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第1章 転生

31話 鉱山

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 目がさめると先ず山頂に転移して眼下の景色を楽しみ、次にエッジ岳との間にある尾根に行きエッジ岳のマッピングをした。

マッピングしていてわかったのだがエッジ岳の高さは6350メートルで剣の部分は1550メートル、エール岳とつながっている尾根は標高4100メートルもあった。

 エッジ岳を調べていると3000メートルから下はなだらかですぐ下まで坑道があり採掘する鉱夫の姿が彼方此方に見ることができた。

 一番上の坑道の近くに転移して様子を確認すると鉱夫三人が下の坑道から500メートルくらい離れた場所に新しい坑道を掘り始めていた。
まだ掘り始めたばかりなので入り口から2メートルくらいしか掘れていなかったが三人で交代しながらツルハシを振っている。
10分掘っては次と交代して削った岩を足元から外に運んでいる。空気が薄いのでこれくらいの感覚で掘るのがちょうど良いのかもしれない。
聞き耳を立てていると岩を出している者と、休憩中の二人の会話が聞こえてきた。

「ここは含有量が多いと思うぜ、表面の岩の色が他の場所より良かったからな」

「前もそう言ったじゃねーか、あの時は宿代でほとんど消えちまってかーちゃんが文句タラタラで大変だったんだぞ」

「大丈夫だって、昨日掘ったやつは高く引き取ってもらえただろ」

「前の時と同じだ。前も掘り始めは良かったけど表面を掘ったらすぐに何も出なくなったじゃねーか」

「なんだとー、そんなに言うならお前が鉱脈探せばいいじゃねーか、人に探させて文句ばかり言いやがって」

「うるせー、自分でできたらとっくに探してらぁ」

2人がそんな口論をしていると今までツルハシを振っていた男が出てきて仲裁した。

「やめねーか、普段仲がいいのになんで掘り出すと喧嘩ばかりしているんだ、そんな事していると出る物も出なくなるぞ。いいから交代だ」

そう言って足元の岩をカゴに入れ始めた。
マップで確認してみると鉱脈は入り口から左に50度、下方向に5度の角度で曲がって奥に行くと含有量が多くなっているのがわかったが、掘り進んでいる方向はまっすぐだった。
まっすぐに見える鉱脈は3メートルくらい行った所で終わっているのだが含有量が多いので見た目に騙されているのだろう。

ジンは近くまで歩いていくと話しかけてみる事にした。

「こんにちは~、調子はどうですか?」

仲裁に入っていたドワーフが声に気がついてジンの方をを向いた。

「見ない顔だ、冒険者かい?」

「はい、ちょっと防具を作るのに素材を掘りにきたんですけど、下の方は人が多くて掘りにくいんで見ながら歩いていたら結構上まで来てしまいました」

「下の方の良い所はほとんど掘られているからな、上に来ないとチャンスは無いと思うぞ」

「そうですよね。人が多くて掘る場所はなさそうでした」

「ところで、何を探しているんだ?」

「質のいい鉄鉱石と金と銀を少しです」

「そうか、それならここを掘ってみろ、こっちの表面を掘った時に鉄鉱石のいいのが出たからここにも有ると思うぞ」

そう言って含有量が多そうな左側を指差した。

「こんなに近い場所で掘っていいんですか?」

「俺たちは真直ぐ掘った場所に良い鉱脈が走っていると予想しているから左は気にしていない。
それに、いつまでも掘り続けるわけじゃないんだろ。
それなら横を掘っても邪魔にならないよ」

「それじゃあここを掘らせてもらいます。
俺の名前はジンです、よろしくお願いします」

「俺はトーリこいつがバーリンそれでこいつがーー」

「俺はオリンだ、ここを見つけたのは俺なんだぜ、短い間だがお隣さんになるからよろしくな。
ところでジン、お前一人で掘るのか?」

「そうです、探す量は少ないので一人で大丈夫だと思います」

ジンはトーリに掘っていいと言われた場所へ向かうとツルハシを振り下ろし始めた。

「どうせ掘るのは初めてだろ、掘り始めだけ手伝ってやる、バーリン、オリンお前たちも手伝え」

「よっしゃ、玄人プロの掘り方を見せてやるかな」

二人で交互にツルハシで岩を割り残った2人が落ちた邪魔な岩を足元から片付ける。
ジンが加わり4人で3メートルほど掘ると、そのへんから硬い鉄鉱石が出始めた。

「でたな、ここからは一人で頑張れ。目標の量はこの辺だけで集まると思うぞ」

そう言って3人は外に出て行った。

マップを開いて詳しく調べるとこの先は鉄鉱石の鉱脈が薄く左右に広がっていて、その後ろには奥に行けば行くほど大きくなる金が少し混じった良質の銀の鉱脈が走っていた。

  (惜しい、この1メートル後ろには銀の鉱脈があるのに、この人たち
   運がないんだろうなあ)

しかし、俺ジンは自分が掘っていたのを見た、という証人が欲しかっただけで鉱石はもう十分に持っていたのでこの鉱脈を気のいい3人のドワーフにあげる事にした。

隣の坑道に顔を出して鉄鉱石が出たその後ろから変な色の石が出てきたので見てほしいと伝えて3人を連れて戻った。

「鉄鉱石を掘っていたらこんな石が出てきたんですけど、これって何か良い鉱石ですか?」

「確かに色が違うな、外で見てみよう」

そう言って鉱石をひと抱え持って外に出ると、ハンマーで粉々に砕いて小さくした物を皿に入れて確認するとジンの方を見た。

「こいつはいい鉱石だ、銀を多く含んでいる銀鉱だな。少しだが金も入っているかもしれん」

「そうなんですか、少しでも取れれば助かりますけど」

「いや、少しじゃないとないと思うぞ。
これと同じ鉱石を前に見たが、その時の坑道では5人が10年食っていけるだけの金が出た」

「え、そんなにですか?」

「ああ、間違いない」

トーリがそう言うと隣にいたバーリンが悔しがる。

「くぅーちっくしょー、3メートルこっちだったか。俺の勘もあてにならねーな」

「なんか悪いですね…」

「いや、お前は運が良かったんだ。この世界は運も実力のうちだからな、俺たちに気兼ねなくここを掘りな」

このドワーフ達は他人の幸運を喜べる潔い男達だった。

  (本当にいい奴らだ)

「すみません、俺は次に行かないといけないところがあってあまり長く掘れないんですよ、今日1日手伝ってもらえれば後は差し上げますので手伝ってもらえないでしょうか?」

「いいのか?今日って言っても半日くらいしか残ってないぞ。
そんな時間じゃたいして掘れないし、明日掘り始めたらもっと凄い鉱脈が出てくるかもしれないぞ」

「半日も手伝ってもらえれば俺が1人で1週間掘るより沢山取れます。その後にいい物が出たとしてもそれも運ですから気にしません」

「本当にそれでいいのか?」

「はい」とジンは大きく頷いた。

「よし、わかった。そうとなったら時間がもったいない、急いで掘り始めよう。お前達、一気に掘り進めるぞ」

「よっしゃ、こうなったらがっつり掘っていい物を持って帰らせなきゃな」

ジンはガキンガキンと掘り始めた3人の左側を掘り始める。

「おっと、右側から色が変わってきたぞ。左だ左に曲げて掘ろう」

鉱脈が曲がっていると判断したバーリンが左側に曲がるように掘り始める。


(さすがだな、ほとんど変わらないくらいの変化なのに)

ジンが感心する中ドワーフ達は鉱脈に沿って掘り進んでいき日暮れの1時間前にはかなりの量となっていた。

「戻り時間もあるのでこの辺で大丈夫です。ありがとうございました」

「本当にいいのか?この感じだとかなり良い鉱脈だぞ」

「男に二言はありません。あとはみなさんでどうぞ」

「判った。ありがたく貰っておこう」

「はい」と返事をしてジンは鉱石をマジックバッグに入れはじめた。

「マジックバッグか、それがあるといいよな。
でっかい金鉱脈を見つけて稼いだ金ででっかいマジックバッグを買って掘った鉱石を村に持って帰るのが夢なんだ」

「夢が叶うと良いですね」

一攫千金は男のロマン、どこの世界も同じのようだ。
ジンは3人に礼を言い、ツルハシを片付けて帰り支度を完了した。
トーリは出発するジンに本当にいいのかと再び念を押した。ジンは必要な鉱石は手に入れたので「後は頑張ってください」と伝えて道を下っていくのであった。
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