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5. 帰宅
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仕留めたジュエルタートルを慎重に解体して無事に依頼通りの品をギルドに納品して二人は額面通りの十分な報酬を受け取ると、アンナは改めてルーフェスに心からお礼を伝えていた。
「ルーフェス、本当に有難う。何てお礼を言ったら良いか……貴方が手を差し伸べてくれたおかげで、私たち姉弟は救われたわ。」
「少し大袈裟過ぎないかい?」
「いいえ、それくらい感謝しているのよ。」
「まぁ、お役に立てて良かったよ。じゃあ、僕はこれで失礼するよ。余り無茶はしないでね。」
「えぇ。本当に有難う!」
何度もお礼の言葉を口にして頭を下げるアンナに、ルーフェスは「もう十分だよ」と少し苦笑していたが、彼女の気が済んだのを確認すると「それじゃあね」と言って去っていったのだった。
ルーフェスを見送って、アンナは改めて胸を撫で下ろした。
(とりあえずこのお金で、当面の生活費が出来たわ。良かった、これでエヴァンにひもじい思いをさせなくて済むわ……)
借金はまだあるものの、彼のお陰で手元にお金を用意できたので、アンナの精神的負担はだいぶ軽くなったのだ。
不安で張り詰めていた朝とは違い、アンナは夕飯の食材を買い込むと、軽やかな足取りで弟が待つ家へと急いだのだった。
***
「ただいま!」
玄関のドアを開けてアンナが帰宅を告げると、中からは二人分の返事が返ってきた。
「アンナ、おかえり。」
「姉さん、おかえりなさい。」
家に帰ると、弟エヴァンと隣に住むエミリアが一緒にくつろいでいたのだ。
「あら、エミリア、来ていたのね?」
「うん、エヴァンが流行病に罹ったて聞いたから様子を見に来たんだけど、もう良くなったみたいね。良かったわ。」
エミリアが目の前に座るエヴァンを優しく眺めながら言うと、少し照れ臭そうに、エヴァンも「おかげさまでね。もう元気だよ。」と答えた。
そんな二人のやり取りを、アンナは嬉しそうに目を細めて見守った。
「有難うエミリア。それで忙しいのにわざわざ様子を見にきてくれたのね。」
アンナの親友エミリア。
彼女は今一番この国で人気のある劇団で主演を務めている売れっ子女優であるが、同じ借家地区で育ったよしみで、今もこうして交流が続いている。
「当たり前よ、あなた達は私にとって大切な妹と弟だからね。」
アンナより少しお姉さんであるエミリアは、この姉弟の本当の身元も事情も知っている。それ故に、一人で頑張っているアンナを常に心配して気にかけてくれていたのだ。
「姉さんも座りなよ。エミリアが持ってきてくれたこのお茶、美味しいよ。」
「そうね、頂くわ。」
アンナは勧められるがままに着席して、二人と同じお茶を一口飲むと、ギルドの仕事で張り詰めていた気持ちがゆっくりと解れていくのを感じた。
エヴァンとエミリア。
大好きなこの二人との語らいの時間が、アンナにとって最上級の癒やしなのだ。
「それで、アンナの今日のお仕事はどうだったの?」
「大家さんに捕まって、ギルドへ行くのが遅くなってしまったけど、親切な人と一緒に依頼をすることが出来て、ほら、ちゃんと食材も買えたわ!」
「姉さんが人と一緒に組んでギルドの仕事をしたの?珍しいね。」
「まぁ、今日はたまたま……そうせざるを得なかったのよ。」
そう言って、アンナはエミリアとエヴァンにルーフェスとの事を掻い摘んで説明したのだった。
「……えっ?、それで?それだけなの?!連絡先の交換とか、次に会うか約束とか、その男の人としなかったの?!」
アンナから一連の話を聞いて、エミリアは食い気味にアンナに詰め寄った。
「そんなの何もないわよ。その場限りの協力関係だからね。」
「なんで?!話を聞く限り良い感じだったじゃない。その場限りだなんて勿体ない。アンナはもっと出会いを大切にしたほうが良いわよ。」
「だから、そういうのじゃないんだって。」
アンナは苦笑しながらやんわりと、エミリアからの追及をあしらった。
エミリアの事は大好きだし、信頼もしているのだが、唯一欠点を挙げるとしたら、彼女は何でも直ぐに恋愛話に結びつけてしまうのだ。
そこだけは、アンナも面倒くさいと思っていたが、エミリアは一度スイッチが入ると中々止まらなかった。
「だって二人で依頼をしたって事は不快な人では無かったんでしょう?」
「それは、そうだったけど……」
「それにね、長い時間二人で一緒に過ごせる人だなんて、そうそう居ないわよ?貴女たち相性が良いのよ!」
確かに、ルーフェスは今までギルドでアンナに声をかけてきた男性たちとは違っているとは何となく感じていた。
ギルドでアンナに声をかけてくる男性は、彼女をお姫様扱いしたり、あからさまに口説いてきたりと、煩わしくて不快である事が多かったが、ルーフェスはそんな素振りは一切見せずに、アンナをただの一冒険者として接してくれたので、彼とは一緒にいても全く不快ではなかったのだ。
「確かに……貴重な人なのかもしれない……」
一緒に仕事をしても煩わしくなく、加えて魔法と言う規格外の能力を持っている。仕事上の相棒としてはこの上ない好条件ではないか。
エミリアからの言葉を受けて冷静に考えてみると、ルーフェスと組んだらメリットが大きい事に気づいたのだった。
「そうでしょう、そうでしょう次に会ったらバシッと捕まえておくべきだわ。貴女が男性に興味を持つなんて珍しいんだから!」
「そうね、あんな好条件(の冒険者)そうそう知り合えないもの、ここで捕まえておかなきゃね。そうしたら仕事の幅も広がって、もっと貯蓄ができるわ。」
「えっ……?」
「えっ……??」
嬉しそうに話すエミリアと、神妙な面持ちで呟くアンナは、お互いの言葉に戸惑い、思わず顔を見合わせた。
会話が噛み合っていなかったのだ。
言っている事の食い違いに気づいたエミリアは、深いため息を吐いて頭を抱えると、残念そうな目をアンナに向けたのだった。
「アンナ、貴女は仕事以外にも目を向けた方が良いわよ。折角可愛い容姿をしているのに勿体ない……」
「……そうゆうのは煩わしいからいいのよ。それに、そんなことしてる余裕、私にはないわ。」
アンナは少し淋しそうに笑ってそう言った。
本当の事を言うと、恋愛に憧れが全く無いわけではなかった。
それこそ、まだ男爵令嬢だった幼い頃は、綺麗なドレスを着て素敵な男性と夜会でダンスを踊るのが夢だったし、絵本の中の様な素敵な王子様が、いつか自分の前にも現れて手を差し伸べてくれるのではないかと憧れたりもしたのだ。
けれども、そんな思いは男爵家を逃げ出した時に置いてきた。
弟エヴァンにラディウス男爵領を継がせるという、ただこの悲願を達成する為に、市井で弟と二人、ラディウスの誇りを忘れずに生き抜く事で精一杯だったのだ。
「そんなに一人でアンナが全部抱え込まないでもいいんじゃない?エヴァンだってもう直ぐ十三歳になるんでしょう?自分の事は自分で出来る歳だし、小間使いのような簡単な仕事だって出来るでしょう?」
「そうだよ姉さん、エミリアの言う通りだよ。アカデミーなんて行かないで俺も仕事するよ。だからあんまり危険な仕事はしないで欲しいな……」
今まで、二人の会話を黙って聞いていたエヴァンも、思わず声を上げた。
彼は、常日頃から姉に危険な仕事はしてほしくないと思っていたし、姉ばかりが働いて、自分が扶養されているだけなのが許せなかったのだ。
自分も働いて、アンナの負担を少しでも減らしたい。エヴァンはずっと思っていたことを姉に訴えかけたが、アンナは頑にそれを認めなかった。
「いいえ、エヴァン。貴方は本来なら男爵家の嫡男としてもっと良い教育が受けられていたはずなのよ。だからせめて、一般教育だけは不自由なく受けて欲しいのよ。今後の為にも。」
「そうは言ってもね、エヴァンと同じで私だって貴女に危険な仕事して欲しくないと思っているわ。こんな傷だらけになって剣を振るってるなんて……」
そう言って、エミリアは心配そうにアンナの左腕をそっとさすった。服を着ているので見えてはいないが、その左腕には大きな傷跡が残っているのだ。
「あら、私はいいのよ。元から剣術が好きだったんだから。好きな事をしてお金が貰えるなんて素敵だと思わない?」
これは半分は本心。もう半分は強がりであったが、アンナは二人を心配させまいと、ニッコリと笑って見せてたのだった。
「大丈夫よ。後三ヶ月だもの。今までずっとこれでやって来れたのだから、残りの三ヶ月も今まで通りよ。二人が懸念する様な事は起こらないわ。」
三ヶ月後にアンナは十八歳の誕生日を迎える。ずっと待ち望んでいた、後見人無しで爵位を引き継ぐことが出来る年齢になるのだ。
これは、五年前ラディウス男爵領を逃げ出した時からから決めていたことだったが、この国では女性でも爵位を継げるので、アンナは自分が成人して正統なラディウス男爵領の後継者であると名乗り出て、家を乗っ取った叔父と対決するつもりなのだ。
だから、「この暮らしは後三ヶ月だけなのだからそんなに心配しないで」と、アンナはエヴァンとエミリアに言い聞かせるように優しく話したのだった。
「ルーフェス、本当に有難う。何てお礼を言ったら良いか……貴方が手を差し伸べてくれたおかげで、私たち姉弟は救われたわ。」
「少し大袈裟過ぎないかい?」
「いいえ、それくらい感謝しているのよ。」
「まぁ、お役に立てて良かったよ。じゃあ、僕はこれで失礼するよ。余り無茶はしないでね。」
「えぇ。本当に有難う!」
何度もお礼の言葉を口にして頭を下げるアンナに、ルーフェスは「もう十分だよ」と少し苦笑していたが、彼女の気が済んだのを確認すると「それじゃあね」と言って去っていったのだった。
ルーフェスを見送って、アンナは改めて胸を撫で下ろした。
(とりあえずこのお金で、当面の生活費が出来たわ。良かった、これでエヴァンにひもじい思いをさせなくて済むわ……)
借金はまだあるものの、彼のお陰で手元にお金を用意できたので、アンナの精神的負担はだいぶ軽くなったのだ。
不安で張り詰めていた朝とは違い、アンナは夕飯の食材を買い込むと、軽やかな足取りで弟が待つ家へと急いだのだった。
***
「ただいま!」
玄関のドアを開けてアンナが帰宅を告げると、中からは二人分の返事が返ってきた。
「アンナ、おかえり。」
「姉さん、おかえりなさい。」
家に帰ると、弟エヴァンと隣に住むエミリアが一緒にくつろいでいたのだ。
「あら、エミリア、来ていたのね?」
「うん、エヴァンが流行病に罹ったて聞いたから様子を見に来たんだけど、もう良くなったみたいね。良かったわ。」
エミリアが目の前に座るエヴァンを優しく眺めながら言うと、少し照れ臭そうに、エヴァンも「おかげさまでね。もう元気だよ。」と答えた。
そんな二人のやり取りを、アンナは嬉しそうに目を細めて見守った。
「有難うエミリア。それで忙しいのにわざわざ様子を見にきてくれたのね。」
アンナの親友エミリア。
彼女は今一番この国で人気のある劇団で主演を務めている売れっ子女優であるが、同じ借家地区で育ったよしみで、今もこうして交流が続いている。
「当たり前よ、あなた達は私にとって大切な妹と弟だからね。」
アンナより少しお姉さんであるエミリアは、この姉弟の本当の身元も事情も知っている。それ故に、一人で頑張っているアンナを常に心配して気にかけてくれていたのだ。
「姉さんも座りなよ。エミリアが持ってきてくれたこのお茶、美味しいよ。」
「そうね、頂くわ。」
アンナは勧められるがままに着席して、二人と同じお茶を一口飲むと、ギルドの仕事で張り詰めていた気持ちがゆっくりと解れていくのを感じた。
エヴァンとエミリア。
大好きなこの二人との語らいの時間が、アンナにとって最上級の癒やしなのだ。
「それで、アンナの今日のお仕事はどうだったの?」
「大家さんに捕まって、ギルドへ行くのが遅くなってしまったけど、親切な人と一緒に依頼をすることが出来て、ほら、ちゃんと食材も買えたわ!」
「姉さんが人と一緒に組んでギルドの仕事をしたの?珍しいね。」
「まぁ、今日はたまたま……そうせざるを得なかったのよ。」
そう言って、アンナはエミリアとエヴァンにルーフェスとの事を掻い摘んで説明したのだった。
「……えっ?、それで?それだけなの?!連絡先の交換とか、次に会うか約束とか、その男の人としなかったの?!」
アンナから一連の話を聞いて、エミリアは食い気味にアンナに詰め寄った。
「そんなの何もないわよ。その場限りの協力関係だからね。」
「なんで?!話を聞く限り良い感じだったじゃない。その場限りだなんて勿体ない。アンナはもっと出会いを大切にしたほうが良いわよ。」
「だから、そういうのじゃないんだって。」
アンナは苦笑しながらやんわりと、エミリアからの追及をあしらった。
エミリアの事は大好きだし、信頼もしているのだが、唯一欠点を挙げるとしたら、彼女は何でも直ぐに恋愛話に結びつけてしまうのだ。
そこだけは、アンナも面倒くさいと思っていたが、エミリアは一度スイッチが入ると中々止まらなかった。
「だって二人で依頼をしたって事は不快な人では無かったんでしょう?」
「それは、そうだったけど……」
「それにね、長い時間二人で一緒に過ごせる人だなんて、そうそう居ないわよ?貴女たち相性が良いのよ!」
確かに、ルーフェスは今までギルドでアンナに声をかけてきた男性たちとは違っているとは何となく感じていた。
ギルドでアンナに声をかけてくる男性は、彼女をお姫様扱いしたり、あからさまに口説いてきたりと、煩わしくて不快である事が多かったが、ルーフェスはそんな素振りは一切見せずに、アンナをただの一冒険者として接してくれたので、彼とは一緒にいても全く不快ではなかったのだ。
「確かに……貴重な人なのかもしれない……」
一緒に仕事をしても煩わしくなく、加えて魔法と言う規格外の能力を持っている。仕事上の相棒としてはこの上ない好条件ではないか。
エミリアからの言葉を受けて冷静に考えてみると、ルーフェスと組んだらメリットが大きい事に気づいたのだった。
「そうでしょう、そうでしょう次に会ったらバシッと捕まえておくべきだわ。貴女が男性に興味を持つなんて珍しいんだから!」
「そうね、あんな好条件(の冒険者)そうそう知り合えないもの、ここで捕まえておかなきゃね。そうしたら仕事の幅も広がって、もっと貯蓄ができるわ。」
「えっ……?」
「えっ……??」
嬉しそうに話すエミリアと、神妙な面持ちで呟くアンナは、お互いの言葉に戸惑い、思わず顔を見合わせた。
会話が噛み合っていなかったのだ。
言っている事の食い違いに気づいたエミリアは、深いため息を吐いて頭を抱えると、残念そうな目をアンナに向けたのだった。
「アンナ、貴女は仕事以外にも目を向けた方が良いわよ。折角可愛い容姿をしているのに勿体ない……」
「……そうゆうのは煩わしいからいいのよ。それに、そんなことしてる余裕、私にはないわ。」
アンナは少し淋しそうに笑ってそう言った。
本当の事を言うと、恋愛に憧れが全く無いわけではなかった。
それこそ、まだ男爵令嬢だった幼い頃は、綺麗なドレスを着て素敵な男性と夜会でダンスを踊るのが夢だったし、絵本の中の様な素敵な王子様が、いつか自分の前にも現れて手を差し伸べてくれるのではないかと憧れたりもしたのだ。
けれども、そんな思いは男爵家を逃げ出した時に置いてきた。
弟エヴァンにラディウス男爵領を継がせるという、ただこの悲願を達成する為に、市井で弟と二人、ラディウスの誇りを忘れずに生き抜く事で精一杯だったのだ。
「そんなに一人でアンナが全部抱え込まないでもいいんじゃない?エヴァンだってもう直ぐ十三歳になるんでしょう?自分の事は自分で出来る歳だし、小間使いのような簡単な仕事だって出来るでしょう?」
「そうだよ姉さん、エミリアの言う通りだよ。アカデミーなんて行かないで俺も仕事するよ。だからあんまり危険な仕事はしないで欲しいな……」
今まで、二人の会話を黙って聞いていたエヴァンも、思わず声を上げた。
彼は、常日頃から姉に危険な仕事はしてほしくないと思っていたし、姉ばかりが働いて、自分が扶養されているだけなのが許せなかったのだ。
自分も働いて、アンナの負担を少しでも減らしたい。エヴァンはずっと思っていたことを姉に訴えかけたが、アンナは頑にそれを認めなかった。
「いいえ、エヴァン。貴方は本来なら男爵家の嫡男としてもっと良い教育が受けられていたはずなのよ。だからせめて、一般教育だけは不自由なく受けて欲しいのよ。今後の為にも。」
「そうは言ってもね、エヴァンと同じで私だって貴女に危険な仕事して欲しくないと思っているわ。こんな傷だらけになって剣を振るってるなんて……」
そう言って、エミリアは心配そうにアンナの左腕をそっとさすった。服を着ているので見えてはいないが、その左腕には大きな傷跡が残っているのだ。
「あら、私はいいのよ。元から剣術が好きだったんだから。好きな事をしてお金が貰えるなんて素敵だと思わない?」
これは半分は本心。もう半分は強がりであったが、アンナは二人を心配させまいと、ニッコリと笑って見せてたのだった。
「大丈夫よ。後三ヶ月だもの。今までずっとこれでやって来れたのだから、残りの三ヶ月も今まで通りよ。二人が懸念する様な事は起こらないわ。」
三ヶ月後にアンナは十八歳の誕生日を迎える。ずっと待ち望んでいた、後見人無しで爵位を引き継ぐことが出来る年齢になるのだ。
これは、五年前ラディウス男爵領を逃げ出した時からから決めていたことだったが、この国では女性でも爵位を継げるので、アンナは自分が成人して正統なラディウス男爵領の後継者であると名乗り出て、家を乗っ取った叔父と対決するつもりなのだ。
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