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閑話 大団円のその後に3
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マチルダの家を後にした二人は、それから順番にお世話になった人たちを回った。
エヴァンの学校の退校手続きや、ルーフェスの怪我を診てくれた町医者、いつも使っていた八百屋のご夫婦、父の形見の剣をメンテナンスしてくれていた刀鍛冶等々……。彼らを巡りながら、アンナは改めて自分はこの五年間を多くの人に支えられていたのだなと、実感していた。
そして最後に、二人はついにグリニッジ婦人の元を訪れたのだった。
「本当に、すみませんでした!!」
アンナは、婦人がドアから出て来ると、開口一番に頭を深く下げて、大きな声で謝罪した。
突然謝罪された事に驚いた婦人は、困惑しながらアンナを見下ろしていたが、アンナはそんな夫人の様子に構わずに、伝えるべき事の説明を続けたのだった。
「それから、急な話なんですが、私たち王都から引っ越すことになりまして、あの借家を引き払います。家具とかは置いていくので、次の人にそのまま使ってください。それとこれ、向こう一ヶ月分の家賃と、ドアの修繕費です。本当に、色々とごめんなさい!!」
そう言うと、アンナは手に持っていた銀貨の入った布袋を、勢いよく差し出した。そんな彼女の勢いに圧倒され、グリニッジ夫人はポカンと口を開いたまま固まってしまったが、我に返るとアンナを優しく宥めたのだった。
「まぁ……とりあえず頭を上げて頂戴?ドアの方はちゃんと修理費を払ってくれるのならばそれで良いわよ。」
「はい……。ありがとうございます。本当にご迷惑をおかけしてすみませんでした。」
「それにしても……お引越しだなんて急な話ねぇ。」
「すみません、急に決まった事でして……。」
「いいえ、責めている訳じゃないのよ。ただ、寂しくなるわねぇ……。まぁでも、喜ばしいことだから仕方ないわよね。」
「あ、ありがとうございます?」
確かに男爵位を引き継いで領地に戻れる事は大変喜ばしい事なのだが、グリニッジ婦人が何故それを知っているのかと首を傾げた。けれども、婦人が言っているのはそういう意味では無かったのだ。
「こっちの事は気にしなくて良いわよ。アンナ、おめでとう。末長くお幸せにね。」
「はい……って……えっ?!」
思いもしなかった言葉をかけられて、アンナは目を丸くして聞き返してしまった。
「あら、そちらの彼と結婚して地方で暮らすのではないの?」
「え?、ち、ちが……」
アンナは慌てて否定しようとしたのだが、横にいたルーフェスが何食わぬ顔でそれを肯定したのだった。
「はい、有難うございます。グリニッジ婦人もどうかお元気で。」
「ルーフェス?!」
「まぁ、ありがとう。貴方達もお元気でね。」
「あ、は、はい……。」
アンナは顔を赤くしながらも、何とかそれだけ答えたのだったが、その様子を見たグリニッジ婦人は楽しげに微笑んだのであった。
***
「ルーフェス、さっきのは何であんな事言っちゃったの?婦人に絶対誤解されたままだわ。私とルーフェスが、その……け、結婚するって……」
帰りの馬車の中、アンナは恥ずかしげに頬を染めながら、隣に座っているルーフェスを恨めしく見つめていた。
「いいじゃないか。いちいち訂正するのも面倒くさいし。それに僕は本当にいずれ君と結婚したいと思ってるよ。」
「そ……そういう事サラッと言うのはずるいわ……」
真っ直ぐ目を見て言われた言葉に動揺したアンナは、ますます赤くなりながらも目線を逸らせて不平を漏らしたが、ルーフェスには意図が正しく伝わらなかったようで、彼は不思議そうな表情を浮かべて小首を傾げるのだった。
「……改めて言い直そうか?」
「そうじゃなくって!!」
赤い顔のままアンナが抗議の声を上げると、ルーフェスは可笑しそうにクスリと笑って、それから直ぐに真剣な顔つきになって、彼女の手を取り、じっとアンナの目を見てその思いを伝えたのだった。
「真面目に言うよ。今はまだ、僕の立場は自身の爵位も無い、クライトゥール伯爵の弟っていう不安定な立場だけれども、近いうちに必ず、僕は功績をあげて自分の立場を確立して見せるから、そうしたらアンナ、僕と結婚して欲しい。」
ルーフェスの率直で誠実な言葉に驚いたアンナは、暫くの間何も言葉を発する事が出来なくなってしまった。
そして、やがてゆっくりと息を整えると、静かにルーフェスの手の上に自身の手を添え、彼の瞳を見返しながら恥ずかしそうに答えたのだった。
「……はい。その時が来たなら、喜んで……。」
そう言ってアンナは、はにかみながらも、とても嬉しそうに微笑んだのだった。
その時だった。
ガタンッ!!!
石に乗り上げたのか、馬車が大きく揺れた。
「きゃあっ!」
「危ない!!」
馬車が揺れたその反動で座席から落ちそうになっていたアンナをルーフェスは咄嗟に庇うように抱きしめると、二人は向かい合う形で密着しあった。
「危なかったね。大丈夫?」
「う……うん……」
予期しない形でルーフェスとの距離がグッと近づいてしまい、アンナの胸はドキドキと高鳴った。
直ぐに揺れはおさまったので、アンナは慌ててルーフェスから離れようとしたのだが、しかしルーフェスは、アンナの事をしっかりと抱きしめて離さないのであった。
「……あの、もう大丈夫だから離して?」
「なんで?」
「何でって、もう揺れてないから大丈夫よ。」
「そんなの関係ないよ。僕はアンナを離したくないな。」
そう言ってルーフェスは、さらにギュッとアンナを抱き寄せた。
「それにさ、二人の時はこうゆう事しても良いって昨日言ったよね?」
「そ……それは……んっ!!」
反論しようとしたアンナの首筋に、ルーフェスが優しく唇を落とすと、耳元に口を寄せて囁いたのだった。
「ねぇ、アンナは火花鳥の羽根がどういった御守りなのか知っているかい?」
「えっ?いいえ?綺麗な羽根だなとは思ったけど、どういった御守りなの?」
突然の質問の意図が分からず、戸惑いながら答えるとルーフェスは悪戯っぽく笑い、更に言葉を紡いだのだった。
「火花鳥はね、一度番いを決めたら一生同じ相手と寄り添うんだ。だから、火花鳥の羽根には、“永遠の愛と絆”って意味があるんだよ。」
「え……永遠……の……愛……」
アンナはその言葉に目を大きく見開いて、ルーフェスの顔を見ると彼は少し照れ臭そうにしながら、話を続けた。
「僕の気持ちはあの時からずっと変わらないよ。アンナ、君を愛してる。」
そう告げられてアンナは、火が出てるのかと思うくらい顔が熱くなって、あまりの恥ずかしさから彼の顔を見ることが出来ずに、代わりに彼の胸に顔を埋めると、ぎゅっと抱きしめ返したのだった。
「……わ、私も……ルーフェスの事……好き……ょ」
消え入りそうな小さな声でつぶやいたのだが、ルーフェスの耳にはしっかりと届いていた。
「嬉しいよ。ありがとう……」
ルーフェスは満面の笑みでそう言うと、アンナのおでこにキスを落とした。そして、もう一度彼女を力強く抱き寄せると、今度はその唇へと深く熱いキスをしたのだった。
「これからもずっと、よろしくね。」
「うん……こちらこそ、よろしくお願いします……」
そう言って二人は幸せそうに微笑み合ったのであった。
「……あの、それで一体いつまでこうしてるのかしら……?」
暫く抱き合った後も、一向に自分を離す気配を見せないルーフェスに、アンナは彼の腕の中で身じろぎながら戸惑いの声を上げたのだった。
「いつまでも。」
「で、でも、もうすぐ屋敷に着くわ……」
「そうだね。じゃあそれまではこのままで。」
「えぇ!?」
結局アンナはルーフェスが満足するまで離してもらえなかったので、赤い顔のまま、屋敷に帰宅する事になったのだった。
エヴァンの学校の退校手続きや、ルーフェスの怪我を診てくれた町医者、いつも使っていた八百屋のご夫婦、父の形見の剣をメンテナンスしてくれていた刀鍛冶等々……。彼らを巡りながら、アンナは改めて自分はこの五年間を多くの人に支えられていたのだなと、実感していた。
そして最後に、二人はついにグリニッジ婦人の元を訪れたのだった。
「本当に、すみませんでした!!」
アンナは、婦人がドアから出て来ると、開口一番に頭を深く下げて、大きな声で謝罪した。
突然謝罪された事に驚いた婦人は、困惑しながらアンナを見下ろしていたが、アンナはそんな夫人の様子に構わずに、伝えるべき事の説明を続けたのだった。
「それから、急な話なんですが、私たち王都から引っ越すことになりまして、あの借家を引き払います。家具とかは置いていくので、次の人にそのまま使ってください。それとこれ、向こう一ヶ月分の家賃と、ドアの修繕費です。本当に、色々とごめんなさい!!」
そう言うと、アンナは手に持っていた銀貨の入った布袋を、勢いよく差し出した。そんな彼女の勢いに圧倒され、グリニッジ夫人はポカンと口を開いたまま固まってしまったが、我に返るとアンナを優しく宥めたのだった。
「まぁ……とりあえず頭を上げて頂戴?ドアの方はちゃんと修理費を払ってくれるのならばそれで良いわよ。」
「はい……。ありがとうございます。本当にご迷惑をおかけしてすみませんでした。」
「それにしても……お引越しだなんて急な話ねぇ。」
「すみません、急に決まった事でして……。」
「いいえ、責めている訳じゃないのよ。ただ、寂しくなるわねぇ……。まぁでも、喜ばしいことだから仕方ないわよね。」
「あ、ありがとうございます?」
確かに男爵位を引き継いで領地に戻れる事は大変喜ばしい事なのだが、グリニッジ婦人が何故それを知っているのかと首を傾げた。けれども、婦人が言っているのはそういう意味では無かったのだ。
「こっちの事は気にしなくて良いわよ。アンナ、おめでとう。末長くお幸せにね。」
「はい……って……えっ?!」
思いもしなかった言葉をかけられて、アンナは目を丸くして聞き返してしまった。
「あら、そちらの彼と結婚して地方で暮らすのではないの?」
「え?、ち、ちが……」
アンナは慌てて否定しようとしたのだが、横にいたルーフェスが何食わぬ顔でそれを肯定したのだった。
「はい、有難うございます。グリニッジ婦人もどうかお元気で。」
「ルーフェス?!」
「まぁ、ありがとう。貴方達もお元気でね。」
「あ、は、はい……。」
アンナは顔を赤くしながらも、何とかそれだけ答えたのだったが、その様子を見たグリニッジ婦人は楽しげに微笑んだのであった。
***
「ルーフェス、さっきのは何であんな事言っちゃったの?婦人に絶対誤解されたままだわ。私とルーフェスが、その……け、結婚するって……」
帰りの馬車の中、アンナは恥ずかしげに頬を染めながら、隣に座っているルーフェスを恨めしく見つめていた。
「いいじゃないか。いちいち訂正するのも面倒くさいし。それに僕は本当にいずれ君と結婚したいと思ってるよ。」
「そ……そういう事サラッと言うのはずるいわ……」
真っ直ぐ目を見て言われた言葉に動揺したアンナは、ますます赤くなりながらも目線を逸らせて不平を漏らしたが、ルーフェスには意図が正しく伝わらなかったようで、彼は不思議そうな表情を浮かべて小首を傾げるのだった。
「……改めて言い直そうか?」
「そうじゃなくって!!」
赤い顔のままアンナが抗議の声を上げると、ルーフェスは可笑しそうにクスリと笑って、それから直ぐに真剣な顔つきになって、彼女の手を取り、じっとアンナの目を見てその思いを伝えたのだった。
「真面目に言うよ。今はまだ、僕の立場は自身の爵位も無い、クライトゥール伯爵の弟っていう不安定な立場だけれども、近いうちに必ず、僕は功績をあげて自分の立場を確立して見せるから、そうしたらアンナ、僕と結婚して欲しい。」
ルーフェスの率直で誠実な言葉に驚いたアンナは、暫くの間何も言葉を発する事が出来なくなってしまった。
そして、やがてゆっくりと息を整えると、静かにルーフェスの手の上に自身の手を添え、彼の瞳を見返しながら恥ずかしそうに答えたのだった。
「……はい。その時が来たなら、喜んで……。」
そう言ってアンナは、はにかみながらも、とても嬉しそうに微笑んだのだった。
その時だった。
ガタンッ!!!
石に乗り上げたのか、馬車が大きく揺れた。
「きゃあっ!」
「危ない!!」
馬車が揺れたその反動で座席から落ちそうになっていたアンナをルーフェスは咄嗟に庇うように抱きしめると、二人は向かい合う形で密着しあった。
「危なかったね。大丈夫?」
「う……うん……」
予期しない形でルーフェスとの距離がグッと近づいてしまい、アンナの胸はドキドキと高鳴った。
直ぐに揺れはおさまったので、アンナは慌ててルーフェスから離れようとしたのだが、しかしルーフェスは、アンナの事をしっかりと抱きしめて離さないのであった。
「……あの、もう大丈夫だから離して?」
「なんで?」
「何でって、もう揺れてないから大丈夫よ。」
「そんなの関係ないよ。僕はアンナを離したくないな。」
そう言ってルーフェスは、さらにギュッとアンナを抱き寄せた。
「それにさ、二人の時はこうゆう事しても良いって昨日言ったよね?」
「そ……それは……んっ!!」
反論しようとしたアンナの首筋に、ルーフェスが優しく唇を落とすと、耳元に口を寄せて囁いたのだった。
「ねぇ、アンナは火花鳥の羽根がどういった御守りなのか知っているかい?」
「えっ?いいえ?綺麗な羽根だなとは思ったけど、どういった御守りなの?」
突然の質問の意図が分からず、戸惑いながら答えるとルーフェスは悪戯っぽく笑い、更に言葉を紡いだのだった。
「火花鳥はね、一度番いを決めたら一生同じ相手と寄り添うんだ。だから、火花鳥の羽根には、“永遠の愛と絆”って意味があるんだよ。」
「え……永遠……の……愛……」
アンナはその言葉に目を大きく見開いて、ルーフェスの顔を見ると彼は少し照れ臭そうにしながら、話を続けた。
「僕の気持ちはあの時からずっと変わらないよ。アンナ、君を愛してる。」
そう告げられてアンナは、火が出てるのかと思うくらい顔が熱くなって、あまりの恥ずかしさから彼の顔を見ることが出来ずに、代わりに彼の胸に顔を埋めると、ぎゅっと抱きしめ返したのだった。
「……わ、私も……ルーフェスの事……好き……ょ」
消え入りそうな小さな声でつぶやいたのだが、ルーフェスの耳にはしっかりと届いていた。
「嬉しいよ。ありがとう……」
ルーフェスは満面の笑みでそう言うと、アンナのおでこにキスを落とした。そして、もう一度彼女を力強く抱き寄せると、今度はその唇へと深く熱いキスをしたのだった。
「これからもずっと、よろしくね。」
「うん……こちらこそ、よろしくお願いします……」
そう言って二人は幸せそうに微笑み合ったのであった。
「……あの、それで一体いつまでこうしてるのかしら……?」
暫く抱き合った後も、一向に自分を離す気配を見せないルーフェスに、アンナは彼の腕の中で身じろぎながら戸惑いの声を上げたのだった。
「いつまでも。」
「で、でも、もうすぐ屋敷に着くわ……」
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