転生者ジンの異世界冒険譚(旧作品名:七天冒険譚 異世界冒険者 ジン!)

夏夢唯

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第1章 転生

30話 採掘

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 あまりの気持ち良さにのぼせそうになり湯船のへりに腰掛けて涼んでいたのだが山肌を見てこの山に来た目的を思い出した。

「あ、やばっ!」

慌てて湯船から出ると服を着て次の探索場所をマジックスコープで見つけて転移した。

 転移した場所からは隣のエッジ岳の山頂が見えた、名前の由来は山頂から1400メートルが細く、突き出して立っていて刃のように見えるからだろう。
山頂へ転移をするとその場所は畳8畳ほどの広さがあり、隣の山頂には何かが飛んでいるのが見えたのでマジックスコープを取り出した。
このマジックスコープというのはアイテム名を聞くのを忘れたジンが勝手につけたアイテム名である。

 飛んでいる魔獣をマジックスコープで確認するとそれは3頭のワイバーンだった。
あの下にワイバーンの巣があるのかもしれないのだが、今回の獲物でもないので気付かれる前に温泉があった場所に転移した。親方がオーバーハングの下に繭がついていると言っていたので2000メートル地点の大棚まで戻り、マジックスコープでオーバーハングを探した。
棚からは上に8つの大きなオーバーハングを見つけたので下から順番にメタルワームや繭がいないか探し始める。
 標高2500メートルの3箇所目のオーバーハングまでは人が入った形跡があったが、その少し上に登った所からは切り立った上に逆層といった登ることが厳しい岩場になっていた。4箇所目までは何も無かったが5箇所目のオーバーハングがある1000メートルもあろうかと思われる垂直で巨大な壁を調べているとでっかい芋虫が7匹壁面を登っていた。

 マジックスコープに魔力を流し込んで倍率を上げて500メートルくらい上を見ると小さな棚の下に繭がすでに5つできていた。この望遠鏡は魔道具屋で手に入れたマジックアイテム魔道具なのだが流し込む魔力の量で倍率を変えることができ、手ぶれ補正と距離測定の機能もついている。もしかしてと思い望遠鏡をのぞきながら見えた物を鑑定してみる。

「あ、できた」

どうやらこの望遠鏡であれば遠距離であっても中に見えるものを鑑定することができるようだ。

 壁に見えた芋虫や繭を鑑定してすると全部メタルワームだったが他の濃い色に比べて白っぽい色違いが2匹混ざっていた。
脅かしてしまうと今登っているメタルワームが繭を作らなくなってしまうかもしれないので作り始めるまで我慢して見守り、繭に動きがないのを確認してロープを用意して標高3700メートルの棚の上に転移した。
覗き込むと繭の中のメタルワームの姿が見えなくなっていたので岩の隙間に短剣を打ち込みそれに取り付けたロープを使って懸垂降下を開始した。
繭の回収方法はロープにぶら下がったまま前後に振って繭にしがみついてはがすという単純な方法だ。
最後に繭を作り始めたやつに最初に抱きつき中の音がしないか耳を当てて確認すると、すでに音はしなくなっていた。
もう糸を吐き終わって蛹になり始めたのだろう。
壁に固定するための糸が着いている岩を削って壁から剥がした繭を試しにアイテムボックスに収納してみると何故か収納できた。
最後の繭を剥がしてマジックバッグに収納するとオーバーハングの上へ転移した。
あとで知ったのだが、繭を作った後に動かされると中の蛹はショック死してしまうらしい。

 メタルワームがいる場所は鉱脈が露出しているか近くに鉱石が露出している天然の坑道が必ずあるらしいので今いる場所の下を探索してみることにした。マップを開いて探知してみると半径100メートル以上の深さを探知できるようなので、メタルワームが餌にしている鉱物があれば必ず見つかるはずだと思った。

 壁に向かって右側を探すとすぐに露出している鉱脈を見つけたので鑑定すると銅・鉄鉱・銀・金・クロムが含まれている。せっかく魔法が使えるようになってきたので、なんとかうまく採集できないか試してみた。
そのままアイテムボックスに入れようと試したが岩の中の物をそのまま取り出して入れる事はできなかった。
次にツルハシに魔力を通して岩を崩してみると崩れるのだがものすごく時間がかかってしまうのでもっといい手がないか試行錯誤してみたがうまくいかない。

 もしかしてと思い鉱脈に魔力を浸透させ感知できた銀が溶けて抽出されてくるのを思い浮かべてみる。

ゴトン、ガラガラガラ

『スキル【素材抽出】を使えるようになりました。探知範囲内の任意の素材を抽出可能です』

   (でた! うそー!)

銀が抽出されて出てきた
鑑定して見ると
銀:2723㎏  純度99.99999%

  (やった、新しいスキルが手に入った。
   でも純度が高すぎて精錬所の親方に持って行けないな。
   まあ、あとで考えることにするか)

続けて金を抽出する。

ゴトゴトン

鑑定
金:377㎏ 純度99.99999% 

さっきより純度が高かった。
他の鉱物も取り出そうと思ったが金や銀に比べると沢山含まれていそうなので抽出する範囲を狭くして抽出する

鉄鉱石を抽出する。

ドゴン、ゴン、ゴン、ガラガラガラ

小さな山ができてしまった。
鉄鉱石:28トン 純度51%

銅を抽出する。

ゴトン、ドスン

銅:3トン 純度99.999%

 鉄だけ純度が低い。どうしてだろうと考えたが原因はすぐにわかった。
他のものは金属をそのまま思い浮かべたが鉄だけは鉄鉱石を思い浮かべて抽出したからだった。
取り出した金属を全てマジックバッグに入れて反対側にも鉱脈がないか探しに行く。

 マップを見ながら探していると大きな岩の裏に開いている直径1メートルほどの入り口を見つけた。中を覗いてみるがやはり真っ暗で何も見えない。
練習の時にできるようになった光魔法を使ってみる。

「ライトボール」

頭上に光の球が浮き、周囲を照らし始めた。
入り口は狭かったが奥に行くと少しずつ広くなり中は暖かかった、10メートルほど奥に行くと立って歩ける高さになりそれから20メートルくらい奥へ歩いた場所から先は天井の高さが10メートル以上になっていた。

 マップを確認しながら歩く。どこまで続くのか分からないが、奥がどうなっているのか知りたくなったので鉱石の採取は後回しにしてどんどん入っていく。
周囲に鉱石が沢山有るので探索目標から外さなければ光点でマップが真っ赤になり何が何だか分からなくなった。
探索目標を無しにして歩いているが洞窟の壁面は色々な色で光って見え凄くもきれいだ。

 入り口から1時間ほど進むと空洞が広がり急に洞窟内の温度が上がりだした。
奥の方から赤い光が見えボコボコと音が聞こえ熱気を感じられるようになってきた。
洞窟が曲がっている先へ行くと突然広いホールになっていた。
洞窟はそこで行き止まりのようで突き当たりには溶岩の池が見え、時々池の中でガスがボコボコと湧き上がり溶岩が飛ばされてくる。
足元には飛ばされた溶岩が砂利のように沢山転がっていたので白銀の小さな石を手に取って鑑定してみた。

ミスリル鉱石:15g 純度27%

他の石も拾って鑑定してみる。

ミスリル鉱石:22g 純度28%

 ミスリルの鉱脈があるのかと思い、周囲を探索してみたがこのホールの中にあるミスリル鉱石は足元の小石と溶岩の池の表面の一部分だけだった。小石と思っていたものは溶岩が弾けるかどうにかして飛び散って固まった物のようだ。
とりあえずミスリル鉱石を回収すると全部で156キロもあった。
長い年月をかけて溶岩の中に溶け出した物が比重の違いで少しずつ浮き上がって溜まっていたのだろう。
純度が27%以上のミスリルが331キロ、99.9%まで精錬しても80キロは取れるだろう。

 マジックバッグにミスリル鉱石を入れると、他に何かないかホールの中の探索をしてみた。
すると、天井付近に溶岩の赤い光に照らされた繭が付いているのを見つけた。
鑑定してみるとメタルワームの繭が全部で9個、天井についているものをどうやって採取するか考えたが、単純に転移でしがみついて剥ぎ取る方法にした。
まずは1個目に転移して飛びついた。
するとジンの重量で繭は剥がれ自由落下を始めたので地面に転移してアイテムボックスに眉を入れると、残りの8個も同じように採取していった。

 他にも何かありそうだと思いアダマンタイトやオリハルコンなども探してみたが、残念ながら見つけることはできなかった。
さすがに簡単に見つかるような物では無いようだ。
このホールにミスリル以上の物が見つからないので、その場所を後にして外へと向かった。
歩いていると、来る時には気がつかなかった沢山のメタルワームの繭が天井のあちらこちらについていて通路の隅では鉱石を食べているメタルワームがいた。
この洞窟は高密度の鉱脈でメタルワームが作った場所、そしてメタルワームの繁殖地なのだろう。
中央を歩いていたので中に入って行く時には隅の方に沢山いたメタルワームに全く気がつかなかっただけだなのだ。今後のこともあるので全部採取せずに18個ほど繭を剥ぎ取ってマジックバッグに入れながら外に出た。

 せっかくだから残りの3箇所も探してみたが他の場所でメタルワームは見つからなかった。

日が暮れそうになっていたので温泉がある場所に転移して野営の準備を始める。
エール山の南西面に温泉があるのでエールと屋台で買ったつまみを出して温泉に浸かりながらエールに陽が沈むのを眺めた。
温泉から出るとマジックテントを出して中にベッドを設置し、その上に寝転ぶ。
そして、ベッドの上でマジックバッグに入れた収穫の確認を始めた。

メタルワームの繭:30個
金:377㎏ 純度99.99999%
金鉱石:5t 純度0.08%
銀:2723㎏ 純度99.99%
銀鉱石:8t 純度0.1%
銅:3t 純度99.999%
鉄:11t 純度99.9%
鉄鉱石:28t 純度51%
ニッケル鉱石:5t 純度37%
ミスリル鉱石:156㎏ 純度27%

  (思った以上の収穫だったな。
   せっかく入山料を払ったんだからアダマンタイトやオリハルコンなんてレアメタル何日か探してみるか)

入山の期限も残っていることもあり、後数日は山で採掘して過ごす事にした。

ジンはすっかり忘れているのだが、アイテムボックスの中には信じられない量のレアメタルが眠っているのだが、[始神]というフォルダーに入ったままになっており、目につかないのですっかり忘れているのであった。
宝の持ち腐れとは正にこのことである。 

山の上ということもあり、だんだん寒くなってきたのでジンは毛布に潜り込むとアイテムボックスから結界石を取り出して結界を張り、眠りにつくのであった。
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