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59. 車内での尋問
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クルト村で一晩を明かしてその翌日、アンナは、彼女が言う”みんなが救われるかもしれない方法”に賛同してくれたリチャードとリリアナと共に王都へと向かう馬車の中に揺られていた。
(ルーフェスは、今どうしているかしら……)
アンナは彼から貰った胸の内ブローチを握り締めて、切なそうに窓の外を見た。
身の安全は保証されているだろうが、人質を取られて、ルーフェスという個人を抹消されて、別の人間として振る舞う事を強要されるような状況に、たった一人で居るのは精神的に辛い筈だと、アンナは彼を心配していた。
するとそんなアンナの様子に気づいたリリアナは、アンナを元気づけようと優しく言葉をかけたのだった。
「大丈夫よ、きっと上手くいくわ。だって私、昨夜夢を見たんですもの。みんな笑っていたわ。私も、リチャードも、貴女も、ルーフェスも。だから心配しなくても平気よ。」
「夢……ですか?」
リリアナが夢の話で何故ここまで堂々と上手くいくと言い切れるのかが分からず、アンナが怪訝な顔をした。すると横からリチャードが、リリアナの魔法について説明してくれたのだった。
「リリィがそう言うのなら、きっと上手くいくね。彼女は、自身の魔力で予知夢を見るんだ。リリィの予知夢は絶対に当たるんだよ。だから、今回もきっと大丈夫さ。心強いね。」
「そんな事が……あるのですね。」
魔法とは縁の遠いアンナには、その説明は俄には信じられなかったが、目の前に座る二人のがとても晴れやかで不安など何もないといった顔をしているので、アンナも本当にそうなる様な気がして少し心が落ち着いてきてた。
しかし、そんな心の平穏も束の間だった。
「ところで、アンナさん。貴女一体ルーフェスとはどのような御関係なの?」
リリアナが興味津々と言った様子で、前のめりになってアンナの方を見ると目を輝かせて質問をしたのだ。
「えっ?! あー……それは……」
アンナはまさかそのような事を聞かれると思って居なかったので狼狽えると、返答に困った。
「えぇっと……。……仕事仲間……かな…?」
ルーフェスとの今の関係が仕事仲間以上の物であるとは何となく感じてはいるが、けれどもこの関係性をなんと呼べばいいのかアンナには分からず、とりあえず無難にそう答えたのだった。
「……なんだか思っていたのと違うわね……」
リリアナは不満そうな表情でアンナを見つめると、彼女の瞳の奥を覗き込むようにじっと見つめて言った。
「貴女、ルーフェスの事好きなんじゃないの?」
「?!!!」
アンナは、自身の気持ちを言い当てられて動揺すると、耳まで真っ赤にして何も言えなくなった。
「リリィ、本人の口から語る前にあんまり突っ込んだ事聞くのは悪いと思うよ。ほら、こんなに動揺してるじゃないか。」
「あらぁ、だって分かりやすいじゃない。好きな人の為じゃなかったら、こんな面倒な事に首を突っ込まないでしょう?」
「それは……」
しどろもどろになり、アンナが答えに窮していると、リリアナは全く悪気なく追い討ちをかける様に質問を続けた。
「何故本人には伝えないの?お慕いしているのでしょう?」
リリアナは不思議そうにアンナの方をみて小首を傾げている。彼女は他意などなく、純粋に疑問に思った事を質問しているだけだった。
そんな彼女の真っ直ぐな眼差しに、アンナは観念したかのように息を吐くと、重い口を開いたのだった。
「それは……、誰かさん達のせいで、色々と状況が拗れたからですよ……」
そう言ってアンナが恨めしい目を向けると、リチャードはバツが悪そうに目線を逸らした。一応自覚はあるらしい。
「ちゃんと話すわよ。この問題が無事に片付いたらね……。そうよ、ちゃんと彼と会って話すわ……」
アンナは胸のブローチに触れながら、自分に言い聞かせる様に呟いた。
「しかし成程。ルーフェスが何か隠してるなとは思ってたけど、それは君の事だったんだなぁ。」
リチャードは感慨深そうにアンナを眺めると、口元を綻ばせて続けた。
「ここ三ヶ月、ルーフェスはなんだかとても楽しそうだったけれども、その理由は絶対に教えてくれなかった。観劇だって、誰と観に行ったのかまでは、はぐらかされたしね。」
「そういえば、そうだったわね。貴女と観に行ったんでしょう?」
「えぇ、そうです。」
その返事に、二人が嬉しそうな顔でこちらを見るので、アンナはなんだか恥ずかしくなって俯いてしまった。
しかし、そんなアンナの様子にもお構いなしに、リリアナは嬉々として彼女に質問を続ける。
「まぁ、素敵!それで、二人は他にどの様な逢瀬を楽しんだの?」
恋愛小説が好きなリリアナは、人の恋愛ごとにも興味津々で、目を輝かせると身を乗り出してアンナに詰め寄ったのだった。
(ルーフェスは、今どうしているかしら……)
アンナは彼から貰った胸の内ブローチを握り締めて、切なそうに窓の外を見た。
身の安全は保証されているだろうが、人質を取られて、ルーフェスという個人を抹消されて、別の人間として振る舞う事を強要されるような状況に、たった一人で居るのは精神的に辛い筈だと、アンナは彼を心配していた。
するとそんなアンナの様子に気づいたリリアナは、アンナを元気づけようと優しく言葉をかけたのだった。
「大丈夫よ、きっと上手くいくわ。だって私、昨夜夢を見たんですもの。みんな笑っていたわ。私も、リチャードも、貴女も、ルーフェスも。だから心配しなくても平気よ。」
「夢……ですか?」
リリアナが夢の話で何故ここまで堂々と上手くいくと言い切れるのかが分からず、アンナが怪訝な顔をした。すると横からリチャードが、リリアナの魔法について説明してくれたのだった。
「リリィがそう言うのなら、きっと上手くいくね。彼女は、自身の魔力で予知夢を見るんだ。リリィの予知夢は絶対に当たるんだよ。だから、今回もきっと大丈夫さ。心強いね。」
「そんな事が……あるのですね。」
魔法とは縁の遠いアンナには、その説明は俄には信じられなかったが、目の前に座る二人のがとても晴れやかで不安など何もないといった顔をしているので、アンナも本当にそうなる様な気がして少し心が落ち着いてきてた。
しかし、そんな心の平穏も束の間だった。
「ところで、アンナさん。貴女一体ルーフェスとはどのような御関係なの?」
リリアナが興味津々と言った様子で、前のめりになってアンナの方を見ると目を輝かせて質問をしたのだ。
「えっ?! あー……それは……」
アンナはまさかそのような事を聞かれると思って居なかったので狼狽えると、返答に困った。
「えぇっと……。……仕事仲間……かな…?」
ルーフェスとの今の関係が仕事仲間以上の物であるとは何となく感じてはいるが、けれどもこの関係性をなんと呼べばいいのかアンナには分からず、とりあえず無難にそう答えたのだった。
「……なんだか思っていたのと違うわね……」
リリアナは不満そうな表情でアンナを見つめると、彼女の瞳の奥を覗き込むようにじっと見つめて言った。
「貴女、ルーフェスの事好きなんじゃないの?」
「?!!!」
アンナは、自身の気持ちを言い当てられて動揺すると、耳まで真っ赤にして何も言えなくなった。
「リリィ、本人の口から語る前にあんまり突っ込んだ事聞くのは悪いと思うよ。ほら、こんなに動揺してるじゃないか。」
「あらぁ、だって分かりやすいじゃない。好きな人の為じゃなかったら、こんな面倒な事に首を突っ込まないでしょう?」
「それは……」
しどろもどろになり、アンナが答えに窮していると、リリアナは全く悪気なく追い討ちをかける様に質問を続けた。
「何故本人には伝えないの?お慕いしているのでしょう?」
リリアナは不思議そうにアンナの方をみて小首を傾げている。彼女は他意などなく、純粋に疑問に思った事を質問しているだけだった。
そんな彼女の真っ直ぐな眼差しに、アンナは観念したかのように息を吐くと、重い口を開いたのだった。
「それは……、誰かさん達のせいで、色々と状況が拗れたからですよ……」
そう言ってアンナが恨めしい目を向けると、リチャードはバツが悪そうに目線を逸らした。一応自覚はあるらしい。
「ちゃんと話すわよ。この問題が無事に片付いたらね……。そうよ、ちゃんと彼と会って話すわ……」
アンナは胸のブローチに触れながら、自分に言い聞かせる様に呟いた。
「しかし成程。ルーフェスが何か隠してるなとは思ってたけど、それは君の事だったんだなぁ。」
リチャードは感慨深そうにアンナを眺めると、口元を綻ばせて続けた。
「ここ三ヶ月、ルーフェスはなんだかとても楽しそうだったけれども、その理由は絶対に教えてくれなかった。観劇だって、誰と観に行ったのかまでは、はぐらかされたしね。」
「そういえば、そうだったわね。貴女と観に行ったんでしょう?」
「えぇ、そうです。」
その返事に、二人が嬉しそうな顔でこちらを見るので、アンナはなんだか恥ずかしくなって俯いてしまった。
しかし、そんなアンナの様子にもお構いなしに、リリアナは嬉々として彼女に質問を続ける。
「まぁ、素敵!それで、二人は他にどの様な逢瀬を楽しんだの?」
恋愛小説が好きなリリアナは、人の恋愛ごとにも興味津々で、目を輝かせると身を乗り出してアンナに詰め寄ったのだった。
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