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8. 三ヶ月間の協定
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「さぁ、この調子で次の群れを探しに行きましょう!」
とてもスムーズに最初の群れを殲滅させられた事に気を良くしたアンナは、気持ちが高揚したまま次の群れを探そうと意気込み、周囲を見渡していた。
けれども、直ぐにでもこの場から歩き出して行きそうなアンナの様子に、ルーフェスは後ろから冷静に釘を刺したのだった。
「待ってアンナ。まず先にツノの回収しないとこの場から移動出来ないよ。」
解体作業という、この討伐で一番重要な納品物の回収がまだ残っていたのだが、それが彼女の頭の中から抜け落ちていたのだ。
「……そうだったわね……」
ルーフェスの指摘を受けると、アンナは改めて周囲に横たわっているニードルラビットの死体を見回した。
八本の角を回収するのに、一体どの位時間がかかるだろうか……
ギルドから借りていた、解体用の糸鋸を取り出し、二人は身を屈めて一人一匹づつツノの切り落とし作業に取りかかった。
キコキコキコ…
キコキコキコキコ…
黙々と作業をする事十分。やっと一本を切り落とす事に成功した。一人一本なので、この時点で手に入れられた角はニ本である。
「群れを倒すのは一瞬なのに、一匹のツノを解体するのに十分もかかるの……?!」
頬に張り付いた髪を拭いながら、アンナはその効率の悪さに、愕然とした。
「だから僕、ギルドでそう言ったじゃないか。まぁ、慣れればもう少し早く解体できると思うけど……」
ルーフェスは呆れつつも、作業の手を止めないでくれている。
そんな彼の姿に、申し訳ない気持ちが押し寄せた。
「ごめんなさい……」
自分の考えが甘かった事でまた面倒な依頼に巻き込んでしまったと、アンナは小さな声で謝った。
すると申し訳なさそうに謝罪する彼女を見て、ルーフェスは軽く微笑むと「ま、頑張ろうか。」と言っての背中をポンっと叩いて励ましたのだった。
どこまでも良い人である。
それから二人はニードルラビットの群れを求めて場所を移動しながら、討伐と解体を繰り返し、すっかり日が暮れた頃になんとか目標の三十本を達成する事が出来たのだった。
「やった……。やっと三十本揃ったわ!!」
腰を屈めて角を解体するという思ってた以上の重労働を成し遂げた開放感で、アンナは両腕を挙げてその達成を喜んだ。
「うん。お疲れ様。」
そう言って彼女を労うルーフェスにも、疲労の色が見て取れる。汗を拭うと、少し休息する為にその場に腰を下ろしたのだった。
「ルーフェス本当に有難う。私一人だったらこれ……今日中に終わらせるのきっと無理だったわ……」
彼に合わせて、アンナも屈み込みルーフェスの目を見て改めてお礼を言った。
「昨日も思ったけど、君って少し向こう見ずみたいだよね。ちょっと見てて心配だったよ。」
「……なんか、すみません……」
やんわりと諭されて、アンナは身を小さくした。自分でも若干自覚があるからだ。
「君の調子で、今まで一人で無事にやってこれたのかも知れないけれども、でも、あんまり無茶はしないようにね。この仕事は本当に危険なんだから。」
柔らかく笑ってはいるが、アンナの身を案じるルーフェスの目は真剣だった。
そんな彼の様子に、アンナは話を切り出すなら今しかないと、昨日から考えていた提案を彼に持ちかけたのだった。
「あの……。私の事心配してくれるのならば、貴方さえ良ければなんだけども……暫く私と組んで一緒に仕事してみない?昨日と今日一緒に仕事をしてみて、二人の方が受けられる依頼の幅も広がるし、お金が稼ぎやすいって分かったのよ。それに、貴方との仕事はとてもやりやすかったの。だから、その……」
また一緒に仕事をしたい。
そう伝えようとしたのだが、彼女の言葉はルーフェスからの問い掛けによって遮られてしまった。
「それは、いつまで?」
「えっ……?えっと……?」
イエスかノーでしか回答が返ってこないと思い込んでいたアンナは、いきなりの問いに戸惑った。具体的なことは了承を得てから決めれば良いと思っていたからだ。
(……とりあえず一ヶ月?いや、でもこんな腕の良い人を一ヶ月で逃すのは惜しいわ。それならば二ヶ月?ううん……いっそ……)
「三ヶ月……、三ヶ月間でどうかしら?」
どうせなら自分が十八歳になる迄の間、なるだけ安全に、それでいて実入りの良い仕事をこなしたいと、指を三本立てて突き出し、思い切って三ヶ月を提案したのだった。
そんなアンナからの提案に、ルーフェスは神妙な顔つきで「三ヶ月……」と呟き、そして押し黙った。それは、何かを憂慮し、思い悩んでいる様子だった。
(どうしよう、失敗したかも……)
悩む彼の様子に、まだ二回しか会っていないのに、いきなりこの提案はあまりにも厚かましかったかと、アンナは後悔をし始めていた。
(断られるかもしれないとは、あまり考えて居なかった。軽率だったわ……。折角知り合ったのに、ここで縁が切れてしまうのならば、言わなければよかったかも……)
黙って彼の返事を待っているが、アンナの胸の内は不安で一杯だった。彼が口を開くまでは、わずか数秒だったのに、その間がとても長く感じられたのだ。
「……分かった、三ヶ月間だね。いいよ、一緒にやってみようか。」
暫くの沈黙の後、穏やかな声でルーフェスは答えた。
先程までの硬い表情ではなく、柔らかい笑みを浮かべて、彼はアンナの提案を了承したのだ。
彼の考え込む様子が気になって、きっと良い返事を貰えないと思っていたアンナにとって、それはこの上ない程の嬉しい返答であった。
「有難う!!」
アンナは思わずルーフェスの両手を取ると、心からの感謝を伝えた。
心強い味方を手に入れられたことに、彼女は心の底から安堵したのだが、この想いは厳密にはそれだけではなかった。
ルーフェスとの縁がここで切れなかった事への安堵が、少なからず混ざっていたのだった。
とてもスムーズに最初の群れを殲滅させられた事に気を良くしたアンナは、気持ちが高揚したまま次の群れを探そうと意気込み、周囲を見渡していた。
けれども、直ぐにでもこの場から歩き出して行きそうなアンナの様子に、ルーフェスは後ろから冷静に釘を刺したのだった。
「待ってアンナ。まず先にツノの回収しないとこの場から移動出来ないよ。」
解体作業という、この討伐で一番重要な納品物の回収がまだ残っていたのだが、それが彼女の頭の中から抜け落ちていたのだ。
「……そうだったわね……」
ルーフェスの指摘を受けると、アンナは改めて周囲に横たわっているニードルラビットの死体を見回した。
八本の角を回収するのに、一体どの位時間がかかるだろうか……
ギルドから借りていた、解体用の糸鋸を取り出し、二人は身を屈めて一人一匹づつツノの切り落とし作業に取りかかった。
キコキコキコ…
キコキコキコキコ…
黙々と作業をする事十分。やっと一本を切り落とす事に成功した。一人一本なので、この時点で手に入れられた角はニ本である。
「群れを倒すのは一瞬なのに、一匹のツノを解体するのに十分もかかるの……?!」
頬に張り付いた髪を拭いながら、アンナはその効率の悪さに、愕然とした。
「だから僕、ギルドでそう言ったじゃないか。まぁ、慣れればもう少し早く解体できると思うけど……」
ルーフェスは呆れつつも、作業の手を止めないでくれている。
そんな彼の姿に、申し訳ない気持ちが押し寄せた。
「ごめんなさい……」
自分の考えが甘かった事でまた面倒な依頼に巻き込んでしまったと、アンナは小さな声で謝った。
すると申し訳なさそうに謝罪する彼女を見て、ルーフェスは軽く微笑むと「ま、頑張ろうか。」と言っての背中をポンっと叩いて励ましたのだった。
どこまでも良い人である。
それから二人はニードルラビットの群れを求めて場所を移動しながら、討伐と解体を繰り返し、すっかり日が暮れた頃になんとか目標の三十本を達成する事が出来たのだった。
「やった……。やっと三十本揃ったわ!!」
腰を屈めて角を解体するという思ってた以上の重労働を成し遂げた開放感で、アンナは両腕を挙げてその達成を喜んだ。
「うん。お疲れ様。」
そう言って彼女を労うルーフェスにも、疲労の色が見て取れる。汗を拭うと、少し休息する為にその場に腰を下ろしたのだった。
「ルーフェス本当に有難う。私一人だったらこれ……今日中に終わらせるのきっと無理だったわ……」
彼に合わせて、アンナも屈み込みルーフェスの目を見て改めてお礼を言った。
「昨日も思ったけど、君って少し向こう見ずみたいだよね。ちょっと見てて心配だったよ。」
「……なんか、すみません……」
やんわりと諭されて、アンナは身を小さくした。自分でも若干自覚があるからだ。
「君の調子で、今まで一人で無事にやってこれたのかも知れないけれども、でも、あんまり無茶はしないようにね。この仕事は本当に危険なんだから。」
柔らかく笑ってはいるが、アンナの身を案じるルーフェスの目は真剣だった。
そんな彼の様子に、アンナは話を切り出すなら今しかないと、昨日から考えていた提案を彼に持ちかけたのだった。
「あの……。私の事心配してくれるのならば、貴方さえ良ければなんだけども……暫く私と組んで一緒に仕事してみない?昨日と今日一緒に仕事をしてみて、二人の方が受けられる依頼の幅も広がるし、お金が稼ぎやすいって分かったのよ。それに、貴方との仕事はとてもやりやすかったの。だから、その……」
また一緒に仕事をしたい。
そう伝えようとしたのだが、彼女の言葉はルーフェスからの問い掛けによって遮られてしまった。
「それは、いつまで?」
「えっ……?えっと……?」
イエスかノーでしか回答が返ってこないと思い込んでいたアンナは、いきなりの問いに戸惑った。具体的なことは了承を得てから決めれば良いと思っていたからだ。
(……とりあえず一ヶ月?いや、でもこんな腕の良い人を一ヶ月で逃すのは惜しいわ。それならば二ヶ月?ううん……いっそ……)
「三ヶ月……、三ヶ月間でどうかしら?」
どうせなら自分が十八歳になる迄の間、なるだけ安全に、それでいて実入りの良い仕事をこなしたいと、指を三本立てて突き出し、思い切って三ヶ月を提案したのだった。
そんなアンナからの提案に、ルーフェスは神妙な顔つきで「三ヶ月……」と呟き、そして押し黙った。それは、何かを憂慮し、思い悩んでいる様子だった。
(どうしよう、失敗したかも……)
悩む彼の様子に、まだ二回しか会っていないのに、いきなりこの提案はあまりにも厚かましかったかと、アンナは後悔をし始めていた。
(断られるかもしれないとは、あまり考えて居なかった。軽率だったわ……。折角知り合ったのに、ここで縁が切れてしまうのならば、言わなければよかったかも……)
黙って彼の返事を待っているが、アンナの胸の内は不安で一杯だった。彼が口を開くまでは、わずか数秒だったのに、その間がとても長く感じられたのだ。
「……分かった、三ヶ月間だね。いいよ、一緒にやってみようか。」
暫くの沈黙の後、穏やかな声でルーフェスは答えた。
先程までの硬い表情ではなく、柔らかい笑みを浮かべて、彼はアンナの提案を了承したのだ。
彼の考え込む様子が気になって、きっと良い返事を貰えないと思っていたアンナにとって、それはこの上ない程の嬉しい返答であった。
「有難う!!」
アンナは思わずルーフェスの両手を取ると、心からの感謝を伝えた。
心強い味方を手に入れられたことに、彼女は心の底から安堵したのだが、この想いは厳密にはそれだけではなかった。
ルーフェスとの縁がここで切れなかった事への安堵が、少なからず混ざっていたのだった。
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