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55. ヴァーミリオンの想い出
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アンナと少年は誰にも邪魔されず、二人だけで力一杯遊び尽くした。
あまりに彼と遊ぶのが楽しかったので、つい、時間が経つのを忘れてしまっていたが、気がついたら既に辺りは暗くなっていたのだった。
名残惜しかったが、少年は遊びを切り上げると、アンナに元いた場所に戻るようにと促した。
「大分暗くなってきたね、そろそろパーティーも終わる頃じゃないかな?戻った方が良いよ。」
「本当だもうこんなに暗くなって……、あっ、見て、凄い夕焼け!!」
そう言って彼女が西の空を指さすと、そこには美しい朱色が広がっていたのだ。
「ねぇ知ってる?今日みたいなちょっとオレンジがかってる夕焼けはヴァーミリオンって言うんだよ。綺麗だよね、私この色が一番好きなんだ。」
「知らなかった。ヴァーミリオンっていう色なのか。本当に綺麗な色だね。」
少年にとってはこの庭からの夕焼けは見慣れたなんの変哲もない景色の筈だったが、今日は何故だかとても輝いて見えた。
隣に立つ少女を見ると、彼女も輝いて見えて、なんだか胸がドキドキしていた。
「完全に暗くなってしまう前に、会場に戻った方がいいよ。誰かに送らせるよ。」
「貴方は戻らないの?」
「僕は行けないんだよ。だから、ここでお別れだ。」
彼女と離れがたく感じでいたが、少年は右手を差し出して、別れの握手をしようと彼女に提案した。
するとアンナはにっこりと微笑んで、差し出された手を両手で包み込むように握った。
「普段はこういったパーティー、嫌だったんだけど、今日は本当に楽しかったわ!」
「僕も!僕も凄く楽しかったよ!」
お互いに微笑み合うと、手をしっかりと握った。
「遊んでくれて有難う、リチャード様!」
アンナは心から感謝の気持ちを伝えると、それを聞いて少年は酷く悲しそうな顔をしてアンナに一つ忠告をしたのだった。
「今日の事は二人だけの秘密だよ。僕とここで会った事は絶対に誰にも言ってはいけないよ。」
「分かったわ。パーティーをサボっていた事がバレたら怒られるものね。誰にも言わないわ。二人だけの秘密ね。」
彼に笑顔でそう答えたところで、アンナは目を覚ました。
◇
目が覚めても、アンナは夢の内容を、幼い頃の想い出を思い返してしばらく起き上がれないでいた。
あの日は結局ドレスを土で汚し、枝に引っ掛けて破いて、終いには父から借りてた国王陛下から賜った大切なブローチまで落としてしまって大目玉を喰らったんだったと懐かしく思った。
(そうよ、思い出した……。私は、子供の頃にルーフェスと会っているんだわ……)
アンナは目を瞑りながら夢の内容を反芻した。そして、あの日庭で遊んだあの少年こそが、ルーフェスであったと気付いたのだ。
(ちょっと待って、そう言えばルーフェスはあの時こう言ってたわ……)
アンナは以前馬車の中でルーフェスに
「何であの日私を助けようって思ったの?」
と訊ねて、その理由が
「初恋の女の子と同じ名前だったから」
と教えてもらった時のことを思い出していた。
(私、子供の時確かに名乗ったわよね。アンナ・ラディウスって……)
「もしかして……私だったの……?」
ルーフェスの言うアンナという名の彼の初恋の少女が自分かもしれないと思い当たって、アンナは顔を赤くして布団を被った。
(もし、本当にそうだったら嬉しいけど……)
それから、アンナはルーフェスから高台で夕日を見せてもらった時のことも思い出した。あの時彼は、朱色の夕焼けを僕の一番好きな色と言って彼女に見せたのだった。
「あっ……ヴァーミリオン……」
一般的に夕焼けはスカーレットと称されることが多いのに、ルーフェスは夕焼けをヴァーミリオンと認識し、一番好きな色だと言ったのだ。それは、あの日アンナが言った言葉だった。
彼はあの庭園での想い出を覚えているだろうと確信した。
(けれど彼は、私があの時のアンナだと分かっているのだろうか?)
(もし、私があの時の娘だと分かったら彼はどんな反応をするのだろうか。)
そんな事を考えながらベッドの上で身悶えていたアンナだったが、しばらく経って起き上がると、念入りに身支度を整えて、冒険者ギルドへと向かったのだった。
(あぁ、早く会って、ちゃんと彼と話がしたいな。)
しかしアンナのこの願いは、叶わなかった。
また明日と言って別れた後、ルーフェスは連絡が途絶えたのだった。
あまりに彼と遊ぶのが楽しかったので、つい、時間が経つのを忘れてしまっていたが、気がついたら既に辺りは暗くなっていたのだった。
名残惜しかったが、少年は遊びを切り上げると、アンナに元いた場所に戻るようにと促した。
「大分暗くなってきたね、そろそろパーティーも終わる頃じゃないかな?戻った方が良いよ。」
「本当だもうこんなに暗くなって……、あっ、見て、凄い夕焼け!!」
そう言って彼女が西の空を指さすと、そこには美しい朱色が広がっていたのだ。
「ねぇ知ってる?今日みたいなちょっとオレンジがかってる夕焼けはヴァーミリオンって言うんだよ。綺麗だよね、私この色が一番好きなんだ。」
「知らなかった。ヴァーミリオンっていう色なのか。本当に綺麗な色だね。」
少年にとってはこの庭からの夕焼けは見慣れたなんの変哲もない景色の筈だったが、今日は何故だかとても輝いて見えた。
隣に立つ少女を見ると、彼女も輝いて見えて、なんだか胸がドキドキしていた。
「完全に暗くなってしまう前に、会場に戻った方がいいよ。誰かに送らせるよ。」
「貴方は戻らないの?」
「僕は行けないんだよ。だから、ここでお別れだ。」
彼女と離れがたく感じでいたが、少年は右手を差し出して、別れの握手をしようと彼女に提案した。
するとアンナはにっこりと微笑んで、差し出された手を両手で包み込むように握った。
「普段はこういったパーティー、嫌だったんだけど、今日は本当に楽しかったわ!」
「僕も!僕も凄く楽しかったよ!」
お互いに微笑み合うと、手をしっかりと握った。
「遊んでくれて有難う、リチャード様!」
アンナは心から感謝の気持ちを伝えると、それを聞いて少年は酷く悲しそうな顔をしてアンナに一つ忠告をしたのだった。
「今日の事は二人だけの秘密だよ。僕とここで会った事は絶対に誰にも言ってはいけないよ。」
「分かったわ。パーティーをサボっていた事がバレたら怒られるものね。誰にも言わないわ。二人だけの秘密ね。」
彼に笑顔でそう答えたところで、アンナは目を覚ました。
◇
目が覚めても、アンナは夢の内容を、幼い頃の想い出を思い返してしばらく起き上がれないでいた。
あの日は結局ドレスを土で汚し、枝に引っ掛けて破いて、終いには父から借りてた国王陛下から賜った大切なブローチまで落としてしまって大目玉を喰らったんだったと懐かしく思った。
(そうよ、思い出した……。私は、子供の頃にルーフェスと会っているんだわ……)
アンナは目を瞑りながら夢の内容を反芻した。そして、あの日庭で遊んだあの少年こそが、ルーフェスであったと気付いたのだ。
(ちょっと待って、そう言えばルーフェスはあの時こう言ってたわ……)
アンナは以前馬車の中でルーフェスに
「何であの日私を助けようって思ったの?」
と訊ねて、その理由が
「初恋の女の子と同じ名前だったから」
と教えてもらった時のことを思い出していた。
(私、子供の時確かに名乗ったわよね。アンナ・ラディウスって……)
「もしかして……私だったの……?」
ルーフェスの言うアンナという名の彼の初恋の少女が自分かもしれないと思い当たって、アンナは顔を赤くして布団を被った。
(もし、本当にそうだったら嬉しいけど……)
それから、アンナはルーフェスから高台で夕日を見せてもらった時のことも思い出した。あの時彼は、朱色の夕焼けを僕の一番好きな色と言って彼女に見せたのだった。
「あっ……ヴァーミリオン……」
一般的に夕焼けはスカーレットと称されることが多いのに、ルーフェスは夕焼けをヴァーミリオンと認識し、一番好きな色だと言ったのだ。それは、あの日アンナが言った言葉だった。
彼はあの庭園での想い出を覚えているだろうと確信した。
(けれど彼は、私があの時のアンナだと分かっているのだろうか?)
(もし、私があの時の娘だと分かったら彼はどんな反応をするのだろうか。)
そんな事を考えながらベッドの上で身悶えていたアンナだったが、しばらく経って起き上がると、念入りに身支度を整えて、冒険者ギルドへと向かったのだった。
(あぁ、早く会って、ちゃんと彼と話がしたいな。)
しかしアンナのこの願いは、叶わなかった。
また明日と言って別れた後、ルーフェスは連絡が途絶えたのだった。
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