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ロキシード視点編
5. 無邪気な彼女
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彼女の手を引いて回廊を歩き、王宮の奥にある小さな庭園へ辿り着いた。
ここは、僕のお気に入りの場所だった。
本当なら誰にもこの場所は教えたく無かったけれど、優しくて素敵な王太子を演じる為に、仕方なく僕は婚約者候補になった令嬢たちをここへ招いていた。
(ま、こんなことで勝手に喜んでくれるんだから簡単で良いよね)
そんな悪態を心の中で呟きながら、今日も新しい婚約者候補の令嬢を僕はこの裏庭へ案内したのだった。
「アディルナ嬢、ここは僕のお気に入りの場所なんだ。花壇がとても綺麗だろう?君にも見せたかったんだ」
柔らかな声で優しく微笑みながら、僕はいつものようにこの庭を彼女に紹介した。
「……」
しかし、彼女はこの情景に心を奪われてしまったようで、うっとりと庭を見つめたまま僕の言葉に何も反応を示さなかった。
(……この反応は初めてだな……)
僕は、初めて令嬢に無視されていた。
このような経験は初めてで、どうしようかと考えだしたその時、彼女はハッとした顔で慌ててこちらに向き直り、僕に深く頭を下げたのだった。
「ロキシード殿下、このような素敵な席を設けていただき、誠に有難うございます」
僕は彼女のタイミングが全くわからなかったが、とりあえず僕を忘れて無かったことにホッとして、僕は彼女が恐縮しすぎないように、穏やかな声で応じた。
「うん、アディルナ嬢。楽にしていいよ。」
僕がそう言うと、彼女は安堵しながら顔を上げた。
するとその瞬間、パチリと彼女と目が合ったのだった。
僕は反射的に微笑んでみせた。
こうすることで、たいていの令嬢は顔を赤くして、恥ずかしそうに僕ら目を逸らすから。
しかし、アディルナ嬢は違った。
彼女は僕に負けじとにっこりと微笑んだのだ。
僕は予想外の反応に、ほんの一瞬だけ驚いてしまった。
けれども直ぐに気を取り直して、僕は彼女に席を勧めた。
「アディルナ嬢、こちらの席が見晴らしがいいよ」
そう言って彼女に僕の特等席を譲ると、僕は控えていた侍女たちに目で合図を送った。
すると侍女たちは、慣れた手つきで茶器を配置し、湯を注ぎ、まばたきする間に完璧な茶席を作り上げた。
あっという間に整えられたお茶の支度を見て、彼女は僕の侍女たちの手際の良さに慄いていたみたいだったので、僕は少しだけ誇らしくなって得意気にお茶を勧めた。
「さぁ、冷めないうちにどうぞ。この茶葉は隣国から取り寄せた特別な品でね、渋みが少なくて飲みやすいんだよ」
「まぁ、そんな特別な品を有難うございます。楽しみですわ」
僕に勧められて彼女は紅茶を一口飲んだ。
その瞬間、彼女は目を見開いてとても驚いたような顔をして、キラキラした目でこちらを向いたのだった。
「殿下!このお茶とても美味しいです!」
「うん。気に入ってもらえると思ってたよ」
「はい!これなら何杯でも飲めちゃいます!」
「それは良かった」
ここまで分かりやすく、僕の用意した紅茶に感動してくれて、僕は悪い気はしなかったが、それと同時に彼女の反応に少し身構えてしまった。
(この令嬢……ちょっと素直すぎないか?)
そう、侯爵令嬢だというのに、あまりにも素直すぎるのだ。
先日会ったリリエラ嬢は、表面的には彼女と同じように喜んだりしていたが、あれは心からではなく、八割方演技であるのは見え見えだったし、ローゼリア嬢に至っては十割方演技であった。
まぁ、僕も”理想の優しい王太子”を演じていたわけだから、彼女たちが演技をして僕と会話をしていたことについてはそれが普通だと思っている。貴族社会なんてそんなものだから。
だけれども……目の前に居るアディルナ嬢が方便を言っている様子には微塵も見えない。だから僕は少し警戒してしまった。
もし、ここまでの言動が全て演技であったなら、それを全く感じさせない力量は僕をも上回ることになる。そんな令嬢、今まで会ったことなかった。
(この子は……底が見えないな)
僕が裏でどのように考えているかなんて全く気付いてなさそうな、無邪気な彼女を
僕は笑顔を崩さぬまま、観察するようにじっと見つめた。
ここは、僕のお気に入りの場所だった。
本当なら誰にもこの場所は教えたく無かったけれど、優しくて素敵な王太子を演じる為に、仕方なく僕は婚約者候補になった令嬢たちをここへ招いていた。
(ま、こんなことで勝手に喜んでくれるんだから簡単で良いよね)
そんな悪態を心の中で呟きながら、今日も新しい婚約者候補の令嬢を僕はこの裏庭へ案内したのだった。
「アディルナ嬢、ここは僕のお気に入りの場所なんだ。花壇がとても綺麗だろう?君にも見せたかったんだ」
柔らかな声で優しく微笑みながら、僕はいつものようにこの庭を彼女に紹介した。
「……」
しかし、彼女はこの情景に心を奪われてしまったようで、うっとりと庭を見つめたまま僕の言葉に何も反応を示さなかった。
(……この反応は初めてだな……)
僕は、初めて令嬢に無視されていた。
このような経験は初めてで、どうしようかと考えだしたその時、彼女はハッとした顔で慌ててこちらに向き直り、僕に深く頭を下げたのだった。
「ロキシード殿下、このような素敵な席を設けていただき、誠に有難うございます」
僕は彼女のタイミングが全くわからなかったが、とりあえず僕を忘れて無かったことにホッとして、僕は彼女が恐縮しすぎないように、穏やかな声で応じた。
「うん、アディルナ嬢。楽にしていいよ。」
僕がそう言うと、彼女は安堵しながら顔を上げた。
するとその瞬間、パチリと彼女と目が合ったのだった。
僕は反射的に微笑んでみせた。
こうすることで、たいていの令嬢は顔を赤くして、恥ずかしそうに僕ら目を逸らすから。
しかし、アディルナ嬢は違った。
彼女は僕に負けじとにっこりと微笑んだのだ。
僕は予想外の反応に、ほんの一瞬だけ驚いてしまった。
けれども直ぐに気を取り直して、僕は彼女に席を勧めた。
「アディルナ嬢、こちらの席が見晴らしがいいよ」
そう言って彼女に僕の特等席を譲ると、僕は控えていた侍女たちに目で合図を送った。
すると侍女たちは、慣れた手つきで茶器を配置し、湯を注ぎ、まばたきする間に完璧な茶席を作り上げた。
あっという間に整えられたお茶の支度を見て、彼女は僕の侍女たちの手際の良さに慄いていたみたいだったので、僕は少しだけ誇らしくなって得意気にお茶を勧めた。
「さぁ、冷めないうちにどうぞ。この茶葉は隣国から取り寄せた特別な品でね、渋みが少なくて飲みやすいんだよ」
「まぁ、そんな特別な品を有難うございます。楽しみですわ」
僕に勧められて彼女は紅茶を一口飲んだ。
その瞬間、彼女は目を見開いてとても驚いたような顔をして、キラキラした目でこちらを向いたのだった。
「殿下!このお茶とても美味しいです!」
「うん。気に入ってもらえると思ってたよ」
「はい!これなら何杯でも飲めちゃいます!」
「それは良かった」
ここまで分かりやすく、僕の用意した紅茶に感動してくれて、僕は悪い気はしなかったが、それと同時に彼女の反応に少し身構えてしまった。
(この令嬢……ちょっと素直すぎないか?)
そう、侯爵令嬢だというのに、あまりにも素直すぎるのだ。
先日会ったリリエラ嬢は、表面的には彼女と同じように喜んだりしていたが、あれは心からではなく、八割方演技であるのは見え見えだったし、ローゼリア嬢に至っては十割方演技であった。
まぁ、僕も”理想の優しい王太子”を演じていたわけだから、彼女たちが演技をして僕と会話をしていたことについてはそれが普通だと思っている。貴族社会なんてそんなものだから。
だけれども……目の前に居るアディルナ嬢が方便を言っている様子には微塵も見えない。だから僕は少し警戒してしまった。
もし、ここまでの言動が全て演技であったなら、それを全く感じさせない力量は僕をも上回ることになる。そんな令嬢、今まで会ったことなかった。
(この子は……底が見えないな)
僕が裏でどのように考えているかなんて全く気付いてなさそうな、無邪気な彼女を
僕は笑顔を崩さぬまま、観察するようにじっと見つめた。
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