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4. 共同戦線
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程なくして、アンナとルーフェスを乗せた乗合馬車は目的地に到着した。二人は街道外れの停車場で馬車を降りると、そこからは徒歩でジュエルタートルの生息地である沼に向かった。
鬱蒼と茂る林の中に、ぽっかりとその沼は存在していた。沼の中や周囲には、のんびりと複数のジュエルタートルが佇んでいて、アンナとルーフェスは、少し離れた位置に身を隠して魔物たちの様子を伺ったのだった。
「さて……と。」
何も知らずにのんびりと佇んでいるジュエルタートル達を眺めながら、ルーフェスは最初の一手を思案した。
低級のモンスターなので向こうから襲ってくる危険はないが、臆病なモンスターなので少しでも近づくと、一目散で逃げ出すか、甲羅の中に入って絶対防御を行うので、そうなるととにかく手出しが出来なくなってしまい面倒なのだ。
「それで、これからどうするの?」
アンナは隣に立つルーフェスを見上げた。隙を作ってくれると言った彼の言葉を信じて、今は大人しく彼の指示を待っている。
「僕に任せて。そうだな……アイツがいいかな。」
そう言ってルーフェスは自分たちから一番近く、それでも五メートル程は離れた場所で甲羅干しをしていた一頭のジュエルタートルに向かって鉄杖の先端を向けると、小さく息を吸ってから静かに言葉を紡いだのだった。
「凍てつく冷気よ、幾重に重なり強固な牢をもって束縛せよ。氷結封縛!!」
それは、呪文の詠唱であった。
彼が唱え終わるや否や、鉄杖の先に居たジュエルタートルは一瞬にして氷漬けになったのだ。
「えっ……今のって……もしかして魔法?!!」
予想外のルーフェスの行動に、アンナは目を丸くして驚いた。
魔法という、さまざまな奇跡の力を起こせる人知を超えた能力がある事は知識として知っていたが、実際に見るのは初めてだったのだ。
「そう、魔法。出来ればあんまり使いたくは無いんだけど、ジュエルタートルは亀の癖に素早いから近づかずに足止めするには氷漬けが一番適していると思ったんだ。」
ルーフェスは、それがさも当たり前かのように淡々と自身の行動を説明したが、目の前で起こった出来事に、アンナは目を疑わずには居られなかった。
何故なら、魔法を使えるのは王族やごく一部の上位貴族のみというのが周知の事実で、一介の冒険者が魔法を唱えるなど普通ならまずあり得ない事なのだ。
(魔法を唱える事が出来る……。と、いう事はこの人は貴族の血を引いているのだわ。それもとても高貴な人の……)
改めて横に立つルーフェスの顔をチラリと覗き込むも、彼は顔色ひとつ変えずにその場に立って居た。
(上位貴族の血筋なのに、この人は冒険者ギルドに出入りして自身で労働をしてお金を稼いでいる……。平民としては少し身なりが良いことも不思議だったけど、そう考えると納得出来るわ……)
ルーフェスという人物について思考を巡らせると、アンナは自分の中である結論に辿り着いたのだ。
「分かった。貴方、どこかのお貴族様の御落胤なんでしょう?」
ルーフェスは魔力のある貴族が平民との間に産ませた子。そう考えると色々と納得がいくのだ。
「うーん、……まぁ、そんなような所かな。」
アンナのその指摘に、ルーフェスは曖昧に笑って、少し言葉を濁しながら答えた。
そんな少し困った様な彼の反応を見て、アンナはこれは失言だったと、直ぐに反省したのだった。
「あっ……ごめんなさい、深くは聞かないわ。誰にだって事情はあるだろうからね。私だって似たようなものだし……」
彼女自身についても本当は男爵令嬢である事を隠して冒険者の仕事をしているので、こういった詮索が迷惑となる事をよく知っていた。だから自分の軽率な言葉を、彼女はすぐに謝罪したのだ。
「……アンナも訳ありなの?」
ルーフェスは横にいるアンナを見返して、静かに問いかけた。
「そうよ。でも詳しい事は聞かないでね。言えないから訳ありなのよ。」
彼女はそう答えると先程のルーフェスと同様に曖昧に笑って誤魔化したのだった。
「……そっか。じゃあ、まぁ、訳あり同士仲良くやろうか。」
ルーフェスは嬉しそうににっこりと笑うと、腕を折り曲げて肘を前に差し出してきた。
それは、合意とか肯定的な意味でお互いの肘と肘をぶつける冒険者同士がよくやる挨拶の形であり、アンナもその意図を察すると、彼に倣って肘を差し出して、二人はお互いの肘をぶつけあったのだった。
なんだか少し、彼との距離が縮まったような気がした。
鬱蒼と茂る林の中に、ぽっかりとその沼は存在していた。沼の中や周囲には、のんびりと複数のジュエルタートルが佇んでいて、アンナとルーフェスは、少し離れた位置に身を隠して魔物たちの様子を伺ったのだった。
「さて……と。」
何も知らずにのんびりと佇んでいるジュエルタートル達を眺めながら、ルーフェスは最初の一手を思案した。
低級のモンスターなので向こうから襲ってくる危険はないが、臆病なモンスターなので少しでも近づくと、一目散で逃げ出すか、甲羅の中に入って絶対防御を行うので、そうなるととにかく手出しが出来なくなってしまい面倒なのだ。
「それで、これからどうするの?」
アンナは隣に立つルーフェスを見上げた。隙を作ってくれると言った彼の言葉を信じて、今は大人しく彼の指示を待っている。
「僕に任せて。そうだな……アイツがいいかな。」
そう言ってルーフェスは自分たちから一番近く、それでも五メートル程は離れた場所で甲羅干しをしていた一頭のジュエルタートルに向かって鉄杖の先端を向けると、小さく息を吸ってから静かに言葉を紡いだのだった。
「凍てつく冷気よ、幾重に重なり強固な牢をもって束縛せよ。氷結封縛!!」
それは、呪文の詠唱であった。
彼が唱え終わるや否や、鉄杖の先に居たジュエルタートルは一瞬にして氷漬けになったのだ。
「えっ……今のって……もしかして魔法?!!」
予想外のルーフェスの行動に、アンナは目を丸くして驚いた。
魔法という、さまざまな奇跡の力を起こせる人知を超えた能力がある事は知識として知っていたが、実際に見るのは初めてだったのだ。
「そう、魔法。出来ればあんまり使いたくは無いんだけど、ジュエルタートルは亀の癖に素早いから近づかずに足止めするには氷漬けが一番適していると思ったんだ。」
ルーフェスは、それがさも当たり前かのように淡々と自身の行動を説明したが、目の前で起こった出来事に、アンナは目を疑わずには居られなかった。
何故なら、魔法を使えるのは王族やごく一部の上位貴族のみというのが周知の事実で、一介の冒険者が魔法を唱えるなど普通ならまずあり得ない事なのだ。
(魔法を唱える事が出来る……。と、いう事はこの人は貴族の血を引いているのだわ。それもとても高貴な人の……)
改めて横に立つルーフェスの顔をチラリと覗き込むも、彼は顔色ひとつ変えずにその場に立って居た。
(上位貴族の血筋なのに、この人は冒険者ギルドに出入りして自身で労働をしてお金を稼いでいる……。平民としては少し身なりが良いことも不思議だったけど、そう考えると納得出来るわ……)
ルーフェスという人物について思考を巡らせると、アンナは自分の中である結論に辿り着いたのだ。
「分かった。貴方、どこかのお貴族様の御落胤なんでしょう?」
ルーフェスは魔力のある貴族が平民との間に産ませた子。そう考えると色々と納得がいくのだ。
「うーん、……まぁ、そんなような所かな。」
アンナのその指摘に、ルーフェスは曖昧に笑って、少し言葉を濁しながら答えた。
そんな少し困った様な彼の反応を見て、アンナはこれは失言だったと、直ぐに反省したのだった。
「あっ……ごめんなさい、深くは聞かないわ。誰にだって事情はあるだろうからね。私だって似たようなものだし……」
彼女自身についても本当は男爵令嬢である事を隠して冒険者の仕事をしているので、こういった詮索が迷惑となる事をよく知っていた。だから自分の軽率な言葉を、彼女はすぐに謝罪したのだ。
「……アンナも訳ありなの?」
ルーフェスは横にいるアンナを見返して、静かに問いかけた。
「そうよ。でも詳しい事は聞かないでね。言えないから訳ありなのよ。」
彼女はそう答えると先程のルーフェスと同様に曖昧に笑って誤魔化したのだった。
「……そっか。じゃあ、まぁ、訳あり同士仲良くやろうか。」
ルーフェスは嬉しそうににっこりと笑うと、腕を折り曲げて肘を前に差し出してきた。
それは、合意とか肯定的な意味でお互いの肘と肘をぶつける冒険者同士がよくやる挨拶の形であり、アンナもその意図を察すると、彼に倣って肘を差し出して、二人はお互いの肘をぶつけあったのだった。
なんだか少し、彼との距離が縮まったような気がした。
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