が書いてあるからこれを超えた場合は山を降りた時に延長した分を支払えばいい、延長料金は3日ごとに大銀貨1枚じゃ、気をつけて行っておいで」
「ありがとうございます、行ってきます」
ギルド小屋を出ると、鉱物を採掘する為の道具を持っていないので道具屋でツルハシとハンマーそれとタガネを金貨3枚で仕入れると、声をかけられて一緒に行動する羽目にならないよう急いで村を出た。
山に登る道を進むと少し上に煙が出ている煙突のような物が見えはじめた。
きっとあそこは精錬場なのであろう。
人の目につかない場所になると短距離転移で500メートルほど上に見えた精錬場の近くの林へ一気に跳んだ。
林をかき分けて出て行くと精錬場横の宿舎から出てきたドワーフと鉢合わせになった。
「うわっ、びっくりした。おめぇどこから出てきた」
「すぐそこで野宿してたんですよ」
「そうだったのか、そんなところで寝ていると獣に食われちまうぞ、次は宿舎に泊まりな。
親方は口は悪いが気のいい人だから、頼めば泊めてくれるよ。
あ、親方おはようっす」
「おはようございます、冒険者のジンと言います」
「冒険者か、俺は精錬場を任されているゴーシュだ」
「メタルワームを探しに来たんですが、最近どこかで見ませんでしたか?」
「メタルワームを探しているのか? たぶんこの辺のメタルワームは獲り尽くされてもういねえと思うぞ。
繭が欲しいんだろうがここ数年はこの辺で見た者はいねえな。あそこの棚から上ならもしかするとまだ居るかもしれねーぞ」
ゴーシュの指差した山の中腹には棚のような地形があった。
「あんなに上の方ですか、登るのが大変そうですね」
「ああ、あの棚から上には殆ど人が入ってねーからな。山が険しすぎてちょっとやそっとじゃ登る事ができねえんだ。前にあそこから上に行ったのは高ランクの冒険者で、もう10年以上前になるな。
たしかそいつは、すごく高価なポーションの素材集めにワイバーンの巣を探しに来たと言ってたな」
「その時の冒険者はどうやってあそこまで登ったんですか?」
「登ってねーよ」
「え?」
「だから、登っちゃいねーんだよ」
「じゃあ、どうやってあそこまで行ったんですか?」
「テイムした大陸コンドルに乗って飛んで行ったのさ、4000メートルから上は飛ばない限り行けねえんだよ。
もし行けたとしてもメタルワームの繭なんて突き出した岩の裏側の手が届かねえ場所にしかねえって話だったぞ。
見えてもまず取れねえ、運が良けりゃ岩の間にできた繭が見つかるかもしれねえから頑張りな。
でも言っておくが本当に何年も見てねえから、見つからなくてもがっかりするなよ。
ついでだが、もし上の方でいい鉱脈を見つけたらそれも知らせてくれ、でかい鉱脈だったら報奨金も出る」
「今日から上に行ってきますので、見つけたら帰りに教えますね。もし鉱石を見つけたらそれはどうすればいいんですか?」
「入山料を払っているんだったら見つけたものは自分の物だ。
できる事ならここで見つけた鉱石の精錬は俺たちに任せてほしい。腕はいいから悪いようにはしねえ」
「わかりました。その時はお願いします。ところでこの山はどんな鉱石が出るのですか?」
「ここか、ここは金・銀・銅・亜鉛・鉄・ニッケル・マンガンだが2ヶ月前に上の方でミスリルを含む石が1個見つかっている。
どこかにあるんだろうが、約2ヶ月間みんなが必死に探しても見つかってねえところを見るとワイバーンとかドラゴンが咥えてきたのかもしれねえし、人が登れねえ場所にあるのかもしれねえ。質のいい鉄と金狙いで行ってきな」
「そうですか、頑張ってみます」
そう言って山へ向かうジンをゴーシュは手を振って見送った。
山を登り始めると精錬所の他にも上の方で煙が上がっている場所が目に入ったので温泉か火口があるのだろう。
周囲に人の姿がなくなったのを確認しアイテムボックスからマジックスコープを出すと目標を確認しその先へと転移を開始した。
その都度目標を確認しながら湯気の立っている場所を目標に10回ほど転移を繰り返した時、それは突然目の前に現れた。
青色の水面が見え、それから立ち上がる湯気は紛れもなく温泉の匂いがした。
水面を触ってみると少し熱めで10メートルほど上にある岩の間から湧き出したお湯が流れ込んで大きな天然の湯船を作り出していた。
湯船の広さは畳40枚程度で目の前の深さは腰程度に見える。
ジンはアイテムボックスの中からタオルを取り出すと、急いで服を脱いで岩の上に放り湯船に足を入れた。
「あちっ」
熱く感じたが高度が高くなっていて気温が下がっているから余計に熱く感じているのだろう。冬場に体が冷えているとそれほど湯温が高くなくても熱く感じてしまうのと同じだろうと思い、我慢して肩まで浸かって暫くするとちょうど良い温度に感じるようになった。
「ふぅ、極楽極楽」
どんな効能があるんだろうと思い湯を鑑定してみた。
温泉
泉質: 炭酸水素塩泉
Ph: 9.7
効能:筋肉痛・神経痛・関節痛・うちみ・切り傷・やけど・美肌
(これは精錬所の炭鉱夫達が泣いて喜びそうな温泉じゃないか)
しかし、転移もできず召喚やテイミングができない以上この場所へ来るのは不可能であるが同じ山なら下でも同じ泉質の湯が出るかもしれないな、などと考えながら久しぶりの温泉をゆっくりと時間をかけて満喫するのであった。
食事を済ますと刀とダガーを装備し、結界を消して鉱山へと移動を開始する。
夜明け前の道は人が歩いていないので目視範囲を短距離転移でどんどん進んで行く。
王都の外壁の際を抜けて川を越え、移動し始めて1時間を過ぎる頃には大きな山の麓に到着していた。
エール山は6000メートルを超える高い峰が4000メートル付近で連なる巨大な双耳峰で東側がエール岳、西側がエッジ岳という。
険しい山で3000メートルを超えると斜度がきつくなり道も無くなるので、普通の人は登っていかない。
エール岳の麓にはオージという名の村があり、入山手続きはその村の鉱山ギルドでしなければいけない。
村の入り口に着く頃には陽も登っていて、門も開いていたので冒険者タグを見せて村に入った。
「すみません、エール山の鉱山に行きたいのですが」
「あそこで入山料を払えば誰でも鉱山に入れるよ、爺さんが居眠りしてるから起こして話すといい」
門番に指を刺された方向に鉱山ギルドの看板が見えたので、その小屋に入るとドワーフのお爺さんが椅子に座ったまま船を漕いでいた。
「こんにちわ、ここで入山料を払えば鉱山に行けると聞いてきたんですが」
居眠りをしていたお爺さんはジンの声で目を覚ました。
「おやおや、こんなに早い時間に人が来るのは珍しい。鉱山に行きたいのかい、入山料は採掘をしないのなら大銀貨1枚、採掘をするなら大銀貨5枚じゃよ。
しかし、手ぶらで何をしに行くのかな?道具が必要なら隣で売ってるからそこで買うと良い」
「採掘しますので大銀貨5枚ですね」
そう言ってマジックバッグから大銀貨を5枚出すと机の上に並べた。
入山料を払うと引き換えに入山採掘証を受け取った。
「それで1週間採掘が可能じゃ、期限が書いてあるからこれを超えた場合は山を降りた時に延長した分を支払えばいい、延長料金は3日ごとに大銀貨1枚じゃ、気をつけて行っておいで」
「ありがとうございます、行ってきます」
ギルド小屋を出ると、鉱物を採掘する為の道具を持っていないので道具屋でツルハシとハンマーそれとタガネを金貨3枚で仕入れると、声をかけられて一緒に行動する羽目にならないよう急いで村を出た。
山に登る道を進むと少し上に煙が出ている煙突のような物が見えはじめた。
きっとあそこは精錬場なのであろう。
人の目につかない場所になると短距離転移で500メートルほど上に見えた精錬場の近くの林へ一気に跳んだ。
林をかき分けて出て行くと精錬場横の宿舎から出てきたドワーフと鉢合わせになった。
「うわっ、びっくりした。おめぇどこから出てきた」
「すぐそこで野宿してたんですよ」
「そうだったのか、そんなところで寝ていると獣に食われちまうぞ、次は宿舎に泊まりな。
親方は口は悪いが気のいい人だから、頼めば泊めてくれるよ。
あ、親方おはようっす」
「おはようございます、冒険者のジンと言います」
「冒険者か、俺は精錬場を任されているゴーシュだ」
「メタルワームを探しに来たんですが、最近どこかで見ませんでしたか?」
「メタルワームを探しているのか? たぶんこの辺のメタルワームは獲り尽くされてもういねえと思うぞ。
繭が欲しいんだろうがここ数年はこの辺で見た者はいねえな。あそこの棚から上ならもしかするとまだ居るかもしれねーぞ」
ゴーシュの指差した山の中腹には棚のような地形があった。
「あんなに上の方ですか、登るのが大変そうですね」
「ああ、あの棚から上には殆ど人が入ってねーからな。山が険しすぎてちょっとやそっとじゃ登る事ができねえんだ。前にあそこから上に行ったのは高ランクの冒険者で、もう10年以上前になるな。
たしかそいつは、すごく高価なポーションの素材集めにワイバーンの巣を探しに来たと言ってたな」
「その時の冒険者はどうやってあそこまで登ったんですか?」
「登ってねーよ」
「え?」
「だから、登っちゃいねーんだよ」
「じゃあ、どうやってあそこまで行ったんですか?」
「テイムした大陸コンドルに乗って飛んで行ったのさ、4000メートルから上は飛ばない限り行けねえんだよ。
もし行けたとしてもメタルワームの繭なんて突き出した岩の裏側の手が届かねえ場所にしかねえって話だったぞ。
見えてもまず取れねえ、運が良けりゃ岩の間にできた繭が見つかるかもしれねえから頑張りな。
でも言っておくが本当に何年も見てねえから、見つからなくてもがっかりするなよ。
ついでだが、もし上の方でいい鉱脈を見つけたらそれも知らせてくれ、でかい鉱脈だったら報奨金も出る」
「今日から上に行ってきますので、見つけたら帰りに教えますね。もし鉱石を見つけたらそれはどうすればいいんですか?」
「入山料を払っているんだったら見つけたものは自分の物だ。
できる事ならここで見つけた鉱石の精錬は俺たちに任せてほしい。腕はいいから悪いようにはしねえ」
「わかりました。その時はお願いします。ところでこの山はどんな鉱石が出るのですか?」
「ここか、ここは金・銀・銅・亜鉛・鉄・ニッケル・マンガンだが2ヶ月前に上の方でミスリルを含む石が1個見つかっている。
どこかにあるんだろうが、約2ヶ月間みんなが必死に探しても見つかってねえところを見るとワイバーンとかドラゴンが咥えてきたのかもしれねえし、人が登れねえ場所にあるのかもしれねえ。質のいい鉄と金狙いで行ってきな」
「そうですか、頑張ってみます」
そう言って山へ向かうジンをゴーシュは手を振って見送った。
山を登り始めると精錬所の他にも上の方で煙が上がっている場所が目に入ったので温泉か火口があるのだろう。
周囲に人の姿がなくなったのを確認しアイテムボックスからマジックスコープを出すと目標を確認しその先へと転移を開始した。
その都度目標を確認しながら湯気の立っている場所を目標に10回ほど転移を繰り返した時、それは突然目の前に現れた。
青色の水面が見え、それから立ち上がる湯気は紛れもなく温泉の匂いがした。
水面を触ってみると少し熱めで10メートルほど上にある岩の間から湧き出したお湯が流れ込んで大きな天然の湯船を作り出していた。
湯船の広さは畳40枚程度で目の前の深さは腰程度に見える。
ジンはアイテムボックスの中からタオルを取り出すと、急いで服を脱いで岩の上に放り湯船に足を入れた。
「あちっ」
熱く感じたが高度が高くなっていて気温が下がっているから余計に熱く感じているのだろう。冬場に体が冷えているとそれほど湯温が高くなくても熱く感じてしまうのと同じだろうと思い、我慢して肩まで浸かって暫くするとちょうど良い温度に感じるようになった。
「ふぅ、極楽極楽」
どんな効能があるんだろうと思い湯を鑑定してみた。
温泉
泉質: 炭酸水素塩泉
Ph: 9.7
効能:筋肉痛・神経痛・関節痛・うちみ・切り傷・やけど・美肌
(これは精錬所の炭鉱夫達が泣いて喜びそうな温泉じゃないか)
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